不確実性の高い現代において、世界中の国の政策検討や企業での経営戦略・事業立案の際に「未来洞察」の手法が取り入れられています。

未来洞察というと、つい起こる可能性が高いことを予測しようという思考に陥りがちですが、大切なのは「いつもと違う視点を意識すること」と「未来は創造していくものというスタンス」です。グッドパッチでは、未来洞察は「ありたい未来にしていくための行動」と考えています。

視野を広げ、「こんな未来もありうるかもしれない!」と自由な発想でさまざまな可能性を探り、その上で「自分たちのありたい未来を紡ぎ出す」プロセスをとても大切にしています。

さまざまなありうる未来を描いた上で、理想とする未来を紡ぎ出し、未来に対する課題・解決方法を具体化。そして、未来と現在をつなげる──。

そんなグッドパッチ流の「未来洞察」の方法について、Spreadyが主催する新規事業担当者向けのカンファレンス「Next Innovation Summit 2024 in Spring」で講演を行いました。この記事では、講演内容のダイジェストをイベントレポートとしてご紹介します。

資料全体を確認したい方はぜひこちらのページからダウンロードください!

未来洞察は過程が大切。グッドパッチが考える6つのプロセス「S.I.G.N.A.L」

グッドパッチは、さまざまな企業の新規事業開発を支援していますが、そうしたプロジェクトで行う未来洞察は、さまざまな知見や経験を持ったメンバーが集まって行います。

先ほど、「可能性を探り、ありたい未来を紡ぎ出すプロセスを大切にしている」とお話ししたように、未来洞察は最後に生まれるアウトプットだけでなく、その過程自体に価値があると考えています。

ここからは過程、つまりグッドパッチが行っている未来洞察のプロセスについて、以下6つのステップに沿って説明していきます。私たちは各ステップの頭文字を取って、「S.I.G.N.A.L(シグナル)」と呼んでいます。

  • Set up(心構え)
  • Input(兆しの収集)
  • Generate(未来の構築)
  • Narrate(理想の物語を紡ぐ)
  • Approach(具体化)
  • Link(未来と現在の架け橋)

Set up:心構え

最初のステップ「Set up」は、未来洞察を行うにあたってのマインドを整えることが目的です。大切なのは「いつもと違う視点を意識する」ということ。起こる可能性が高いことを予測しよう、と考えないことが大切です。

特に過去の成功体験があると、そのときの思考に縛られて、きっとそういう風になるだろうと思い込んでしまいがち。難しいことではあるのですが、現状や過去、そしてその延長線上で考えるマインドから離れることが重要で、最初にやるべきことなのです。

また、異なる「得意」を持ち寄るということも非常に大切なポイントです。下図で言うと、未来の暮らしをイメージしたり、ニーズを捉えたりするのが上手なメンバー、あるいは技術系の方など、実現性の探索が得意なメンバーなど。さまざまな「得意」や「価値観」を持つ方々が集まり、対話をすることで新たな視点の発見につながります。

Input:兆しの収集

次のInputは「未来を描くための予兆を集める」ステップです。兎にも角にも数が重要であり、さまざまな情報を集めていきましょう。

その中で大切なのは、3つの視点(魚の目・虫の目・鳥の目)を行き来しながら、多面的に物事を見るということです。

  1. 魚の目:世の中のトレンドに伴って、起きている事象をキャッチする視点
  2. 虫の目:キャッチした事象の原因や課題を細かく見る視点
  3. 鳥の目:事象がなぜ起きているのかを俯瞰して、社会背景や真因を探求する視点

そしてもう一つ、「領域を広げて考える」ことも意識しましょう。普段の仕事や生活で触れる情報や視点というのは、無意識のうちに凝り固まっていることがほとんど。

例えば、食に関するお仕事をされてる方だと、「食」のテーマに限って探索されるケースが多いと思います。しかし、予兆を探すときは、生産・流通といった領域にまで拡張して思考を巡らせる必要があります。

過去から現代にかけて数値的に変化したものがあれば、それも変化の予兆ですし、量の増減以外にも、質が変わったといった観点でも事象を探ると良いでしょう。また、関連する論文を探してみたり、専門家の方々にどういった事象・変化が起きてるのかを伺うなど、外部の力を使って探索するのも一つの方法です。

ただし、外部から得た「未来予測」をそのまま使うのではなく、次のステップであるGenerateで、自分たちなりにしっかり想像することが大切です。

Generate:未来の構築

「Generate」は、Inputでたくさん集めた未来の予兆(シグナル)を解釈し、どのような未来の暮らしがあるかを想像するステップです。集めた予兆が多いほど、ありうる未来の可能性は広がるでしょう。

