思想でプロダクトを磨く。DELISH KITCHENデザインチームの挑戦
「動画を通じてもっと楽しく、もっと充実した毎日に」をミッションに、生活を豊かにするコンテンツを発信する株式会社エブリーは、UX(ユーザーエクスペリエンス)を事業成長のキーとなる要素の一つとして重視しています。Goodpatchは、2019年8月より「だれでもおいしく簡単に作れるレシピ」を毎日配信するレシピ動画メディアDELISH KITCHENのプロダクト改善をパートナーとしてお手伝いしています。これまでのチームの取り組みや、実際にどのような面で変化を感じているのか、プロジェクトメンバーのインタビューをお届けします。
プロジェクトの歩みについて、エブリーさんのオウンドメディアevery.thingでもインタビューが公開中です。こちらも合わせてぜひご覧ください!
【前編】『DELISH KITCHEN』らしさをデザインする。サービスを通して届けたい思いをメンバー全員の共通価値観に
目次
プロダクト改善の中で組織支援にも並走
堀田さん
エブリーでは、DELISH KITCHENをはじめ事業を成長させていくために次の3つを重視しています。それがコンテンツ、テクノロジー、そしてUXです。
DELISH KITCHENは、食に関わる全てをサポートしていくプロダクトを目指しています。アプリやSNSでレシピを探すだけでなく、買い物をし実際に料理を作り、お気に入りのレシピをまた次回作ってもらうところまで、全てのシーンで便利に使ってもらいたいと思っています。
そのためにオンライン、オフラインそれぞれでどのようにユーザー体験を作っていくかが重要なフェーズで、アプリを起点としたユーザー体験から一緒に考えられるパートナーさんを探していました。
また、DELISH KITCHENが提供する機能が多様化していくことで、デザイン業務が増えてきていました。デザインチームを立ち上げて対応していく必要があったため、組織化のところにも並走してくれたらなおいいな、とも思っていました。
参考記事:
エブリーCEO 吉田さんがお話ししている、DELISH KITCHEN急成長のカギとこれからのグロース戦略について
神谷さん
これまでにも、食に関する「レシピを探す」「買う」「料理をつくる」などの行動をサポートする機能は持っていましたが、それをユーザーに伝えていく、一連の流れとしてユーザー体験に落とし込むところまでデザインし切れていないと感じていました。そこで、アプリデザインの経験が豊富かつスタートアップとの協業も多いGoodpatchの皆さんにご相談しました。
角野
DELISH KITCHENについては、これまでアプリ基盤のサービスというイメージを強く持っていたのですが、アプリを中心としてECやOMO(Online Merges (with) Offline)などのビジネスもあり、とても面白いなと感じました。事業領域の広さは、初期調査をするフェーズでビジネスモデルを描いたことで理解できました。
チームに共通認識を築き、思想から設計する
角野
プロジェクト開始後の1ヶ月は、エグゼクティブインタビューやユーザーインタビュー、現状のアプリの構造設計を整理していきました。最初はデザイナーチームの中でDELISH KITCHENというブランドが言語化しきれていない状態だったので、エグゼクティブインタビューを中心に、エブリーという会社そのものやDELISH KITCHENという事業が大切にしていることを言語化して、チームに共通認識をつくることからはじめました。
神谷さん
私はGoodpatchに対して、目に見える部分のデザインに強いというイメージを持っていたのですが、実際はいきなりアウトプットが出てくるのではなく、かなり事業の上段からUIに落ちていくんだなと。このフェーズはとても印象的でした。
実際のユーザーさんにインタビューした上でのコアペルソナの定義や、代表吉田をはじめとする経営層へのエグゼクティブインタビューなど、情報の整理のされ方も想像以上で、勉強になりました。
実際のアウトプットが出てくるまで、想像よりも時間はかかりましたが、そのぶん思想の設計がしっかりされていたので、チームで同じ認識を持ってプロダクトを作ることに向かえたと思います。
角野
プロジェクト初期はワークショップが多かったですよね。キックオフもそうだし、「DELISH KITCHENらしさ」を言語化するワークショップは3回に渡って開催しました。
