プロダクトから組織にわたる「16の課題」を全社横断で解決へ──SBペイメントサービスが挑む、顧客満足度向上プロジェクト【前編】
SBペイメントサービス株式会社は、ソフトバンク株式会社(以下、SB)の100%子会社であり2004年に設立された会社です。SBグループの決済・金融事業を担い、その大規模なトランザクションへの対応の中で培われたシステムや業務におけるナレッジをもって、お客さまへ確かなサービスを提供しています。
そんな同社が課題に感じていたのは「決済サービスを利用する加盟店の満足度向上」。この大きな目標に向けて、どう着手すべきか具体的なアクションを決めかねていたと言います。
今回Goodpatchは、顧客満足度向上に向けた組織の立ち上げからプロダクト改善の提案、オペレーションの改善も含め、顧客体験(CX)の向上までをトータルで支援。プロジェクトを通じてどんな成果が得られたのか、前後編の2本立てでお届けします。
まずは前編、調査を通じて浮かび上がった「16」もの課題をどのようなプロセスで解決に向けて推進していったのか。プロジェクトメンバーに話を聞きました。
話し手:
SBペイメントサービス 企画推進本部 副本部長 波田野さん
SBペイメントサービス データ戦略室 室長 奥川さん
SBペイメントサービス 営業本部 営業戦略部 マーケティング課 課長 木村さん
SBペイメントサービス システム本部 カスタマーサービス部 日比さん
Goodpatch デザインストラテジスト 高橋
Goodpatch UIデザイナー 金渕
目次
顧客満足度に課題 どう向上させるか、具体的な「道筋」が分からなかった
──今回、決済サービスを利用する加盟店の満足度向上をテーマにGoodpatchにご相談いただいたと聞いています。当時抱えていた課題や、相談に至った経緯などを教えていただけますか?
SBペイメントサービス 波田野さん:
以前から定期的に加盟店さまの声を聞いていたのですが、具体的にどう満足度を改善していくか、計りかねていたというのが当時の状況でした。
社内の知見だけでは足りない部分もあるかもしれない。そこで外部から新たな知見を得つつ、プロジェクトを一気に進められればと考え、数社からお話を聞きました。これが2021年の年の瀬くらいの話です。
SBペイメントサービス 奥川さん:
過去にも自社内で顧客アンケートを行い、課題や改善案をまとめたことがありました。しかし、例えば「サポートの体制に課題がある」ということが分かっても、対応のマニュアルが良くないのか、プロダクトの操作性が課題で問い合わせが増えることが良くないのか。原因はすぐには分かりません。
顧客満足度はさまざまな要因が絡み合って生まれるものです。「本当に全ての課題を洗い出せているのか」「導き出した方向性は正しいのか」「そもそも自分たちでどう推進していくのか」という部分に自信が持てずにいたのです。
──なるほど。最終的にパートナーとしてGoodpatchを選ばれたのはなぜだったのでしょうか。
SBペイメントサービス 波田野さん:
経験が豊富でフレームワークを持っていると感じたからです。他にも提案いただいた会社はありましたが、自分たちが同じことを再現したり、自走していける道筋が見えづらかったりした部分がありましたので。そして何より、Goodpatchさんはものを作るデザイン力と、コンサルティングの両方に強みを持っている部分が頼もしかったですね。われわれが求めていた両軸だったので。
SBペイメントサービス 奥川さん:
例えば、Goodpatchさんからは「カスタマーサクセスを成功させるための5要素」というフレームワークを提示していただきました。これは今でもプロジェクトの方針として役に立っています。どの要素が改善すれば、他の要素にどう影響するのか。顧客満足度に対する理解が高まり、目標の数値化も含めて、全体感が掴めたことが非常に良い点だったと捉えています。
各ステークホルダーのインタビューから「16の課題」を可視化、全社プロジェクトが発足
──プロジェクトの最初の約2カ月半は要件の整理に取り組まれたそうですが、実際にどんなことをされたのでしょうか?
SBペイメントサービス 奥川さん:
現在の顧客体験を可視化するため、関係者インタビューなどから課題抽出とテーマ整理を行いました。社内の役員を含めた関係者はもちろん、加盟店さまにもインタビューを行っています。あとは現状のカスタマージャーニーマップも作っていただきました。このあたりは僕らは関係者との調整を行い、全体的にGoodpatchさんの方が推進してくれましたね。
──インタビューで得られた結果はどうだったのでしょうか。
SBペイメントサービス 奥川さん:
元々把握していた点もありましたし、新しい気付きもありました。外からの意見だったので社内で行うよりも受け入れやすいものになったと思います。
インタビューを経て、Goodpatchさんには16個の課題を可視化してもらいました。以前は目の前のトラブル対応などに追われ、「いつか顧客満足度も上げていかないとね」というくらい意識だったのですが、具体的な課題が提示されたことで、目標ができたのは大きな変化でした。優先順位もつけられますし、社内の機運も高まったように思います。
Goodpatch 高橋:
もともと顧客満足度調査を実施していて、定量的なデータがそろっていたこともあり、より深い部分を問うインタビューができたのは良かった点です。加えて、加盟店さまと直接お話しされている営業担当の方々の課題に対する理解度が高く、インタビューや課題の可視化という部分はスムーズに進められました。
SBペイメントサービス 波田野さん:
課題を整理したあとは、それぞれに対してワーキンググループを作って解決に着手しました。プロダクトの改善やサポート品質の向上、顧客満足度を評価するための指標(KPI)作りといった組織にまつわる問題まで、全社にまたがるプロジェクトになりました。
──すごいですね。しかし、全社でプロジェクトを進めるというのは苦労する部分も多かったのではないでしょうか。通常業務に加え、16個もの課題に着手するには相当なエネルギーが必要かと思います。メンバーの反応はいかがでしたか?
