リアルとデジタルが混在するサービスの型

この記事は、UI Crunch#14「スマートフォンを超えた体験を創る。導くUI」に登壇した際に発表した内容から、サービスの型にフォーカスした記事となります。

昨今立ち上がるサービスでは、リアルだけで完結したりデジタルだけで完結するのではなく、リアルとデジタルが混在するようなサービスが増えてきています。

そんなサービスをデザインするとき、我々UXデザイナーやサービスデザイナーは、どのようなことを足がかりにしていけば良いのでしょうか?

本記事では、普段クライアントワークを通じて様々なサービスやプロダクトの立ち上げに関わっている私が、リアルとデジタルが混在するサービスの型を紹介します。

サービスの型を理解する

リアルとデジタルが混在するサービスでは、リアルとデジタルの役割や関連の性質から、大きく分けると以下の3パターンに分類することができます。

  1. リレー型
  2. 混在・同期型
  3. 制約型

それぞれの特徴をここから紐解いていきたいと思います。

リレー型

リレー型は、オンラインとオフラインの役割がはっきりと分かれていて、順番に実行されるという特徴があります。

わかりやすいところでいうと、Amazonなどのオンラインで購入したものがオフラインで届くといった形式がこれに当たります。
また、最近話題のサービスですと、「かわいいが届く」お花の定期便で有名なFlowerさんもこの型に当たります。

Amazonが即日で届くなどの 「届くこと」自体の機能的価値を提供しているのに対して、Flowerさんのようなサービスでは 「モノが届いた後」の情緒的価値が最大化するような体験のデザインがされています。

オンラインとオフラインがはっきりと分かれているということは、そこに必ず時間的なラグが発生します。
その時間的なラグを、機能的価値によって最大化するか、情緒的価値によって最大化するか、その観点の違いで同じリレー型でも得られる体験に大きな差が生まれます。

混在・同期型

混在・同期型は、簡単にいうとオンラインとオフラインが相互に同期された互いの情報を参照し合うという特徴があります。

最もこの特徴がわかりやすいのが、Uberです。
Uberでは、ユーザーがリアルタイムにタクシーの位置を、タクシー側もユーザーの位置をアプリを通じて参照し合うことができます。
この技術によって、Uberでは配車をリクエストする際にアプリ側から GPS 機能を利用して最適な乗車場所を提示し、ユーザーとタクシーがその位置に向かって同時に移動しても配車完了できるといった体験を提供しています。

オンラインとオフラインが相互に同期された情報を参照し合うことで、このようなリアルタイムに状況が変化する対象が2つ以上ある場合でも全てのユーザーにとってストレスのない気持ちの良い体験を提供することを可能にしています。

また最近では、日本のZ世代の間で流行っているZenlyのような位置情報共有サービスもこれに当たりますし、TileMAMORIOのような落し物防止&失くし物探しサービスなども、この派生にあたるのではないでしょうか。

制約型

最後に、制約型はリアルな場にオンラインに接続されたデバイスが配置されることが多いという特徴があります。
その場に配置されたデバイスをユーザーが操作することも多く、Payment系のサービスやデジタル・サイネージ、意外なところでいうとAppleが提供するAirdropなどもこの制約型に当たります。

この型は主に「場所」の制約があるために、ユーザーにはその場で達成したい目的があることが多く、その目的を直接的に解決する方法か、その目的を達成する過程に必ず行わなければならない方法のいずれかをサービスとして提供する場合が多いです。

制約型の場合、上記の通り操作できる場所が決まっていることが多いため、その場で行動を完結させる必要があるのですが、想定していなかったエラーなどユーザーだけでは問題を解決できないこと起こりえるという特徴もあります。

ですので、制約型のサービスをデザインするときは、ユーザーがなぜリアルな場に足を運ぶのかを突き詰め、デジタルの中だけの体験だけではなく、それを取り巻くリアルな場のオペレーションなども含めた全ての体験を対象に、いかなる状況においてもユーザーの目的達成ができるようなデザインをしていく必要があります。

私が担当した東急ハンズのセミセルフレジの事例もこれにあたりますので、ご興味ある方は是非左記のリンクからプロセスの詳細などご覧になってください。

アフターデジタルな時代の到来

ここまでで語ったサービスの型は、現在のリアルとデジタルを扱うサービスにおける考え方です。
では、これから先のよりデジタルに主軸が移っていく未来において、どのような考え方が必要なのでしょうか?

その回答の一つが、今年の3月に発売された「アフターデジタル – オフラインのない時代に生き残る」という書籍のなかで大きく語られている、アフターデジタルという概念です。

これまではリアルを主軸としてその拡張にデジタルが使われていました。
ただ、殆どの人がスマホなどのデジタルデバイスによってデジタルとの接点を常に持っている現代において、デジタルを主軸においた体験の拡張をリアル側に持たせる。そんなオンラインとオフラインの関係性がこれまでと逆になる時代がすぐそこまで来ています。

そこで重要なのが、OMO(Online Marges with Offline)という概念です。

OMO(Online Marges with Offline)

OMO(Online Merges with Offline)とは、オンラインとオフラインの境界が融けあい一体のものであると考え、ユーザー体験の観点からすべてのタッチポイントにその考え方を適応し再構築していく概念のことを指します。

中国では、すでに盒馬鮮生(ファーマーションシェン)や超級物種(チャオジーウージョン)のようなこの概念を体現するサービスがリリースされており、OMOが実社会に実装されつつあります。

まとめ

上記のような少し先に訪れるであろう時代に社会を押し上げるためにも、まずは全てのサービスにおいて、ユーザーの体験を最大化させるためにそれぞれの型に応じた方法でサービスをデザインし、社会に実装していくことが重要です。

サービスをデザインすることは、目的ではなく手段であると私は考えています。
ユーザーが達成したい本質的な目的を明らかにし、その目的を一番達成しやすい環境をリアルとデジタルを問わず整え、達成までサポートすることが我々サービスデザイナーが担わなければいけない責務だとも感じています。

これから皆さんがサービスをデザインする際は、まずサービスの型を意識し、ユーザーの本質的な目的とその型が達成できるゴールが整合しているかどうかを見極めるところから始めるのはいかがでしょうか?


Eyecatch Graphic: @mnmrtkm

ABOUTこの記事をかいた人

國光 俊樹

UXデザイナー/プロジェクトマネージャー。クライアントワークをメインに担当し、新規事業案件やリニューアル案件など様々な案件に携わる。 ビジネス視点とユーザー視点を行き来しながら、デジタルだけに閉じないリアルな場も含めた全体の体験設計を得意とする。 高専卒で桑沢卒。グラフィック・エディトリアルデザイナー→WEBデザイナー→UXデザイナーという特殊経歴。
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