アクセシビリティとは、身体的特徴・年齢・文化的背景・環境などにかかわらず、あらゆる人がアクセス可能(Access-Ability)な度合いを表す概念です。

民間企業を対象とした合理的配慮の義務化によって、ウェブにおけるアクセシビリティも注目を集めました。しかし、「実際に何をすればいいのか」「なぜ必要なのか」理解できていない方も多いのではないでしょうか。

本記事は、ウェブアクセシビリティの概要や必要性、対応するステップなどの基礎知識についてグッドパッチがまとめました。グッドパッチは2011年の創業以来、多くの企業に向けてソフトウェアUIデザインやUXデザインの支援をしてきた企業です。デザインファームにおけるパイオニアとしての立場から、ウェブアクセシビリティを解説していきます。

ウェブアクセシビリティは、法改正により注目が集まっています。いち早く対応するためにも、ぜひ参考にしてみてください。

監修者:株式会社グッドパッチ 大角 将輝、加藤 慎一朗

最終更新日:2024年11月28日

ウェブアクセシビリティとは

冒頭でも触れたように、アクセシビリティとは、身体的特徴・年齢・文化的背景・環境などにかかわらず、あらゆる人がアクセス可能(Access-Ability)な度合いを表す概念です。

一般的に「ウェブアクセシビリティが確保されている状態」とは、以下の項目を満たしている状態を指します。

・目が見えなくても情報が伝わること・操作できること
・キーボードだけで操作できること
・一部の色が区別できなくても得られる情報が欠けないこと
・音声コンテンツや動画コンテンツで、音声が聞こえなくても話している内容が分かること

出典:デジタル庁|ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック

現在では多くの人がスマートフォンやタブレット、パソコンなどのデバイスを使用し、ウェブサイトにアクセスして情報収集やサービス利用をしています。

ウェブアクセシビリティへの配慮がないと、「誰もが同じようにウェブサイトを活用できる」状況は実現しません。

【ウェブアクセシビリティへの配慮がないと起こり得ることの一例】
・必要なウェブ上のサービスを利用できない
・ウェブサイトを活用して情報収集できない
・災害時などの非常時に必要な案内を受けられない

あらゆる人がウェブサイトを活用して、必要な恩恵を受けられるようにする概念が「ウェブアクセシビリティ」なのです。

2024年4月の法改正でウェブアクセシビリティが注目された

環境整備の対応例:障害者がオンライン申込みの際に不便を感じることのないよう、ウェブサイトの改良を行う。 環境整備の改善前:努力義務として、障告者に対する環境の整備を行うよう努めなければならない。 環境整備の改善後:変更なし。 合理的配慮の対応例:手続の支援を求める申出があった場合に、求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う。 合理的配慮の改善前:努力義務として、障告者に対する合理的配慮を行うよう努めなければならない。 合理的配慮の改善後:法的義務として、障告者に対する合理的配慮を行わなければならない。

引用:「環境の整備と合理的配慮の比較表、対応例と法改正の内容について」

ウェブアクセシビリティは、2024年4月に「合理的配慮」の提供が義務化されたことで注目されるようになりました。

合理的配慮とは、特定の障害者の個別の状況に応じて講じられる措置のことです。2021年に改正された障害者差別解消法によって、2024年4月から民間企業も合理的配慮の提供の義務化対象になりました。

ウェブアクセシビリティ対応自体は合理的配慮ではなく環境の整備にあたります。環境の整備とは、不特定多数の障害者向けに行う事前的改善措置のことです。環境の整備は努力義務であり、現状では法的な罰則(ペナルティ)が課せられるわけではありません。

しかし、ウェブサイトがアクセシビリティを確保できておらず使用できない(環境の整備が不足している)という申し出があった場合に、合理的配慮として代替手段を提供する法的義務が発生します。

環境の整備は法的義務ではないものの、整備を進めておくと個別の合理的配慮の必要性を減らすことができます。

例えば、視覚障害者がスクリーンリーダーを使えるよう環境が整備されていれば、支援を求める申し出が減り、合理的配慮を行う場面も少なくなるでしょう。環境の整備を進めておけば、合理的配慮にともなう人的リソースやコストの削減にもつながります。