SBペイメントサービス 奥川さん:
社長の榛葉が「Trust Game Winner(お客さまの信用を勝ち取った者が勝つ)」というキーワードを打ち出していたこともあり、顧客満足度を上げることの重要性は社内に浸透していました。そのおかげで、各部門のキーマンをプロジェクトにアサインでき、課題の解決に意識を向けられたと思います。
トップが間接的に号令をかけてくれたのは、プロジェクトが成功した一つの要因かもしれないですね。
Goodpatch 高橋:
GoodpatchとしてもSBペイメントサービスさんの部長・本部長クラスの方々と一緒に物事を決めていけたのは、スピード感が担保できてありがたかったです。また、私たちから見ると各ワーキンググループへスムーズに権限移譲ができていた点は驚きました。各ワーキンググループがそれぞれスピード感を持って意思決定をできていたのには、メンバーの選抜にポイントがあったのだと感じています。
SBペイメントサービス 奥川さん:
ワーキンググループには、役職関係なく前向きな人に参加してもらうことを意識していました。自律して動ける組織が作れたことがよかったのだと思います。
部門の成果から全社最適へ 他部門と協働することで、課題解決に対する視野が広がった
──日比さんと木村さんは、ワーキンググループを率いる立場の方だったと聞いています。今回のプロジェクトについてどのような印象を抱かれていましたか?
SBペイメントサービス 日比さん:
私は加盟店さまのサポート改善に関するプロジェクトを担当したのですが、今回のプロジェクトをきっかけに、これまでよりも全社一丸となって改善に取り組める環境ができたと感じています。
これまでは、サポートに関する課題が出たときはサポート部門のみの観点で改善に向けた動きを進めていましたが、今回、顧客満足度を高める仕組みや課題が明確になったおかげで、他部門と協働して幅広い観点での改善を進められるようになりました。まさに今、他部門とともに改善に向けて着手しているものもあり、早速全社一丸となって改善に取り組めるようになった変化を自身で感じているところです。
SBペイメントサービス 木村さん:
他部門と協働するようになれた、という変化は私も感じています。私は加盟店さまが使うツールやWebページを改善するプロジェクトを担当していました。これまでは見込み顧客を獲得することを目的にデザインやサイト運営に向き合っており、加盟店さまが使う決済ツールは、他部門の管轄だったこともあり「改善点が多そうだな」と感じながらも、あるべき姿が分からず、具体案を出すなどのアクションをしたことはなかったんです。
それが今回のプロジェクトをきっかけに、他部門の管轄領域についても考える機会ができて、自部門の成果ばかり考えていたことを反省しました。要するに会社の全体最適を考えられていなかったんです。
Goodpatchさんから提案をいただくたびに、「加盟店さまが満足して、売上を上げるために自分は何ができるのか」というマーケティング視点を持つべきだと気付けましたし、成長機会をいただけたと思っています。
──自部門の成果を追うだけでは顧客満足度は高まらない。部門の成果から全社最適へと視野が広がったというわけですね。
SBペイメントサービス 木村さん:
自分自身の変化だけでなく、チームとしてもこの視野の変化は感じています。ワーキンググループの過程で、「ユーザー体験はこうあるべき」「そのためにこんなデザインを実現すべき」という議論ができるようになっていきました。
もちろんコトはそう単純ではなく、他部門が抱えている事情で実現できない、など新たな課題を知ることもあります。以前は何となく「問題があると分かっているのに、どうして変えないんだろう?」くらいにしか考えられなかったものが、他部門を含めた広い視野で関わらなければいけないという思考に変わりつつあります。
見込み顧客獲得だけで終わらず、その顧客が満足するツールやWebページになっているかどうかまでを考えられるようになってきていますね。
Goodpatch 金渕:
私もマーケティング課の方の視野の変化は感じていました。プロジェクトが進むにつれ、見込み顧客獲得だけでなく、プロダクト面も気にかけてくれるようになっていったんです。最初は「本当に実現できるのか?」という雰囲気もややあったように感じましたが、皆さんの変化を通じて「やるしかないよね」という空気感が生まれていったように思います。
後編では、実際のワーキンググループでのアプローチや得られた成果、Goodpatchと併走するなかで印象的だったエピソードなどをお話しいただきます。お楽しみに!
【後編はコチラ】