はじめに

この記事は Goodpatch Design Advent Calendar 2020 の19日目の記事です。

今年もGoodpatchでは4月から6月までの3ヶ月間で新卒研修を行いました。Goodpatchでは、毎年UIデザイナー / UXデザイナー / エンジニア / 経営企画室と各部署の先輩社員が、新しく入社するメンバーのための研修設計を行っているのですが、特に今年は研修は気合が入っており先輩総出で設計を行いました。

その中でもUIデザイナー職の研修は前半の「ビジュアルデザイン研修」と後半の「ソフトウェアデザイン研修」で分かれており、それぞれの分野で強みを持つ先輩デザイナーで研修の設計をし、オンライン上で研修を行いました。

今回の記事では、ソフトウェアデザイン研修内で行った
「抽象から具体へつなぐフェーズで可能性を追求する」についての講義を研修時の内容の範囲を絞り、改稿するなどして紹介します。

また、他UIデザイン研修の記事に関しては、内容が多いため別記事でもお伝えしています。

より良いものを作る

Goodpatchでは組織や戦略などコミットする対象の幅を広げつつ、デザインの力を証明しようとしていますが、やはり実案件におけるUIデザイナー職の大きな目的のひとつは「より良いものを作る」ことへの貢献です。
研修としては抽象から具体へとつなぐプロセスについての講義となるので、「より良いもの」について深ぼりながら「可能性を追求する」マインドの有用さを伝えていきました。

目的

ソフトウェアデザインの領域でデザインする対象は、ユーザーがインタラクトすることで価値を得られる特性があります。実案件の多くで提供したい価値[目的達成・課題解決]の媒介となり、その意味で価値を届ける視点は重要になってきます。
また、抽象から具体へとつなぐ「具体化」はUIデザイナー固有の職能だと考えています。
提供者が考える価値をユーザーがインタラクト可能な状態にすること=具体化をしてはじめて、有用で便益のあるものになると考えるならば、ユーザーにとっての価値そのものにコミットしているとも言えるのかもしれません。

目標1. 良いものとは何かを共有する

より良いものを作るための過程を分解すると、まずUIデザイナーにとって最初の目標は「良いものとは何かを共有する」となりそうです。

案件によって「良い」の定義は異なっていて、まず理想状態とはなにかを探索することも少なくありません。事業領域・フェーズ・思想・戦略など案件によって目指すべき方向性が異なるため、ケースバイケースで求められる解を導き出すことは、培われてきた「原理原則としての正しさ」を尊重することと同様に重要です。

この目標を考えるにあたって重要になるのが「探索的な具体化」です。

目指すべき方向性はステークホルダーとの間で共通認識を得ていなければ意味をなしません。抽象的な議論だけでなく、認識を共有するためのツールとして具体的なイメージを用いることは必要不可欠と考えています。
また、届けようとする価値が求められているのか検証をしていくには、抽象的な状態では一般的なユーザーには価値を理解し難い状態です。
直接見る・触れることが出来る具体化された「良いもの」で検証をし、反応を探ることで、今後労力をかける意義があるのか確認できるのではないでしょうか。

ここではまだ明確でなく、精度に甘さのある具体化に留まるかもしれませんが、目指すべき良い方向性の手がかりづくりに、UIデザイナーが果たせる役割は大きいと感じています。具体的なイメージを共有できている状態があってこそ、次へと進む判断ができます。

目標2. より良くする

より良いものを作るためのUIデザイナーの2つめの目標は「より良くする」です。

目指すべき方向性がその具体的なイメージとともに明らかになってくると、次はその良さを高めていく段階に入ります。どの案件でも、クライアントからはもとよりGoodpatchとして誇れる水準の「良い」ものを作ることが求められます。時として0から作り直すことも厭わない、より良くするという姿勢に下支えされるものづくり環境だと考えています。

この目標を考えるにあたって重要になるのが「深化のための具体化」です。

具体化するのは限られたステークホルダー・テストユーザーにだけ届けるものではありません。直接ユーザーが目にする、触れる完成形を作っていることに自覚的であるべき段階です。
対象となるユーザーに提供したい価値が漏れなく届くように、抽象と具体をつなげる精度を上げていかなければなりません。構造、表層とすべて順を追って具体化していけばうまく出来上がるということは稀で、抽象と具体、構造と表層などで行き来を反復的に繰り返しながら、精度を高めていきます。

