新しいものが大好きなGoodpatchで3月話題になったアプリ、サービス、デザインまとめ(2022)
全国各地で桜の開花宣言が発表され、春本番まであと僅か。
出会いと別れの季節ですが、今月も元気にGoodpatchで話題になったアプリやサービスをご紹介します!
アプリケーション
漫画アプリや電子書籍の体験を応用した経済コンテンツアプリ「PIVOT」がリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000083417.html
2022年3月15日、PIVOT株式会社は経済コンテンツを感度高く取り扱うサービス「PIVOT」のiOSアプリをリリースしました。PIVOTは「グローバル&イノベーション」をコンセプトに、最新経済に関する記事を連載したり、映像番組を配信したりするメディアアプリです。
メディアアプリの魅力を形成するのは「コンテンツのおもしろさ」「コンテンツの届け方」ですが、今回筆者は「コンテンツの届け方」で、3つのポイントに注目しました。
1つ目はシートの形状のUIをダイナミックに活用し、ビジュアル的なインパクトをもたらしていることです。シートを記事バナーに被せることで、「下にシートを下げるとバナーの詳細説明を閲覧できる」という新しい体験を生んでいます(参考リンク)
2つ目は、記事閲覧における漫画アプリのような課金形態です。「チャージが溜まれば毎日1話無料。すぐに読みたければコインを購入する」という漫画アプリのスタイルを経済メディアに応用しており、新鮮にうつります。この課金形態を形作るには、どんどん読みたくなってしまう面白みのある記事が必須ですね。
3つ目は「ハイライト機能」です。記事内で気になったフレーズにユーザーはハイライトをつけることができ、他のユーザーから多くハイライトされたフレーズもわかります。電子書籍で他の人がハイライトしたフレーズに「〇〇人がハイライトしました」と表示されるUIに似ています。これは人気の「記事」ではなく、人気の「フレーズ」をきっかけに記事に出会うことを促進し、ユーザーがサムネイルやタイトルだけならスルーしてしまう記事にも面白さを見出す可能性が高まります。2つ目と3つ目のポイントは、すでに経験のある分野から見出した「法則」を未経験の分野に応用する「アナロジー思考」を活かしていますね。
このようにPIVOTは、既存の経済コンテンツとは異なるジャンルのコンテンツアプリの体験を応用し、少しかたく感じられる経済コンテンツを手軽に楽しく届けています。そんなアナロジー思考は、デザインで新鮮な化学反応を起こす起爆剤になると言えるでしょう。
サービス
月額制動画配信サービスDisney+が広告付きの低価格なプランを導入予定
2022年3月4日、ディズニーの月額制動画配信サービス「Disney+」は、現在より安価な広告付きのプランの提供を始めることを発表しました。米国では年内にこの新プランが開始し、来年には国際的に拡大する予定だそうです。現在日本におけるDisney+の月額料金は月額990円(税込)となっており、このプランの価格についてはまだ発表されていません。
これまで日本においては、YouTubeなど無料の広告付き動画配信サービスが広告をなくす有料プランを提供することはありましたが、月額制動画サービスが広告付きの安価なプランを提供することはありませんでした。Disney+は最初こそ既存ファンの厚みや新型コロナウイルスの巣篭もり需要に支えられ、急成長してきました。さらに新しく低価格プランを提供することで、今まで料金が高いことを理由にDisney+を利用しなかったユーザーによる会員数の伸びを狙っているのでしょうか。一方広告を段階的な料金プランに組み込むことは、会員数の増加と引き換えに、既存ユーザーがダウンセルしてしまったり、広告がディズニーの世界観を損なってしまったりすることもあるかもしれません。こういった懸念はあるものの、この取り組みは作品をより多くの人に見てもらいたいディズニーにとっても、ユーザーにとっても、広告主にとっても良い結果をもたらしてくれるのではないでしょうか。ブランド力のあるディズニーが新しいプランにどんな広告を取り入れるのか、結果はどうなるのか楽しみですね。
CO2の排出量を可視化し削減のアクションを支援できる「Carbon Pay」
https://panasonic.co.jp/design/flf/works/carbon-pay/
