プロダクト開発の初心を思い出そう。カスタマーサクセスのカンファレンス「PULSE 2019」概要まとめ
こんにちは!カスタマーサクセスチームのAyakaです。
カスタマーサクセスの聖地サンフランシスコで最前線を学びに「PULSE」というカンファレンスへ参加してきました。
目次
Goodpatchからカスタマーサクセスの学びをシェアするWHYについて
Goodpatchのミッションである「デザインの力を証明する」。
私たちが日々使っている「デザイン」という言葉は、表面的なデザインだけではなく「プロダクト/サービスの体験設計(〜それによって生まれる収益まで含む)全て」を意味しています。
プロダクト関係者全員で「偉大なプロダクトをつくるため」に必要なことを共通認識・共通言語にしていくことで、プロダクトとチームの成長と醸成に繋がる。
このような文脈においてはカスタマーサクセスも「デザイン」の一部 なのだと改めて思いました。
今回のGeneral Sessionで発表されていた内容は全員が共有すべき「プロダクト/サービス開発の初心」です。もうすでに実践されている内容もあるかもしれませんが、ぜひ記事を読みながら一緒に初心に戻って考えてみませんか?
PULSEとは?
PULSE とは、Gainsight社が主催する 世界最大規模のカスタマーサクセスのカンファレンス です。世界中でカンファレンスを開催している同社ですが、サンフランシスコでのカンファレンスが規模としては最大です。世界中のカスタマーサクセス・プロダクトマネージャーが5,500人以上も集まり、開催されたセッション数は130以上。
会場はかつてAppleが製品発表会を開催していたモスコーンセンター。
モスコーンセンター前の商業施設(Target)までPULSE参加者のバナーが飾られていて、このエリアはPULSE一色でした!
主催企業 Gainsight について
Gainsightとはカスタマーサクセス業務全般をカバーするプラットフォームを提供している企業向けSaaS企業で、今年3月にシリーズFで $52 Million (約56億円)を資金調達しています。
参考: Gainsight Raises $52 Million in Series E Funding to Build the Customer Success Network
カスタマーサクセス担当者の教本「カスタマーサクセス」(通称 “青本”)はGainsightのCEOであるニック・メータが著者の1人です。
セッションの概要
130以上もあったセッションの大まかな構成は以下のとおり。
6種類のキーワード+基調講演(General Session/Keynote Session)に分けられています。
初日のGeneral Sessionの内容がもっともこのカンファレンスを象徴するセッションであり、そしてプロダクトの成長に関わる全員が意識していくべき内容だったので、まとめていきます!
CUSTOMER SUCCESS 2010s – 2010年代のカスタマーサクセスを振り返る
アメリカでの過去10年間のカスタマーサクセスの取り組みは以下の5点にまとめられます。
これまでの流れと経験を踏まえて、昨年Gainsightは学習結果をフレームワーク「カスタマーサクセス要素の周期表(Periodic Table of Customer Success Elements)」として発表し、カスタマーサクセスの方法論を一歩先へと進めています。
これまでは契約更新を確実に行うため(=解約させないように)に、多くのカスタマーサクセスチームはクライアント内の意思決定者との関係作りに注力してきました。
意思決定者とのやりとりの中から、 本質的な答えは(意思決定者ではなく)実際にプロダクトを利用しているユーザーが持っていることが分かってきたことを踏まえ、今年〜2020年にかけて「プロダクト体験(Product Experience)」に投資 をしていく必要性を示しています。
CUSTOMER SUCCESS 20/20 – これからのカスタマーサクセスの方向性
1. PRODUCT EXPERIENCE TAKES CENTER STAGE
— プロダクトの体験を中心に
プロダクトの体験をないがしろにせず、カスタマーサクセス担当者はプロダクトマネージャーやUXデザイナーとも協力して、常に成長させましょう。
2. FROM CUSTOMER SUCCESS TO CUSTOMER GROWTH
— 一時的な成功や達成ではなく、さらなる成長へ
ユーザーの一時的な成功に目を向けるだけではなく、断続的に成長できるようにサポートしましょう(それがあなたのプロダクトの収益にもつながります)。
3. HUMAN-FIRST LEADERSHIP
— 自分たちがエンゲージメントスコアの良いチームでいよう
ユーザーの利用状況だけではなく、自分自身やチームのエンゲージメントスコアも気にかけましょう。偉大なチームが偉大なプロダクトをつくります。
4. OPERATIONALIZING OUTCOMES
