不確実な現代において、新規事業の必要性は高まり続け、企業では社内で事業アイデアを募る動きも多く見受けられます。ただ、立案する社員やそのチームマネージャーからは「どのように事業を立案すればいいのかわからない」「熱のこもった事業プランがつくりだせない」といった声も多くあります。
今回は、Goodpatchが提供するイントレプレナー(社内起業家)創出支援プログラム「SANDBOX」について、プロセスや事例を踏まえてご紹介します。
目次
SANDBOXとは?
SANDBOXは、社員の「好き」を引き出しアイデアを形にする風土を醸成するイントレプレナー創出支援プログラムです。新規事業創出の超初期段階にフォーカスし、事業立案やメンバーの育成をサポートします。
社員の強い動機を表出することにより、主体的にアイデアを実現するカルチャーを醸成し、新規事業の成功確率を高めることを目指しています。
こんな方におすすめ
- 「新規事業創出にモチベーション高く挑む人や組織を創りたい」新規事業マネージャー
- 「想いのこもった尖った事業プランを創出したい」新規事業担当者
- 「新しい事をはじめやすい風土・文化を育みたい」DX人材育成・組織変革担当者 など
みなさんが抱えるこれらの課題を解決すべく生まれたのが、社員の「好き」を起点に事業プランを形にするプログラム「SANDBOX」です。ここからは、なぜ事業に「好き」が必要なのかと、SANDBOXの支援プロセスを詳しくお届けいたします!
なぜ新規事業に「好き」が大事なのか
数多のサービスが世に出てきている昨今、利用者の注目を引き、愛されるサービスになるためには、ユーザーの琴線に触れ共感を呼ぶものでなければなりません。ですが、論理的には良さそうだけどどこかで見たことのあるようなもの、あまりワクワクしないもの、そんなプランばかりが出てきてしまっていないでしょうか。
社員の皆さんは、なかなか良いアイデアが形にならない焦りや、既存事業部との軋轢にも負けず、日々本当に一生懸命に調査・検討されています。ただ、本心から「自分は何をしたいのか」を描けている企画者はあまり多くありません。そして企業は、事業アイデア創出のプロセスを、個人の経験・センスだけに任せてしまってはいないでしょうか。
以下の図は、もしかしたらまだあるかもしれない、企業での新規事業プランニングの負のサイクルです。
社員がどうやってアイデアを出せばいいか分からないのに、周囲のバックアップもない。これでは良いアイデアが生まれません。
そもそも自分が心からやりたいことを反映していないプランなど、形にならないし、続けていけないのです。
新規事業に「好き」が大事な理由は大きく3つです。
①数多の障壁を乗り越えるため
一つは、新規事業を形にして軌道に乗せるための数多の障壁を乗り越えるために、自分のモチベーション、原動力を掻き立てるエネルギー(「自分のやりたいこと」「好き」)が重要だからです。
②尖ったアイデアを生み出すため
もう一つは、尖ったアイデアを生み出すためです。
「自分は何がしたいのか?」
その人の好き(本心)が描けていなければ、尖ったアイデアを生み出すことはできません。
自分の好きなこと・愛することを見つけることが、仕事のやりがいや偉業をやり抜くことにいかに大切であるか、スタンフォード大学でのスティーブ・ジョブズのスピーチでも語られています。
③ユーザーに支持されるモノ・コトを作るため
最後に、ユーザーに支持されるモノ・コトを作るためです。日本企業にも、インパクトのあるイノベーションを起こしている企業はあります。それらの企業が大事にしていることは何でしょうか?
