サービス立ち上げにおける「課題解決型」と「価値提案型」の違い

これまで、クライアントワークを通していくつかのサービス立ち上げに関わってきました。その中で、「サービス/プロダクトにはどんな価値を提供するのかによって大きく2つの型があること」が見えてきました。

その2つの型とは 「課題解決型」 「価値提案型」です。

これらは、サービス/プロダクトの価値定義や価値検証の考え方、ユーザーへのアプローチの仕方がまるっきり違います。今回は初歩編として、型の違いをまとめていきます。

なお、記事の中に出てくる「課題解決型」や「価値提案型」という言葉は、個人的にしっくりくる言い方を用いているため、一般的に使われている言葉の定義とずれている場合があります。その辺りはご了承ください。

それぞれの型の定義

▼ 課題解決型とは

ユーザーが認識し、顕在化している課題(Needs)を解決するためのアプローチのことを指しています。端的にいうと、「顕在化している課題を解決し、ユーザーの欲しいモノやコト(Wants)を提供すること」がサービスやプロダクトのゴールとなります。

▼ 価値提案型とは

ユーザーがまだ認識していない、顕在化する前の課題(Seeds)に対して、新たな価値や価値観を提案し、欲しいと思えるモノやコト(Wants)に変えるアプローチのことを指しています。
この顕在化していない課題(Seeds)は、ユーザーが認識したとしても、それを課題だと感じる価値観が醸成されていないと価値が伝わらないため、課題解決型のアプローチとは明確に切り分けが行えるでしょう。多くの場合、この価値提案型のコアの価値や価値観を広めることが目下のゴールとなり得るため、価値提案型のサービス/プロダクトは新しい文化や価値観を生んでいます。

後者の価値提案型をイメージしやすくするために少しだけ補足すると、日本のサービス/プロダクトとして個人的には、リンクアンドモチベーション さんの「モチベーションクラウド」や、Fringe81さんの「Unipos」もこれに当たると思います。

また、海外の有名どころでいうとAirbnbUberなども、世の中に顕在化していなかったSeedsに対して新たな価値や価値観を提案し、ユーザーのWantsを引き出すことで成功したサービス/プロダクトです。これらのサービスは、もはや世界中の人々に新たな価値観を植え付け一つの文化を形成するに至っています。

それぞれの型に対する価値定義の考え方

それでは、それぞれの型に対して、サービス立ち上げ時にどのような価値定義をする必要があるのでしょうか?

課題解決型の場合

これはすごく簡単で、前述の通りすでにユーザーが認識している顕在化した課題から本質的課題を特定し、それを解決することがこのプロダクト/サービスの価値となります。

通常のデザインプロセスに則り、ユーザーヒアリングなどの調査から課題を特定し、本質的課題に対するソリューションを考え、そのソリューションに価値を感じるかどうかを価値検証することで、確度の高いものを世に出すことができます。

課題解決型では、市場に対して価値伝達をする際には「〇〇という課題を解決できます」や「その結果、作業効率が〇〇%アップできます」というような実質的な数値での訴求がしやすい場合が多いでしょう。

ただ、課題解決型のデメリットとしては、その解決方法や速度が圧倒的でないとすぐに競合がひしめき合い、代替可能なツールとして価格競争に巻き込まれていく傾向にあります。また、無駄に多機能になりかえって使いづらいプロダクトになる傾向があるので、プロダクトの方向性を指し示す判断が非常に重要になってきます。

価値提案型の場合

対して、価値提案型の場合、現在の市場やユーザーに対する価値定義や価値検証はかなり難しいでしょう。
なぜなら、ユーザー自身が認識していない潜在的な課題(Seeds)に対してアプローチをするため、課題解決型と同じようなアプローチでユーザーを頼りに課題をヒアリングしたり価値を検証しようとしても、多くの場合確定的なデータは出ないことが多いからです。

このように、価値提案型のサービス/プロダクトに対して課題解決型のアプローチをしてしまうと、ユーザーが価値を感じてくれないという事実に対して「本当にこれは価値があるのか?」「ユーザーは欲しがらないのではないか?」という疑念が出てきて迷ってしまうこともあるでしょう。

Airbnbが初期フェーズで、サービスを説明したユーザーからの反応が良くなかったのも、ユーザーにとっての課題が認識されておらず、価値観の醸成もされていなかったため、当然の結果と言えるでしょう。

そのため、価値提案型のサービス/プロダクトでは、プロダクトオーナーや発案者が強く信じるコアの価値をまずは言語化し、それを研ぎ澄ましてユーザーに伝えるためにはどうすればいいのかを考え、ユーザーが価値を感じられる利用可能な最小限の形(MVP)にしてみることが重要です。
このMVPをとにかく早く作り、ユーザーに当てることで初めて価値検証が行えるのです。

また、価値提案型のサービス/プロダクトでは、実現したい価値や価値観を言語化したビジョンやコアバリューを定義することも重要です。
実質的には、価値提案型のプロダクトはその実現したいビジョンに強く共感する人をいかに増やせるか、そしてそのビジョンに共感してもらいやすい状況への誘導や価値観の醸成をいかに進められるかが肝になってきます。

まとめ

今回は私がこれまでに携わったサービス/プロダクトで感じた2つの型の違いをまとめてみました。

・課題解決型
 顕在化している課題(Needs)を解決するためのアプローチ。競合が多くなる傾向にあり、顧客の課題を解決するために多機能になりやすいため、常にプロダクトの方向性を指し示す判断が重要となる。

・価値提案型
 顕在化する前の課題(Seeds)に対して、新たな価値や価値観を提案し、欲しいと思えるモノやコト(Wants)に変えるアプローチ。ユーザーが認識していない課題に対してアプローチをするため、如何にビジョンに共感してもらいやすい状況をつくり、マーケットに対して価値観の醸成を進められるかが重要となる。

サービスを創生するフェーズにおいては、それぞれの型によってサービスデザインやUXデザインのプロセスや価値伝達の方法、そしてビジネスの組み立て方が全く違うため、今立ち上げようとしているサービス/プロダクトがどちらの型なのかを一度見直してみるのはいかがでしょうか?

ABOUTこの記事をかいた人

國光 俊樹

UXデザイナー/プロジェクトマネージャー。クライアントワークをメインに担当し、新規事業案件やリニューアル案件など様々な案件に携わる。 ビジネス視点とユーザー視点を行き来しながら、デジタルだけに閉じないリアルな場も含めた全体の体験設計を得意とする。 高専卒で桑沢卒。グラフィック・エディトリアルデザイナー→WEBデザイナー→UXデザイナーという特殊経歴。
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