新しいものが大好きなGoodpatchで10月話題になったアプリ、サービス、デザインまとめ(2025)
朝晩の冷え込みに季節の移ろいを感じる今日この頃。
10月1日は「デザインの日」ということもあり、10月はデザイン関連の話題が盛りだくさんでした。食欲の秋やスポーツの秋もいいですが、今日はじっくりと「デザインの秋」を楽しんでみるのはいかがでしょうか。
それでは今月も、グッドパッチで話題になったサービスやトレンドを紹介します!
AI
OpenAIが「Sora 2」を公開。より高精度な動画が生成可能に
 画像引用:Open AI News | Open AI
画像引用:Open AI News | Open AI
Sora 2 が公開 | Open AI
OpenAIは2025年9月30日、最新の動画生成AI「Sora 2」を発表しました。この新モデルは、物理シミュレーションの精度が向上し、複雑な指示への対応力も強化されました。
主な機能として、テキストからの10秒間の縦型動画生成や画像からの動画作成に加え、セリフやナレーションなどの音声に合わせて、動画内の人物の口の動きを自動で生成する音声同期(リップシンク)機能が大きな特徴です。これにより、映像と音声が自然に調和したコンテンツ制作が可能になります。さらに、他のユーザーが投稿した動画のリミックス機能や、自分の姿を動画内に登場させられる「カメオ機能」も搭載されています。
「Sora 2」の登場により、動画制作コストの大幅な削減が見込まれます。プロトタイプ段階での動画素材制作への活用や、物理法則の再現精度向上による、より説得力のあるデモ動画の作成が期待されています。
一方で、著作物に似たAI生成動画がSNSでの拡散も確認されており、著作権については課題も残されています。クリエイター含め、利用者は関連法規や利用規約を遵守し、細心の注意を払って向き合っていく必要があります。
会話から購買へ。OpenAIが提示するチャットコマースの未来
ChatGPT で購入する:Instant Checkout と Agentic Commerce Protocol
2025年10月、OpenAIはChatGPTにおいて、チャット上で商品を探し、支払いまで完結できる新機能「Instant Checkout」を発表しました。この機能は、チャット体験の中でそのまま購買行動に移れる「AIショッピングの第一歩」として位置づけられています。 単なるチャット上で買い物ができる利便性ではなく、対話そのものが意思決定と行動に直結するUXの変化が注目されています。
これまでのように「検索し、複数のタブで比較して最終的に選ぶ」というプロセスから、会話の中で最適な選択肢が提案され、そのまま決済まで完了する流れが現実のものとなりつつあります。 現時点では、米国在住の一部のChatGPTユーザー向けに提供されており、購入先はEtsyの一部商品に限定されています。今後はShopifyマーチャントへの対応も予定されており、さらなるパートナーシップの拡大や提案のパーソナライズ精度の向上が見込まれています。
AIとともに意思決定し、行動する体験。今回のアップデートは、今後のECへ新たな視点をもたらす可能性を秘めています。対話起点のユーザー体験設計にどのような変革をもたらすのか。今後の展開に注目が集まります。
サービス・プロダクト
Instagramがクリエイター向けアワード「Instagram Rings」発表。受賞者には金のリング授与
画像引用:Introducing Instagram Rings: A New Award Celebrating Creativity
Instagramでクリエイター向けアワード「Instagram Rings」 受賞者には“金のリング”
米Meta傘下のInstagramが新しくクリエイター向けのアワード制度「Instagram Rings」を発表しました。
クリエイティブな表現で文化に影響を与えたクリエイターを対象に、映画監督のスパイク・リー氏やデザイナーのマーク・ジェイコブス氏といった各界の著名人が審査員となり、受賞者が選定されます。
受賞したクリエイターのプロフィールやストーリーズには、通常のグラデーションとは異なる特別な「金色のリング」が表示されるようになり、さらに、自身のプロフィール背景をカスタマイズできたり、「いいね」ボタンのデザインを独自のスタイルに変更できたりするオプションが提供されます。また、フィード内での露出機会向上などアプリにおける認知度をさらに向上させる仕組みを導入する予定です。Instagram内での特典の他にも英デザイナーのグレース・ウェールズ・ボナー氏がデザインした物理的な指輪(リング)も授与されます。
第1回の受賞者は10月16日に発表され、今後毎年開催することで「クリエイターの表現を通じて、世界中の人々が文化やアイデンティティを共有する場を広げていくことを目指す」とInstagramは述べています。
