自分の考えをうまく人に伝えられないことはありませんか?

自分の頭の中にある考えやイメージを、直接相手の頭の中に送ることができれば簡単に伝えることができるかもしれませんが、そういうわけにもいきません。

ですが、直接送ることはできなくても、情報を視覚化することでより伝わりやすいように工夫することは可能です。
実際に身の回りでは、情報を伝えるために視覚化されたもので溢れています。

そこで今回は、考えを伝える1つの手段として、情報を図解して視覚化する方法をご紹介します。

「情報を視覚化する」とは?

情報の視覚化とは、文字通り、情報(考えていることや伝えたいこと)を、図解表現などを用いて目に見える状態にすることです。

メリット

自分の思い描いているイメージや、言葉で明確に言い表すことができない事柄を目に見えるようにすることで、その情報の関係性や構造が的確に伝わります。

また、人は実際に目に見えるものに惹きつけられます。
例えば、テレビがついているとなんとなく見てしまうことはありませんか?
あるいは、電車に乗っているときになんとなく広告を眺めていることはありませんか?

目を惹きつけられるということは、そこから意識をそらしにくいということです。
なので、言葉だけで伝えるよりも視覚化した方が内容に集中する、もしくはしてもらうことができます。
さらに視覚化された情報は保持され、見直したときに記憶を呼び起こす力を持ちます。

例えばワインに興味を持ち、詳しい人に聞きにいくとします。
「白ワインは飲みやすくておすすめ!」ぐらいであれば、簡単に言葉だけでも理解できます。

しかし、もう少し踏み込んだときに、
「飲みやすい白ワインの中でもフランスの○○というワインは口当たりが軽くて飲みやすくて、日本の△△というワインはそれに比べると酸味が強く少し上級者向けで更に…」のように複雑な話になってきたときには、イメージすることが大変になってくると思います。

そのような時こそ、視覚化の効果が表れてきます。
上記のような複雑な情報が視覚化されたものが以下の図です。

 

言葉や文字だけではわかりづらい関係性や、聞いただけでは覚えきれない情報を、見るだけでぱっと理解できるようになったと思います。

このように視覚化することで、情報の関連性や構造が理解しやすくなります。

「上手な視覚化」≠「上手な絵」

「視覚化」と聞くと、「絵心がないとだめじゃないの?」と思う人もいると思います。
もちろん無関係ではなく、魅力的な絵を描くことでより多くの人の興味を引くことができるかもしれません。

しかし、相手に伝えることにおいて最も重要なのは情報を整理して構造化(わかりやすい形に組み替える)することです。
これは、○や□といった簡単な図形を用いるだけでも充分効果があります。
先程のワインの例も、ワインや動物のグラフィックが入っているので難しく思うかもしれませんが、
図の部分は○と□と文字だけで構成されています。

さらに、多くの人が幼い頃からすでにさまざまな事柄を視覚化しています。
例えば小学校の算数で「りんごやみかんの数を求める問題」を解くとき、実際にりんごやみかんの数を描いて数えた人は多いと思います。

また、数学においても、「袋に入っている赤玉や青玉が出る確率を求める問題」で実際に玉を描いて考えたことがある人は多いと思います。

このように、ラクガキのような手書きの簡単な図を少しつけるだけでもその情報について考える・伝える手助けとなっていたはずです。

小学校や中学校までは描きながら考える・伝える人は多いのですが、大きくなるに連れて「絵のセンスがない」「描いたものを見られることが恥ずかしい」という気持ちから、視覚化することに抵抗を持ってしまいがちです。

あまり身構えずにまずは簡単なところから視覚化してみると、それだけでも視覚化の効果を実感できます。

身近にある視覚化の例

身の回りに目を向けると、情報が視覚化されているものはたくさん見つかります。
今回はその中から路線図についてご紹介します。

路線図

路線図は、駅の接続・配置関係を相対的に示した図表です。
特に東京のような路線が集中している場所には、縦横無尽に路線が存在し乗り換えも多く、とても情報が煩雑としています。

しかし、その場所に適した情報を取捨選択して整理し、視覚化することで利用者が迷わないように工夫がされています。

この路線図は改札に入る前のところにあるものです。

ざっくりとした地理的情報(正確な距離や位置関係は単純化されている)も交えて、全体を俯瞰しながら目的の駅に着くためにはどの路線を利用してどの駅で乗り換える必要があるのかがわかるようになっています。

 

