人工知能(AI)、ビッグデータ、IoT(Internet of Things)は、ここ数年人々の生活に欠かせないものとなりつつあります。私たちも日々、利用するアプリ内に搭載されたアルゴリズムや、レコメンド機能を活用しています。もちろん、どこかへ行くときに利用するGoogle MapやiPhoneのカメラアプリも、AIの性能を活かしたアプリです。

今回は、Goodpatchのメンバーに紹介してもらった、今こそ知っておきたいAIを駆使した海外のアプリを5つ取り上げてみました。優れたユーザーエクスペリエンスを提供するアプリはどのようにAIを応用しているのでしょうか?

【Seeing AI】マイクロソフト社による新しいAIサポートアプリ

マイクロソフト社は2017年7月12日に『Seeing AI』をiPhoneアプリとしてローンチしました。AIと、iPhoneもしくはiPad内に搭載されたカメラを利用し、周辺の様子を音声で描写してくれるサービスです。同社は、サービスコンセプトを「視覚が不自由な人のための喋るカメラアプリ」であると説明しています。

このサービスでできることは多岐に渡ります。例えば、眼に映る景色にカメラのレンズを当てるだけで音声に変換・本や手紙の内容を音読・ショップでバーコードをスキャン・おおよその年齢や容姿をテキストに変換などができます。

Seeing AIはまだ改善を重ねている段階にあるため、認識に誤差があることはあります。しかし、この画期的な音声サポートサービスは、視覚に不自由のある人や、それ以外の多くの人からも需要の多いプロダクトです。まさに「マイクロソフト社の音声認識に対する性能を世に示したサービス」だと言えますね。

現在(2017年9月)、Seeing AIはアメリカ、カナダ、インド、香港、ニュージーランド、シンガポールで利用することができます。マイクロソフト社は、より多くの国でサービスを使ってもらえるようにする予定だそうです。

ホームページでは、実際に視覚障害者がアプリを利用している動画を見ることができます。こうして少しずつAIの力で、「誰でもアクセスできる世の中」へ近づいていくのでしょうね。

【Babylon】AIで患者と医師の距離を近づけるリモート診療アプリ

近年はチャットボットやAIを導入した、患者と医師のやりとりを効率化するアプリが多く開発され、注目を集めています。その中でも、今回注目したのがイギリスのスタートアップが提供する『Babylon』というアプリです。2017年5月には、調達した資金額が合計2億ドル(約226億円)に達しています。

Babylonは「診断をより手軽にし、個人に対応した健康診断や治療を世界に提供すること」を目標に掲げています。1番の特徴は、患者が病院へ行かずとも診断が受けられることでしょう。チャットボットに症状を伝えると、アプリ内に搭載されたAIが症状を診断し、必要に応じて医師との面談が可能になるのです。

Babylonは患者の時間だけではなく、医師の時間も効率化しました。お互いに、いつ、どこででもアクセスできるサービスなのです。地域や症状にもよりますが、イギリス国内における診療費は大体25ポンド(3800円)と、手軽に利用できる価格設定になっています。

人間だけでは解決することのできなかった「診療の待ち時間」。そこで感じるストレスを、AIの力で解決したBabylon。それだけでなく、より生産的で、より多くの患者に診療アクセスの権限を与えました。

Babylonの創立者兼CEOであるアリ・パーサ(Ali Parsa)氏は、調達した資金で中東や東南アジアにもサービスを展開していく意志を示しました。日本ではもしかすると、保険証の登録などが必要になる可能性もあります。しかし、こうしたサービスは先進国でも大いに需要があるのではないでしょうか。

【Uber】AIが優れた、世界中で大人気の格安配車サービス

サンフランシスコ発祥の『Uber』は、今や世界中の人々に愛用される配車サービスとなっています。2017年時点では、70ヶ国以上でサービスが導入されています。また、同年は元CEOの辞任と現CEOの就任が発表された年でもあり、多数のメディアから注目が集まりました。

Uberはユーザーが入力した目的地情報を、アプリ内で自動的にドライバーへと配信します。それだけでなく、ユーザーの目的地までの「最短最速な走行ルート」を一瞬で計測してくれるのです。

