「本当に、デザインに関係するものは何でも楽しいんです。ビジュアルをつくるのも、課題を見つけて整理するのも、組織の戦略を考えるのも。自分のハートがワクワクするのは何なのか、私自身もそうですし、チームのみんなで大切にしていきたいです」

グッドパッチに中途入社し、プレイヤーからマネージャーへ、そして現在はディレクターとして30名以上のUIデザイナーが所属するチームを束ねる栃尾。

ディレクターとして、いちデザイナーとして、彼女が大切にしている「成果を追求する姿勢」と「自分自身のハートを揺さぶる琴線」について聞きました。

きっかけは勘違い?偶然の出会いからデザイナーの道へ

ーー栃尾さんはグッドパッチにはUIデザイナーとして中途入社されていますが、簡単にこれまでのキャリアを教えてください。

小さい頃から絵を描くのが大好きで。中学生の頃に、両親にペンタブレットを買ってもらってからは、平日も土日も朝から晩までパソコンの前にかじりついて、夢中でイラストを描く生活を送っていました。

進路を決める際に、漠然と「好きなことを仕事にできたらいいな」と考え、イラストもデザインも学べる神戸芸術工科大学のビジュアルデザイン学科に進学しました。そこで初めてデザインを体系的に学んだのですが、今振り返っても、あの頃に戻ってもいいと思うほど楽しい時間でした。

朝から晩まで制作に夢中になっているうちに、気が付けば就職活動が始まっていて。周りが次々と内定を獲得するなか、私はというと、進路に迷っていました。ちょこちょこと個人で受けていたイラストの仕事をフリーランスで続けるか、それともグラフィックデザイナーとして就職するか……。そんな悩みを抱えていた時、大学の先生が「イラストを描くのが得意なんだったら、ゲーム会社とかどう?」と、前職を紹介してくれたんです。

もともと猪突猛進タイプで考えるより、先に動いてしまうところがあるので「たしかに商業イラストも良いかもしれないな」「上京するのもアリかもな」と、ひとまず面接を受けに行きました。

ここからが面白いんですが、その会社の2次面接で面接官の方に「なんでWebデザイナーになろうと思ったの?」と質問されて……。てっきりゲームのイラストを描く仕事だと思っていたら、Webデザイナーの選考を受けていたんですよね(笑)。

どうしようと内心思いながらも「すみません、そもそもWebデザインって何ですか?」というところから面接の中で教えてもらい、ありがたいことに面接官の方も「イラスト志望と聞いてるけど、グラフィックもすごく良いよ。だから、Webデザイナーとして仕事をしてみない?」と言ってくれたんです。それがきっかけで私のデザイナーとしてのキャリアが始まりました。

エントリー理由は「一番になりたい」

ーーWebデザイナーとしてキャリアをスタートされたとのこと。そこからどのような経緯でグッドパッチに入社したのでしょうか?

前職の会社では、Webデザインの仕事を中心に、新規事業のアプリのUIやグラフィック、サービスロゴを制作するなど、本当にいろいろな経験を積ませてもらいました。

一方で、当時携わっていた仕事の多くは、すでに企画や方針が決まった後のフェーズであることがほとんどでした。業務の中で「もっとこうしたら良くなるのにな」と思っても、納期の厳しさや、クライアントと直接コミュニケーションを取れない体制などの事情もあって、なかなか提案まで踏み込めず、「本質的な課題に向き合いたい」という気持ちを捨てきれなかったこともあり、会社を辞めて転職活動を始めました。

グッドパッチのことは知らなかったのですが、デザイナーの友人から「もし私が転職するなら、今一番デザインに力を入れているこの会社に入ってみたい」と聞いて。

私はとにかくどんな場所でも一番になりたいというタイプなので、「グッドパッチがどんなものか見てやろうじゃないか」くらいの生意気な気持ちでエントリーを送りました(笑)。

実際の選考では、現場のデザイナーが面接官として出てきてくれて、デザインについて、とても深く対話ができたことが好印象でした。ポートフォリオのプレゼン時にも「これ面白いね」「そうなんですよ!ここにこだわってて!」というような感じで、楽しく話せたことを覚えています。

自分のデザインへのこだわりを楽しんで聞いてくれるだけでなく、これだけデザインについて深く会話ができる会社は仕事もきっと面白いんだろうなと感じ、最終的にグッドパッチへの入社を決めました。

AI時代の今、求められることは「いかにファンを生み出すか」

ーーグッドパッチに入社してから7年が経ちますが、現在はどんな仕事をしていますか?

