7年を経て紡がれるストーリー。PR TIMES代表 山口さんがGoodpatch社外取締役に就任するまで

Goodpatchが、2013年よりデザインパートナーとして支援してきた株式会社PR TIMES。「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションのもと、行動者発の情報を届けるプラットフォームPR TIMESや、タスク・プロジェクト管理ツールJootoをはじめとする行動者たちのサポートをする数々のプロダクトを提供しています。

Jootoのリニューアルプロジェクトに並走するなど、かねてよりパートナーシップにあったPR TIMESとGoodpatch。そんな中、2020年1月よりPR TIMES 代表取締役社長の山口 拓己さんがGoodpatchの社外取締役に就任。なぜ、Goodpatchを選んでいただけたのか。山口さんとGoodpatchの出会い、2013年のある失敗と成長の軌跡などを振り返り、両社のストーリーが交差するまでを紐解きます。

物語のはじまりはGunosyのリニューアル

土屋
山口さんと僕の繋がりはもう7年ほどになりますね。
初めてご連絡をいただいたのが2013年の夏。当時はまだGoodpatchのオフィスが秋葉原にあり、社員も20名くらいの時期でした。当時のことを知っているメンバーも今では少なくなってきています。

山口さん
この7年の歳月に、両社それぞれストーリーがありますよね。PR TIMESにとっての大きな転換点は二つで、2011年の東日本大震災と、それ以降のスマートフォン普及期です。
プレスリリースのプラットフォームであるPR TIMESという事業を展開している我々にとって、中でも衝撃的だったのがSmartNewsとGunosyでした。「この手があったか」と思いましたし、賛否両論ありながらもかなり注目を浴びていました。

PR TIMES代表取締役社長 山口さん

そんな中、2012年5月にGunosyのUIがガラッと変わって、一気に使い心地が良くなった。なぜだろうと調べていると、Goodpatchの存在にたどり着きました。その時点ではまだ一緒に仕事をするイメージはなかったのですが、2013年7月にキャリアハックで土屋さんのインタビューを見つけたんです。

GunosyのUIを手掛けたデザイン会社《Goodpatch》に学ぶ、デザイナーの育て方。

この記事を読んで「一緒に何かしたいな」と感じ、すぐにお問い合わせフォームからコンタクトを取りました。

創業2年のGoodpatchに「懸けた」PR TIMESの新規事業立ち上げ

土屋
あの頃のGoodpatchは、Gunosyによって引き上げてはもらえたものの、知名度もまだまだ低い会社でしたね。2013年といえばちょうど自社プロダクトのProttを開発し始めた時期です。

山口さん
当時、プロトタイピングツールならInVisionがある中で、そこに挑もうとしているところにもとても刺激されました。

土屋
懐かしいです。そんな2013年に山口さんからご相談いただいたのは当時のPR TIMESの新規事業で、カスタマーサポート・問い合わせフォームの作成ができるサービスのUIデザインでした。今でいうSaaSの事業ですよね。

山口さん
そうですね。当時はSaaSという言葉を耳にすることもなかったのですが、スマートフォンはどんどん普及しているにも関わらず、あらゆるサービスのカスタマーサポートの場面において、Web1.0の時代のプラットフォームが使われていることに強い危機感を持ったんです。やるからにはユーザーインターフェースの専門家に頼みたいと思い、Goodpatchさんに懸けました。同時に、PR TIMESのリニューアルもお願いしましたよね。私も欲張りなので(笑)。

土屋
このご相談をいただいた時点で、Goodpatchを立ち上げてまだ2年。当時から新しいもの好きなメンバーが多く、様々なアプリやUIに触れてはいたものの、ナレッジは何も体系化されていなかったですし、組織的な課題にも直面しかけていたタイミングでした。

Goodpatch代表 土屋

そんな中、プロジェクトが始まってからも、山口さんはとても真剣にコミットしてくれて、2年目の会社には多すぎるくらいの投資をしていただきました。ですが、僕たちの力不足によって、サービスリリースの手前でPR TIMESさんの新規事業立ち上げプロジェクトがストップすることになってしまいました。
リリース後にストップしたのではなく、リリースの手前でプロジェクトが頓挫するという、山口さんにとんでもない迷惑をかけてしまったんです。

失敗を経ても信じられたのは、逆境をチャンスにする力

土屋
これまでを振り返っても、あの時ほどクライアントに迷惑をかけたプロジェクトはありません。「一度プロジェクトを止めましょう」と山口さんと話した日の帰り道は、悔しくて涙が出ました。今でも鮮明に記憶に残る、大きな失敗体験です。

あの時、山口さんは一体どんな心境だったんですか?