本格的な目に見えるものづくりのフェーズであるため、UIデザイナーの職責として最善のアウトプットを作ることが期待されます。

有用なマインド

  • 目標1. 良いものとは何かを共有する
  • 目標2. より良くする

この2つの目標を達成するには、「可能性を追求する」マインドが有用です。良いとは何かを見つける探索的な具体化においても、より良くする深化のための具体化においても共通して、努めて可能性を捨てずに模索していくマインドが役立つと考えています。
今回の講義では、そのための切り口として「良いもの」をモノ・モノサシ・良いに分解する試行をひとつ紹介しています。

モノ・モノサシ・良い

モノ

モノとはUIデザイナーが具体化できる対象を指しています。

フェーズにより様々ですが、(アイデアレベルも含めて)試作としてのモックアップ、プロトタイプからプロダクトやサービスなど具体的に人が見る・触れることができるものです。
そして、達成した目的や解決したい課題に干渉できるものです。

共創:理解のために
当然のことですが、イメージできないモノは作れません。
だからこそ、まずUIデザイナーが解像度高くイメージできることが、より良いものを作るためには必須です。提供価値についてクライアントと、また理想の体験についてUXデザイナーと具体化に着手する前から議論を深め、徹底的なインプットと理解が必要になってきます。UIデザイナーとしての職域を超えて、じぶんごととして可能性を追求する共創の姿勢が有用です。

共創:実現のために
通常のプロセスとしてはUIデザイナーによる具体化のあとは、エンジニアにより実装されます。むしろモノづくりとして考えると、具体化し終わったあとに受け渡すという感覚より、具体化しながら実装上の実現性を確かめ合う共創があってしかるべきです。特に表現のデザイン・手触りのデザインでは実現性とせめぎ合う場合があるため、どういった可能性があるのか見ながら・触れながら精度を高めていくことが理想と考えます。

共創

モノサシ/良い

次に、具体化するモノを計測・評価するための尺度・変数などについて考えます。仮にモノに対してモノサシと呼びたいと思います。数限りないですが、UIデザイナーが干渉可能な項目であることが特性と言えそうです。あるモノの表層であれば、色・形・サイズ・位置などがモノサシと言え、さらに、色であれば色相・彩度・明度などに細分化していけます。

モノサシ自体はあくまでも計測・評価のためのものであり、それ自体に良し悪しやメッセージはありません。そして、同じモノサシにコミットする場合でも、原理原則としてどうあれば「良い」、とは一概には言えません。提供価値や価値を届けたい相手にあわせてUIデザイナーが主導して定めていくのは大きな職責です。モノの価値をより実態に従って具体化するためには、この「良い」の方向性が強い影響を及ぼします。

ひとつの目標に注力
モノサシ自体は数限りなく存在するなかで、現実的には目標ごとにモノサシを絞り込みます。段階を跨がないことで注力すべきモノサシを限定できます。
得てして自由度が高すぎるよりも適切に制約がある方が思考を深めやすく、目標による切り分けはプラスに働くでしょう。具体化だけでなく、議論をするうえでも発散しすぎず恩恵を得られると思います。

釣り合い
モノサシには独立したモノサシと相互に関係しあうモノサシがありそうです。
干渉するのがそれぞれ独立したモノサシたちであれば、より良くする作業が単純化できるのですが、多くの場合そうではなく、互いに背反となるモノサシに干渉することになります。
相対する複数のモノサシの釣り合いをとることもまた具体化スキルとして重要で、かつ、細かなバランス調整が要求されるため、可能性の追求が活きる場面です。

  • QCDS[質とコストと納期とスコープ]
  • ユーザー体験とビジネスメリット
  • 表現とアクセシビリティ

などが具体的には挙げられそうです。このうちUIデザイナーが干渉できるモノサシとできないモノサシがありますが、細分化していくと間接的に干渉可能な範囲は広がるものなので、諦めずにいることが肝要です。

観点ごとのパターン展開
昨年のアドベントカレンダーでの記事でのアプローチを「より良い」を追求し、あらゆる可能性を捨てない具体的な方法として講義内でも紹介しています。

観点ごとのパターン展開

「より良いもの」を作るためにUIデザイナーの具体化する力が貢献できると信じています。そして、可能性を追求するマインドを持って臨めば、より再現性高く貢献につなげられるのではないでしょうか。

おわりに

今回の記事ではGoodpatchの新卒UIデザイン研修の一つとして行った「抽象から具体へつなぐフェーズで可能性を追求する」についてご紹介しました。

Goodpatchでは、未来の仲間たちを募集しています。
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