みなさんが働いているのは、どんなオフィスですか?
オフィスの中で気に入っているスポットはもちろん、「もっとこうだったらいいのにな」と思う部分もあることでしょう。

どんな業種でも有効なレイアウトを考えたい。レイアウトのトレンド、事例が知りたい。社内コミュニケーションを活性化したい…など、オフィスについての悩みは尽きませんよね。

そこで今回私は、世界のデザインファームのオフィスに着目しました!多数のデザイナーやデベロッパー、クリエイターを抱えながらも創造性を失わないデザインファームは、オフィスにも工夫があるはずだと考えたからです。
多くのデザインファームで採用されていた、オフィスレイアウトのポイントをご紹介します。

柔軟に動けるフリーアドレス

社員がオフィスに固定の席を持たないことを「フリーアドレス」と呼びます。
世界中の15ヶ所にオフィスを構えるデザインファーム、Fjordのベルリンオフィスの座席レイアウトは、全てフリーアドレスとなっているのだそう。

フリーアドレスを導入している理由を、Fjordのメンバーはこう語っています。

我々は固定の作業スペースを持ちません。自分たちがどんなモードで、誰と仕事をしているのかに合わせて、クライアントのオフィス、ギャラリースペース、自宅、異なる都市までデザイン文化を持ち運んでいるのです。
参照:Fjord’s Berlin studio is a hackable space that reveals the future of office design | CREATIVE BOOM

また、大都市圏オフィス需要調査2016によると、フリーアドレスを導入する国内の企業は前年度より18%増えており、日本のオフィスにおいても、レイアウトに多様性が生まれつつあるようです。

フリーアドレスのメリットは、職種やプロジェクトに合わせて柔軟な対応ができる点でしょう。クライアントワークなどで先方のオフィスに常駐することが多いメンバーや、外出が多いメンバーには最適なレイアウトと言えます。また、固定席の場合に発生しやすい「席が遠くて対面でのコミュニケーションが取りづらい」という問題も解消することができます。満遍なくコミュニケーションが取れるので、他部署間とも連携がしやすく、業務の効率化も期待できますね。
一方で、固定席がないことでメンバーを探しづらくなってしまうデメリットもあります。フリーアドレスでは座席表が存在しないため、用事があってもすぐに見つけられず、「◯◯さんを探してるんだけど、どこにいるか知ってる?」と聞き回らなくてはなりませんから、人数が多い企業では注意が必要ですね。そのような場合は、部署やプロジェクト単位でスペースを決めてフリーアドレスにすることで対策ができそうです。

オープンな雰囲気を演出する会議室


こちらはデザインファームLunarのサンフランシスコオフィス。
ガラス張りで天井が高い部屋は、それだけでは無機質な印象を与えてしまいそうですが、ウッディーな家具とレンガで温かみのあるトーンに仕上がっていますね。

設計を担当したロサンゼルスのShubin Donaldsonは、Lunarのブランドを体現する「機能的でユニークな空間」を意識してレイアウトをしたそうです。
この会議室における機能的なデザインは、会議室の内と外がフラットに設計されていて、隔てるものがガラスだけである点だと思いました。例えばホワイトボードを運び込みたい時や、車椅子の来客にも対応がしやすい親切なレイアウトになっていますよね。
対してユニークなデザインは、ところどころに残る木の柱から垣間見えます。もともと工場として使われていたという建物の歴史へのリスペクトを感じさせます。

ガラス張りの会議室は、すりガラスや壁で囲まれた会議室に比べて圧迫感が少なく、外からのぞいた時にも、どのような会議が行われているのかを一目で確認することができるメリットがあります。
自分たちの見えないところで意思決定が下され、上から降りてきた決定事項に納得しないまま業務に取り掛かる…という経験がある人は少なからずいると思います。しかし、もはや経営の意思決定は経営層だけではなく、全てのビジネスパーソンが主体性を持って理解するべき時代になりつつありますから、どのような会議が行われているのかを把握しやすいガラス張りの会議室は、組織自体の透明性を高めてくれる存在と言えそうです。