このアワードが今後もより多くのクリエイターの活動を後押しする制度になっていくことに、大きく期待します。
ビジネス
コクヨ、120周年を機にリブランディング。初のコーポレートメッセージ「好奇心を人生に」を設定、ロゴを刷新

コクヨ、120周年を機にリブランディング。初のコーポレートメッセージ「好奇心を人生に」を設定、ロゴ刷新
” 2025年10月2日。コクヨは、創業120周年の節目に合わせ、コーポレートサイトを全面リニューアルしました。”
斜めのラインが印象的な新ロゴには、これまでの軌跡と、これからのありたい姿・目指す想いが丁寧に込められているように感じます。リリースを伝えるコクヨの公式ニュースでは、新しいロゴやコーポレートメッセージに加え、120周年にまつわるさまざまなコンテンツが紹介されています。
なかでも筆者の目を引いたのは、総勢200名を超える関係者が2年以上の歳月をかけて制作した新コーポレートサイトです。サイトのヒーロービジュアルに採用されたイラストアニメーションは、豊かな色使いと緻密な描き込みに加え、二次元を超えた奥行きを感じさせます。
「120周年のメッセージ」というリンクのその先には、思わず心が動かされる体験が待っています。何が起こるのかぜひ皆さんで楽しんでいただきたいです。
目を奪われるビジュアルだけでなく、その後に続く各コンテンツの細やかな作り込みや、知りたい情報へスムーズに辿り着ける導線設計にも感銘を受けました。
もちろん、予備知識がなくても十分に楽しめる内容ですが、その裏側には膨大な努力と時間が注がれています。
コクヨの公式noteでは、制作の舞台裏を紹介する記事がVol.5まで公開されており、冒頭で引用したメッセージもその中の一節です。
”なぜ、この大規模なウェブサイトリニューアルは必要だったのか。
その理由は明快でした。
1つは、世間が抱く「コクヨ=文具の会社」というイメージと、実際の事業の広がりとの大きなギャップを埋めるため。”
WHYから始まり、歴史をたどり、そして未来を描いた新しいVIとコーポレートサイト。その誕生の背景に触れながら、コクヨが紡ぐ新しいページを、あなた自身の手でめくってみてはいかがでしょうか。
モビリティのテストコース「Toyota Woven City」で実証を開始

画像引用:モビリティのテストコース“Toyota Woven City”のInventors(インベンターズ)に新たに12社が参画
モビリティのテストコースToyota Woven Cityで、本日実証を開始
「Toyota Woven City」が9月25日にオフィシャルローンチを迎えました。Woven Cityは、かつてのトヨタ自動車東日本・東富士工場跡地(約47,000㎡)に位置し、この度フェーズ1をローンチしました。
外部のスタートアップや研究機関、企業が「Inventors」として参画し、「Weavers」と呼ばれる居住者・来訪者とリアルな暮らしのなかでプロダクトやサービスを共創する仕組みがユニークです。
今回のフェーズ1ではWeaversとしてトヨタ関係者とその家族数世帯300名程度が住みはじめ、最終的には2,000人規模へと拡大させる予定とのことで、単なるスマートシティ計画ではなく、「暮らしながら未来をつくる実証都市=“A Living Laboratory”」として注目を集めています。
この街づくりが話題を集める大きな要因のひとつが、プロジェクトキーワード「カケザン(掛け算)」です。これは、異なる専門性や文化、企業・個人が掛け合わされることで新たな価値を生む、重層的なデザイン思想を表しています。
さらには「未完=継続的に進化する街(Ever Evolving City)」というコンセプトで街区・モビリティ・人・情報・エネルギーが「織りなす(Woven)」ように設計されており、デザイン対象としての街そのものが “実験場” になっています。
Woven Cityは「都市そのものをインターフェースとしてデザインする」挑戦といえます。街路には「歩行者専用」「モビリティ共存」「専用道」の3つのレーンが配置されたり、建築素材や構造として木材・燃料電池・太陽光といった環境配慮と先進技術が組み合わされており、UI/UXデザインや建築設計、都市デザインが交錯する舞台設計といえます。
つまり、Woven Cityは「未来の都市像を体現する舞台」であると同時に、「デザイン思考が最前線で機能するリアルな場」です。異なる文化・技術・人を掛け合わせる「カケザン」の構図が、未来の都市体験を刷新するキーになっています。デザイナーとしても、この街に込められた視覚・体験・構造の一体設計に注目していきたいですね。
イベント
閉幕後の今、万博デザイン展が明かす「こみゃく」現象を生んだ革新的哲学