現在は、クライアントワーク部門でUIデザイナーチームのディレクターを務めています。職種としてはクリエイティブディレクター兼UIデザイナーと名乗ることが多いです。

数年前までは、「使いやすさ」や「分かりやすさ」といったプロダクトの機能やUIの洗練度、いわゆるUIの正しさにずっと向き合ってきました。でも最近は、それだけでは差別化が難しいなと思う場面が増えてきました。プロダクトとしての完成度だけじゃなく、サービス全体の体験価値や、ブランドとしての「好き」や「共感」がより重視される時代になってきていると感じています。

さらに、生成AIの進化によって、誰でも一定水準のUIやUXのアウトプットが作れるようになりつつある今、デザイナーに求められるのは「いかにファンを生むか」という視点だと思うんです。

だからこそ、これからはクライアントの想いに寄り添いながら、サービスや体験の文脈ごとに最適なデザインをし、愛されるブランドをつくっていきたいと思うようになりました。

そう考えると、自分自身の仕事の枠組みを変えていかなければと思い、今はクリエイティブディレクターと名乗って仕事をしています。戦略から関わることで、より本質的な課題に対してデザインで応えていけるようになりたいと思ったからです。

ーーUIデザイナーからクリエイティブディレクターに、そしてプレイヤーからディレクターに。これまでのグッドパッチのキャリアを振り返っていかがですか?

毎日、本当に楽しいです。私はその時々の「やりたいこと」「達成したいこと」にあわせて、自分のキャリアを柔軟に変えてきたのですが、振り返ってみても、いいステップを踏んでこれたなと感じています。

グッドパッチに入社した当初は、UIデザイナーとしての実務経験がほとんどなかったので、まずは「メンバーの一員としてしっかり価値を出すこと」を一番に考えていました。デザインの意図やロジックを言語化して、それをどう伝えるか。どんな資料でどう届けるかを常に考えて、実践してきました。

その後、新しい挑戦がしたいと思い始めたタイミングでマネージャーになりました。プレイヤーからマネージャーになるのは、ほとんど別の仕事みたいで最初はすごく大変でしたが、今は自分なりのやり方を見つけて成果を出すことにコミットしています。

そうしてチームメンバーと共に試行錯誤を重ねる中で、「Most Valuable Manager」という社内表彰を去年いただくことができました。これは決して私一人の力ではなく、「そのマネージャーが率いるチームの力が評価された証」だと思っています。

というのも私がしていたことは、方向を示したり背中を押したりすることくらいで、実際に成果を生み出すことができたのは、メンバー一人ひとりの努力と協力があったからこそ。だからこそこの賞を「そのマネージャーが率いるチームの力が評価された証」だと受け取っていますし、そしてマネージャーの次のステップとして「この成功体験をUIデザインチーム全体に還元することで、みんなが輝く瞬間を増やしたい」と思い、現在はディレクターを務めています。

ただ、「かっこいいプロダクトやサービスを作るデザイナーでもあり続けたい」という軸は、今でもずっと自分の中にあります。役割が変わっても、その想いはずっと変わりません。だからこそ、今でも社内クリエイティブには率先して手をあげますし、コンペにも積極的に参加しています。そのような姿勢で携わった自社のUIデザイナー採用サイトでは「Studio Design Award 2024」にノミネートいただくこともでき、むしろ、メンバーの頃よりもずっと手を動かしているかもしれないです(笑)。

Most Valuable Managerを受賞した栃尾(写真右)と上長の石井(左)
半期に1度、最も活躍したマネージャーに贈られる「Most Valuable Manager」。入社以降、プレイヤーとマネージャーの両輪で組織を牽引してきた栃尾は、実績公開、売上目標の達成、デザインクオリティ向上など、多方面で圧倒的な成果を生み出し、今回で2度目の受賞を果たしました。

ーーUIデザイナーチームを統括するディレクターとして、メンバーに特に伝えていることはありますか?