2022年3月9日、パナソニック株式会社のデザイン組織「FUTURE LIFE FACTORY」は、自分のカーボンフットプリント(CO2排出量)を可視化し、削減目標より多く排出した場合はCO2を吸収するアクションを選択し支援できる新習慣「Carbon Pay」構想を発表。このコンセプトを実現するプロトタイプとして、コーヒーマシン、リモコンなどの家電とCarbon Payアプリが2022年3月10日〜16日に開催された「あなたと未来のくらしを問う7日間 REMIXED REALITY EXHIBITION」にて展示されました。
Carbon Payでは、利用・購入した製品やサービスのライフサイクルの中で排出されたCO2の量が可視化され、家電に表示されます。電気代やガソリン代など、これまで間接的にCO2の排出を意識することはありましたが、カーボンフットプリントが見えるようになることでより直接的にCO2の排出量を意識して生活することがでるでしょう。CO2を削減目標よりも多く排出してしまった場合は、その量が相当する金額に換算されます。排出量(金額)に応じて森林の保護などのCO2を削減するプロジェクトを支援することで、排出量とのバランスを取ることができるという仕組みです。また、Carbon Payアプリでは自分のどのような行動がCO2排出につながっているかが内訳の金額やグラフで可視化されます。これにより、普段の行動を見直して具体的なアクションにつなげることができるようになっています。
「Carbon Pay」は、強制的に行動を促したり行動に報酬を払うのではなく、ユーザーが自発的に行動し生活を改善していく仕組みがデザインされているといえます。カーボンフットプリントが可視化されることで自身の生活を見直し、CO2を削減する取り組みを支援することで意識が高まり、普段の生活を改善するモチベーションにつながる。国家レベルでのCO2削減目標を達成するためには、このように個人の生活の改善サイクルが循環していくことが必要不可欠です。
香りもブランディングするトータルソリューションを提供開始
https://www.toppan.co.jp/news/2022/02/newsrelease220225_1.html
2022年2月25日、凸版印刷株式会社は、香りのトータルソリューション「フレグランス アイデンティティ®」の提供を開始することを発表しました。印刷技術を活用し、香りを纏うノベルティやパンフレットなどのプロダクトを制作します。香りもオリジナルに調香することでイメージやコンセプトを伝えるだけでなく記憶しやすくするなど、顧客の感性に訴求するブランド戦略を実現することを掲げています。
嗅覚は記憶を司る海馬とつながっているため五感の中で最も本能的な感覚と言われており、香りを嗅ぐことで昔の記憶や感情が蘇ることもあるほど。凸版印刷が誇る独自の印刷技術によってノベルティやパンフレットを通して香りを届けることを可能にしたので、嗅覚を使ってブランドらしさを思い出させる仕掛け作りにも取り組めるようになりました。
またブランドを考える時に人格から語調まで検討するように、香りも考慮したモノづくりができると、より立体的にサービスらしさを伝えることができます。ユーザーに豊かな想像を膨らませてもらえる表現方法が増えたからこそ、どれだけ一貫したブランドとして届けられるかが作り手の腕の見せ所になりますね。
プロダクト
EVの制御技術が光る!日産自動車がe-4ORCE技術から着想を得たラーメントレイを開発
https://www.nissan.co.jp/BRAND/TFL/E4RC/
日産自動車株式会社は、スープをこぼすことなく素早くラーメンを運ぶトレイを開発しました。このトレイは、新型「アリア」に搭載される「e-4ORCE」というパワフルな走りとフラットな減速を実現する電動駆動4輪制御技術から着想を得ており、2022年3月7日に公開されたビデオからは高速かつ安定してラーメンを届ける様子を見ることができます。
実際の車を運転する際、乗員の頭が揺れないようなブレーキングには注意を要するものです。減速時の前後の揺れがこの制御技術によって軽減されることで、ドライバーの負荷や乗員の車酔いも低減されそうです。また、それらによって車で外出するモチベーションが後押しされることもあるかもしれません。
このトレイの開発は、日産が取り組む「TECH for LIFE」の第5弾として公開されています。
車両技術を身近なテーマに置き換えて作られるプロトタイプ群は、近未来的な生活を想像させてくれると同時に、その技術の価値を感覚的に紹介するツールとなっているようです。
展示・イベント
