新しいものが大好きなGoodpatchで3月話題になったアプリ、サービス、デザインまとめ(2021)
春風が心地よい季節となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今月もGoodpatchで話題になったアプリやサービスをご紹介します!
アプリケーション
アメリカのスタートアップ発のビデオ会議サービス「Around」が話題
Aroundはアメリカのスタートアップ「Teamport」が2018年にローンチしたビデオ会議ツールで、参加者のカメラ映像を丸く切り取られたウィンドウに配置できることが特徴です。その考え抜かれたユーザビリティの高さが今月SNSなどで話題になりました。部屋の背景の映り込みや参加者の顔を過度に大きく写すことを避けながらも最低限表情がわかるよう工夫されたカメラの表示方法や、参加者の画面をリモートで操作できるスクリーンシェア機能などが注目の要因です。
Aroundはこれまでのビデオ会議ツールで見過ごされてきた小さなストレスをなくすための工夫が凝らされているサービスだと感じました。類似ツールでは、参加者の顔をみて話ができる価値に重きが置かれる反動として、プライバシーの尊重や共同作業を重視した設計が支持されているのかもしれません。コロナ禍の影響が長引き多くの人々がビデオ会議に慣れるなか、ビデオ会議ツールに求めることが変化しているようです。ユーザーの志向が変化することで、Zoomなど普及したサービスとは一味違ったユニークなビデオ会議ツールが台頭してくる可能性を感じます。
サービス
デザインシップが実戦型デザインスクール「Designship Do」の第一期生の募集を開始
一般社団法人デザインシップは、現場で戦うデザイナーのための実戦型デザインスクール「Designship Do」を2021年5月に開校すると発表し、第一期生の募集を開始しました。Designshipは業界の壁を超えるデザインカンファレンスですが、本スクールではデザイン・ビジネス・リーダーシップの3要素を「実践」と「思考」の両軸から学ぶ、短期集中型の独自カリキュラムを実施。受講生の方が何度でも見ることができるVODコンテンツにGoodpatch代表土屋が登場するほか、デザイナーのキャリア支援サービスReDesignerとのコラボ企画も予定しています。デザインを軸にリーダーシップを発揮する「高度デザイン人材」の社会的ニーズが高まりつつありますが日本では現在、人材が不足している状況です。
そんな中、座学に加え、それがどうビジネスで活きてくるのかを実践的に学べる価値は大きく、デザインの素養を兼ね備えたビジネスパーソンが多く出てくることが期待されます。受講はオンラインで、さらに期間は3ヶ月と短い期間で設定されているため、忙しい社会人でも受講が可能です。興味のある方はエントリーしてみてはいかがでしょうか?
集英社がマンガアートのEC事業「SHUEISHA MANGA-ART HERITAGE」を開始
2021年3月1日、集英社がマンガ原画を「マンガアート」へ昇華させ、世界に向けて販売する新事業 SHUEISHA MANGA-ART HERITAGEを開始しました。同社は2008年からデジタルアーカイブと呼ばれるマンガをデジタル化し保存する取り組みを実施しています。加えて、SHUEISHA MANGA-ART HERITAGEではブロックチェーンを活用し、希少性や真正性といった「マンガアート」のあらゆる価値を永続的に保証します。
マンガ制作において中間制作物であるマンガ原画をアート作品として成立させるためには、質感や色合いといった原画ならではの魅力を最大限に引き出す必要がありました。そのために、SHUEISHA MANGA-ART HERITAGEは新たな紙や印刷技術を考案しています。このような独自の技術、技法も「マンガアート」の価値の一つと言えるでしょう。
雑誌POPEYEがウェブサイトPOPEYE Webを開始
2021年3月9日、株式会社マガジンハウスが発行している雑誌POPEYEがウェブサイトPOPEYE Webを開始しました。POPEYEは1976年に創刊された男性向けファッション・カルチャー雑誌です。雑誌のWebサイトと聞くと誌面の内容をデジタル化しただけのコンテンツを想像するかもしれません。しかし、POPEYE Webは記事だけでなく動画や音声メディアなど、Webサイト独自のコンテンツが用意されています。カレンダーのフォントやコンテンツの動きなど、デザインも様々なところに遊び心があり魅力的なWebサイトになっています。
Webサイト独自のコンテンツにより、雑誌で表現していた世界観を今までとは異なった方法で表現することができるようになりました。そのため、今までは紙の上で眺めることしかできなかった世界へ、好きなときに好きな方法で没頭できるのです。売り上げの減少が続いている雑誌業界で、Webで世界観を表現し、新たな発信をすることはコミュニティを広げることに繋がるのではないでしょうか。また、現在ファッション・カルチャー雑誌界隈全体がWebコンテンツに力を入れ始めている流れがあります。直接消費者とコミュニケーションをとれるようになったことで、D2Cの取り組みへと発展していくのではないでしょうか。
プロダクト
考えるだけで操作できるARデバイス「Cognixion One」が2021年内リリース予定