中野
「DELISH KITCHENらしさ」を言語化したものを、デザイン原則という形でまとめていきました。エブリーのデザインチームがすぐ制作物に落とし込めることを意識して、要素ごとに言葉とグラフィックで定義したデザイン原則になっています。
共通認識を持つことの重要性を感じてもらえるように、デザイン原則を立てるまでの過程はワークショップ形式にしたりと、特に実際にモノを制作する現場にとってオープンにすることを心がけました。
中野
他にはデザインガイドラインを提案し、堀田さんと一緒に進めていきました。同時に DELISH KITCHENのデザインがどんなフローで進んでいるのか、デザインをエンジニアさんに渡すコミュニケーションフローについても、今まで私自身がやってきたことと照らし合わせて改善していきました。
角野
ガイドラインの策定については、エブリーのエンジニアの皆さんにどう受け止められるか少し不安に思っていましたが、デザイン面と技術面それぞれで負債を返済しよう、やってみようと前向きな姿勢で向き合ってくれたので、とても進めやすかったです。
堀田さん
峰村さんには、100種類くらいあったDELISH KITCHENのアイコンガイドライン策定からリデザインを担当整備してもらいましたよね。ただデザインを整えていくだけではなくて、そのあとチームで運用できることを考慮してくれていたところがすごくよかった。
峰村
アイコンのリデザインに関しては、リデザイン前のアイコンの洗い出しからそれがどこに使われているのかを整理することから始めました。
アイコンの洗い出しが終わると100種類以上存在していたことが判明したので、それらのアイコンが適切なメタファーとして存在できるようなガイドラインを策定するために、リデザインの方針、ガイドライン適宜の方針を言語化しまとめました。これをしたことによってリデザインの方針も共通の認識を持って進めることができたかと思います。
全てのアイコンを新しいものに変えることになるので、最新の注意を払ったことはやはりブランドとしてのイメージを損なわず、「DELISH KITCHENらしさ」をアイコンの力でより引き上げることです。一つ一つ見れば小さいものですが、サービスの中に100個使われているとなると、それは大きな「らしさ」を担うことになります。一つのアイコンでも、たくさんのサービスのアイコンをみながら数十種類制作して、チームで議論しながら現在のアイコンを作り上げていったのが印象的でした。
データ×インタビューで機能改善を加速
角野
僕がこのプロジェクトを通してインプットとして大きかったのは、エグゼクティブインタ ビューです。DELISH KITCHENとはそもそもどういう想いが込められてたサービスなのか、代表の吉田さんなどの生の声が入ってきたことがよかった。
加藤さん
僕らも改めて経営陣の言葉を聞くことで多くの発見がありました。
神谷さん
あとはユーザーインタビューも印象的でした。ユーザーインタビューなどの調査はマーケティングチームに主導してもらい、60名近くのユーザーさんにインタビューさせていただきました。
角野
エブリーのマーケティングチームの皆さんがユーザーインタビューの調整を始めていて、ちょうどよくタイミングが重なりましたよね。インタビューの場にはデザイナー、エンジニア、マーケターなどが参加し、ユーザーさんの生の声を集めていきました。
神谷さん
インタビューをしていて思ったのは、ユーザーさんがアプリをどう使っているのかはデータだけだと見えないということです。DELISH KITCHENでは定点調査も行っていて、サービスについてのデータはたくさんあります。ですが、DELISH KITCHENの「お気に入り」機能ひとつとっても、ユーザーさんによって使い方が何通りもあるんですよね。「何回も作りたい」「いつか作りたい」「厳選したレシピだけストックしたい」など、ひとつの機能でも使い方はそれぞれ違うんだなと気づけたことが印象的でした。
すでにあるけど、気づかれていない機能があることもインタビューで分かりました。毎日DELISH KITCHENを使ってくれているヘビーユーザーさんであっても「こんな機能あったんですね」と言われて。でも使ってみてもらうと「すごく便利」と言っていただけるので、どう改善してユーザー体験に落とし込むか、参考になる情報をたくさん吸い上げることができました。