大阪・関西万博のデザインが生まれるまでのプロセスを紐解く「大阪・関西万博デザイン展」を開催
2025年大阪・関西万博の閉幕後、短期間ながらデザイン関係者や来場者の間で大きな話題を呼んだのが「大阪・関西万博デザイン展」でした。本展の最大の価値は、万博デザインを単なるビジュアルではなく、「いのちの循環」を描く「生態系」として捉え直すその哲学とプロセスを公開した点にあります。
この哲学を具現化したのが、万博の公式基盤である「EXPO 2025 Design System」です。これは、厳格な統制を排除し、あえて余白やゆらぎを残す「生成的オープンデザイン」という革新的なアプローチを採用しました。その結果、デザインが専門家だけで完結せず、市民やクリエイターが参加できる「余地」を生み出すことに成功しました。
展示の核となったのは、このデザインシステムが生み出したムーブメントの全容です。公式キャラクター「ミャクミャク」と並び、会場中に点在した目玉模様のグラフィック要素(ID)は、来場者によって「こみゃく」と命名され、「こみゃくハント」という参加型ブームを創出。この現象は、デザインシステムが意図した「共創の誘発」が現実となった証であり、万博テーマの具現化そのものでした。
デザイン展では、ロゴマークやミャクミャクが生まれる背景を示す「ドキュメント&スケッチ」を公開。さらに、豪華クリエイター陣によるトークセッションでは、デザインが社会へ与える影響と、この開かれたデザインの知見をいかにして未来のまちづくりや文化イベントへ応用し、「共創型デザイン・コモンズ」として継承していくか、熱い議論が交わされました。
グッドデザイン賞を受賞したこの革新的なデザインシステムは、万博閉幕後も、公共デザインのあり方に一石を投じた未来につながる大きな遺産として、今後も多方面に応用が期待されています。
2025年度グッドデザイン賞発表。まさかの鳩サブレーも受賞

画像引用:鳩サブレー 1枚入缶
GOOD DESIGN AWARD
公益財団法人日本デザイン振興会は10月15日、「2025年度グッドデザイン賞」の受賞結果を発表しました。
応募総数5,225件の中から厳正な審査を経て1,619件が選ばれ、最高賞のグッドデザイン大賞には「仮設住宅」が輝きました。また、「未来社会デザイン特別賞」には大阪・関西万博の大屋根リングが選出され、持続可能な未来を象徴するデザインとして注目を集めています。
受賞作品は、11月1日から東京ミッドタウンで開催される「GOOD DESIGN EXHIBITION 2025」で一堂に展示予定です。さらに、審査委員それぞれが個人的に心を動かされた作品を紹介する特別企画「私の選んだ一品 2025」も開催され、デザインに込められた多様な価値を体感できる場となります。
筆者が特に惹かれたのは、グッドデザイン金賞を受賞した「鳩サブレー 1枚入缶セット」。鎌倉の老舗・豊島屋が創業130周年を記念して生み出した限定商品です。おなじみの鳩のフォルムを残しつつ、2024年のパリ五輪を祝うトリコロールカラーを採用。缶の内側には春夏秋冬をテーマにしたイラストや、隠れ鳩の遊び心が散りばめられ、開けるたびに小さな発見がある仕掛けになっています。
販売は「鳩の日」に合わせた限定企画として展開され、EC販売も加えたことで幅広い層に人気が拡大。発売初日には130年の歴史で過去最高の売上を記録しました。食べて終わりではなく、日常に寄り添う「使えるデザイン」として、多くの人の心に残る進化を遂げた鳩サブレーは、まさに時を超えるデザインの象徴といえますね。
日本最大級のデザインの祭典「Designship 2025」閉幕
2025年10月11日(土)、12日(日)の2日間、日本最大級のデザインカンファレンス「Designship 2025」が開催されました。
イベント当日は、没入感あふれるステージ上での「デザイナージャーニー」を軸にしたスピーカーセッションや、昨今のデザイナーが直面している「問い」に対するパネルディスカッション、参加各社による思い思いのブース出展など、「デザインの力」を感じることのできる空間を体感できました。
Designshipのコンセプト「広がりすぎたデザインを接続する」という言葉が表す通り、デザインというものは広がり、日常に溶け込み、私たちにとって当たり前のものになりつつあります。
だからこそ、年に一度の風物詩のように、あえて「デザイン」を意識的に知覚する機会ということも、Designshipという場が持つ価値の一つであると感じました。
メンバー募集のお知らせ
今月の「まとめ」はいかがでしたでしょうか?今月も新しい出来事やリリースが盛りだくさんでした。こちらの記事はグッドパッチのデザイントレーニングチーム「hatch」のメンバーで共同執筆しています。「hatch」では一緒に働くメンバーを募集しておりますので、ご興味がある方はぜひエントリーください!
