情報設計に欠かせない。ユーザーのメンタルモデルを理解する、要素整理のフレームワーク
デザインにおいて情報設計はとても重要です。
なぜなら情報設計がなされないままUIデザインが行った場合、目的や画面のつながりが不明瞭になり、ユーザーに思いのまま使ってもらうことが難しくなってしまう可能性があるからです。
ユーザーがアプリやサービスの本質的な価値をとらえ、迷うことなく操作できるよう導くために情報設計は必要不可欠な工程です。
では、情報設計のフェーズでデザイナーは具体的にどんなことをしているのでしょうか?
情報設計の中でも“コンテンツの要素整理”段階を、よく使われるフレームワークと一緒に紹介していきます。
情報設計とは
情報設計はサービスやアプリの要件、つまりコンセプトや機能仕様、ユーザーの目的、目的達成までのシナリオや成功指標と、UIデザインをつなぐ役割を担っています。
また、情報設計はUXの5段階モデルでいう構造段階で主に行われる工程だと言えそうです。
構造段階ではユーザー体験に必要な機能とインターフェースをどのような情報とデータの構造で実現するのかという部分などを設計しUIの全体構造を作ります。この段階で設計した情報の構造がUIのデータ構造になります。
ユーザーの行動シナリオに基づいたコンテンツの要素を洗い出した後、UIデザインを行う(ワイヤーフレームの作成等)ためには、これらの要素をユーザーがコンテンツを探しやすく、理解しやすい方法で分類する必要があります。
この時、よく使われるのは以下2つのフレームワークです。
- LATCH
- カードソーティング
今回はIA(情報アーキテクチャ)の文脈で用いられる、この2つのフレームワークについて詳しく紹介していきます。
コンテンツの要素整理に有効なフレームワーク
LATCH
LATCHという名称は、情報を整理する以下5つの分類方法の頭文字をとって名付けられています。
- Location:場所
- Alphabet:アルファベティカル
- Time:時間
- Category:カテゴリ
- Hierarchy:階層
これを作り出したリチャード・S・ワーマンは、世の中にあるすべての情報はこの5つの方法で組織化ができると言っています。
かなり分かりやすく使いやすいフレームワークですが、分類方法によって対象にする情報が異なってくるので、整理する情報の特徴に合わせて使い分けながら利用することが重要です。
それでは、5つの分類方法を1つずつ説明します。
Location
場所・位置・空間・部位を基準にします。
地図や人間のビジュアルにマッピングしたり、プロットすることで、分布や位置を示すと情報が理解しやすくなることがあります。こうした場合、このLocationを基準にした情報整理が有効です。
Alphabet
アルファベット順、五十音順などを用いて分類します。
要素の重要度が同じレベルであり、かつ、序列を持たせることで見つけやすくなる情報を分類する場合、この方法が適しています。
例としてよく見られるのは、連絡帳の個人名や索引などでしょうか。
ただし、アルファベット(26文字)のおよそ倍の項目数をもつ五十音順を用いる際には注意が必要です。各項目に分類された情報要素の数が多い場合、かえって使い勝手が悪くなることがあります。
Time
時間・時間軸・時系列などを基準にします。
時間は万国共通の概念であり、強力な序列をもっています。この基準を用いた例としてよく挙げられるのは、タイムラインやニュースフィード、メッセージの受信履歴などです。これらのコンテンツを想像するとわかるように、物事の変化が顕著に現れる情報に適した分類基準といえます。
Category
分野や種類、性質によって分類を行います。もう少しわかりやすい言葉で表すなら、「ジャンル別」や「モデル別」、「タイプ別」といったところでしょうか。
そしてCategoryはAlphabetと同じく、それぞれの重要度が同じレベルの情報を対象にする必要があります。
一方で、Categoryは序列の概念をもたないという点でAlphabetと異なります。そのため、分類したのちグループを並べたいときには、序列をもつ他の整理要素と組み合わせるかランダムに配置するなどして「並び順」を選択する必要があります。
Hierarchy
身長や体重、長さなどの連続量や人気順などの順位に従って序列をもたせ分類します。
情報の価値や重要度を明確にしたい場合、大変有効な方法です。
なお、ここで用いられるべき序列に上記のAlphabet、Time、Storyは含みません。
LATCHを利用して情報の分類を行なった後は、その結果とユーザーのシナリオを考慮して分類軸を決めていきます。
カードソーティング
LATCHやそのほかの方法を利用し分類軸が定まってきたら、今度はその分類軸がユーザーにとって有効であるかを検証する必要があります。
その際によく用いられるのがユーザーとともに行うカードソーティングという手法です。
具体的には、要素となるコンテンツの名称をカード(ポストイットなどでも可)に記載し、ユーザーにグループ分けをしてもらいます。グループ分けの様子や結果から、ユーザーのメンタルモデルを分析し、それを参考に事前に決めていた分類軸を見直すことができます。
カードソーティングの大まかな流れは以下の通りです。
- 主な項目の名前(できれば簡単な説明も)をカードに書く。
- カードをシャッフルして、その束をユーザーに渡す。
- 各ユーザに、同じ場所にあるべきものが一緒になるように、各カードを分類してもらう(グループの数や、各グループのカード数に制限はなし)。
- ユーザに各グループを、さらに大枠のグループにまとめてもらい、各グループに名前を付けてもらう。
また、このカードソーティングから有効な結果を得るためには、最低でも15人のペルソナに近いユーザーを対象にする必要があるとされています。
カードソーティングを利用するにあたって、カードをどのグループに置いたかという結果だけではなく、カードをなぜそのグループに置いたのかを理解することが重要です。
カードを分けている時のユーザーの声を聞き、定性的な分析も行っているという意識を持つようにしましょう。
最後に
冒頭の通り、「コンテンツの分類軸の設計」は情報設計のほんの一部分ですが、ここで作成したコンテンツの分類軸はUXの5段階モデルでいう構造段階のアウトプットとなると言えるでしょう。情報の整理の仕方でつまずいていた方はぜひ今回紹介したフレームワークをご活用ください。
参考資料
http://doburoku.com/wiki/index.php?title=SP-LATCH%E6%B3%95
https://medium.com/@3inowayosuke/latch-5%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%95%B4%E7%90%86%E6%96%B9%E6%B3%95-d66b769d2470
https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/cardsorting/
https://u-site.jp/alertbox/20040719
https://peaks.cc/books/ui_design