FORCAS(フォーカス)は、自社の顧客データ分析によって成約確度の高いアカウントを予測し、そのターゲットアカウントにリソースを集中するマーケティング手法「ABM」の実践をサポートするBtoB SaaSプロダクトです。※ ABM:Account Based Marketing

ユーザー層が急激に拡大する中、FORCASのさらなる可能性を探るため、GoodpatchはFORCASのユーザーリサーチプロジェクトを共創させていただきました。

お話を伺った方:
株式会社ユーザベース 取締役  佐久間衡 さん

Goodpatch
Brand Experience Strategist 岩田
Brand Experience Designer 米永
Design Director/Senior Manager 大山

誰にどんな価値を届けるのか

ーー まず、Goodpatchとプロジェクトを始めるまでのFORCASのユーザー調査の体制について教えてください。

佐久間さん
今思えば、そもそもユーザー調査の体制はあまりできていなかったと思います。

カスタマーサクセスに特化したチームを結成し、直接お会いしたお客様からお話を聞いていましたが、それらは小さな改善にとどまっていました。サービス立ち上げ時に描いていた大きなコンセプトの3分の1くらいしか見えていなかったんです。

私自身がカスタマーサクセスも兼務していたときは、「お客さまの課題」と「我々の目指す世界」の接点とで、どんな機能やコンテンツを作ればよいかの肌感がありました。しかし組織が大きくなる過程で私自身と現場との距離が広がり、お客様の層も変わっていく中で、FORCAS自体も変わっていかなければならないと感じ始めていました。

どんな人たちにどんな価値を届けていくのか。これをクリアにするには、UI/UXがキーになってくると考え、そこに強みを持つGoodpatchに共創をお願いすることにしました。

FORCASの価値を構造化する

ーー Goodpatchメンバーの皆さんは、FORCASの理解をどのように進めていきましたか。

米永
当初は正直よくわからなかったです(笑)FORCASというプロダクトへの馴染みもありませんでしたし、マーケティングに対する苦手意識もありました。

最初はFORCAS社内の皆さんにインタビューをして、みなさんが普段どんなことを考え、どのように業務でFORCASを使っているかを伺いながら、プロダクトと事業の理解を深めていきました。「自分たちが世界で1番FORCASを使いこなす組織でありたい」とおっしゃっていたのがとても印象的で、この組織でのFORCASの使い方が、きっとユーザーのロールモデルなんだろうなと考えていましたね。

岩田
社内インタビューに加えて、セールスの方に模擬営業もしていただいたことで、顧客がどのような課題を抱え、それをどのように解決しているかの理解が一層進みました。ユーザーから「FORCASがないマーケティング業務は想像できない」という強い支持があることも自然とうなずけました。

別軸では、FORCASがビジョンで掲げている「未来のマーケティングを共創する」「それを必要としている人に、無駄なく最速で届く」が具体的にはどういうことなのかを、私たちなりに解釈を進めていたのですが、インタビューで出てきた価値を整理していくと、このビジョンが全部きれいに価値へとブレイクダウンされているということが分かり、企業の思想がそのままサービスになっている一貫性に感動しました。

大山
ご相談をいただいた当初は、プロジェクトのゴールをどこに置くかが難しかったです。佐久間さんの期待を越えられるのかという点もそうですし、僕らのアウトプットが事業に直接インパクトを出せるのか、当初すごく悩んでいたことを覚えています。

最初は「価値を作る」ことが求められているのかもしれないとも考えましたが、お話を聞いていくと米永と岩田も話しているように、FORCASの価値自体は元からしっかりある状態でした。なので、僕らはその価値に確信を持てる状態に持っていくことをゴールに設定しました。その中で、今ある価値をどう構造化するのかがプロジェクトの中での1つの大きなテーマになっていったと思います。

提供価値整理のアウトプット一部

発見された内側にある想い

ーー キックオフワークショップは参加してみていかがでしたか。

佐久間さん
キックオフの「FORCASって何?」というワークが印象に残っていて、楽しかったです。言葉だけじゃなくて、各自がイメージを描いたり、あらかじめ考えてきたものをみんなで持ち寄って、特に共感するものに投票をしたりしました。

