「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる。」というVisionのもと、印刷・広告のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」や、物流プラットフォーム「ハコベル」を展開するラクスル株式会社。BtoB領域でデザインの力を発揮するため、デザイン組織の構築に取り組んでいます。組織からプロダクトまで、Goodpatchがどのように並走しているのか。そして、ラクスルという組織にどんな変化が訪れているのか、プロジェクトメンバーに話を聞きました。
BTCのバランスを立て直す、デザイン組織構築
水島さん
僕はラクスルに入社するまでtoC向けのサービス開発に関わっていて、そこでGoodpatchさんとご一緒したことがありました。ラクスルに入社したのは2017年です。BtoBのデザインの難しさはもともと感じていましたが、入社してみて、デザイナーの人数も少なく、どうしてもBizDevやエンジニアの観点が強くなってしまうことを課題に感じていました。事業や組織において、BTCのバランスが崩れているところを整えたいという課題感が強かったですね。
プロダクトマネージャーとして「やっぱりこれは外部からパートナーに来てもらった方がいいな」と思ったときに、真っ先に浮かんだのが、過去にお仕事を一緒にしていたGoodpatchさんでした。当時のGoodpatchのデザイナーは、エンジニアやビジネスサイドにも自分のロジックを説明できるような方で、僕もかなり勉強させてもらったんです。Goodpatchから、そんな尖ったデザイナーが2名くらい来てくれないかな、というのが一番最初の期待値でした。
ひとつ心配していたのは、GoodpatchさんにはtoC向けサービスを担当しているイメージが強かったので、我々のような組織に課題感を持っている状態でもお願いできるのだろうか、という点でした。でも、toBサービスを展開するSBI証券さんのデザイン組織構築支援をしていたことを知ってから、ますますお願いしたい気持ちが強くなりました。
参考記事:
「未経験でも熱量ある人と走りたい」 SBI証券×Goodpatchのデザイン組織構築の道のり
長岡
水島さんのお話を聞いて、ゆくゆくは社内を横断して議論ができるようなデザイン組織を作っていくなら、こんな人材が良いのではないか、というところから、デザイナーの國光と有田をアサインしました。
國光
安積さんと僕は、プロジェクトが始まる前に勉強会でお会いしたことがありましたよね。DeNAさんやUniposさんを含む4社合同のクローズドな会で、UXデザイナーが事業にどう向き合っているのかそれぞれの観点で共有する勉強会でした。(当日の様子はこちら)
安積さん
國光さんと話して「こんな人が入ってくれたら良いな」と思っていた矢先に「アサインされる」と聞いて驚きました(笑)。僕もUXデザインは独学で学んできた部分が多かったので、Goodpatchの皆さんと働きながら、知見や観点など全て吸収するつもりでプロジェクトをスタートしました。
「らしさ」の言語化と可視化で、巻き込む人を増やしていく
國光
プロジェクトが始まった2019年10月から、組織軸や採用軸などそれぞれ取り組んできましたが、お二人が特に印象的だったものを教えてください。
水島
ラクスルはデザイナーがいるイメージを持たれていない、という大きな課題があったので、まずは採用ブランディングからヘルプしていただきました。中でも印象的だったのが、“Rebuild the Industry”というキーワードが生まれた社内ワークショップです。僕と安積さんの他に、人事や経営企画、エンジニアリングマネージャーなど現場のメンバーにも参加してもらいました。Goodpatchさんが場のファシリテーションを含め、第三者の視点で入ってくれたことがよかったですし、良いアウトプットに繋がったと思います。
有田
ブランディングをお手伝いするにあたって、まずはラクスルの認知・興味段階を3つの層に分け、認知層を増やすことにフォーカスしました。
つまり「ラクスルってデザイナーやエンジニアがこんなにいるんだ」と思ってもらうことで、認知層v2を増やすことをはじめのゴールに設定しました。
その上で、ブランディングの共通認識となるコンセプトを引き出すためにワークショップを実施しました。
ラクスルのVision “仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる” に共感して、Raksul Styleという行動指針を体現している人はどんな人なのか。少しずつ「ラクスルらしさ」を言語化していきました。
議論に使ったのは、GoodpatchのBX(Brand Experience)チームが使っているVision Driven Design Modelです。
安積さん
社内のメンバーだけではたどり着けないアプローチでした。出来上がったキービジュアルもすごくよくて、パートナーならではの新鮮なアイデアだと感じました。
有田
キービジュアルは、これまでのラクスルの認知とは違う形で、社内にデザイナーやエンジニアがいそうなイメージを持って欲しかったので、あえてコーポレイトの「ラクスル」とは違う印象を持たせました。さらに、「印刷といえばラクスル」のイメージ近いモチーフを使うことで、新しく想起すること、もともと認知されていたこと、二つの接続をしやすいビジュアルを意識しました。
水島さん
このキービジュアルを展開したグッズと共にDesignshipに出展したところ、「リブランディングしたんですか?」と聞かれることも多かった。いい意味でラクスルっぽくない、新しい一面をデザイナーやエンジニアに訴求できたのかなと。
國光
僕が印象的だったのは、社内でチラシのパターンを決めている時、代表の松本さんが見に来てくださったというエピソードです。僕はその場にいなかったのですが、どんな反応をされていたんですか?