それはやはり、そのサービスや商品を生み出したいと思う人の「強い想い(=好き)」だと言えます。
これからの社会で、ユーザーに支持されるモノ・コトを作っていくためには、0から生み出す部分で「作り手の強い想い」を乗せられるようにすることが大事です。
SANDBOXでは、この強い「好き」を表出させて具体化し、組織(チーム)として支えられるようなプロセスを用いて支援しています。
導入企業様の紹介
SANDBOXを自社の事業創出・人材育成プログラムに導入いただいた3社の事例をご紹介します。
株式会社バンダイナムコエンターテインメント さま
<導入ケース>
オンライン開催・ワークショップ形式・3日間(計9時間)・宿題あり
自社で運営されている事業創造チャレンジプログラムにおける、起案者のアイデア創出支援の取り組みとして、SANDBOXを導入いただきました。
60名近い方にご参加いただき、通算3日間でのオンラインワークを通じて企画素案を作成し、個人のアイデア創出を支援いたしました。
<課題>
個人の想い(=好き)を価値ある企画アイデアに昇華していくための機会を提供したい
<狙い>
個人の熱い想い「好き」から生み出されたアイデアを、自由闊達に意見を言い合える環境でブラッシュアップする事で、より魅力的・具体的に共創し、事業企画の骨子を作り上げる。
<ご担当者からのメッセージ>
当社で実施している公募型の新規事業創出チャレンジプログラムは4年目を迎え、特に20代、30代の若手社員のエントリーを増やすことが課題でした。
自分のアイデアをしっかりした企画に纏める事の経験が少ない人が、想いはあるのにチャレンジする事に躊躇してしまう事がないようにフォローしたいと考えました。SANDBOXの自分の「好き」を見つめ直すというプロセスは新鮮であり、仲間と意見を交わしながらアイデアをブラッシュアップすることも参加者が自分の企画に自信をもつ事ができる価値ある体験となりました。
結果として、SANDBOXを経て若手社員のエントリーも増加し、「今回の経験を業務で活かしたい」という声も多くの社員から聞けたことは、個人のスキルアップにも繋がってよかったと思います。
株式会社パソナグループ さま
<導入ケース>
対面開催・ワークショップ形式・2日間(計8時間)・宿題あり
DX推進人材の育成を目指すプログラム「リスキリング・イニシアティブ」において、ビジネスアイデア創出・チームビルディングを目的としてSANDBOXを導入いただきました。
デジタルサービスのデザインプロセス(デザインプロセスワークショップ)、プロジェクトマネジメント・ビジネスプランニングのワークショップを複合プログラムとして実施することで、「好き」を起点としたアイデアをビジネスプランとして形にしていくプロセスを体験いただき、チームのアイデア創出を支援いたしました。
<課題>
社会課題を解決するための新たな価値提案につながるアイデアを創出したい
<狙い>
価値観の近いメンバーでワークショップのチームを組成し、メンバーのモチベーションを高め主体性を持って実行していけるようなアイデアの創出を狙う
<ご担当者からのメッセージ>
リスキリング・イニシアティブは、DX推進人材を養成するためのプログラムで2021年12月現在、2期生の研修を実施しています。これまでのパソナグループの歴史、実績、強みに加え、DX時代に求められる新たなスキルを習得し、デジタルのフィールドにおいても「人を活かす」機会を創り出していけるよう、これまでの業務経験や知識に加え、新たな職業能力の再開発に取り組んでいます。
その中で、サービス開発の一連のプロセスを体感するためSANDBOXを活用させていただきました。参加者にとっては、はじめて学ぶことも多く「やってみると難しい」と悩むシーンもありましたが、自分の関心事をベースとしたアイディア発想と世の中に通用するプランに昇華させるためのプロセスと技術を学ぶ、大変よい機会になりました。この経験を活かし、提供価値の向上にひたむきに取り組んで参ります。
東京海上ディーアール株式会社 さま
<実施ケース>
オンライン開催・セミナー形式
上記2社とは異なり、社内の新規事業プログラムにおける社員向けコンテンツとして、新規事業を「好き」から作ることの価値と事業の芽が出た後のデザインプロセスについて、セミナー形式にてお話をさせていただきました。
<課題>
新規事業社内公募制度へのエントリー数向上
<狙い>
アイデアの種の生み出し方を知り、エントリーの心理的ハードルを下げ挑戦しやくする
<ご担当者からのメッセージ>
今回のセミナーをやってみて、想像以上に社員のモチベーションや意識の変化が生まれました。
セミナー受講後、私が配信していた部屋にきて、セミナーで芽生えた想いを30分程も語ってくれる社員もいました。また、その後実施した新規事業社内公募制度に関するイベントなども出席率が上がり、メールへの反応や私への相談件数も増えました。応募数の向上もそうなのですが、「新しいことに皆で挑戦しよう。新しいことは楽しいんだよ」という考えをより一層社内に伝えることがセミナーの目的でした。当社はリスクに関する専門家集団であり、仕事柄堅実な考え方になることも多いですが、「ワクワクするテーマを考えましょう」という自分ごとにした発想ができる雰囲気がセミナーを通して強まったと思います。
今後はさらに意見交換ができる時間やコンテンツがあるとさらに効果が期待できそうです。
プロセスのご紹介
「好き」から事業アイデアを形にしていくために大切なことはこの2つです。
「自分の好きの探求と自己理解」
「想いを伝え、理解・共感してくれる仲間を作ること」
SANDBOXはこの2つのポイントを押さえ、想いのある事業アイデアを生み出すためのプログラムとしてデザインされています。