山口さん
目標は高く、野心的じゃないとダメだと思っていた私に、Goodpatchの皆さんは共感してくれていました。あの時、そんな皆さんに懸ける判断をしたのは私で、それでもスキルや能力でお互いに足りない部分をキャッチアップしきれなかった。プロジェクトは止まってしまったけれど、だからこそバネにして絶対に成功させよう、としか考えていませんでした。
その後、開発体制を変えてやり直させてほしいと取締役会で頼み、2015年にローンチしたのがTayoriというサービスです。

当時、Tayoriのプロジェクトはストップしましたが、同時進行していたPR TIMESのリニューアルはGoodpatchさんにやりきってもらいましたね。

土屋
プロジェクトが止まった一件以来、僕は申し訳なさから、山口さんにご連絡すらなかなかできずにいました。少しでもお返しできればという罪滅ぼしのような気持ちで、Goodpatchのプレスリリースを出す時にはPR TIMESを使い続けていました。当時はそれくらいしかできなかったんです。

GoodpatchはPR TIMESで2013年からニュースを届け続けている

山口さん
確かに、プロジェクトが止まってしまった一件から、PR TIMESという会社の代表としてGoodpatchさんに何か頼みづらくなったことは間違いありません。ですが、それ以上に私は土屋さんに「運」を感じていました。2013年にキャリアハックさんの記事を読み、実際にお会いしてからもその印象はずっと変わりませんでしたね。

運が強いということは、ピンチの状況も全部チャンスにしている、苦境をエネルギーにしているということだと思うんです。土屋さんがGunosyさんのリニューアルを受けたときも、ずっとピンチだったはず。UIやデザインの可能性を信じている人がまだ少ない中で、とあるスタートアップのサービスのUIデザインを無償でやるという決断は、「もっと優先するべきことがあるだろう」とも言われかねないですし、社内からもいろんな意見があったかもしれません。それでもやると押し通してきたことで、ピンチが全てチャンスに変わっている。一緒にプロジェクトをしている時も、そんな運の強さはいつも感じていました。

土屋
それから2,3年後、Jootoのリニューアルのお話をいただいたんですよね。
「このプロジェクトは以前の失敗を取り戻すチャンスだから、絶対に成功させなくてはならない」とプロジェクトメンバーにも期待はしっかり伝えていました。

山口さん
Jootoはシンガポール発のタスク管理ツールで、PR TIMESやTayoriなど既存事業とのシナジーが生まれやすいと想定したことから2017年に事業譲受が実現しています。

10万ユーザー突破で急成長中のタスク管理ツールを、PR TIMESが事業譲受

ただ、より直感的なUIが必要だとは感じていたため、リニューアルする前提で事業譲渡のオファーをさせてもらったんです。そこで創業者の二人に要望を聞いてみるとGoodpatchさんを指名したので、僕が引き合わせて、Jootoのリニューアルをお願いすることになりました。

このプロジェクトには私は関わらず、すべての権限を託していましたが、現Jooto事業責任者の原さんと元CEOの下田さんから話を聞いていて、秋葉原時代もイメージしていたけど実現できなかったGoodpatchさんの姿が感じられて、素直に嬉しかったですね。

まず、Jootoの成功を願い、分け隔てないひとつのチームになっていた。そして、クライアントのためだけではなく、Jootoユーザーのために仕事をするプロになっていたんです。自分たちのナレッジやスキルを惜しみなく残してくれたことも大きな影響があったそうです。
表層のデザインだけではなく、ペルソナの定義などを踏まえてデザインに入ってくれたことで、彼らもより深くユーザーのことを理解でき、残してもらったものが重要な資産になっています。