エブリーのデザインチームに定着した文化
加藤さん
Goodpatchの皆さんと一緒に働くようになって、初めて付箋を使ったワークを経験しまし た。KPTやレビュー会など、これまでやる文化がなかったため、最初は少し抵抗感もありましたが着実に文化が根付いてきているなと感じます。
角野
KPTはかなり定着しましたよね。初期はモニターに「Keepはこんなことを書きましょう」と映して進めていましたが、今ではもう加藤さんやエブリーのみなさんがKPT後のまとめなども率先して進めてくれるようになっています。
加藤さん
今まではなかったけど取り入れた文化は、今後DELISH KITCHEN以外の事業が立ち上がるときにも再現性を持って応用できると思います。
角野
あと、プロトタイピングもすごい勢いで浸透していますよね。DELISH KITCHENチームのProttは100プロジェクトくらい入っていて、そこまでのプロジェクト数は見たことがないんです(笑)。チームでプロトタイプを元に議論して、同じものを見てフィードバックし合い、プロトタイピングを重ねていく文化が定着したのはすごい。
神谷さん
Prottは遷移もつけられるので、社内ミーティングでもかなり重宝しています。Prottなしでの仕事はもう考えられないですね。
「自走する組織」をつくっていく
加藤さん
Goodpatchのことはブログを読んでいて昔から知っていたのですが、プロジェクトが始まるまで、社内のノウハウや今まで培ってきたデザイン力で新しいデザインをどんどん生み出しているという印象を持っていました。でも、実際に一緒に働いてみると、ブログでも紹介されている手法をものすごく丁寧に、一緒に積み重ねるチームなんだな、という印象に変わりました。情報の公開、共有の方法も、今後僕らが自走していく組織を作っていくために参考にしたいと思っています。
角野
自走できる組織をつくることが僕たちのひとつのゴールなので、そこは常に意識していま す。なので、例えば日頃のファシリテーションは加藤さんにお任せしていたりします。
加藤さん
以前よりは土壌ができてきた感覚は持てていますが、目指している組織にはまだまだ足りないことがたくさんあります。引き続きGoodpatchの皆さんの力をお借りしたいです(笑)。
中野
これまで私が経験してきたプロジェクトでは、KPTなどはGoodpatchメンバーだけでやる場面もあったのですが、エブリーさんとは本当にいつも一緒にワークしています。ひとつのチームとして、それぞれが作っているものをレビューし合う感覚です。
峰村
僕はこのプロジェクトに途中から加わったのですが、入ってすぐ「もういいチームじゃん!」と感じました。一緒にワークする、共通言語を持つなどの文化ができていた。デザイ ナー同士で雑談するSlackチャンネルだったり、Pinterestで気になったデザインをシェアするボードだったり、自発的にいいチーム、いいプロダクトをつくっていく環境があるので、 僕もそこにどんどん参加していってます。
事業と個人、両方を伸ばしていける環境
角野
エブリーさんは複数のメディアを持っていることが特徴なので、DELISH KITCHENのデザ インチームとしての型や文化ができたら、別の事業にもナレッジを転用していけると理想的ですよね。
神谷さん
そうですね。デザインチームはレビューフローやKPTなど、チームとしての型が整ってきているので、ここで学んだことをエンジニア、PdMなどにも展開していきたい です。
堀田さん
逆に、他のメディアでやっていることをDELISH KITCHENで取り入れることもできると 思っています。今後デザインチームはオンライン、オフラインに関わらず幅広い領域でユーザー体験とインターフェースを磨きこんでいく必要があります。
デザイナーが複数の領域に関わっていく中で、事業の成長と個人の成長、両方を伸ばしていけるようなデザインチームを作っていきたいです。
アプリを起点にオンライン・オフライン両方の体験を磨き込むDELISH KITCHENチームの 取り組みについてのインタビューをお届けしました。エブリーで事業の成長、個人の成長を伸ばしていきたい方はぜひこちらもご覧くださいね。
また、Goodpatchでは無料相談会を毎月開催しています。
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