グッドパッチでプロダクトデザイン・マネジメント(PdM)をしている石田です。

「どうしていいプロダクトを作っているのに売れないんだろう」と思ったことはありませんか?

売れるためには・利用してもらうためにはどうすればいいのかというのは、プロダクトを企画したり、作る方々にとって永遠のテーマなのではないでしょうか。「どうすれば……」を完全に予測できるのであれば、世の中に売れないプロダクトはありません。

「売れるためには・利用してもらうためにはどうすればいいか」はポイントを押さえれば、考え、実行することができます。

過去、クライアントが「良いモノを作れば勝手に売れるから」と言っていました。しかし、サービス・プロダクト・情報が膨大になってきた昨今では、良いモノ=売れるモノではないというのが事実です。

私もさまざまなプロジェクトで、多くの価値あるプロダクトやサービスがユーザーに受け入れられないという実態を見てきました。その経験から、まずはプロダクトやサービスに携わる皆さんに向けて、今回は私の考える「プロダクトを売る」ということについての考えを紹介したいと思います。

「売れる」対象は変わることを忘れない

「売れる」ことと「利用してもらう」ことは大きく違います。

例えば、本来月1万円かかるものが、お金を払わずに利用できるなら、そのものに興味がない人も「一度は利用してみよう」という思考になるでしょう。また、ただ値段を大幅に安くして買ってもらえるだけであれば、それもビジネスとして成立しているとは言えません。

プロダクト自体を売るのではなく、それ自体は無料で提供し、他の方法で利益を得ているならば、ビジネスの在り方を変えているだけなので、戦略的には「売れるプロダクト」を作る方法の一つといえます。

なぜならば、それは「売れる」対象を変更しているだけなのです

マンガアプリやYouTubeなどを、無料で利用している際、広告を見かけたことがあると思います。これはアプリを利用しているユーザーから対価をもらうのではなく、利用ユーザーにリーチしたい企業に広告枠としてアプリを活用してもらい、その場に対して対価を得ることをメインにしています。

「売れる=ユーザー利用」から「売れる=広告枠の購入」という構造に変化しており、サービスの機能やコンテンツの価値への対価ではなく、それを利用したユーザーへのマーケティングへの対価になっています。

これは、ターゲットとなる売り先が大きく変化していることにあります。プロダクトの売り先は必ずしも利用者ではなく他のターゲットを狙っていくことも、プロダクトの売り方の一つといえます。

プロダクトのニーズを探るための対象を絞らない

私はユーザーのニーズをインタビューしたり整理するときに「売れるのか?」ということを意識しています。例えば、ユーザーリサーチで「こんなサービスあったらいいな」とユーザーが思ってくれるかどうかを調査することは多いと思います。

もちろん、プロダクトの価値定義のために必要なプロセスでもありますが、それだけでは足りません。

私はさらに「サービスをユーザーがどうやって受け入れるか」という観点を入れることが重要だと考えます。toBとtoCでは違いもありますが、まずは購入における意思決定者は誰なのかを考えてみます。

toBであれば、実際に使うユーザーの他に、購入の意思決定に関わる承認者や購買担当など、導入プロセスのステークホルダーを対象に入れましょう。そのステークホルダーにもニーズがないと、購入にまでは至らないからです。またtoCであっても、購入の意思決定者が実際にプロダクトを利用するユーザーの他にいる場合があります。

以前、大学入試のプロジェクトに関わった際は、入学する高校生だけではなく、保護者がどういう思考で子供を入学させたいかを調査したことがあります。これは、実際に大学入試や入学金を支払うのは入学する高校生ではなく、その保護者だからです。

UXを検討するときに重要なのは、UX観点だとペルソナを作るとき、利用するユーザーに関わる人たちを洗い出し、その関係性を整理するということです。対価を支払う対象のことを考えてプロダクトを設計することが「売れるプロダクトをつくる」ということなのです。

特に企業の場合は、担当者がどうやって上司に説明しやすいか、上司がどうやったら稟議を書きやすいかなどを考えておくと、企業は導入がしやすくなり、導入を前向きに検討したいプロダクトにすることができます。