また、近年は情報社会の進展やスマートフォンなどの普及にともない、ウェブサイトが生活に不可欠な情報源となっています。

このような経緯から、合理的配慮だけではなく、ウェブサイトのアクセシビリティ対応(環境整備)にも注目が集まっているのです。

努力義務でもウェブアクセシビリティ対応はすべき

障害を持つ人へ向けた環境の整備ができていないと、何らかの申出を受けた場合に、合理的配慮として代替手段を提供する法的義務が発生します。

ウェブアクセシビリティの観点で捉えると、アクセシビリティを確保できていないウェブサイトを運用し続けることで、サイトの利用に困難を感じる人が増え、個別の状況に応じた代替手段を提供する必要性が高くなります。

法的義務と努力義務とで法的な位置付けは異なりますが「合理的配慮」と「環境の整備」は密接につながっているのです。今回の法改正に合わせて自社のウェブページやウェブサービスを改善していくためには、合理的配慮と環境の整備を両輪で考えることが理想的といえるでしょう。

ウェブアクセシビリティ対応の2つの軸

先述の通り、ウェブアクセシビリティ対応は「合理的配慮」と「環境の整備」の両輪で進めることが重要です。ここでは、合理的配慮と環境の整備について詳しく解説していきます。

合理的配慮

先ほども触れましたが、合理的配慮とは環境の整備を基礎として、特定の障害者の個別の状況に応じて講じられる措置のことです。2024年4月より、民間企業も合理的配慮の提供を義務付けられる対象になりました。

例えば、障害者の方からオンラインでの手続きが難しいと申し出があったとします。求めに応じて電話や電子メールで対応することが、合理的配慮に該当します。

環境の整備、つまりウェブアクセシビリティの確保をしておけば「操作がしにくい」「色が見分けにくい」などの訴えが少なくなります。個々の合理的配慮が求められる頻度は低減されるでしょう。

環境の整備

環境の整備とは、不特定多数の障害者向けに行う事前的改善措置のことです。前述の例においては、障害のある人がオンライン申請で困らないように、ウェブサイトを改善する(ウェブアクセシビリティを確保する)ことが該当します。

環境の整備は努力義務なので、現状では法的な罰則(ペナルティ)が課せられるわけではありません。

ただし、ウェブアクセシビリティの確保を法的に義務付ける動きは、アメリカをはじめとして、カナダ、フランス、韓国など世界各国で進んでおり、日本も追従する可能性もあります。今のうちに対応を進めておくのが、無難な方策ともいえるでしょう。

ウェブアクセシビリティの標準ガイドライン「WCAG」

ウェブアクセシビリティのガイドラインとして代表的なものは、「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)」です。

WCAGは、W3Cという国際的な非営利団体が作成しているガイドラインです。1999年に勧告されて以降、現在に至るまで大きく5つのバージョンが存在します。

どのバージョンに準拠するのか決まったルールはなく、個々の状況に応じて判断します。

バージョン 概要
WCAG 1.0 すでに廃止されている
WCAG 2.0 ISO規格やJISに制定され、2024年11月現在、世界標準かつ日本の国内標準となっている
WCAG 2.1 WCAG2.0時点では一般的ではなかったスマートフォンなどのモバイル端末(タッチデバイス)への対応、ロービジョンへの対応、認知・学習障害への対応などの基準が追加された
WCAG 2.2 新しく9つの達成基準が追加された。ISO規格(世界規格)は、将来的にWCAG 2.2の内容で更新されることが周知されている
WCAG 3.0 ・2021年1月に初期草案が公開され、W3Cにて策定作業が進んでいる

・将来的には従来のウェブサイトだけでなく、ウェブアプリケーションやモバイルアプリ、VR/ARコンテンツなど、多様なウェブコンテンツのアクセシビリティに対応するといわれている

2024年11月現在、日本では各社のアクセシビリティ方針などを見ると「WCAG 2.0」と「WCAG 2.1」に準拠しているものが最も多く、これら2つが今のところ事実的なスタンダードであると考えられます。

詳しく知りたい方は、WCAGについてデザイナー向けに解説したこちらの記事をご覧ください。

【関連記事】デザイナーのためのWCAGの歩き方

ウェブアクセシビリティ対応のメリット

ここでは、ウェブアクセシビリティに対応する6つのメリットをご紹介します。ウェブアクセシビリティは法的な側面だけでなく、自社にとっても恩恵がある取り組みなので、ぜひ参考にしてみてください。

【ウェブアクセシビリティ対応のメリット】

  • サイト(サービス)を利用できる人が増える
  • 新たな市場にリーチするチャンスを作れる
  • ユーザー体験に不可欠だから
  • 「多くの人に使ってもらいたい」という企業としての姿勢を示せる
  • 将来的な訴訟リスクを抑えられる
  • 「マシンリーダブル」になる

