Goodpatchのデザインパートナー事業において、UX Design LeadとしてUXデザイナーのマネジメントをしているかつきです。今回は、20名を超えるUXデザイナーを抱える組織で行っている2つのクオリティマネジメント施策について、書いてみたいと思います。デザイナーの成長できる環境作りや、再現性の担保に悩んでいる方などにぜひ読んでいただきたいです!

結論を先に知りたい方向けに

結論を先に述べると、知肉会、知潮会という2プロジェクト前と後にナレッジをシェアする2つの会議体の施策です。

知肉会:プロジェクト終了時にプロジェクトでのチームメンバーの体験を追体験し、チームの血(知)肉とする会
知潮会:プロジェクト開始時にチームメンバーの集合知を結集し、プロジェクトの潮目を読む会

では、早速本題に入りましょう!

はじめに

Goodpatchのデザインパートナー事業は2020年5月現在100名強のメンバーが所属し、UXデザイナーを束ねる組織はExperience Design Unit(XD Unit)と称しており、UXデザイナーだけでも25人以上の組織となっています! なかなかの規模ですよね。新卒・中途と入社経路はさまざまですが、経験や知識、キャリアも多様です。(キャリアの多様性に関しては、個人のnoteでも以前発信しましたので、こちらもぜひ)
メンバーの多様性だけでなく、Goodpatchがデザインパートナーとして関わるプロジェクトは、業界・業種・事業フェーズなど多様で、それぞれに最適なプロセスや解決策を取るため、全く同じプロセスで進めるプロジェクトはまず無いと言っていいでしょう!

そのような中でUXデザイナー約25名のうち、6名が所属するチームのマネージャーである私の責務として、大きい2つは「プロジェクトのクオリティ向上」「メンバーの成長」です。今回はチームで行っている施策について皆さんに共有いたします。

ナレッジの接続、ベースアップを達成するために行っている2つの施策

皆さん、SECIモデルという概念はご存知ですか?一橋大学の野中郁次郎さんの提示したナレッジマネジメントのフレームワークであるSECIモデルは、知識の変換を4つのフェーズに分けて組織の知を向上、マネジメントすることを目指すもので、今回紹介する2つの施策もSECIモデルを参考にしています。

知肉会とは

知肉会とは、プロジェクト終了時にプロジェクトでのメンバーの体験を追体験し、チームの血(知)肉とする会のことを指しています。「ナレッジを話す」としていた時期もあったのですが、ナレッジにまとめると綺麗にまとまりすぎてしまい共感しづらい、そもそもナレッジをまとめること自体に一定のハードルがあるなどの理由からあえて、「体験を話す」会としています。ありありとプロジェクトの過程を話してもらうことで、暗黙知となりやすい、UXデザイナーの「意思決定」の部分を追体験することができる会となっています。

アジェンダとしてはとてもシンプルで、

  • 案件の流れを担当UXデザイナーがプレゼンテーション
  • 聞いているメンバーは、気になった所をSlackのスレッドに投稿
  • プレゼンが終わり次第、↑のスレッドをベースにディスカッション
  • このプロセスを通して担当UXデザイナーが体験した流れを追体験する

といったものです。

Slackで発表を聞きながら質問をどんどん投げています。

この過程は、SECIモデルでいうところの、「共同化」にあたります。SECIモデルでの定義では、共同化に対応する場として「創発場」として経験、考え方などの暗黙知を共有する場のことを言います。これにより、自分が携わっていない案件でも、追体験することで、UXデザイナーの中の引き出しを拡張する意図です。理想的には難題に直面した時に「あの時のあれが使えそうかも……?」という思考にひっかかりができると、素晴らしいですね!

知潮会とは

知潮会とは、プロジェクト開始時にメンバーの集合知を結集し、プロジェクト設計に役立て、その後の潮目を読む会のことを指しています。これは、知肉会を数回実施する上で、“プロジェクト設計を集合知で扱うことで手札がグッっと増えるのでは?”という仮説から生まれています。デザインプロジェクトの多くは、プロジェクト開始時は最も不確実性が高く、リサーチや検証を進めながらプロジェクトの不確実性を下げていくものになり、不確実性と比例してクライアント含め、チームの不安も初期がとても高くなります。その不安を解消するための生まれたのが、プロジェクトの今後の潮目を適切に読む意図で開催している知潮会です。

アジェンダとしてはこちらもシンプルで、

  • プロジェクト概要を担当のUXデザイナーが展開
  • クライアントが抱えているであろう課題を共有
  • プロジェクト設計の敲きを共有
  • 以上を聞いたメンバーがプロジェクト設計に対して改善案を発散
  • 持ち帰って担当のUXデザイナーがプロジェクト設計の手札とする

この会議では「発散」を目的にしています。そのため参加メンバーも「これは考えてるだろうからやめとこう」という意識を、発散を目的に置くことで「これは考えてるだろうけど出しておこう」というマインドになり、でる意見が増えるように心がけています。また、先日リリースが発表されたStrapなどのコラボレーションツールを使用することで、オンライン上で改善点や気付きがリアルタイムに可視化されていき、その後の議論がシャープになります。

この会を開催する副次的効果として、アサインされていないプロジェクトへの当事者意識が増し、長期的に相談しやすくなる状態を作れるというメリットがあります。当事者と参加者がシーンや強みごとに頼れる相手を認識できて相談しやすくなることなども、良いチーム作りに繋がっています。結果的に、全プロジェクトのクオリティを上げていけると良いなと思っています!

メンバーからの声

そして、これらの活動はグループに閉じたものではなく、原則誰でも参加可能でとてもオープンです。Strapのデザイナー・フロントエンドエンジニアのメンバーも参加してくれていたり、新入社員のメンバーや他職種のプロジェクトメンバー等、その都度ゲストが誰でも参加できる仕組みがあるので、UXデザイナーの閉じないコラボレーションを促進しています。

また、リモートになってからは、この回を録画して参加できなかった人にも広く公開していることも価値が高いですね。

おまけ:グループの存在意義と行動指針

各々が別々のプロジェクトに携わる中で、あえて6名のUXデザイナーが集まるチームを組成する意味はマネジメント効率以外に存在するのか?と考えた時期もありましたが、メンバーのおかげで、存在意義(目的)と行動指針を決めることが出来ました。今回の施策もこの目的と行動指針を元に出来たものになります。

存在意義(目的)

  • なんでも相談出来る関係であること
  • ナレッジのベースをアップ出来るよう、各人のナレッジの接続性を作ること
  • トップから下りてくる情報共有の効率化をすること

行動指針

  • 忖度をしない
  • 相談を恥じない
  • 経験(Experience)を話す

毎週の定例会議などは、↑の目的を達成出来るようなアジェンダを組んでいます。その中で、ナレッジの接続、ベースアップを達成するために行っている2つの施策がまさに知肉会と、知潮会です。
同職種がこれだけ集まっている組織だからこそ、集合知でプロジェクトのクオリティを上げていけるよう、今後も新しい施策にトライしてきます!共感された方は、ぜひGoodpatchへのご応募をお待ちしております。

また、属人化による品質のばらつきを防ぎ、クオリティの再現性を大切にするGoodpatchへのお仕事のご相談も随時お待ちしております。新規事業の立ち上げや既存事業のリニューアルなどお悩みの方は、こちらからお気軽にお問い合わせください!