そのプロセスを4つのステップでご説明させていただきます。
①自分の「好き」を表出させる
思うがままに、自分の「好き」を書き出してもらいます。やり慣れていない人のために用意した「『好き』を深ぼる10の問い」を使い、自分に向き合いながら、自分を形作る「好き」を表出させていきます。
②「好き」なもの・ことにまつわる要素を連想する
あなたが、ある対象を好きだと感じる要素(特徴、効果効能、感覚、性格など)を自由に連想していきます。
③「好き」から生まれた要素を使い掛け算をしまくる
手に入れた沢山の「好きの要素」を、任意のテーマとかけ合わせできるだけ多くのアイデアを考え出してみます。掛け合わせる対象としては、例えば2つ考えられます。
1つ目は「社会課題」
新しい事業を生み出す際、その企業が向き合っている社会へ新たな課題解決の方法を提案することが求められます。既存市場・既存顧客・既存商材だけに囚われていては、新しい価値は提供できません。自社が向き合うべき社会課題に、自分自身の「好き」を掛け合わせることで、従来の視点では出てきづらかった、自社がやるべきで個人として思い入れのある新しいアイデアが見えてきます。
2つ目は「会社の魅力」
エンターテインメント領域の企業など、明確な「不」の解決を事業としていない場合、「お客様が感じている自社の魅力」を抽出発散した内容を掛け合わせることで、強みのある既存領域周辺での独特なアイデアを出すことができるようになります。
④ラフアイデア、初期コンセプトに落とし込む
仲間とともに生み出した様々な案から光るアイデアを抜き出し、最低限のイメージが湧くラフアイデア・初期コンセプトに落とし込み、プログラム内外の人に当ててフィードバック(Good&More)をもらいます。
初期の事業企画アイデアを考える際に、どうしても独りよがりに考えてしまいがちですが、早期に他者の視点を入れることによって、見逃していた観点を補完できたり、さらに良いアイデアに改善することができます。
このプロセスの肝は、いろんなメンバーと相互にフィードバックしていく中で、近しいアイデアを持っている人同士で協力的な関係が出来上がることです。同じようなことを目指しているのに別々に考えているのはもったいないですよね。想いも推進力も2倍になり、事業実現の推進力に繋がります。
そしてこのプログラムの特徴と言えるのが、これら①から④のプロセスを、参加者同士で常に一緒にワークするところにあります。
これは、互いの「好き」を開示し合うことで、自分自身をさらに理解するとともに、互いに大切にするものの価値観が共有されるため、関係性が強化され話しやすい・協力しやすい関係性が自ずと出来上がっていきます。
そして、自分では気づきにくい他者から見た時の自分の「好き」の価値を気づかせてもらったり、1人では難しいアイデアの発散を他者の力を借りて進めることができます。
変革に必要なリーダーとファーストフォロワーについて語られる際によく用いられる、こちらの動画をご覧になったことはありますでしょうか。最初は突飛にも見える取り組みも、ファーストフォロワーがいるおかげで信憑性が生まれ、その他大勢の人たちが参加できるようになる様子が3分程度で理解できる動画です。
新しいアイデアは、1人で形にし広げていくことは難しいです。ただ、同じ楽しさを感じ一緒に踊ってくれる人が現れ波及し始めたら勝ちです。
これらのプロセスは、Goodpatchがこれまでのパートナーワークで得た事業創造に必要なエッセンスを活かし設計・ご提供させていただいております。
そして、以下の3つのポイントが、期待される効果としてあげられます。
自社でのこれまでの取り組みを変えていきたい、新しいアイデアを育む環境を作りたいとお考えの方はぜひご相談ください!
SANDBOXは、オフライン(対面)でのワークショップ開催が推奨ではありますが、オンラインでの実施も可能です。プログラム内で活用する「Strap」は、オンラインであっても自分の想いや考えをシンプルに視覚化・共有しディスカッションを活発にできるツールです。オンライン上のホワイトボードに自分のアイデアをまとめ、それをリアルタイムでも非同期でも共有・議論しブラッシュアップすることが可能です。
個人のアイデアを見える化しシェアできる新しい共創体験の実現に繋がります。
また、上記のワークショップを実施した2社のケースのように、自分たちのアイデアをコンセプトやビジネスプランとして作り上げて検証や開発の承認を得た際には、さらなるサービスの体験価値向上やビジネスプランの詳細化、そして実開発が求められます。Goodpatchでは新規事業開発の難所を乗り越えるためのプランニング、サービスやコンテンツの具体アイディエーションや検証、ユーザー体験価値を意識したエンジニアリングを実践できるメンバーが揃っています。
あなたのアイデアを社会に届けるために様々な形で伴走いたしますので、いつでもご相談下さい!
SANDBOXに関する資料ダウンロードはこちら:https://goodpatch.com/blog/download-sandbox
最後に
あらゆるモノやコトが溢れている現代において、「足りていないもの」はほぼありません。今求められているものは、生活を楽しくしたり付加価値を与えてくれるものです。
人々の琴線に触れる「新しい価値」は、人間の表層的な課題やニーズには現れてはこないものであり、人間が感じる「心底好きなもの」にこそあると考えています。
人を突き動かすエネルギーである「好き」を表出させ広げていくことが、社会にとっての「新しい価値を生み出すこと」につながるのです。
仕事だから、会社だから、遊んじゃいけないから…そんなバイアスは置いておきましょう。あなたの「好き」が世界中の好きに繋がり、社会を変えるキッカケを作ってくれるはずです!