Notionがオンラインカンファレンス「Block by Block」を開催
https://blockbyblock.notion.com/
Notion Labs, Inc.が2022年3月2日(米国時間)、公式のオンラインカンファレンスである「Block by Block」を開催しました。カンファレンスでは、キーノートで2022年にリリース予定である新機能の発表がされたのはもちろんのこと、その他にも様々な立場の人によるものづくりや組織づくりについてのセッションが行われました。
近年多くの企業で行われるようになった公式カンファレンス。新機能・新製品の発表はもちろんのこと、そこには企業の価値観があらわれると言えるでしょう。今回のイベントにもNotionの新しいツールによって次の時代の仕事を変えていこうという意思があらわれており、生産性やチーム作りに関するセッションが多くなっていました。
もちろんキーノートで発表された新機能も見逃せません。新機能発表では、大きな組織の権限管理を容易にする「Team機能」や、外部サービスとの連携をより強める機能が発表されました。これによりセキュリティをより細やかに調整できたり、使うツールを変えずにNotionに情報を集約することができるため、今まで使えていなかったユーザー層を取り込みにいけるようになるでしょう。ファンコミュニティへの丁寧なサービスと圧倒的なクオリティで着実にユーザーを増やしているNotion、今後どう人々の当たり前を変えてくれるのか注目です。
ドコモの「iモード」が卒業公演を実施で話題!ガラケーからスマホへの移り変わりへ
https://www.docomo.ne.jp/special_contents/remix/top/
2022年3月4日、NTTドコモが2026年3月にサービスを終了する「iモード」の卒業公演を公開し、話題をよびました。
卒業公演では歴代のガラケーが壇上に並び、卒業式でお馴染みの「仰げば尊し」をガラケーの着信音で披露してくれるのに合わせて、ガラケー世代にはわかる赤外線通信でのメール交換やプリクラを電池パックの裏に貼るなどの昔懐かしエピソードを思い出せるような演出もあり、iモードを使ったことがない筆者でも涙ぐんでしまいました。ガラケー世代は自分の子供が巣立つような気持ちでこの卒業公演を見届けるのではないでしょうか。
通信キャリア各社はネットワーク設備の老朽化への対応や回線の利用者の減少などを理由に、3Gサービスの終了を決定・発表しています。そんな中、ドコモは「サービス終了」というネガティブなイメージを「卒業公演」という前向きなメッセージに転換しています。卒業公演の世界観に合わせてスマホへの機種変更を「入学案内」としているのも素敵ですよね。
サービス終了の報告だけでなく、一緒に振り返る機会があると、ユーザーはより企業やサービスに愛着を持ち、同社のサービスを継続して使おうと思うきっかけになるのではないでしょうか。
トレンド
クラシコムがVIシステムを刷新、原研哉氏が設計
https://kurashi.com/news/11831
ライフカルチャープラットフォーム「北欧、暮らしの道具店」を運営している株式会社クラシコムは、創業15年を迎えたことを機に、2022年2月24日にロゴをはじめとした新しいVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)を発表しました。それに合わせて新たなコーポレートサイトとオリジナルフォントも発表されました。新しいロゴは、盾とクラシコムの「K」を組み合わせたようなかたちから、コップのシルエットのような簡素なかたちに変わりました。
このシンプルな台形に対してパッと見意味が読み取りづらいと感じる人がいるかもしれないですが、デザインを担当した原研哉氏は「シンボルマークというものは、何かを意味するのではなく、イメージの依代として機能するもので、抽象的で無意味なものほどよく働くのです」と説明しました。ロゴマークの刷新自体は一時的なものですが、ブランドとユーザーの関係はそうではありません。ブランドとユーザーがストーリーを紡ぎ、それをロゴマークに盛り込み続けていくことで、今は無意味に見える図形が人格を持つ生き生きとしたロゴマークへと成長していくことが期待できますね。
以上、3月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!
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