安積さん
あの時はデスクに5パターンくらいのチラシを並べて、僕と有田くんと人事の柏木と話し込んでいたんですよね。そこにたまたま通りがかった松本も加わって、どのパターンが良いか話しました。最終的には、デザイナーに最も刺さる案を採用したので、松本が一番気に入っていた案は通りませんでしたが、経営者視点でのフィードバックも興味深かったです。
有田
ラクスルの採用ブランディングをお手伝いする上で、とにかくラクスル社内の方とコミュニケーションを多く取ろうと決めていました。安積さんと一緒に様々な方とランチをご一緒させていただいたり、事業を跨いでヒアリングさせていただいたりしながら、企業の理解を深めました。デスクにチラシをたくさん並べたのも、できるだけ多くの方を巻き込みたいという意図があったからです。その上で、僕らができることを知ってもらいたいなと思っていました。松本さんやエンジニアの方がのぞきに来てくれたりと、効果はあったのかなと思っています。
水島さん
やっぱり途中から、みんな「Goodpatchのデザイナーさんが何かやっているらしいぞ」と気になり出していたと思いますよ。いろんな人間が見にくるのでプレッシャーに感じる面もあったかもしれませんが(笑)、初めに社内から注目を集められたことはよかったですよね。
組織の成熟度に合わせて、共通言語をインストールする
國光
僕らがラクスルの組織や事業の支援をする上で、コミュニケーションや判断軸の透明性は特に大事にしていたところです。どんな議論がされていて、どんな判断基準で進められているのかをオープンにすることは意識的にしていました。
水島さんや安積さんとも「共通言語を作っていきましょう」とよく話しましたね。
水島さん
当初の期待値は「デザインのクオリティの底上げ」だったのですが、そのために共通言語が必要だと気づかせてもらえたことは大きな学びでした。
ラクスルの開発組織は、モチベーションサーベイでAAAがつくくらいモチベーションが高いので、僕自身「共通言語なんて言わなくてもあるはず」と、明らかにすることを先延ばしにしていたんです。これまでだってプロダクトを出してこれたし、みんなが楽しそうに開発している中で、仕組み化しすぎることの弊害を恐れていました。
でも、Goodpatchさんが実施したラクスルの社内インタビュー結果を見たら、想像以上に課題はありましたね。共通言語がないことで、組織の変化についていけないメンバーがいたり、同じことを考えていると思っていたことがずれていたり。「常に現状がベストではない」という課題感を持って組織も改善し続けないといけないと気づかせてもらうきっかけになりました。「共通言語をつくって、仕組み化しましょう」としっかり言ってもらたことは結果的によかったですね。
國光
ラクスルの印刷事業を担うラクスル事業本部ってとても大きい組織なので、ひとつの事業の中でも複数のプロダクトが紐づいていて、各プロダクトもそれぞれフェーズが違うじゃないですか。そうするとロールごとの役割が細分化していかざるを得ないですし、そういう属人性が高い動き方も事業成長のためにはあっていいと思うんです。
でもラクスルの企業文化として、モチベーションのトップラインがどんどん上がっていて、組織が成熟していく過程では、仕組み化していくための判断基準が必要だと思いました。
長岡
物流や広告といった事業もこれから成長して組織が大きくなりデザイナーが増えていくと思うので、印刷事業で組織の型を作ってしまえば、他の事業にも応用しやすくなると思います。そんな型を僕らが一緒に作れればと思っています。
同じものを見て話す
水島さん
もうひとつのアウトプットとして、キャッチアップの速さはビシバシ感じます。
1のインプットから本質を見抜くスピードの速さは、そのままBizDevやエンジニアから信頼を得られるきっかけに繋がっています。「一緒に議論ができる相手」という信頼のされ方ですね。
有田
キャッチアップの速さの要因として、僕と國光の会話量がすごく多いんです。2人でホワイトボードに色々書き込みながら整理して、それを意図的にラクスル の方へ「こういう整理をしてみたんですけど、どう思いますか?」と展開する、ということを繰り返しました。外部からパートナーとして入っているGoodpatchだからこそのやり方で、僕たちのチームでは癖として染み付いています。