理由1:サイト(サービス)を利用できる人が増える

当たり前ですが、ウェブアクセシビリティを確保すれば、自社のサイトやサービスを利用できる人が増えます。

実際、どれくらいインパクトがあるのでしょうか?アクセシビリティを確保することで恩恵を受けやすいと考えられる層を中心に、具体的な数字を交えて見てみましょう。

1. 障害を持つ人

視覚、聴覚、認知、運動機能などについて、さまざまな障害や特性を持つ人がいます。厚生労働省の調査によると、2022年の推計値では日本にいる障害者の総数は1164.6万人。人口の約9.3%を占めています。

障害を持つ人のうち、ウェブアクセシビリティの恩恵を受けやすいとされるのは、以下のような人たちです。

  • 視覚障害のある人
    • 身体障害者手帳を持つ人のうち、27.3万人いるといわれている
  • 聴覚障害のある人
    • 身体障害者手帳を持つ人のうち、37.9万人いるといわれている
  • 視覚と聴覚の両方に障害のある人(盲ろう)
    • 1.4万人ほどいるといわれている
  • 上肢障害のある人
    • 上肢・下肢を含めた肢体不自由の人は158.1万人いるといわれている
  • 発達障害や学習障害のある人
    • ASD、ADHD、学習障害などは、人によって程度が異なる。自他ともに障害を認識できていないなどの場合もあり、総数の特定は難しい
  • 知的障害のある人
    • 126.8万人いるといわれている
  • 色覚異常がある人
    • 先天色覚異常者は全国に約290万人、遺伝的保因者は全国に約580万人いるといわれている

こうした障害や特性にはグラデーションがあり、複数の障害・特性が併存する場合も考えられます。また、例えば手が震えやすいなど、ここに挙がっていない例ももちろんあります。

2. 高齢の人

人間は、加齢によって視覚、聴覚、認知能力などが衰え、情報を取得することに負担を感じるようになります。また、指先の細かい動きが難しくなるなど、物理的にもデバイスの操作がしづらくなることがあります。

日本は高齢化が進んでいて、現在世界で最も高齢人口の割合が多い国です。総人口に占める65歳以上の割合は、2040年に34.8%、2045年には36.3%になると推定されており、10数年後には3人に1人が高齢者となる見込みです。

参考:統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-

3. 一時的な制約のある人

ウェブアクセシビリティの恩恵を受けやすいのは、「障害を持つ人」と「高齢の人」というイメージが強いかもしれません。他にも下記のようにアクセスが困難になることも考えられます。

  • コンタクトが外れて見えづらい
  • 突発性難聴を患って聞こえづらい
  • 利き手を骨折して操作しづらい
  • 太陽光が強くて画面が見づらい
  • イヤホンを忘れて電車で音声を再生するのが難しい
  • マウスが壊れて操作できない
  • 曖昧な表現で書かれていて認識しづらい

こうした状況は誰にでも起こり得るので、自社のウェブコンテンツがさまざまな状況下で問題なくアクセスできるかを確認しておけるとよさそうです。

4. 通信環境や端末の制約がある人

昨今は、ウェブコンテンツを利用するときの通信環境や端末が多様化しています。限られたデバイスに合わせて制作してしまうと、それ以外のデバイスではアクセスしづらい場合が出てきます。考慮ポイントには、例えば以下などがあります。

  • 端末
    • PC、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイス、AR, VRデバイスなど
  • 通信環境
    • 通信環境が悪い状態や電波の入りにくい地域からインターネットに接続する人もいる
  • 操作方法
    • タッチ操作、マウス、キーボード、音声や目線で操作するなど
    • 点字ディスプレイや、ハンドルやボタンがついたコントローラーなどを使って操作する人もいる
  • ウェブブラウザ
    • Google Chrome、Microsoft Edge、Safari、Firefoxなど

もちろんすべての環境に合わせることは難しいため、目的に合わせて範囲を決めることが必要です。通信環境や端末をどこまで対応するかも、アクセシビリティの一つの観点だと認識しておきましょう。

理由2:新たな市場にリーチするチャンスを作れる

理由1で挙げたように、状況によってウェブコンテンツにアクセスしづらくなっている人たちがたくさんいます。

アクセシビリティ対応は、十分なサービス提供ができていない市場で成長への道を開き、ユーザーとの信頼を築くチャンスになるでしょう。

一例ではありますが、これからますます高齢社会となる日本では、やはり高齢者向け市場が注目されます。

  • 2025年までに高齢者向け市場の規模は100兆円を超えるといわれている
  • 日本の金融資産の60%以上を60歳以上の世代が保有しているといわれている
  • 高齢者世帯(世帯主が65歳以上)の消費支出は、全世帯平均より約32,000円少ない