— 顧客が成功するためのオペレーション化(再現性)
ユーザーの成長や成功のための成功事例や失敗事例を記録しましょう。
これまでの全ての経験を運用フローに載せたり、新たな運用フローを構築していくことで、ユーザーの成長や成功に繋がった方法を活用し、再現性を追求しましょう。より多くのユーザーにプロダクトの価値を提供できるようになります。
5. CUSTOMER DATA INFRASTRUCTURE
— 十分な顧客データ基盤の構築
正しくデータを扱えるように整備し、プロダクトに携わる全てのチームと共有し、データをビジネスの強みにしましょう。
Human-First Product 5つの原則
続いて、Gainsight の Chief Operating Officer である Allison Pickens氏が登壇。
「Human-First Product 」という思想をなぜ提唱していくのか?というWhyから話してくれました。
テクノロジーの力によって、私たちの仕事の仕方は劇的に変化してきました。
ただ、便利ゆえの弊害…例えばリモートワークができる反面、いつでもどこでも仕事ができてしまうが故にON/OFFの切り替えが難しく「テクノロジーの奴隷」状態になってしまい「人間らしい生活」が奪われてしまっています。
本来、テクノロジーやソフトウェアは、人間らしい生活を奪う存在ではない。人間に寄り添った存在に進化させていくべきでは?という問題提起 からこのセッションは始まりました。
テクノロジーがどのようにユーザーをサポートしていくべきかという視点で、Human-First Productsに成長させていくための5つの原則を提唱しています。
1. Growing
プロダクトは、変化していくユーザーニーズや目的に沿って、ユーザビリティを担保しプロダクトの改善をすすめていきましょう。
そしてカスタマーサクセスだけではなく、プロダクト開発チーム全体(デザイナー、カスタマーサクセス、エンジニア、プロダクトマネージャー)で協力して進めていくことが大切です。
2. Special
ユーザーを単に「大勢の中の1人」として捉えるのではなく「個性を持った1人の人間」と認識しましょう。1人1人の好みや目的に寄り添ったプロダクトや機能を提供しましょう。
3. Vulnerable
ユーザーは個人的なデータを意図しない形で乱用されることに対し嫌悪や不安を持つことを忘れないようにしましょう。ユーザーに関するあらゆるデータはユーザーに帰属します。データを扱う時には「ユーザーに嫌悪感や不安感を持たせないかどうか」は常に意識する必要があります。
4. Ends not means
テクノロジーが向かう最終地点は「人」です。テクノロジーが主役になってしまい人間が踊らされるようなプロダクトであるべきではありません。そのために、ユーザーからのフィードバックを大切にし、常に改善し続けていくことが大切です。
5. Autonomous
プロダクトはユーザーに対して「押し付ける」形ではなく、「各ユーザーに寄り添う」形で機能を提供していきましょう。開発チームの考えの押し付けにならないように、ユーザーテストやインタビュー、ヒアリングを必ず実施し、検証することを忘れないようにしましょう。
ユーザーの課題の本質はなにか
Gainsightが昨年100社のカスタマーサクセスチームへ調査した結果、多くのチームで課題になっている問題は「カスタマージャーニーを元にしたカスタマーサクセスの自動化」そして「カスタマーサクセスチームの拡大」だったそうです。
この課題は本当に「自動化を進める」ことで解決するのでしょうか。
「人数を増やせば解決」するのでしょうか。
・・・本質的な課題は「プロダクト(アリソンにとってはGainsight)の活用の難しさ」なのでは?
Gainsightも、これらの5つの原則を現在全てカバーできているわけではなく、数年かかる、という前置きもありましたが、 カスタマーサクセスの本来の役割は、プロダクトの提供価値↔︎ユーザーニーズのギャップを埋める役割ではなく、顧客の成長にフォーカスしサポートをする こと。
(ギャップを埋めるべき時期があるとはいえども)本来の役割を忘れてはならないよ、という警鐘でした。
まとめ
カスタマーサクセスのカンファレンスの概要をご紹介しましたが、「Human-First」なプロダクト開発に大切なことは、プロダクトの成長に携わる全員にとっての「基本のキ」であり、迷ったときに立ち返る「初心」そのものです。
各職種によって「Human-First」へのアプローチは様々ですが、プロダクト/サービスのユーザーにとっての本質的な価値を言語化し、プロダクトに携わるメンバー全員と認識を合わせることでお互いの強みを活かせるのではないでしょうか。
ビジネス側(カスタマーサクセス職を含む)とプロダクト開発側が認識を合わせてプロダクト開発ができているチームはまだ少数かと思います。この記事を通じて、チームの認識を合わせられているかどうかを振り返るきっかけになればうれしいです。
また、近日中にサンフランシスコの街で見てきたトレンドをご紹介します!お楽しみに!