國光
僕らはクライアント社内でコミュニケーションのハブになりながら、情報の流通量を増やしたり交通整理をしながらそれぞれの観点を揃えていくことを意識しているのですが、それだけで終わるのは違うと思っています。ソフトスキルでそこを繋ぐのではなく、社内の異なる部署や職種をつなぐための「共通言語」を作ったり、いずれ僕らの手を離れてもその組織が自走できるような仕組みを残すなど、資産を残すことがゴールなんです。
その資産が組織の基準になっていきますし、安積さんたちもどんどん動きやすくなっていくと思うので、そのために僕らをたくさん利用してくださいとリクエストしました(笑)。
参考記事:非言語による共通言語のつくりかた
安積さん
「共通言語」ってGoodpatchの皆さんはよくおっしゃっていますし、当たり前に根付いている考え方なんだなと思いました。僕らは分かり合えているような気がしてなあなあにしていたけど、意外と同職種間でさえ認識が揃っていない部分もあることが今回ご一緒してかなり分かりました。
最近はデザインチームの中でも「共通認識を持ちましょう」と言う人が増えた気がします。
長岡
コミュニケーションからその内容を構造化、可視化して、共通言語を作っていくのはGoodpatchのカルチャーなのかもしれませんね。
有田
僕は常に相手と自分の頭の中に、同じものがある状態でいたいんです。少しでも違っていそうなら、頭の中から出して可視化して、それを見える状態にすることで共通言語が作られていくのかなと思います。
國光
実際に同じものを見て話すということ自体は、ラクスル 社内でもされています。ただ、そのナレッジが大きな組織が故に横展開しきっていないだけなんです。なので、僕らが新しいプロセスを作るというよりは、すでにあるものをあちこちから拾い集めて、それをミツバチのように届けまわりながら、いつの間にか共通言語にしていくという感覚です。
職種が融けた組織を構築する
國光
今後もデザインパートナーとしてお手伝いしていきますが、お二人はラクスル のデザイン組織をどんな組織にしていきたいですか。
水島
「ラクスルらしさ」を体現するデザイン組織にしていきたいです。
ラクスルはこれまでもCMなどのマーケティング、ユーザーとのコミュニケーションデザインに強いことが特徴でもあるので、デザイン組織においてもそこは強化していきたいです。経営レベルからデザインを考えていくにあたって、デザイナー自身も数字やロジックに強くなり、経営に影響力を与えられるデザイン組織にしていきたいです。例えば、CFOと「時価総額をあげるためにデザイナーが何をできるか」など対等に議論できるような。
安積さん
プロダクトマネージャーやBizDevとも、最終的なアウトプットが違うだけで、本来目指している場所は同じはずなんですよね。だからこれからは、見た目の議論だけではなく「こうあるべき」とより俯瞰で事業を見た議論が、デザイナーもできるようにしていきたい。今後はデザイナーの育成面もGoodpatchさんと並走しながら道筋を立てていきたいと思っています。
國光
職種を分けるのは責任範囲が違うからで、本来は一緒にやれることってたくさんありますし、職種が融けてる状態があってもいいですよね。
水島さん
デザイナーがプロアクティブに情報収拾を進めて、ビジネスサイドと話を進められると、プロダクトマネージャーとしてはめちゃくちゃ助かります。Goodpatchさんと一緒にうちのロールモデルを作っていきたいですね。
そんなデザイン組織を社内に構築して、外から見たときにラクスル が「デザインへ注力していること」を感じ取ってもらえるようにしたいです。ただ見た目を変えるだけではなく、実際に使いやすくなったり、よくなっていると感じてもらいたい。そのためには組織が健全な状態じゃないといけないと思うので、まずは内側から。その次に、自分たちのプロダクトに心から自信を持って薦められる状態まで、走っていきたいです。
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