チームメンバーには「成果」にこだわってほしいと伝えています。

クリエイティブ職である以上、数字だけを追うのは楽しくありませんし、そこに固執したくありません。なので、これは決して勝ち負けに固執してほしいということではなく、ベースにあるのは「同じデザイナーから憧れられる存在であり続けてほしい」という想いです。

「仕事は楽しければ十分じゃない?」「やりたいことだけやればいいんじゃない?」と思う方もいるかもしれません。もちろん私も働く上で「楽しさ」はとても大事だと思っていますが、それだけでは自身が「やりたい」と思っていることが実際に「やれる」状態にまでつながりにくいのも事実だと思っています。

私自身の実体験としても、成果を評価してもらったことでサービスブランディング領域の立ち上げやクリエイティブ予算の確保、カンファレンスでの登壇など、ものづくりをしていく上でのさまざまなチャンスを得ることができました。

つまり「やってみたい」と思っていることを「やりたい」で終わらせず、「やれる」に近づけるためのサポート役として「成果」があるのかなと思っています。

事業として売上などの数字は追わなければなりませんが、UIデザインチームとしてまずこだわりたい成果は、まず質の高いアウトプットを生み出すこと。そして、それを適切に発信して市場からの評価を得ることです。

どれだけプロジェクト内で頑張っていても、どれだけそのプロジェクトで売り上げを稼げていても、実績として世に示せなければ、次の面白い仕事にはつながりにくいものです。だからこそ質を高め、その魅力を正しく伝えることを、メンバーには意識してほしいと伝えています。

心の琴線に触れるような、愛される体験をデザインする

ーー栃尾さん自身がデザイナーとして大切にしていることはありますか?

グッドパッチのビジョンに「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」という言葉があります。振り返ってみると、私がこの会社で7年間デザインを続けてこられたのは、この言葉にずっと共感してきたからだと思います。

私にとっての「ハートを揺さぶるデザイン」とは、愛される体験をつくることです。ただ見た目がきれいだったり、使いやすいだけでは、人の心には残りません。「なんか好きだな」「これ、いいかも」と、思わず気持ちが動いてしまうような体験こそが、ハートを揺さぶるデザインだと思っています。

そして、こうしたデザインには、必ずと言っていいほど、つくり手の気持ちが込められています。例えばフォントの選び方や、ボタンの形、動き、色——その一つひとつに、「こうしたら、きっと使う人が喜んでくれるんじゃないか」という思いが詰まっているはずです。そんな小さなこだわりの積み重ねが、ただの「機能」を「体験」へと変えていくのだと思います。

だからこそ、私はチームのメンバーにもよく問いかけています。「今作っているデザインは、心から気に入ってる?」「まずは自分のハートが揺さぶられるデザインを作ってみようよ」と。

自分自身が感動できないデザインで、誰かの心を揺さぶることなんてできません。だからこそ、まずは自分自身がそのデザインの一番のファンになることが大事だと感じています。

どんなに機能的で完成度が高いプロダクトでも、きっとこれは変わりません。だから私はこれからも、人の心にそっと触れるような体験をデザインしていきたいと思います。

ーー最後に栃尾さんの今後の目標を教えてください。

「ビッグになりたい」って周りには言っています(笑)。それは名前だけ売れてる人というわけではなくて、「あのデザインはあの人が作ったんだ」というような何かを生み出せれたらいいなと思ってます。

本当にデザインは何でも楽しいんですよね。自分のハートがワクワクするのは何なのか、私自身もそうですし、チームのみんなで大切にしていきたいです。

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