意外だったのが、「ウソがない」という言葉に多くの共感が集まったことです。ビジョンの中にある言葉ではないのですが、確かにそれは私が大切にしている価値観で、FORCASが目指す世界にも明確に繋がるものなんです。そういうことが分かったのもワークショップをやってみて良かったと思うところです。

岩田
3年後の未来にFORCASはどうなっているか、を言葉と図で持ち寄っていただくワークでした。

このワークを通して発見された「ウソがない」という価値観は、プロジェクトの折にふれて議論がなされましたね。顧客に対してウソがなくありつづけられるように「FORCASが提供したい価値」と「ユーザーが感じている価値」の一致を目指していきました。

キックオフワークショップに参加したメンバー

価値の循環を示した「FORCASサークル」の誕生

ーー プロジェクトの起点となった、FORCASサークルとはどんなものですか?

岩田
「FORCASが自社プロダクトを使ってどのように成長を遂げてきたか」の社内インタビューをヒントにして生まれてきた図です。

FORCASを使えば使うほどに組織の成長が加速していく、というサイクルを表現したくてその形を模索していたことを覚えています。こだわったのは、価値が1度きりのものでなく、循環するものにすることでした。

米永
結構、逆算的な思考でしたね。整理していった先で「あ、循環したぞ!」となったわけではなくて「プロダクトを中心に価値を循環させるためにはどうしたらいいんだ?」と構造化していました。

理想のイメージが先にあったので、それを付箋に描いて、Goodpatch社内で「多分、こんなのが作れるんだけど、間に入る繋ぐステップと解像度をあげたい!」と議論していましたね。

FORCASサークル構想段階のイメージ

ーー 佐久間さんからみて、このFORCASサークルという表現はいかがでしたか。

佐久間さん
循環という表現がとても良いなと思いました。一回リストを作って終わりでは、我々が目指したい世界ではないし、ビジネス的にもうまくいかない。よくある循環図は普通、一つの円だと思うんですよね。FORCASサークルはそれがメビウスの輪のように、2つの価値を説明しながらも、循環することで価値が高まっていきます。 

ターゲットリストを中心に、そこを洗練させていくことで、実際に提供している価値と、ユーザーが感じている価値がどんどん近づいていく、それを表している図というのが本当に良いと思いました。

米永
自社分析という価値と、それを届けるという2つの価値が別々で回っているのは、ビジョンからすぐにイメージできていて、その2つをなんとか綺麗に紐づけたかったんですよね。

FORCASの文化、オープンカルチャーもかなりヒントになりました。社員インタビューの時に教えてもらった話で、「まず先に自己開示する。それによって他の人からFBをもらえる、FBをきっかけに、さらに自己理解が深まる」と聞いて、直感的に「カルチャーもプロダクトに似ているじゃん!」と思いました。自社分析・自社傾向把握によって物事を進めるところが。抽象的なんですが、イメージです。

違う視点から化学反応を起こす

ーー Goodpatchメンバーが佐久間さんと話す際に意識していたことはありますか?

米永
少し違う視点で話してみる事を意識していました。マーケティングは専門知識が求められ、難しい領域。同じレベルまで追いつくのは、このプロジェクトの期間中では難しい。

だからそこは思いっきりFORCASの皆さんに頼りました。もちろん話ができるレベルまでは前提知識として必死に勉強しますが、UI/UXデザインの領域ではこういった考え方があるとか、デザイナーとしてはこう考える、といった異業種の視点が入ることで、科学反応が起きるんじゃないのかと思っていましたね。自分達ならではの視点はどの切り口だろうかという感じです。

岩田
どの視点が科学反応を生むかは分からないので、普段から数多く提案することを意識していました。1つのアイデアから思いもしなかった本質的な議論につながることもあるので、まずはテーブルに並べてみる、議論の呼び水をいくつも用意していました。 

米永
見せてないスライドもめちゃくちゃあります(笑)。
点をたくさん作っておいて、定例の時には1本の流れに繋いで見せる。議論が煮詰まってくると、隠しておいたスライドを引っ張り出しては「ちなみにこれどうですか?」と進めていました。