例えばオンラインショッピングやデリバリーなどは、ほとんどが幅広い年代に向けたサービスですが、出かけづらくなった高齢者の方にとって非常に便利でしょう。

介護関連に限らず、生活全体でエイジフレンドリーな環境を作るための「エイジテック」という分野も注目され始めています。

今回は高齢者向け市場を例にしましたが、世界的な潮流を見ても、アクセシビリティを配慮していないサービスやプロダクトは、将来的に多くの人から選ばれなくなる可能性があります。

理由3:ユーザー体験に不可欠だから

プロダクトやサービスによって「よいユーザー体験」を提供したいと考えるとき、多くの人はまずユーザビリティ(使いやすさ)を考えるのではないでしょうか。

ユーザビリティとは「ある時点での使いやすさ」であり、多くの場合、マジョリティに対する最適化といえます。

一方でプロダクトやサービス、情報などのコンテンツは、ユーザーのもとに正しく届き、活用できる状態になって初めて価値を生み出すものです。そこにアクセスできないユーザーにとっては、存在しないも同然となります。

アクセシビリティを考えることは、特定のマジョリティだけではなく、あらゆる人に配慮した「使える状況の幅広さ」に目を向けることといえるでしょう。

ユーザビリティ

出典:『見えにくい、読みにくい「困った!」を解決するデザイン(間嶋 沙知 著、マイナビ出版)』P.23より転載(一部改変)

特定の人に対する使いやすさを極めるのもよいですが、使える状況の幅を広げながら、同時に使いやすさに磨きをかけることで、総合的にプロダクトのユーザビリティを向上させることにつながります。

例えば、Appleのアクセシビリティページの冒頭には「必要に応じてカスタマイズ」というコピーとともに、アクセシビリティに関してのメッセージが語られています。

アップル

このページでは「あなたに合わせて」「あなたらしく」という言葉が多用されています。

アップル2

ここから読み取れるのは、Appleがつくるアクセシビリティ機能の対象は、特定のセグメントではなく、Apple製品を使うすべてのユーザーであることです。単にアクセスできる人を増やすことにとどまらず、「すべての人に役立つ最高のテクノロジー」を目指すAppleの姿勢が感じられる事例です。

このように、アクセシビリティを究極的に取り組んでいくと「すべての状況のすべての人が使いやすく」と考えるようになり、自然とユーザビリティの向上につながるでしょう。

理由4:「多くの人に使ってもらいたい」という企業としての姿勢を示せる

少し抽象的な考え方ですが、アクセシビリティの確保に注力することは、企業としての姿勢や品格を示す「ブランディング」にもつながります。

さまざまな立場の人に使ってもらいたいツールであれば、アクセシビリティへの取り組みをブランドイメージとして持つことで、ツール選定の理由や差別化ポイントになる可能性もあります。

例えば、freeeは自社で制定した独自の「アクセシビリティガイドライン」を公開しています。アクセシビリティの専門人材の配置や外部発信、セミナーなどにも力を入れています。

理由5:将来的な訴訟リスクを抑えられる

アメリカでは「障害を持つアメリカ人法(ADA)」という法律によって、障害を持つ人が州政府、地方自治体、事業者などのウェブサイトにアクセスできるようにすることが義務付けられています。

ADA法によるウェブアクセシビリティ関連の訴訟は年々増加しており、2023年には2,281件も提起されてます。Amazonやドミノ・ピザなどの有名企業も訴訟の対象となりました。

日本でも、2024年4月より民間企業の「合理的配慮」の提供が法的義務になりました。今後アメリカのようにウェブアクセシビリティの確保自体が義務化される可能性もあります。

万が一訴訟が起きると、アクセシビリティ改善だけでなく、訴訟費用や専門家証人を雇う費用がかかります。将来的なリスクを考えても、ウェブアクセシビリティを確保しておく価値はありそうです。

理由6:「マシンリーダブル」になる

人にとってアクセスしやすいウェブコンテンツは、同時に「機械」にとっての読み取りやすさ(マシンリーダビリティ/machine readability)も兼ね備えていることが多いです。

例えば、アクセシビリティ機能である「音声読み上げ」に正確に対応できるウェブコンテンツを制作するには、機械的に解釈可能で、合成音声に変換できるHTMLソースを用意する必要があります。

