2020年4月23日、Goodpatchは新しい自社プロダクトとして「Strap」をリリースしました。Strapはチームでプロジェクトを進める全てのつくり手向けのクラウドワークスペースです。詳しい使い方などはこちらの記事をご覧ください。

Goodpatchはこれまでにも、デザインプラットフォーム事業としてPrott、Balto、ReDesignerなどデザインの力を必要とするあらゆる人に向けたプロダクトをリリースしてきました。Baltoのサービス終了などの失敗にも向き合ってきたチームが、Strapというプロダクトを生み出すまでのストーリー、そしてプロダクトに込められた想いについて、エンジニアリングマネージャーの西山に聞いてみました。

失敗を活かしてスタートしたStrapの開発

ーー これまでの開発経験からStrapに活かされたものは?

僕たちはGoodpatchのProduct Div.というチームで、デザインプラットフォーム事業という形で自社プロダクトのProttやStrapを開発しています。いつも大切にしているのは、使い込むほどに愛着が湧いて、毎日でも触れたくなるようなラバブルなデザインです。ソフトウェアであっても、そんな「手触り感」を大切にしています。また、僕らが「Wow感」と呼んでいるユーザーの期待を超えるような驚きを込めることも意識してきました。

しかし、フィードバックツールとしてリリースしたBaltoは約1年でサービス終了に至るなど、Product Div.のこれまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

Baltoの失敗は、具体的にはPMF(プロダクトマーケットフィット)のために検証すべき点や、対象となるマーケットが曖昧な状態のまま抜け出せなかったことが原因でした。この失敗をオープンにしたことで共感の声も多くいただき、僕らにとってもナレッジとして蓄積されました。

実はBaltoのほかにも、タスク管理・プロダクトマネジメントツール「Laika」や、Prottのリニューアルなども構想がありましたが、リリース前に頓挫しています。プロダクトの方向性を固めるのに時間がかかり、いずれも開発に時間をかけすぎてしまいました。そして、開発速度をあげるためにチームの人数を急激に増やしたらコミュニケーションコストが大きくなってしまったことで同じものを見て話すことが難しくなったり、メンバー間でモチベーションにばらつきが生じてしまう事態になってしまったのです。「人数を増やせば開発速度も上がる」という考えは甘かったことが分かりました。

ちょうどGoodpatchが組織崩壊していた頃の話ですが、Product Div.というチームにとっても苦しい時期が続いていましたね。

カルチャー崩壊と再構築。 Goodpatchが取り組んだ組織デザインの2年間
Prottの成長鈍化、チーム解散の危機を経て。グッドパッチが新サービスに込めた思い

チームで同じものを見て素早く形にすることの重要性を感じると同時に、「物理的に離れている場合でもアイディアを形にするためツールを作れないだろうか」というアイデアが浮かんだことがStrapを開発することになったきっかけです。

開発を始めるにあたって、過去の失敗を繰り返してはいけないという強い思いがありました。そこで「誰にどんな価値を届けるのか」というゴールを明確に定義しながら、まずは小さなチームで開発をスタートさせました。

開発を促進したフィードバックとコラボレーション

ーー 具体的にどんな施策を行ったのか、これまでの開発プロセスとの違いは?

開発プロセスの期間を3ヶ月ごとに区切り、小さくリリースを重ねながら進めていきました。Strapの構想段階に3ヶ月でコンセプトを決め、プロトタイプを作成し、経営会議でプレゼンをした時から、ずっと同じペースを維持しています。

また、開発プロセスをオープンにし、早い段階からα版を社内で使ってもらいながら満足度調査なども実施しました。開発者にとっては、リリースまでの期間が長引くほど、「今作っているものは本当にユーザーのためになるのか」と不安に感じるものです。短期間のゴール設定と小さなリリースを繰り返すことで、社内から様々なフィードバックをもらうことができ、「確実に前進している」と感じられたことは良かったですね。問題点も早い段階で改善できました。ポジティブなフィードバックは小さな成功体験としてチームの自信に繋がりますし、モチベーションにもなっていたと思います。

Product Div.のメンバー

ーー Product Div.以外のチームとのコラボレーションも生まれていましたね。

開発プロセスを社内でオープンにしたことで、少しずつ部署を超えたコラボレーションが生まれてきました。具体的には、デザインパートナーとしてクライアントワークを担当しているメンバーたちが知見を持ち寄って、Strapの開発に積極的に関わってくれるようになったんです。

これまでもProttやBaltoなど、社内の課題から生まれたプロダクトはありましたが、部署間でのナレッジ共有やコラボレーションはまだできていない状態でした。だけど、Goodpatchは本来プロダクトを作ることが大好きな人たちの集まり。きっとStrapの潜在的な価値を感じ取って、手伝ってくれたのだと思います。あとは、小さくリリースしていたので開発の現状や指針がわかりやすくなり、フルコミットしていない状態でもフィードバックやヘルプがしやすい環境になったのではないでしょうか。

ーー 他部署とのコラボレーションは、どんな点で学びがありましたか?