このステップの注意点としては、未来の暮らしのアイデアについて「優劣をつけたり、取捨選択をしないこと」です。

ここでアイデアを捨ててしまうと、ありうる未来の中から、ありたい未来を紡ぎ出す作業において、メンバーの視野が狭まってしまい、未来自体も限られた範囲で考えることになります。ここでは恐れずに、いろんな未来の可能性を広げることが大切です。

Narrate:理想の物語を紡ぐ

ここまでのステップは、身の回りで起きている事象を拾って、未来がどうなるのかと可能性を広げるフェーズでしたが、ここからは「自分たちがどうしていくべきか」を考えるフェーズになります。

Narrateでは、Generateで出た想像をベースに、自分たちの想いが乗った「ありたい未来」のストーリーを考えます。ストーリーに関しては、社内外から共感を得たり、共通の認識を育むために人起点で解像度を高めることを重視しましょう。

Approach:具体化

ありたい未来を描くと、その中で発生する課題を考えることができます。こういった社会が来るであろう、そうなるとこんな社会課題があるんじゃないかと、深く考えてみると、これから取り組むべきことが見えてきます。

取り組むべきことを考える際、評価軸を短期的な視点や経済的な点に重視して絞ってしまうと、どうしても制約が増えてしまいます。例えば「実現性ってどうなんだっけ」「ビジネス的にうまくいくのか」など。

そうなると、身動きが取れなくなってしまうので、例えば、柔軟性や持続性といった他の視点でも評価してみることが大切です。

その上で、手触り感のあるプロトタイプを作りましょう。これまで手がけたプロジェクトでは、イラストや映像、ジオラマなどに落とし込みました。

Link:未来と現実の架け橋

最後のLinkでは、バックキャストして未来と現在をつなげます。未来のやるべきことからマイルストーンを考え、これからどのような取り組みをすべきか、現状と紐付けるフェーズです。

未来洞察という行為は、一つの絵を描いて、その場は非常に盛り上がるけれど、それで終わってしまって後につながらないケースも多いもの。だからこそ、事業や経営の意思決定までちゃんと見据えるということが大切です。必ず実現に向けて動くというマインドで取り組みましょう。

グッドパッチが未来洞察で大切にしていること

プロセスの説明でも繰り返してきましたが、グッドパッチで未来洞察を実施する際は、「未来を受け入れる」のではなく「自分たちのありたい未来を紡ぎ出す」ことを大切にしています。

未来は創造するものであり、未来洞察はありたい未来にしていくための行動を積み重ねるものだと考えているからです。そのために、2つのことを意識しています。

「予測」ではなく「洞察」

未来洞察は起こる未来を正確に予測し、それによって計画を作るというアプローチではありません。「計画をしていく」ためではなく、ありたい未来を創造していくために「行動する」ための手法だと考え、行動に繋がる形で、未来洞察を行うことにこだわっています。

「アウトサイドイン」と「インサイドアウト」

私たちが未来洞察を行うときは、世の中の事象を捉えて問いを立てる「アウトサイドイン」と、自分の中から理想を発散する「インサイドアウト」の2つを行ったり来たりしながら進めています。

デザイン会社として一緒に併走する中では、インサイドアウトという自分たちの思いで新規事業を立ち上げ、その後も進んでいただけるように、という点を大切にしています。

ぜひ、グッドパッチと一緒にワクワクする未来を作りましょう!

今回のイベントでは、イノベーションにつながる取り組みの一つ「未来洞察」についてお話しさせていただきました。

未来洞察は、新規事業開拓、サービス開発初期段階、技術開発ロードマップ策定、事業戦略の策定や見直し、組織改革など、あらゆる分野で有効です。

未来のシナリオは無限であり、未来を狭めてしまわないように、まずは広い視野で考えることをぜひ大切にしてください。グッドパッチが併走させていただくときは、“ワクワク” を手放さず、もっと大きくできるようなプログラムを設計します。

トレンドを超えた深い洞察と不確実性と向き合う勇気がイノベーションへの第一歩です。一緒によりよい未来を創っていきましょう。

また、今回は未来洞察についてご紹介しましたが、他にも新規事業につながるワークショップブランドデザイン探索型リサーチといった他の取り組みもあります。
新規事業立ち上げの際、まだ何を悩んでいるのか分からない状態や、どのような方法で実施するか分からない状態であっても、ぜひグッドパッチまでご相談下さい。

Special Thanks

スピーカー
伊澤 和宏(デザインストラテジスト)
米田 真依(デザインリサーチャー)

内容作成協力
遠藤 英之(デザインストラテジスト)
森村 典子(デザインストラテジスト)
中林 保之(BXデザイナー)
中村 謙一ゼネラルマネージャー