スタートアップにCDOが必要な理由 CDO Night #1 レポート【パネルディスカッション若手編】

本記事は、2017年10月3日に開催された「スタートアップにCDOが必要な理由 CDO Night #1」のイベントレポートです。

Onedot株式会社CCO 坪田 朋氏によるオープニングトークはこちらをご覧ください。

イベントの後半では、様々なジャンルでサービスを提供するスタートアップのCDO/CCOによる、パネルディスカッションが展開されました。
参加者から事前に募った質問は、様々な議論へ発展。今回は、若手編を書き起こし形式でお送りします!

パネルディスカッション 若手編

若手編として、3名のCDOが登壇。全員が創業メンバー兼CDOであることから、スタートアップの初期と中期での変化や苦労、そして自らの役割について、ディスカッションが繰り広げられました。

登壇者プロフィール

広野 萌|株式会社FOLIO 共同創業 CDO
1992年生まれ。ヤフー株式会社へ入社後、新規事業・全社戦略の企画やアプリのUX推進に携わる。2015年、国内株式を取り扱う10年ぶりのオンライン証券サービスFOLIOを共同創業し、CDOに就任。

村田 あつみ|株式会社ラブグラフ 取締役CCO
1991年生まれ。大学卒業後、リクルートホールディングスに新卒入社。現在は、大学在学中に立ち上げたフォト撮影サービス「Lovegraph(ラブグラフ)」の取締役CCOを務め、これまで同サービスのマーケティング、デザイン、開発までを統括。

豊田恵二郎|株式会社Flatt CCO
1996年生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科在籍。株式会社ラブグラフのデザイナーを経て、2017年4月より東京大学を休学、株式会社Flattを共同創業し、CCOに就任。同年10月にライブコマースアプリ「PinQul(ピンクル)」をリリース。DTP・CI・動画からweb・UI/UXまで、クリエイティブ全体を統括。

Q1.会社を立ち上げ、CDOになったきっかけ

広野 大学時代、友人から「証券会社を作ろうとしていて、エンジニアが必要だ」と声をかけられました。「自分はデザイナーなんだけどな」と思いつつ、プロットを書く程度ならとお手伝いを始めたのですが、現FOLIO代表の甲斐と出会って一緒に仕事をするうちに、「この人となら面白いことができる」と考え、最終的に8人で起業しました。

CDOを名乗ったのは、日本にCDOという役職や、デザイナーが創業している有名な会社が少ないことが関連しています。Appleを筆頭に米国ではCDOがごく自然に存在して、デザイナーがPinterest、Airbnb、Behanceなどを創業しています。そんな流れを、「なぜ日本ではデザイナーが軽視されているんだろう」と思いながら見ていました。この現状を変えるためには、まずは日本でCDOをもっと増やしたいなと。FOLIOのような証券会社にCDOがいるという事実だけでも、デザインやCDOの必要性を証明できると考えて、あえて「デザイン」という単語が入っているCDOを名乗ることにしました。

村田 私は大学時代からスタートアップでデザイナーをしていて、いろんな領域のデザインを経験しました。しかし徐々に、デザイナーの力だけでは解決できない仕組みや課題が多いことに気がつき始めたんです。「私だけの力ではどうにもできない」と思うことにコミットするのが辛くなってしまって、それなら自分が心から良いと思える領域に、人生や時間を使いたいと思うようになりました。
人生を捧げられるような好きなことを考えたら、友達から聞く恋愛話や、家族の幸せが浮かびました。愛や恋の領域に関われたら楽しそうだなと思ったんです。そんな時に共同創業者の駒下が、友人カップルの写真を撮影して喜んでもらっていることを知り、私から彼に「サービス化しようよ」と声をかけてLovegraphをスタートしました。

実は、創業当初はCCOを名乗っていなかったんです。きっかけはCOOが入ってきたタイミングで、CEOとCOOがいるのに、私だけ役職がないなと(笑)。当時、CDOという言葉は聞いたことがなかったのですが、コーディングやマーケティングも担当して、クリエイティブ全般を見ていたことから、包括的にCCOとつけました。加えて、「モノ消費よりコト消費」と言われるこの時代に、Lovegraphは体験価値に重きを置き、ブランディングを大事にしているんだと明示したかったという理由もあります。

