今回インタビューしたのは、サービスデザイナーとしてGoodpatch Anywhere(以下、Anywhere)に参画する大堀祐一。自身で設立した株式会社DENDESIGNの代表でもあります。スマートフォンアプリ開発の黎明期からデザイナーとしてサービス設計を担ってきた彼の、決して順風満帆ではなかったこれまでを聞きました。

“Designer”と”Photoshop Artist”

学生の頃はエディトリアルデザイナーを目指していました。
もともと物作りが好きでデザイン学科にいましたし、図書館でタイポグラフィの本と出会って心を掴まれたことで、雑誌や書籍のデザインを仕事にしたいと思っていたのです。
大学卒業後には本格的にエディトリアルデザインを学ぶため、専門学校桑沢デザイン研究所に編入学してプロの技術をたくさん学びました。

ちょうどその頃iPhone3GSを使っていたのですが、友人の勧めで学生向けのアプリコンペに参加する機会がありました。仲間と一緒に企画を考えカタチにしていく過程で、アプリのデザインも面白いぞと気づきました。

結局IT企業にも興味がわき、当時エディトリアルデザイン事務所とIT企業の2社でインターンを掛け持ちしていました。さらに課題のきつい専門学校だったので、東銀座の公園でご飯を食べながら倒れかけたこともあります。

IT企業では社長とも歳が近く、メンバーも同世代の優秀な人ばかりで「自分たちが世の中を動かすサービスを作るんだ!」と熱を強く持っていました。入ってすぐに「なんて楽しい会社なんだ!」と感動し、専門学校を中退し、フリーターとして社会人生活をスタートしました(笑)。

最初の1年間で、会社とプライベートを合わせて10個くらいのアプリをデザインしました。当時はUIデザイナーとして会社にいたのですが、デザイナーは僕一人だったので、設計の部分も担っていました。

その時に、綺麗なものを作るだけではなくユーザー体験にも目を向けなければならないということを意識するようになりましたね。iPhoneアプリが生まれて日も浅く、設計フローも確立されていないので、特にアメリカのApp Storeの人気アプリをトレースして、構造やスタイルを真似していました。

経験者も少なかったのでプライベートでも仕事をもらうことができました。そこで先輩とこっそり作ったアプリがApp Storeのランキング1位を取ったんです。ランキングのトップに何日も自分たちのアプリがある光景はとても自信になりました

その後、シリコンバレーに行く話が舞い込んできて会社を退職しました。シリコンバレーのVC主催のインキュベーションプログラムに参加する企業が、一緒に渡米してくれるデザイナーを探していると聞き、迷わず行くことを決めました。アメリカのAppStore上位はだいたいシリコンバレーから発信されたものでしたし憧れがありました。

そのプログラムは、スタートアップが集められて3か月間プロダクトを作るというもので、とても濃密な時間を過ごしました。その時に、デザイナーとしての考え方が大きく変わりましたね

当時の習作(左)と友人と企画開発したアプリ(右)

“Photoshop Artist”という言葉に出会ったのです。当時、立体的で綺麗なアイコンがもてはやされていて、僕自身も立体的でリアルなデザインを得意としていました。ただ、向こうではカイゼンを回しながらプロダクトを成長させるのがデザイナーの仕事で、そういう綺麗に整える仕事はPhotoshop Artistの仕事と捉えられていたのです。

自分はどちらになりたいのかと考え、結果的に、綺麗なものを作るアーティストよりも、設計したりプロダクトをより良くしていくデザイナーの仕事が本当にやりたいことだと行き着いて今に至ります。

直面したチーム作りの難しさ

帰国後は渋谷のコワーキングスペースで得た知り合いのツテで仕事をもらい、フリーランスとして働き始めました。Goodpatch代表の土屋さんと出会ったのはこの頃です。
当時サービスの設計から携われることが本当に楽しくて、手数も足りなくなってきたことで、帰国して1年で法人化します。

そして人数も増え、広いオフィスも構えて順調に思えたのですが、主要メンバーが離れることになり、きちんとチームを作れていなかったなと実感しました。彼が抜けたら会社として厳しくなってしまいましたし、色々なところに自分が口を出してしまって、骨太な組織になっていなかったのです。目の前の仕事に没頭するあまり、組織を良くしていくことをサボっていたんですよね。

