ユーザーの価値観を階層で理解する価値観サークルについて
サービスやプロダクトをデザインする上で、ユーザー理解をすることはとても重要です。
その一方で、ユーザーがどのような価値観を持って、それらのサービスやプロダクトを利用するのかの理解はどのようにすれば良いのでしょうか?
今回はユーザーの価値観を理解する手法として、価値観サークルという手法をお伝えします。
価値観サークルとは
まずはじめに、価値観サークルとは、ユーザーの価値観を階層化してユーザー理解を深めるためのフレームです。
そのため、ペルソナやカスタマージャーニーマップと併せて活用することによって、ユーザーに対する深い洞察を得ることができます。
なぜ価値観サークルを作ろうと思ったか
そもそも、価値観サークルを作ろうと思ったきっかけは、ユーザーがあるサービス・プロダクトを扱うときに行なっている判断の軸が非常に多様で、それらをすべて同時に考慮しながらユーザー体験を設計するのが非常に難しい場合があると思ったことがきっかけです。このように、ユーザー体験を紐解いていくと、その一連の体験の中で多様な認知と判断が繰り返されていることに気付きます。
そういった状況で本当にユーザーにとって良い体験を正しい順番で提供するためには、ユーザーが一般的にどのような種類の判断をしているのか、それが個人の価値観としてどれくらいの重要度を持っているのかを明らかにする必要があります。
そんな理由から、個人の価値観の中での重要度について理解を深めていく中で、考えたのが「価値観サークル」です。
この「価値観サークル」ではユーザーひとりひとりの価値観を詳細に見ていくことはできません。ただ、一般的にどのような種類の価値観で判断しているのかを紐解く手がかりを、この手法によって作れると考えています。
価値観サークルの考え方
価値観サークルでは、ユーザーの価値観を上記の図のように表しています。
ここにマッピングされるのは、対象サービス・プロダクトが扱うドメインに対するユーザーの価値観です。
マッピングされる項目としては、ユーザー自身でのコントロールが難しいもの(サークルの内側)から、
- ユーザーの制約となる概念
・ユーザーにとって、変えられない/変えづらいもの- 対象へのユーザーの価値観
・外せなくはないがユーザーにとって大事な観点- 対象にひもづくユーザー行動/選択の価値観
・対象サービス・プロダクトが扱うドメインに対するユーザーの意思決定にひもづく観点
というような、3階層のサークルを定義していきます。
この3階層にユーザーの価値観を分けて考えることによって、本当にユーザーにとって有益な提供価値を与えられるかどうかを判断する材料にすることができます。
重要なのは、この図は価値観を階層化して理解をするためのものであり、価値観同士の濃淡や有無などペルソナにひもづくものは表していないということです。
あくまで対象ユーザーの価値観をサークルとして階層構造化したものなので、個別ペルソナを定義する際は、この価値観サークルを元に、価値観テーブルなどを加味したペルソナ作成をおすすめします。
価値観サークルの実践例
次に、架空のサービスに対する実践例を記載していこうと思います。
今回例にするのは、「外食」についてです。
この図では、外食に関するユーザーの価値観を、階層ごとに以下のようなものをまとめています。
- ユーザーの制約となる概念
・「外食」にひもづく個人の制約として、「お金の制約」「場所の制約」「時間の制約」を定義しています- 対象へのユーザーの価値観
・今回の対象は「外食」なので、外食を対象にした時にユーザーが抱えている価値観をマッピングしています。- 対象にひもづくユーザー行動/選択の価値観
・「外食」に対するユーザー行動の価値観として、お店選びの価値観をマッピングしています。
1.のユーザーの制約となる概念の理解をすることによって、対象ペルソナがどのような制約を強く抱えているのかを紐解いていきます。
また、2.の対象へのユーザーの価値観を洗い出すことによって、今回の例ですと「外食」に対してどのようなものを潜在的に求めているのかがわかり、3.の対象にひもづくユーザー行動/選択の価値観によって、どのような判断基準を主にユーザーが持っているのかが理解できます。
上図は簡易的にまとめたものですので、本来はもう少し多くの要素が出てくるかと思います。
まとめ
ユーザーの抱えている制約や価値観には、必ず階層があります。どの制約からどういった価値観が生まれているのか、その間にあるペインは何かを紐解いていくことで、ユーザーにとって本質的な価値をサービスとして提供するためにはどうすればいいのかが見えてくるのではないでしょうか。
また、価値観サークルを元にユーザーへの理解を多角的に深めることで、どの階層のどの価値観に紐づくどんな課題を解決するのかを考えることができるため、それが本当に「ユーザーにとって有益な提供価値かどうか」「本質的課題を解決するものなのか」を判断することができます。
ユーザーを中心に据えたサービス・プロダクトデザインをする際には、ユーザーの価値観を階層で理解する価値観サークルを活用してみるのはいかがでしょうか?
Eyecatch Graphic: @mnmrtkm