これを可能にしているのは、AIによるアルゴリズムです。過去に同様のルートを通ったことがあるドライバーのデータを解析し、そこからAIが新しいルートを生成しています。最短ルートでの効率的な乗客の配送が可能であるため、格安ライドを提供できているのです。

AIは学習します。ユーザーがUberを利用するたび、システム内に蓄積される走行距離は増え、そのデータをもとにより良いルートが選択可能になります。この先、Uberがどのように現在蓄積されたアルゴリズムを強みとしつつ、新しいテクノロジーを応用していくのか楽しみですね。

【Hound】人気アプリ開発会社による優れた音声アシスタント

こちらはディベロッパーにおすすめされた音声アシスタントアプリ『Hound』。2016年3月に米国のSoundHoundによりリリースされました。同社は「人とコンピュータとの間で、会話のようなコミュニケーションを実現する」ことをミッションとして掲げています。

Hound社はもともと日本でも有名な『SoundHound』という音楽検索アプリを提供しています。しかし、今回打ち出したのは、さらに音声認識機能を磨いた音声アシスタントアプリ。話しかけると声を正確に読み取り、必要な情報を即座に表示してくれます。

おなじみの「Hi, Siri」のように、Houndでは「Ok, Hound」とアプリに話しかけます。そのあとは文の長さを気にせずに話せば良いでしょう。複雑な文でも、Houndは正確にその意味を理解してくれます。

現在は米国のみでサービスが提供されていますが、2018年までには16言語に対応する予定だそうです。また、日本への進出も検討されているようです。日常的に歩きながら電話をするアメリカ人に比べて、日本人は音声認識を使うことを少しためらうようにも思えますが、こうしたサービスが普及する日がくるのも、それほど遠い未来ではないような気がします。

【ELSA】AIでいつでもどこでも正確な英語の発音を学習できるアプリ

数人のメンバーがオススメしてくれた英語学習アプリ『ELSA』。2015年に正式リリースされ、2017年8月にサービスリニューアルを行いました。宇宙をイメージしたような、カラフルながら落ち着いたデザインで、より楽しく学習できます。

ELSAのトレーニングは、誰でも簡単にチャレンジできるものです。ELSAが表示する英文を、マイクボタンを押した後に話すだけです。簡単な単語から長いセンテンスまで、練習できる内容はさまざまです。発音が正しくなかった場合には、アプリ内のパーソナルアシスタントが「なぜ正しくないのか、何をすれば正しくなるのか」を解説してくれます。まるで先生が隣にいて、フィードバックをくれているかのように。

注意しなくてはならないのは、ここで教えられる英語はアメリカ英語であるということです。メンバーの間でも「これはイギリス英語?アメリカ英語?」という話になりましたが、発音を主にチェックするアプリなので、どちらの英語が習いたいかによって、ツールを使いわける必要がありそうです。英語圏へ旅行する際や普段の英会話の前に、こっそり「この発音で合ってる?」とELSAに聞いてみましょう!

「人間的なAI」をサービスに取り入れよう

いかがでしたでしょうか?同じAIでも、アプリの特徴によってさまざまな応用の仕方があることが分かりました。

優れたAIとは、「自学自習できる人工知能」のことです。過去のデータから教訓を得て、より優れた知性をつけます。データは今、最もビジネスで重要とされるリソースとなっています。

かの有名なAppleにより開発された音声認識機能『Siri』の共同創業者であるTom Gruberは、自身が2017年4月に登壇したTed Talksで、AI搭載の目的を「人間の能力を機械の知性により高めること」だと話しています。機械がより賢くなるにつれ、私たちも賢くなるという意味です。Tomはこれを「人間的なAI」と呼んでいます。

データが重視される時代に、開発者はAIをどれだけ賢くするかではなく、人々をどれだけAIの力で賢くできるかを考えて開発する必要があります。全てをテクノロジーに頼るのではなく、如何に人がテクノロジーと上手に共存できるかが問われるのです。

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