経営やマネージメントをしながらプレイヤーとしてデザインもしていくことに疲れ、半年かけてみんなには転職してもらい、しばらく一人でやっていくことにしました。

結局独立して今までに200を越えるサービスに関わって来られたのは、チームのおかげでもあり、なるべく経営に時間を割かずデザインしてきたおかげかもしれません。今でも継続して関われるクライアントがいることはとても嬉しいことです。

2016年からは母校の千葉大学で非常勤講師もしています。工学部デザイン学科なので、本来はデザインを研究するところですが、学生の多くはデザイン関係の仕事を目指しています。ですから、当時の自分が知りたかったデザインの技術や、仕事で得た設計やコンセプトメイクの楽しさを伝えられたらと思っています。今年で5年目になりますが毎年学生さんから刺激を受けています。昔の自分を見ているようでくすぐったいこともありますよ。そこで手を抜くなよ!とか(笑)。

参考:デザイナー1年生、独立する|大堀 祐一|note
https://note.com/holly/n/ncddb00b81ee1

チームになって倍になったインプット量

Anywhereに入ったのは、土屋さんに声をかけてもらったことがきっかけです。もともと、Goodpatchの創業期に、知り合いの紹介で土屋さんと出会い、いくつか案件をご一緒させてもらっていました。フルリモートでもチームで動けること、Goodpatch本体と変わらない体制で臨めることに惹かれました

会社を一人にして1年半ほどたっていたのですが、正直自分が伸び悩んでいる自覚がありました。もし良いチームが作れたなら、仕事の質も自分のレベルももっと上がるのではと思ったのです。一人でプロダクトを作っていると、壁にぶつかった時になかなかそれを越えられないのですが、チームで取り掛かることでその壁を乗り越えられるのではと期待していました。

実際チームでやってみると、その期待を超えるメリットがありました。
デザイナー同士で作ったものをレビューし、同時編集で進めることでアプトプットのレベルは上がりましたし、設計に迷った時も相談できる仲間がいます
好奇心が旺盛なメンバーが多いので自然とナレッジシェアの文化も生まれています。
案件以外のところで読書会や勉強会を行い、色々な視点で知識を深掘りできるのも最高ですよね。

今は、自分の会社の仕事をやりつつAnywhereの仕事がリソースの8割くらいで仕事をしています。

参考:リモートデザインチームで働くコツ|大堀 祐一|note
https://note.com/holly/n/n79e37512d6c6

でもやっぱりチームが良い!

一人でやってきた時間が長いので、最悪全員倒れても自分が最後まで進めるんだ、という気概で仕事をしているつもりです。

それでもなんとかならない時とか、一緒に議論して考えを深めたり、ドリーム会(各自でベストを考えてぶつけ合う時間)はとても尊く感じます。一人でやっている時に感じた壁を、この半年強で軽く飛び越えた感じがあります。

また、自分がいなくてもチームが回っていくようにメンバーにボールを渡すように心がけています。これは過去のチーム作りの失敗から得た学びです。
でもそんな心配も無用なくらい、リモートで自走できるメンバーが揃っています。そこは必須条件だと思いますが、「自分でプロジェクトを動かすんだ!」という気概を持ってコミットできる人にはぜひもっと仲間になって欲しいですね。
一人でやっていく力がある人が、あえてチームになることでとんでもないチームが生まれるんだと思います。

僕はAnywhereのことを日本一のサービスデザイン組織になれると思っています。実際、フリーで働いているプロフェッショナルが集まって、チームとして力を発揮できる環境、文化が整っていれば、Goodpatch本体よりも上なんじゃないかなと思うくらいです(笑)。ですからもっともっと多彩なメンバーが集まってくるような組織として成長させていきたいです。面白いメンバーが集まるとAnywhereにしかできない仕事が舞い込んでくる。そういったより良いスパイラルを生み出していきたいですね。そのために、Anywhereにいると自分の知識や技術が磨かれるよという面白さをどんどん発信していきたいと思っています。

サービスデザインの仕事はものづくりと人とのコミュニケーションがバランスよくある仕事で、それは自分自身にとって天職だと思っています。社会に残る非効率な部分を改善して、より良い社会を作っていくために、好奇心を忘れずフットワーク軽く色々なことに挑戦していきたいです。


Goodpatch Anywhereはフルリモートのデザインチームです。
1人では決して成し遂げられないデザインを実現するために、デザインの力を信じる仲間を募集しています。
現在、選考フローは完全オンラインにも対応していますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

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Goodpatch Anywhere公式Twitter
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