当時のJootoリニューアルプロジェクトのメンバー

— では続いて、プロジェクトのよかったことを教えてください。

UI/UXデザインを実践知レベルまで習得できたことです。例えば、またJootoをリニューアルするときや、今後自分がスタートアップを立ち上げる時などに、今回習得したプロセスが役に立つと思います。UI/UXデザインのフレームワークって、ゼロイチのフェーズに活用できるものが多いと思うので、今後の自分の長いキャリアを考えてみても活用できそうです。

引用:「ノウハウを吸収して自走したい」Jootoリニューアルチームをひとつにした想い

企業文化によって人の可能性が花開く

土屋
メンバーの熱量やクオリティの再現性においても、昔とは全く違うなと僕も感じています。
変化できたきっかけは100人を超えてから起こった組織崩壊の影響が大きいと思いますが、組織崩壊時から「再現性」と「ナレッジの蓄積」については強い気持ちで言い続けていました。今はナレッジの蓄積がインセンティブありきなどではない、自然なカルチャーになっています。

山口さん
カルチャーになっていると強いですね。私は、カルチャーとは人の再生産だと思っています。会社のカルチャーによって、そこにいる人の可能性や才能が花開く。だからこそカルチャーはとても重要なものだと思います。

土屋
この7年間で何度かお仕事をご一緒させてもらってきて、今回、Goodpatchの社外取締役についてご相談をさせていただきました。

山口さん
メッセージをもらった時は、ありがたくも正直「困ったな」と思いました。
僕はPR TIMESの仕事以外、一切受けないと決めているからです。本来、色んなことをやるのも好きだし、やりたいこともたくさんあります。でも私一人の能力には限界があるから、あえてPR TIMESだけにフルコミットの状態を作っていたんです。

土屋
僕も山口さんの立場だったら困るだろうなと思って、実は1ヶ月くらいメッセージを送れませんでした。
でも、今の僕には経営のメンター、中立なフィードバックをくれる人が必要でした。加えてGoodpatchの社外取締役をお願いするなら、僕より先をいく経営者であり、人間的にも尊敬できる人がよかったんです。

ナラティブの実践で心を揺さぶり続ける

山口さん
どうすべきか、とても悩みました。ですが、私は初めてGoodpatchを知った時から「この会社には大きくなってもらいたい」と思っていて、このお話を私が断ることで、彼らが社会的な課題を解決したり、目標をアップデートすることが遠ざかってしまうのは何か違うな、と感じたんです。私ができることがあるのなら、という気持ちで、お話を受けることにした次第です。

PR TIMESは2020年、年頭所感として「ナラティブ元年」という言葉を掲げています。私は仕事の全てはPRだと思っていて、なぜかというと今やプレスリリースの定義も変わり始めていて、企業の機能的価値を越えて、関わる人のストーリーや想いが如実に表れるようになっているからです。それを突き詰めた表現としてナラティブという言葉に行き着きました。

株式会社PR TIMES年頭所感「ナラティブ元年」

そんな中で、デザインも今やっと時代が追いついてきて、全てがデザインだと言われるような状況にあると思います。私もデザインとPRは遠いものではなく、デザインがあるからこそPRに価値があり、PRの思考があるからこそデザインが必要になっていると感じています。Goodpatchの経営に関わらせてもらうことは、私にとって必然だったのだと今は思っています。

土屋
今回のお話で、PR TIMESさんとGoodpatchの紆余曲折のストーリーが繋がりました。Goodpatchはまさに一人ひとりがストーリーの語り手として、ナラティブを実践してきた会社です。これからどんな化学反応が起こるのか、とても楽しみにしています。

ABOUTこの記事をかいた人

Kaori Sugimoto

Goodpatchの経営企画室でPR/PXを担当しています。2017年5月入社。興味関心があるのは文脈のデザイン。ものごとの由来や歴史を調べるのが好きです。
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