Goodpatch Blogではこれまで、サービスやプロダクト作りの際に参照できる本として、UIデザインやUXデザインに焦点を当てておすすめ本を紹介してきました。
ユーザー視点を持つことと同じように大切なことが、チーム/組織のデザインです。つまり、属するチーム/組織にどのような課題があり、どうすれば解決できるのか工夫し、試行錯誤を重ねることです。
今回はそんなチーム/組織のデザインと密接な関わり合いを持つ、「チームビルディング」の目的と効果、おすすめの本をご紹介します。
目次
チームビルディングとは何か
チームビルディングの目的
「チームビルディング」という言葉を聞く場面はどのようなところでしょうか。
チームビルディングとは、プロジェクトのメンバーひとりひとりが価値を発揮し、自律している状態でありながらも、チームとして団結して目標を達成するための手法を指します。
抽象的に感じるかもしれませんが、チームビルディングの内容は、達成したい目的によって異なります。例えば企業の新卒研修や、リーダーシップ研修に組み込まれている場合は、人材を育成するにあたってメンバー同士がお互いを理解した上で、企業を引率していく共通認識を持つことを目的としてチームビルディングが行われます。
Goodpatchにもチームビルディングを大切にする文化があり、プロジェクト開始時のキックオフではメンバー全員でミーティングを行い、自己紹介を交えながら、プロジェクトのゴールや目指すべき姿についてすり合わせを行います。
そんなGoodpatchのマネージャーが書いたこちらの記事では、ビニールテープを用いたチームビルディングのアクティビティが登場します。
チームにもたらす効果
チームビルディングを行うことで期待できる効果には、以下が挙げられます。
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- コミュニケーションがスムーズになる
- フィードバックしやすい関係性が生まれる
- パフォーマンスが向上する
- プロダクトの質が向上する
- プロジェクトの目標が達成できる
こうして見ると、より良いプロダクトを生み出すためにはチームビルディングが欠かせないようです。
しかし、「大切なのはわかったけれど、何から始めたらいいの?」「具体的な事例で学びたい」と感じる人も多いのではと思います。
チームビルディングを知るためのおすすめ本
さらに学びを深めるために、チームビルディングについて理解ができるおすすめ本を社内のメンバーに聞いてみました。
1.Team Geek
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
Googleのエンジニアリングチームを率いる著者が、エッセイのように軽快な語り口で、チームをリードする方法や、組織の動かし方など、ソフトウェア開発における人間的な側面について語っている本です。
全6章からなる比較的ライトな本なので、サクサクと読み進められそうですね。すぐに実践しやすいのは、第2章「素晴らしいチーム文化を作る」でしょう。ここでは、エンジニアのマネジメントに限らず、参考にできる内容が数多く見つけられました。例えば、効率的なミーティングの時間や人数、ルールなどは、職種に関わらず参考にできるのではないでしょうか。
2.How Google Works
How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント
Googleの会長による、成功則を語った本です。メンバー間のコミュニケーションの取り方から、採用、会議の方法などがまとめられており、大勢のクリエイティブな人材をどのようにマネジメントしているのか学ぶことができます。そして、企業の文化がどのようにして作られていくのかも分かる内容となっています。
チームビルディングとは俯瞰すると、組織を作っていくことだと私は思います。そして組織を持続させ、成功に導くためにも、Googleの事例は一読の価値があると言えそうです。同社の事例や働き方にまつわる本が複数出版されている点からも、「なぜそこまで人に求められる組織文化となりうるのか」ということが考えられます。
3.WORK RULES!
常に変化し続ける組織を管理するためには、人事システムも重要になってきます。この本ではGoogleの人事評価の仕組みや、ユニークな福利厚生の取り組みについて、何故そうするに至ったのかという背景から紹介しています。
採用、評価、社内コミュニケーションなど、日本企業でも参考にできる点は多いのではないでしょうか。
Googleには、誰もが憧れるような福利厚生の制度があることは有名です。
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- 無料の送迎バス
- 無料の食事
- 無料の軽食やスナック
- ジム、美容室、図書館、プールなどの施設
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しかし、ただこれらを真似るだけでは、根本的な組織課題の改善には繋がらないでしょう。
自分たちの組織にどのような問題があって、そのために必要なのはどんな方法なのか、と常に最善を尽くして組織を設計する努力が、Googleで働きたいと思う人が絶えない理由なのかもしれません。
4.ピクサー流 創造するちから
ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
著者は、ピクサーの現社長であるエド・キャットムル。 創造性を阻害するものは数多くあるが、きちんとしたステップを踏めば創造的なプロセスを守ることができる 、というテーマで、ピクサーというクリエイティブな組織が出来上がるまでのプロセスを知ることができる本です。
ピクサー流のアイディアの出し方、チームの作り方に始まり、ファンにとって嬉しい裏話なども読むことができるそうです。以前行われたGoodpatchの新卒研修では、本書を使って「クリエイティブな組織」についてのディスカッションも行われました。
組織文化や、可能性を発揮して働く仕組みがどのように作られるのかというヒントは、クリエイターが集まる組織以外でも活かせることが多いはずです。まずはピクサーなどのよく知る組織から事例を学んでみませんか。
5.Joy,Inc.