ウェブコンテンツがマシンリーダブルになると、GoogleやYahoo!などの検索エンジンが情報を取得しやすくなり、SEO(検索エンジン最適化)の効果があるといわれています。

グッドパッチ社内では「サーチエンジンだけではなく、AIが情報を解析する際にも恩恵を受けられるのではないか」といった意見もありました。

企業のウェブアクセシビリティ対応、5つのステップ

企業のウェブアクセシビリティ対応、5つのステップ 0.自社のウェブコンテンツの現状を適切に把握する 1.アクセシビリティ対応の方針と内容を決める 2.ガイドラインに基づいて対応作業を行う 3.アクセシビリティ方針を外部に公開する 4.試験を実施し結果を公開する 5.継続的な運用体制をつくる

メリットが理解できたところで、実際にウェブアクセシビリティに取り組むためのステップをご紹介します。どのような順序でウェブアクセシビリティに対応すればいいのか、参考にしてみてください。

ステップ1. アクセシビリティ対応の方針と内容を決める

一般的にウェブアクセシビリティに取り組む上では、目指すゴールやそれに向かうための方針を定めることが推奨されています。

具体的には、下記のような項目を決めていきましょう。

  • 対象範囲(例:このウェブサイトのこのページ)
  • 目標とする適合レベルおよび対応度(例:WCAGのレベルAをすべて達成する)
  • 目標を達成する期限(例:2025年度中に)
  • 対応作業の詳細(要件・スケジュール・対応内容など)

ステップ2. ガイドラインに基づいて対応作業を行う

WCAGなどへの適合を目指してデザインやコーディングを行い、ウェブコンテンツのアクセシビリティを向上させます。

ステップ3. アクセシビリティ方針を外部に公開する

単に対応作業を行うだけでなく、どのような方針でどのようなアクセシビリティ確保に取り組んだのかを公に公開することが重要です。

自社のサイトにアクセシビリティポリシーのページを作り公開したり、アクセシビリティに関する問い合わせ窓口を用意したりする企業が増えています。

事例:

ステップ4. 試験を実施し結果を公開する

ウェブアクセシビリティには基準への適合を測る試験があり、定期的に試験をして結果を公開している企業もあります。

事例:

ステップ5. 継続的な運用体制をつくる

アクセシビリティは一度達成するだけでなく、継続的な体制で取り組んでいくことが理想的です。サイトやサービスの運用体制においてアクセシビリティチェックのフローを構築して、定期的に方針を確認・更新できることが望ましいです。

上記の画像では「0番」として記しましたが、これらを行っていく上ではまず、自社が持つウェブサイト、アプリ、カスタマーポータルなどについて、現状を適切に把握する必要があります。

その上で、「どのようなユーザーに、どのような場面でアクセスしてもらいたいのか」を基に目指すべき状態を定め、これからどう改善するべきか検討します。

モバイルアプリは関係ある?

今回話題になっているのは「ウェブ」アクセシビリティなので、対象となるのは基本的にウェブコンテンツ全般です。

では、モバイルアプリのアクセシビリティはどう考えるのがよいのでしょうか?一般的には、OS標準ガイドラインのアクセシビリティに関する事項を読むのが基本になります。

ただ実態としては、モバイルアプリであっても、WCAGを参考にできる部分が多いと思われます。

W3Cから2015年に「モバイル アクセシビリティ: WCAG 2.0 およびその他のW3C /WAI ガイドラインがモバイルにどのように適用されるか」という文書が出ているので、こういった情報を参考にしつつ、プロダクトとしてどういったスタンスを取るかを決めるのがよさそうです。

事例:接触確認アプリはモバイルアプリですが、ウェブアクセシビリティの方針を策定し基準を達成している珍しいアプリです。

自社のアクセシビリティ対応、見直してみませんか?

本記事では、ウェブアクセシビリティに関する基礎知識をご紹介しました。ウェブアクセシビリティの必要性や対応するメリット、実施するステップなどについて、理解を深められたのではないでしょうか。

誰もが不安やストレスなくウェブサイトやサービスを利用できるようにするには、ウェブアクセシビリティ対応が欠かせません。

民間企業を対象に合理的配慮の提供が義務化され、高齢化が進んでいるのが日本の現状です。ますますウェブアクセシビリティの重要性が増していくでしょう。

グッドパッチは、御社のビジネスと本質的な課題にコミットし並走するデザインパートナーです。4万件以上のデザインノウハウと体系化されたプロセスを活用し、戦略フェーズから一体となってプロジェクトを推進します。

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