価値のあるサービスがユーザーに届かない理由は「複雑さ」の届け方

「いいプロダクトをつくったのに売れなくなってしまう」状態に一番陥りやすい例もご紹介します。

昨今、テクノロジーも進歩して他社との差別化を図り、さまざまな機能やニーズを取り入れたことにより、1つのプロダクトやサービスで解決できる課題やコンテンツが多く、金額以上の価値を実感できることが増えました。

「売れる」ことに直結する分かりやすいポイントがある上で拡張するのであればいいですが、最初から価値を多く持ってしまうと、ユーザーからすると「結局、何のサービスなんだろう?」と分からなくなってしまうことも多くあります。

また、技術的に価値があるものや崇高なものであっても、ユーザーが自分ごとにできなければ意味がありません。「使ってみれば価値を実感してもらえる」というのでは、もう遅いのです。前記にもありますが、たくさんの情報の中で一つ一つ利用して精査するほどユーザーは余裕がありません。

では、複雑な価値は「売れる」という観点ではダメなのでしょうか?答えはNoです。

複雑な価値でも、しっかり対価を払いユーザーが求めているものであれば、提供しビジネスとして成功する可能性があります。

SFAにCRMやMAなど多機能となっているSaaSや、1つのプランで通販の送料無料や動画視聴など、さまざまな体験ができるAmazonのサブスクリプションサービスなどが分かりやすいでしょう。

Amazonは、最初はオンライン書籍販売からスタートし、WEB通販という価値をユーザーにしっかり届けて、それを軸に複数の価値を派生して提供することで、複雑な価値をしっかり届けることができています。

しかし、冒頭にも書いた通り「良いモノを作れば勝手に売れる」というわけではありません。そのためにはプロダクトの価値をしっかりと届ける「メッセージング」が重要です。メッセージングというと、キャッチコピーやタグラインのようなテキストをイメージされる方もいるかもしれませんが、ここでは「価値を届ける方法」としてのメッセージングの方法をご紹介します。

シンプルなメッセージングを徹底する

価値が複雑になってしまうの原因はユーザーが理解しづらいことがほとんどです。複雑さだけではなく「他社サービスと何が違うのか」ということが、一つでもユーザーに理解されづらければ、無価値なものと判断されてしまいます。

価値の届け方一つで投資して作ったプロダクトの成果も変わってきます。効果的なものにするためにはシンプルなメッセージングを徹底することです。

ただし、シンプルにするというのは一つ一つのタッチポイントにおけるメッセージングであり、プロダクトマーケティングまでシンプルにすることではありません。プロダクトマーケティングはタッチポイントごとに統一されたブランディング・最適なコミュニケーション・魅力的なコンテンツを届けることが求められます。

しかし、そのメッセージングを考えるためにも、プロダクトの成功を考えるためにも必要なのは「販売・販促戦略」になります。

よく「販売・販促戦略」と言うと、営業方法やマーケティング方法だけを考えることだけに目が向きがちですが、ここでいう「販売・販促戦略」は営業やマーケティングだけではなくユーザーに価値を届けるためのブランディング・コミュニケーション・コンテンツ全てを含んでいるプロダクトマーケティング全体の戦略です。

そのためには、営業・マーケティングだけではなくプロダクト開発やクリエイティブも含めて考えていく必要があります。

売れるために必要なのは「利用してもらう価値」「買ってもらえる価値」

どうやってユーザーに価値を届けるのか、プロダクトに価値を持たせることだけ戦略に落とし込むだけではなく、プロダクトがマーケティングしやすいかを考えていかなければなりません。そのためには、横断的にプロダクトマーケティングをマネジメントできる人材が必要となります。

今後、プロダクトを「売れる」ようにするためには市場としても、そういった人材が求められていくでしょう。グッドパッチではプロダクトマーケティングの支援を実施しています。一度ご相談ください。

今回は「売れる」プロダクトを作るためのいくつかのケースを紹介しました。市場の流れやユーザーの環境によって変化する中で、企業ごと・プロダクトごとに課題は多くあると思います。まずはその悩みを相談してください。そして、一緒に「売れる」プロダクトを作りましょう。

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この記事は、Goodpatch Design Advent Calendar 2024 Day18の記事です。他の記事もぜひどうぞ。

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