カナダのスタートアップCognixionは、脳波や視線でVR/ARデバイスを操作するBCI搭載のARデバイス「Cognixion One」を発表しました。Cognixion Oneは、ユーザーの考えや意思そのものを読み取るのではなく、視線などの方向を脳活動から判断することでヘッドアップディスプレイに映るキーボードから文字を入力したり、メニュー画面から様々な機能を選択し実行することが可能となりました。
Cognixion Oneは、脳性麻痺や筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった、コミュニケーションに課題を抱えている方を対象にしています。このプロダクトを利用することで、そういったコミュニケーションに課題を抱えている方だけではなく、家族や親しい友人も一緒に、これまでは難しかった言語によるコミュニケーションができるようになることでしょう。
このようなプロダクトやテクノロジーの登場は、身体に課題を抱えている方だけではなく、手や口を動かすことができない環境下や医療現場や運転の現場など手が離せないシチュエーションでも、新しいコミュニケーションのキッカケを与えるのではないでしょうか。
その他
デザインから日本の観光体験を支える「EXPERIENCE JAPAN PICTOGRAMS」をNDCが公開
https://experience-japan.info/
日本デザインセンター(以下、NDC)によるピクトグラム、「EXPERIENCE JAPAN PICTOGRAMS」が公開されました。EXPERIENCE JAPAN PICTOGRAMSは「二度目の日本」をテーマに、従来よりも日本の体験を一歩深く掘り下げた独自性あるピクトグラムのラインナップになっています。例えば和菓子・そうめん・居酒屋など日本文化を表現したものから、厳島神社・松島などの観光地まで豊富に用意されています。利用規約の範囲内であれば、個人・法人・商用・非商用を問わず、だれでも無料で利用可能です。
情報を伝えるための視覚記号であるピクトグラムですが、今では当たり前のように使用される「競技ピクトグラム」が初めて導入されたのは、実は1964年の東京五輪でした。そしてその年の東京五輪では、のちにNDC設立を担う中核メンバーらが大会を彩るグラフィックデザインを制作しました。ロゴ・ポスターデザインを亀倉雄策、ピクトグラムデザインは田中一光・横尾忠則らが手掛けています。東京に二回目のオリンピックが訪れるタイミングで、NDCが観光産業に適したピクトグラムを無償提供したことには、世界に日本のグラフィックデザイン文化の成長を示す、というメッセージも感じました。
ヤマトホールディングスがロゴマークを一新
https://www.yamato-hd.co.jp/pr/logo2021/
ヤマトホールディングス株式会社は、2021年の4月1日より新しいロゴマークの使用を開始すると発表しました。新しいロゴの発表と同時に、「信頼をいただくために積み重ねてきたサービスを、これからもより丁寧に、より洗練させ、前進していきます」と意思表明をしました。
企業のロゴは、その企業や理念などを象徴するために使用されることが多いです。そのロゴを変更したということは、64年間続いてきたヤマトホールディングスの新たな意思を表明していると捉えることができるのではないでしょうか。
今回の新しいロゴは、猫の表現が線が少なくなり、よりシンプルなデザインになっています。背景にはクロネコを囲うだけでなくやわらかく広がりのある楕円を採用することによって、今までとは違う、次の運び方をつくるという意思をよく表しています。また、猫のモチーフを維持することによって今までの想いも変わらず表現されています。デザインを勉強している方や現場のデザイナーにとっても、長く使用してきた歴史のあるマークを引継ぎつつ新たな企業姿勢を反映した良い例ではないでしょうか。
無意識バイアスワークショップの資料をメルカリが無償公開
https://about.mercari.com/press/news/articles/20210225_unconsciousbiasworkshop/
株式会社メルカリは無意識バイアスを適切に理解するための「無意識バイアスワークショップ」研修資料を無償公開しました。「無意識バイアス」とは生活や文化を通し、人が無意識に身に付けた偏見や思い込みのことを指します。このようなバイアスは機会の公正性を妨げるきっかけになり、採用や人事評価にも影響します。ワークショップではまず無意識バイアスについての説明がされ、無意識バイアスの例やセルフチェックなどを行います。これらを通して受講者が適切に無意識バイアスを理解し、自らその影響に気付けるようになることを目的としています。
私たちの脳は、思考するエネルギーをセーブするためにショートカットして物事を見ようとします。それ自体は決して悪いことではないのですが、ものづくりをする際にはその存在に気を付けなければいけません。無意識バイアスを通してユーザーをみたことで、ユーザーにとって望ましくないプロダクトを生み出してしまうリスクもあります。そのほかにも、チームにいるメンバーを無意識バイアスを通してみることで多様な意見を取り入れる上での障害になりかねません。無意識バイアスを完全に取り払うことは難しいですが、その存在を認め、意識していくことが適切にものごとを見ることにつながっていくのではないでしょうか。
以上、3月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!
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