豊田 もともとデザインが好きだったので、大学に入ってからフリーランスでデザインの仕事をしていました。自分の成長を考えた時に、組織の中でもっとしっかりデザインを学びたいと思ったんです。そこで2年生の夏からLovegraphでインターンを始め、3年生になる頃には、休学してデザインにより深く取り組む決意をしていました。1年間、色々な企業でインターンをしてスキルを伸ばす選択肢もありましたが、昔からモノづくりが好きで、ゼロイチがやりたかったことと、信頼できるメンバーに出会えたタイミングが重なって、今年の5月に創業しました。
次に、CCOになった理由なんですが、勝手に名乗り始めました(笑)。僕がコーポレートサイトを構築している時に、肩書きを決めたんですよね。

広野・村田 これはデザイナーあるあるですね(笑)。

豊田 僕が起業をした今年5月の時点で、スタートアップ界隈ではCCOが増えてきていて、自然なことだという風潮がありました。それに加えて、自分がCCOを名乗ったら、CCO以上に優秀なデザイナーが入ってきにくいというデメリットを認識した上で、自分がこの会社のクリエイティブを統括するんだと、覚悟を背負って名乗り始めた部分もあります。

Q2.スタートアップのデザイナー第1号の適性

豊田 CDOは何でも屋ではないという認識は正しいと思います。一方で、少なくともクリエイティブの範囲については、広く浅く触れることも重要なのかなと個人的には思っています。紙、ウェブ、アプリ、CI/VIまで幅広くできるようなタイプが、スタートアップ初期の一人目としては向いていると思います。僕自身も、そのタイプである自覚がありますね。

村田 私も、グラフィックからコーディング、UX、マーケティング、SEOまで経験してきたので、満遍なくできるような人がいいのかなと思います。初期のうちは、慢性的に人が足りないので。
中期的な視点では、私自身がずっとプレイヤーでやってきたので、人が増えた時に指示ができなくて困ったことがあります。なので初期のうちから、メンバーに伝える能力もつけておくべきですね。

広野 デザインの重要性を理解している組織では、自分のデザインしたものに対していい意味でプライドがない人が向いていると思います。作って壊してのサイクルを速いスピードで繰り返せることが大事かなと。あとは、世に出してユーザーの声を聞いて、「なんか違うな」と感じたら、すぐピボットできるような柔軟な思考能力がある人がいいんじゃないかと思います。

一方で、デザインへ理解がない組織に対しては、文化を作れる人が重要ですね。そうした組織では、まずデザインの重要性を説くことが大切だと思います。うちの代表も、出会った頃はデザインの重要性に気づいていなかったので、僕が本や記事を引用してインプットを続けて、「デザインって重要なんだよ」と根気よく啓蒙を続けました。今では代表自ら、FOLIOの強みをUI/UXだと話すようになるまで、デザインの重要性を理解してくれています。デザインって、プロダクトづくりの基盤となる思想だと思うんです。なので、僕のように違う業界に飛び込んだとしても、プロダクトづくりの文化を自ら切り拓ける人が重要になると思います。

Q3.CDOの具体的な仕事について

村田 十人十色だと思いますが、私はデザインの実務はもうほとんどしていません。実際、職種で言うとブランドマネージャーで、業務としてはプロダクトマネージャーに近いです。もちろん創業者で経営陣なので、経営戦略や事業計画を作るところから、マーケティングのKPI設計と、それを戦術に落としこんで、アサインやマネジメント、ディレクションすることを、広報やブランディングを含めてやっています。なのでデザインの実務的なところは、リードデザイナー中心にメンバーに任せていますね。
私は、経営とはアートでありサイエンスであると考えています。サイエンスとしてビジネスを捉える人は、マーケットをさぐり当て、数字からファクトを見出してビジネスを形作っていくことができる。でも、より情緒的な部分にサービス価値が置かれる今後は、アート的な観点、感覚的な判断をスピーディーに下すことが同じように大切だと思っています。

豊田 PinQulはアプリがメインのサービスなので、まず僕が担ったのは、アプリ全体の設計とデザインへの落とし込みでした。アプリのデザインが出揃うと、実装の期間に入ります。そうなると僕は手が空くので、他の範囲にも手を回すようにしました。
例えば、商品管理のadminツールを作ってエンジニアの負荷を減らすことで、組織全体のスピード感を上げる動きをしました。それから、現在(2017年10月3日時点)はサービスリリース直前なので、様々なメディア様からご連絡をいただきます。デザイナーの仕事って広義的には「伝える」ことだと思うので、デザイナーの能力を活かして、僕がメディア対応なども統括して行っています。
もう一つやっている仕事が、CS(カスタマーサポート)です。いただいたお問い合わせが、なぜ飛んできたのかを自分なりに咀嚼して、常にユーザーの課題を発見する態勢でいられるので、ユーザー視点でサービスを作る上ですごく良い仕事だと思っています。