佐久間さん
楽しかったですね。いろんな視点がいっつも生まれるので

ミーティングの様子

ビジョンとストーリーの中間を作る

ーー このプロジェクトを通して、FORCASで変化があったと感じていることはありますか。

佐久間さん
一番大きいのは社内の変化ですね。

FORCASのビジョンは「未来のマーケティングを共創する」ですが、ユーザーは異なるニーズを持ち、別々のストーリーを持っている。だからビジョンとストーリーをつなぐ要素を作って社内で共有することはとても重要なんですよね。それが無いと、いろいろなストーリーに刺さるモノを作れない。ビジョンだけあっても曖昧なままで終わってしまう。

特に我々だと、エンタープライズ強化が大きなテーマになっていて、大企業のみなさんにも価値を感じていただけるプロダクトに進化していく必要がありました。そこにどうアプローチすればいいのかを整理してもらったことで、各チームがエンタープライズ強化を行っている現在、まさにその共通化された認識の強さを実感しています。

これまでのお客さんが価値を感じていてくれているのは、FORCASサークルの右側(それを必要としている人に最速で届けるサイクル)。今後、強化していかなければいけない価値は左側(未来のマーケットを可視化するサイクル)。これらは別々の物ではなく繋がっていて、各々が強化されることで、ABMという新しいマーケティングの実行に繋がっていくイメージを共有できました。

エンタープライズ 強化に向けた分析アウトプット一部

また、このプロジェクトを開発につなげて、新機能を発表すると、ユーザー会でとても良い評判を得られたことも大きな成果です。FORCASサークルを回転させる、特に左側の回転を強める所でのコアな価値、まだ出来ていなかった部分を間違いなく作ることが出来てきました。

米永
嬉しかったのが、FORCASサークルを作ってすぐに、現場のみなさんが導入オンボーディングの説明など、実際の業務で使ってくれていたことです。最後に参加させていただいた熱海での全社合宿でも、FORCASサークルを起点に議論があり、活用していただけているのが伝わってきました。

今と未来を繋ぐ

ーー プロジェクトを振り返り、一言で表現するとしたら、どんなプロジェクトだったと思いますか。

 米永
共通言語を作る」ですかね。みんなが同じビジョンに向かっていても、やっぱり自分の持っている日々の業務やKPIには距離があるので、その1歩手前の共通の言語をつくるプロジェクトでした。

岩田
「FORCASの提供価値」と「ユーザーが実際に感じる価値」を様々なニーズを持つユーザーさんとの間でどう近づけるかを考えるプロジェクトでした。理想を描くことはもちろん、実際の開発にどう落とし込むかまで具体と抽象の行き来が多くありました。 

大山
トップになるための登り方を探すプロジェクトだったのかなと思います。1番になるための道のりは数多くあるものではなく、限られた選択肢のなかで何に集中するかが大切です。今回は、その選択肢を構造化することで、確信をもった意思決定をする後押しができたと思います。

佐久間さん
私、いま完璧な言葉を思いつきました。このプロジェクトでやったことは、今と未来を繋ぐっていうことだと思います。FORCASの現在の強みと強化していきたい未来の価値が明らかになりました。ビジョンを明確化する何かを作ることって常に必要で、その価値をこのプロジェクトを通じて実感しました。

実は、2019年12月にユーザベースに大きな体制変更があり、FORCASに加えSPEEDA、INITIALと3つのSaaSプロダクトを事業統合することになりました。それぞれのプロダクトの価値を明確にしたうえで、複数の事業でどうシナジーを生み出すかのビジョンを描くことが次のステップです。

ビジネスパーソンが毎日自然にログインするサービスを――SPEEDA・FORCAS・INITIAL事業統合で目指す世界

つまりFORCASサークルのようにビジョンをもう少し解像度を上げたものを、プロダクト横断で作りたい。こうして、ユーザベースグループ全体のミッションである「経済情報で、世界を変える」を実現していきたいと思っています。その際はまた一緒にサポートしてくれると嬉しいです。


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