Product Div.は当時エンジニアの割合が多かったこともあり、ビジネス戦略や、ブランディングに特化したスキルが不足していました。そんな背景もあったので、クライアントワークで培った経験やナレッジを活かして、Strapのパートナーとして併走してもらい、とても心強かったです。

特にブランドエクスペリエンスに特化したBXチームには、Strapのコンセプトを言語化する過程でサポートしてもらいました。ずっと開発に向き合っていて失われた客観的な観点を引き出すために、ホワイトボードを使ってヒアリングをしてもらったり、その中でStrapというネーミングにも繋がる「情報を繋ぐ、結びつける」というプロダクトのコアとなるキーワードを見つけ出すところを手伝ってもらいました。プロダクトの思想がどんどん言語化され、価値が磨かれていく感覚を初めて体験しましたね。

ここまでビジネス、プロダクト、ブランドなど、あらゆるデザインの猛者が集結している環境はなかなか見つからないと思います。部署を超えたコラボレーションを通して、Goodpatchの大きな強みを実感できました。

オーナーシップを持ち、越境するチーム

ーー Strapはチームのコラボレーションを加速させるプロダクトですが、Product Div.というチームの作り方で意識していたことがあれば教えてください。

Product Div.はエンジニアとデザイナー、カスタマーサクセスという3つのロールに分かれています。メンバーを増やしても開発速度が上がるとは限らないことを過去に学んでいたので、小さいチームでコミュニケーションを増やし、越境したコラボレーションや柔軟なポジションチェンジができるようなホラクラシー型のチームづくりを心がけています。

ホラクラシー型のチームづくりの取り組みとして、「ペアデザイン」や「ペアプログラミング」を行ってきました。頭の中にあることを可視化し、チームで一緒に作る。そしてチームで意思決定する機会を積み重ねることを大切にしていました。「一度持ち帰って共有するね」というコミュニケーションをなくしたことで、スピーディに意思決定ができるようになりましたし、プロダクトについての認識や想いもチームで揃うようになりました。メンバー全員が、プロダクトについて知らないことがない状態を維持したかったのです。最終的にはStrapの提案資料もエンジニアが作っていたりと、自然と越境しやすい環境になっていたのかなと思います。

「新しい働き方」で未来へ価値を創造する

ーー リモートワークが増えていく中、Strapが提供できる価値とはどんなものだと思いますか?

エンジニアリングマネージャー 西山

Strapがあるから離れていてもコラボレーションして、ものづくりができる。フルリモートデザインチームのGoodpatch Anywhereがリモートワークの可能性を広げ、新しい未来を体現しているように、Strapというプロダクトを通して新しい働き方を誰でもできるように作っていくことが、僕らができる未来への価値提案だと考えています。

リモートであるからこそ、アイデアを目に見える形にしてチームで同じモノを見て同じモノに向き合い、思考のプロセスを共有することに価値が出てくる。Strapはメールやテキストチャット、そしてビデオ会議でのコミュニケーションのような、言葉だけのコミュニケーションではこぼれ落ちてしまうものを補完して増幅してくれるものです。

そしてこれは「1000の会議より、1つのプロトタイプ。」というキャッチフレーズを持つProttが提供しつづけてきた価値でもあります。僕らはProttとStrapは地続きとなるプロダクトだと考えています。

価値提案型のプロダクトをつくることは一般に不安を伴いますが、僕らには立ち上げ当初からAnywhereというチームが側にいたおかげで、何の疑いもなく確実に来る未来として、迷いなくStrapの世界観をつくっていくことができました。実際に先人である彼らの知見もプロダクトに反映しています。

現在は新型コロナウイルスの影響でどこの会社もリモートワークが増えていますし、Goodpatchもフルリモートで業務を続けています。そんな中で、Strapが僕らの想像も超えるような自由な使われ方をしているシーンを見かけると、とても嬉しくなりますね。最近だと、社内のメンバーが20卒の自己紹介ボードをStrapで作ってくれていたことがありました。

画像:ストーリーのつくり手になる1日。Goodpatchのオンライン入社式を大公開 より

こういう自由で遊び心のある使い方は、いわゆるBtoBのサービスでは思いつかないと思うんです。「これもStrapならできるかも」と感じてもらえるような、フレンドリーさはこれからも大切にして、どんどんStrapの可能性をユーザーに広げていってもらえたらと思います。

プロダクト開発の過程ではうまくいかないことや苦しいこと、様々な失敗が山のように起きます。それでも僕らは「ものづくりは楽しい」という想いを忘れずに開発をしてきたチームです。全てのつくり手がStrapを使って楽しく開発をして、愛されるプロダクトが生まれていく。そんな世界を実現していきたいです。