著者のリチャード・シェリダンは、アメリカのメンロー・イノベーションズという企業のCEOを務める人物です。
この本は、「米国で最も幸せな職場」と言われている同社ならではのルールや、経営理念について書かれた内容になっています。
「自分のユニットを持つことになった時、この本に出会いとても共感した」と話してくれた社内のマネージャーは、「全員が楽しむマネジメントで結果を出す」というテーマを掲げているそうです。楽しみや喜びが組織の創造性を高めるという仮説が私の中に生まれ、同時にこの本への興味も高まりました。
プロダクトやサービスの開発など、幅広くモノづくりをする上で、「楽しむ」という気持ちを持てているどうか。この本は働き方だけではなく、人生とどう向き合うか考えさせてくれるような本だと言えるでしょう。
6.チームのことだけ、考えた。
チームのことだけ、考えた。―――サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか
サイボウズ株式会社の代表取締役である、青野慶久さんの著書。タイトルにあるように、サイボウズの働き方や企業文化がどのようにして作られたのかが語られています。
2013年当時、離職率が28%だったというサイボウズは、2015年には4%まで数字を下げることに成功しています。現在はユニークな福利厚生で知られているほか、社員にも自由なワークスタイルを認めるなど、様々な取り組みで社員の成長を支援しています。
参照:https://cybozu.co.jp/company/job/recruitment/company/welfare.html
こちらも社内のメンバー数名から推薦の意見が挙がりました。同社の事例からわかることは、チームメンバーがパフォーマンスを最大限まで発揮できる環境・文化を作ること、そしてその文化を根付かせる努力の大切さなのだと感じます。
本書のタイトルである「チームのことだけ、考えた。」とは、経営者自らチームビルディングに全てを懸けたと分かるような、重みが感じられる言葉ですよね。このように言い切れる努力の過程を、文章を通して学んでみませんか。
7.DREAM WORKPLACE
DREAM WORKPLACE(ドリーム・ワークプレイス)――だれもが「最高の自分」になれる組織をつくる
キャッチーなタイトルに心惹かれますね。そんな本書のテーマは、「世界で一番働きたいと思ってもらえる組織を、どうやってつくるのか?」というもの。サイボウズ青野氏が推薦していた本でもあります。
著者のロブ・ゴーフィー氏、ガレス・ジョーンズ氏は、共に組織行動学の専門家です。彼らは数々の有名企業の幹部研修や、企業コンサルティングを重ねる中で、「組織を形作る文化やプロセスの設計、構造を1から考え直すことで、最高のパフォーマンスを発揮できる」と考えたと本書にはあります。
本書のタイトルを和訳すると、「夢見るような組織」と言えるでしょう。それを実現するためには、トップダウンだけではなく、ノトムアップの動きが求められると思います。自分には何ができるだろうか、と考えながら読んでみたい本ですね。
まとめ
チームビルディングの大きな目的は、メンバーが気持ちよく働くことができ、風通しの良いチーム文化を作り上げることであり、これがプロジェクトの成功に繋がっていくのでしょう。さらに長期的な視点では組織の成功にも紐づいていることが、組織づくりの本が多く挙がったことから分かりました。
今回ご紹介した本は、プロジェクトマネージャーや管理職、経営者がターゲットと思われがちですが、本来チームビルディングとは、所属するメンバー全員が意識して取り組むべきものだと私は考えています。もし本記事をご覧のみなさんが、所属しているチームに改善の余地を感じるのなら、一工夫加えるような気持ちでチームのデザインにトライしてみてはいかがでしょうか。