改札内に入ると、路線図(正確には停車駅案内図)の内容ががらっと変わります。

利用者は改札内に入った時点で路線は決まっているので、その路線がどのような順番で駅をまわるのかにフォーカスした内容に変わっています。
なので、地理的情報は排除され、路線が交差する部分は補助的に表されています。

今回ご紹介した例のように、同じような情報を扱う場合でもその情報を見る人の状況を考えて、情報を整理して構造化(わかりやすい形に組み替える)することが重要です。

情報の視覚化の有効活用

プレゼン

上記のスライドでは、簡単な図形を用いて開発プロセスを視覚化しています。
話の内容に合わせて少しずつ情報が足されていくので、どこに注目すれば良いのかがよりわかりやすくなっています。

一般的に、テキストのみを画面に表示して読み上げるよりも、そのページで話す内容を視覚化して伝えるほうが聴衆の興味をひき、より強く記憶に残すことができます。

グラフィックレコーディング

グラフィックレコーディング(通称グラレコ)は、議論を活性化させるために、情報の視覚化を活用する手法です。
「議論」という見えないものを視覚化することで、参加者の認識のずれを防ぎ、どの部分を明確にしないといけないのかがよりわかりやすくなります。

グッドパッチではグラレコに取り組むメンバーが多く、勉強会も開かれています。
Goodpatch Blog内には、グラレコに関する記事がいくつかあるのでぜひ参考にしてみてください。

書籍紹介

情報の視覚化について、具体的な方法や考えをもっと深く学びたいと思った人は以下の書籍をおすすめします。
絵を描くことに抵抗がある人でも手に取りやすい本ばかりなので、興味がある人はぜひ1度読んでみてください。

たのしいインフォグラフィックス入門


たのしいインフォグラフィックス入門

図解にさらに手を加えてより多くの人を惹きつける「インフォグラフィック」を作るための入門書です。

情報を視覚的にわかりやすく伝えるための方法や考えが具体的に載っていて、インフォグラフィックの基である図解についても詳しく解説されています。

概念についての説明の後に、制作方法が数ステップに分けて具体的に説明されているため、初心者でも学びやすい内容となっています。
また、説明の中にも実例や図解などのビジュアルが満載なので、さらっと読むだけでもとても参考になる点が多いです。

デザイン仕事に必ず役立つ 図解力アップドリル

デザイン仕事に必ず役立つ 図解力アップドリル

「図解する力」を鍛えるための本です。

ドリル形式の構成となっているので、実際に考えながら手を動かすことで進めていきます。
「点」「線」「面」といった基本から、名刺などの制作物を扱う応用まで幅広く力をつけることができます。
手を動かすことを通して、「表現することの楽しさ」「絵を描く楽しみ」を思い出させてくれる本です。

描きながら考える力 ~The Doodle Revolution~

描きながら考える力 ~The Doodle Revolution~

数字や言葉ではない「ビジュアル言語」を「ラクガキ(Doodle)」と表し、その効果・魅力や個人での役立て方、チームへの取り入れ方からビジネスへ活用する方法まで記されています。
描こう!という気持ちを強く引き起こしてくれる内容で、冒頭は以下のような印象深い言葉で始まります。

わたしはこの数年、さまざまな人が目の前で平然と嘘をつく姿を見てきた。本当に多くの人が、際限なく嘘をつく。たぶん最大の問題は、その人たちがみんな自分の嘘を信じ切っていること、ばかげた思い込みを真実だと思っていることだ。この嘘はけっしてなくならない。嘘のパターンは色々で、なんてみんなクリエイティブなのだろうと感心するほどだ。嘘とはつまりこれだ。

「わたしには絵が描けない…」

私も絵のセンスが無いと思い込んで描くことを恐れていた人間の1人なのですが、この本を読んで意識が変わりました。
TEDにて著者のプレゼンが公開されているので、興味を持った方は1度動画を観ることをおすすめします。


今回は考えを伝える1つの手段として、情報を視覚化する方法をご紹介しました。
ただ言葉だけで伝えるよりも、より伝わりやすくなるという効果を実感していただけたでしょうか。

また、視覚化するにあたって「絵心がない!」「センスがない!」と思っている人の背中を押すことができれば幸いです。

さらに、情報を整理・構造化して表現するということは、まさにデザイナーが普段やっていることと重なっています。
なので、情報を整理して伝えることが楽しい!と感じる人は、デザインに関する記事や本を読んでみると更に知見が広がると思います。

Goodpatch Blogでは、デザインの基礎に関するさまざまな記事を発信しています。ぜひ1度読んでみてください。