広野 僕も村田さんと同じく、プロダクトマネージャーなので制作実務のみをがっつりする感じではないです。今はデザイナーが自分を含めて4人いるので、彼らの制作物に対して「本当にユーザーのためになっているか」「コンセプトからずれていないか」をあえて確認する作業をCDOの仕事としてやっています。
スタートアップのデザイナーがデザインするものってたくさんありますよね。例えばうちは証券会社なので、封筒をデザインすることもあったり、マーケティングチームのアウトプットについても、画像や文言まで必ずチェックするようにしています。それはユーザーが接する全ての部分において、感動を与えたいからなんです。

Q4.経営に対して、最初から興味があったのか

村田 デザインは問題解決の手段だと言われていますが、突き詰めていくと経営にも繋がったと思っています。今でも、「経営」というデザインをしているような感覚です。デザイナーの問題を解決しようというマインドは経営者に向いていると思いますよ。

豊田 大学1年時には全く興味はなかったです。ただデザインを趣味で始めて、スタートアップ界隈の人と交流を重ねる中で「経営ってすごく楽しい」という気持ちになってました。気づいたら3年時には起業していた感じです。
つまり、経営に最初から興味があった訳ではありませんが、デザインという課題解決と、スタートアップの環境が楽しいという気持ちからハマっていったので、このふたつは似た側面を持ち合わせているんだと思います。

広野 似た側面はありますよね。僕がデザイナーという職種で就活を始めたきっかけは、Business Model Generationという本で引用されていた、ロジャー・マーティン氏の「ビジネスマンたちは、ただデザイナーのことを理解すればよいのではない。自らデザイナーになる必要があるのです。」という言葉でした。ユーザーとの接点全てに責任を持とうとすると、必然的に経営に近づいていきますよね。

Q5.ずばり、いいデザイナーの条件とは?

豊田 デザインの定義が広まるにつれて、デザイナーにはより幅広い能力を求められていると思います。紙、ウェブ、アプリだけではなく、UXデザインや、組織への啓蒙など、本当に多彩な能力が必要です。ですが、そんな超人のような人はなかなかいません。なのでデザイナーを採用をする際は、その人が何を得意としているデザイナーなのか見極める必要があると思います。そこが難しいところでもあるんですけどね。

村田 人の想いを汲み取って、形にして世に出せる人でしょうか。ふわっとした言葉を汲み取って、形にすることを繰り返しできる人は活躍できると思います。

広野 デザイナーってアーティストとは違って、自分の様式を持たないんです。ユーザーを置いてきぼりにしたアーティスティックな世界観を押し付けるデザインも、型にはまったようなデザインを作るだけでもダメ。競合との差別化を図りつつも、自分なりのスパイスを少しだけ入れられるような人がいいデザイナーなのかなと思います。

CDO Nightのグラフィックレコーディング

当日はGoodpatchからグラフィックレコーダーの香林も参加し、リアルタイムでディスカッションの模様を記録しました。

イベント当日、リアルタイムで描かれたグラレコ

描き込まれた項目の細かさからも、パネルディスカッションの活気が伝わってくるように感じます!
香林に、今回のイベントで意識した点や感想を聞いてみました。

「Twitterで拡散してもらいたい」「参加者のブログや、メディアに掲載してもらって、イベントの雰囲気を伝えたい」という目的だったので、リアルタイムに場で活かすというよりは、記録に徹しました。イベントに参加出来なかった方にも、出来るだけ話を届けたいという気持ちから、話を大きくサマライズするより、要素を細かく拾って描いています。結果的に、上から下に向かってどんどん場の空気が密になっていく様子が見て取れるようになったと思います。
応募数や来場数から分かるように、注目度が高く、今後も続くイベントなので、アウトプットがイベント全体の印象に影響すると考えて、色使いや描き方にも気を配りました。
このグラレコが完全に正しいわけではないのですが、これをきっかけにイベントについてのコミュニケーションが生まれれば嬉しいなと思っています。

こちらのグラレコでもお分かりいただけるように、次回シニア編は若手編と異なる質問が投げかけられ、イベントの模様はまた違った表情を見せました。

近日中に公開予定なので、引き続きお楽しみに!

ABOUTこの記事をかいた人

Kaori Sugimoto

エディターをしています。デザインをもっと身近に感じてもらえるように、色々なコンテンツをお届けします!
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