グッドパッチには多くのデザイナー、エンジニア、プロジェクトマネージャーといったクリエイティブな人材が在籍していますが、彼ら彼女らを取りまとめる「マネージャー」というポジションの人間もいます。
現在のデザイナー・エンジニア組織は、専門性ごとのグループ単位でマネジメントが行われています。

クリエイティブな人材をマネジメントすることは、とてもチャレンジングなことです。
多くの人が自分で考え自分でものを生み出せるので、タスクレベルの指示や期日の管理などの細かいマネジメントよりも、向かう方向性を合わせて、そこに向けた動きをフォローするようなスタンスの方が合っていると感じています。
そういった考えの中で、常日頃、コミュニケーションのポイントとなると考えているのが、フィードバックです。

今回は、フィードバックをクリエイティブコミュニケーションの1つの手法と捉え、フィードバックする側・される側の心構えを共有したいと思います。
当たり前と感じる部分もあると思いますが、改めて認識し、双方の前提を揃えることで、より内容の濃いコミュニケーションになるでしょう。

フィードバックとダメ出し

先日、社内のナレッジ共有会でも同様のテーマを話したのですが、そこで興味深いと感じたのが、海外経験の長いメンバーからの感想。「フィードバックとダメ出し、この違いが日本だと小さく感じる」とのことでした。

自分も経験上理解できるのですが、企画やデザインなど、自分がつくった何かを先輩やクライアントに見せる時、良いか悪いか「ダメ出し」をもらう感覚。もちろん自信を持ってプレゼンテーションするのですが、そこでもらえるリアクションは、褒められるかダメを言われるかのどちらか。そんな感覚を持っていたように思います。特に20代の頃は。
上手くいけば褒められるし、そうでなければいろんな言葉でダメ出しされる。
どちらもありがたいものだ、言われなくなったらおしまいだ。そんな風に思っていたのを思い出します。

30歳で気づかされたフィードバック

僕は30歳で転職をしました。それまでは広告業界で、ある程度共有された前提条件の中で成り立つコミュニケーションを取っていました。しかし転職によって環境が大きく変わり、デザインを共通言語にできない中で、デザイナーとして仕事をするようになりました。

その際、いっしょに仕事をしていた方から、「ここで話すことは、”フィードバック“だ。良いことも悪いことも全て、良いものをつくるためのフィードバックだ。キミを悪くいうものではない。」と言われたことを今でもよく思い出します。
それまで「提案」して「ダメ出し」だと思っていた自分の常識が、フィードバックという概念に上書きされて、頭の中がゾワゾワしたのを覚えています。

デザイナーとして、みんなの思いと自分の考えを目に見える形にして、それを誰かに見せる時、そこでもらえる意見がアウトプットのことではなく、自分のことを言われているように感じることは往々にしてあると思います。

「せっかくつくったのに」
「こんなに時間をかけたのに」
「人の気も知らないで」

そんな気分になることもあるかもしれません。

フィードバックは、プロジェクトに関わる人間が、その作品、プロジェクトをよりよくするために行うコミュニケーションです。
そこにはいくつかのルールと前提条件があり、それを認識することで、クリエイティブなコミュニケーションが成立します。

この4月にデンマークのデザイン・ビジネススクールKAOSPILOT主催のクリエイティブリーダーワークショップに参加したのですが、そこでもフィードバックのしかたとされかたについて、時間を割いて前提を合わせる場がありました。

この「フィードバックは良いものをつくるため、成長する・させるためであり、あなたを責めるものではない」というこの大前提を言葉に出して、あるいは明記して、フィードバックする側・される側が認識すること。
それがフィードバックというコミュニケーションにおいて、何より大事なことだと感じています。

フィードバックする側の心得

フィードバックする側は、多くの場合でされる側よりも経験がある人、される側を管理する人など、上下関係があります。
上下関係がある場合、フィードバックされる側はダメ出しのような感覚を持ちやすい状況が起こりがちです。ダメ出しのコミュニケーションでは、その場でより良い何かが生まれることは多く期待できないでしょう。
そういう状況をつくらないためにも、覚えておきたいことがいくつかあります。

  1. 相手やモノを成長させるために行う
  2. 手短に
  3. 観察(事実)と意見は分けて整理する
  4. 現状のいいところをまず伝える
  5. ここがダメという否定的な伝え方ではなく、こうした方がいいという提案をする

相手の言い分に対して、「良いね」「なるほど」といった言葉で相槌をうち、聞いている姿勢を見せることも重要です。
良いところを先に指摘することで、さらによくする提案がやりやすくなります。
「こういう場合はこういうやり方も考えられるんじゃないか」、「自分だったらこうするけど、どう思う?」
といった、相手が自分の行動として物事を進めやすくするコミュニケーションができると、フィードバックの現場でどんどん良いものが生まれ、クリエイティブな循環が起こるでしょう。

フィードバックされる側の心得

次にフィードバックされる側のお話です。
フィードバックというものに対して、する方される方がそれぞれ同じ前提条件を持てるかどうかが非常に重要です。

  1. 自分またはモノを成長させるために行う
  2. そのため、言われたことに対して、すみませんという気持ちを持つ必要はない
  3. 事実と意見は分けて整理する
  4. その場で意見を言い切る(作業は持ち帰ってもいいこともあるが、意見や気持ちを持ち帰ってもいいことはない)

プロジェクトやアウトプットを推進させるために行うのがフィードバックです。フィードバックされる側は、言われたことをまず受け入れ、自分の中で咀嚼し、そこに自分の考えを乗せて提案を返す、という意識を持って臨むことが大事です。
より良いものをより早く生み出す意識で、クリエイティブなプロセスを楽しめるようになるはずです。

まとめ

デザイナーは目に見えるものを生み出すスキルが求められるのは大前提。
どんな人にもそれを相手が理解できるように伝えることも重要なスキルです。
クリエイティブなコミュニケーションを円滑にデザインするために、フィードバックというツールをうまく使っていくことは大事なことだと考えます。

気持ちのいいフィードバックをしあいましょう。

日頃のコミュニケーションにこの記事が少しでも役立てばうれしいです。