多様な使い方ができるフリースペース

ソファやクッションを設置したフリースペースは、レイアウトによって多様な使い方をすることができます。
この写真は、世界11カ国に拠点をもつデザインファームFrog Designのもの。写真のように、ラフなコミュニケーションの中でアイデアを出し合ったり、いつもの執務スペースと気分を変えて作業をすることも可能です。
来客があった時にはお客様にお待ちいただくスペースにできますし、少しレイアウトを変えるだけで勉強会やイベントの場としても使うことができます。
設計を担当したSHoP Architectsによると、このオフィスは全体のうち約20%をフリースペースとしているそうです。日々変化するオフィスの需要のことを考えた設計がされているんですね。

Frog Design出身で、このオフィスを訪れたこともある社内のデザイナーに、実際に感じたことを聞いてみました。
最初、Frogのメンバーは色々なレイアウトを試しました。このスペースの近くにはキッチンがあり、そこでコーヒーを淹れて社員同士で交流するコーヒータイムというイベントが毎日16時にありました。クライアントが来たときには会議のスペースにも使える、とても優れたレイアウトです。

組織はまだ成長過程ではあるけれど、今後メンバーを増やしていきたいと考えている場合、オフィスのフリースペースは有効活用して、柔軟にレイアウトを考えていくべきでしょう。

交流の場になるキッチン/カフェスペース

こちらはグローバルデザインファームIDEOのサンフランシスコオフィス。
設計を担当したJensen Architectsは、キッチンとカフェスペースをあえてメインストリートに面するように設計したようです。

大きなテーブルの周りに設置されたキッチンとカフェスペースは、エンバカデロに面していて、IDEOのメンバーと、エンバカデロのせわしない歩道との間に強い視覚的関係を作り出します。
参照:http://jensen-architects.com/our_work/ideo_san_francisco_offices

エンバカデロ地区は、海沿いでありながら高級ホテルやレストランが多く存在し、たくさんの人が行き交う場所です。あえてオープンなレイアウトにした理由は、IDEOのメンバーにとって、人々の生活と密接に紐づいた場所で休憩をとることが、新たな気づきや発見に繋がると考えたからなのでしょう。

IDEOはロンドン、シカゴ、上海、東京など世界中にオフィスを構えており、コーポレートサイトでは各国のオフィスの様子を垣間見ることができます。どのオフィスにも共通している点は、人間に使われることを前提としたレイアウトがされているところだと感じました。

キッチンやカフェスペースを設置すると、カジュアルな空気でミーティングやインタビューを行うことが可能です。偶発的なコミュニケーションからインスピレーションが得られることは、業種や職種に関わらずあると思います。
オフィスのレイアウトを考える時には、流行っている、ファッショナブルだという表面的な理由で判断せず、どのような目的があり、どのような影響を組織に与えたいのかを検証することが大切ですね。

おまけ : Goodpatchのカウンターキッチン

実はGoodpatchの東京オフィスにも、キッチンがあります。
代表の土屋が訪れたサンフランシスコのコワーキングスペースで、ランチをとりながらラフにフィードバックをしたり、コミュニケーションをとる人々に衝撃を受け、5年越しで実現したものです。

実際にこのキッチンでは、有志社員によるたこ焼きパーティーや、全社イベントの懇親会が開かれ、職種や部署を越えたコミュニケーションの場として機能しているように思います。中には、キッチンでこだわりのコーヒーを振る舞うメンバーもおり、ランチタイムは和やかな雰囲気が絶えません。カウンターキッチンとフリースペースが近いため、コミュニケーションが活性化するレイアウトだと感じます。

まとめ

今回は海外のデザインファームのオフィスレイアウトをご紹介しました。
日本では真似できない、参考にしにくいと感じるかもしれませんが、見かけのレイアウトだけではなく、社内のメンバーを観察し、潜在的な課題やニーズを汲み取り、理想に導く姿勢が参考になれば嬉しいです。
その一つがオフィスのレイアウトを試行錯誤することであり、これは組織のデザインにも繋がるのではないでしょうか。