愛されるプロダクトを生み出すための4つの要素【GCC2018レポート 前編 】

こんにちは。サービスデザイナーの齋藤とUXデザイナーの野田です。先日、大阪で開催されましたGame Creators Conference 2018 にて「非ゲーム領域のUXデザイン ~愛されるプロダクトを生み出すための4つの要素~」というテーマで講演させていただきました。オーディエンスはゲーム業界の方だったということもあり、ゲームの作り方と対比して聴いていただきたいなという気持ちで作っている内容ですが、今回のブログではゲーム業界でない方にも是非読んでいただけたら嬉しいです。

「普通」のプロダクトでは戦えない

まず、最近のデザイン業界の状況はと言いますと、ありがたいことにデザインに対する期待は世界的に高まっているといえます。ここでいうデザインとは「装飾的」なデザインではなくて、もっと広義の、主に課題解決を目的としたデザインを指します。需要の高まりを端的に表す事例として、大企業やコンサル会社によってデザインファームの買収が多く行われているという事実があります。Facebook やGoogleなどのインターネット企業からコンサルティング会社による、有名なデザインファームの買収が目立ちました。この動きは日本でもみられます。


なぜこういう買収の流れが起こっているかを推測すると「どうやらデザインの力を利用しなければうまくプロダクトが作れないらしいぞ?」と企業が気づき出したということではないかなと思います。今までの考え方でものを作ろうとするとすごくむずかしい時代になってしまったからと言えます。

ここで言う、「今までのものの作り方」というのをざっくりいうと、マーケティングを行って、プランナーやデザイナーがユーザーを想像して、「こういうプロダクト作るんだ!」って決め打ちで作るというものです。特にリスクを取りにくい大企業はこのような状況になりがちで、すでに成功しているプロダクト・ソリューションに対して、高機能化や多機能化することに注力してしまいがちです。結果、スペック勝負の製品開発が中心になってしまい、「最近面白いプロダクトがないなぁ」と言われてしまうという、よくあるお話になっているのではないかと思われます。

そして、このような作り方が通用しなくなってきた要因としては、消費者や社会の性質が変化してしまったということが挙げられます。よく言われるところでは、「テレビ中心の文化」が「ネット中心の文化」に変化して、消費者は大衆から個人に変化してしまったという点。情報収集もどんどん簡単になって、商品のレビューを読んだり、競合製品の比較検討をしたり、消費者はどんどん賢くなっています。

そもそも社会としてもだいぶ成熟してきているので、「必要なもの」は基本的に揃ってしまっている状態でもあり、どうしても買わなきゃいけないものなんてない状態です。特に日本ではバブル時代のような消費生活は美徳ではなくなり、好景気の実感はなく可処分所得も少ない、世界的に格差の拡大などの経済トレンドもあります。

さらに、近年はビジネスを始めるコストも劇的に低下した結果、スタートアップやベンチャー企業と言われる企業が増加しました。小さい企業が多く生まれたことによって競合も増加し、差別化はどんどん難しくなってきています。流通のグローバル化も進み、海外からも大量の輸入品もどんどん流入しています。

このように様々な要因が影響した結果、ミリオンヒットと言われるような「一つものものが爆発的に売れる」という状況が生まれにくくなってきています。

無料あるいはとても安い金額で十分ニーズは満たせてしまう状況の中で、「わざわざお金を払ってもらう」ために、大量の競合サービスがあるのに「わざわざ自分のサービスを使い続けてもらう」ために、どのように自社のプロダクトやサービスを差別化するべきなのでしょうか。

「私はこれを愛している」
「超好き」
「好きすぎてつらい」
「これじゃないと絶対いやだ!」

そう言われるくらいのプロダクトやサービスを作らないと、お金を払ってもらえない時代が到来してしまっているのです。

愛されるプロダクトを生みだすために

そういうものをどうやって作ろうかという時に、「今までのプロダクトやサービスの作り方」は非常に精度が悪いのです。図にするとこんな感じです。企業の中でマーケティングなどの定量調査を中心にして、想像でものを作り、一年くらいの時間をかけて発売、買ってもらえませんでした。ダメだった、という学びを一つゲットして次の企画に活かします。

このやり方では、ある女の子を好きになった時に、モテるためのハウツー本を読んで研究(?)をし、1年をかけて作った手作りのプレゼントをいきなり渡してプロポーズするようなものです。このシナリオの場合は、最終的に「ダメだった」というひとつの結果しか学びがありません「ピンクは嫌いなのよね…」くらいはいってもらえるかもしれませんが…。1回のトライに1年くらいかかっているので、次のトライはまた1年後、そして学びもそこで1つ。これでは圧倒的に遅いわけです。

ではどうすれば良いのか。

一つの解は「学びの量を最大化する」ということになります。ユーザーのすぐそばに立ち、わからないものは聞いてたり、じっと観察してみたり、こんなのはどうかな?と実験してみたり、なるべく早く実物をリリースできるようにしたり、こう言った活動を行うことで、今まで1年かかっていた1学習が、一週間に1つ、またはそれ以上の学びを得ることができるようになります。この試行錯誤の量とそれを支えるスピードがプロジェクトの成功率を向上させる重要なファクターとなるのです。

自分のプロダクトやサービスの未来のお客様について、知ったかぶりをしたり想像で決めつけたりせずに、「わからないことはわからない」と認め、ひとつひとつ誠実に仮説検証していくこと、生身の人間と向き合い、その人が「本当に求める未来のニーズ」が何かを徹底的に考え続けること。これが「リアルな人間の抱えるリアルな課題に対応するデザイン」の手法であり、ぼくらの業界的には「デザイン思考」と呼ばれるものになります。

デザイン思考を最大限に利用するために

デザイン思考の方法論などは、すでに情報が揃っており、デザイン業界的にはもはや新しいものではなくなりつつあります。Goodpatchでも、基本的にはこのプロセスにのっとってデザインをしようという型が存在しています。


課題発見→チーム作り→プロトタイピング→改善といくつかのフェーズがあって、発散と収束を繰り返しながら、納得の行くまで行き来して、ローンチを目指すというものです。ただし、このプロセスについてはあくまでも大まかなフローと、そこに含まれる手法やテクニックの集合であって、僕たちも基本的にはお客様や案件によって中身を組み替えながら利用します。本家のデザイン思考的にも、プロセスは行ったり来たりするもんだということになっていますし、わりと柔軟な構造になっていると言えます。

ではプロダクトやサービスを作る上で「いったい何が重要なんだろう?」ということで、後編では「愛されるプロダクトを生み出す4つの要素」として、特に重要な4つの要素をピックアップしました。そして、具体的に「愛されるプロダクト」とはどのようなものなのかということをMLP(Minimum Lovable Product)という概念を用いながらご紹介します。

〜前編はここまでになります。後編をおたのしみに。〜

ABOUTこの記事をかいた人

keita

サービスデザイナーとして奮闘しています。 テクノロジーフェチ。先日深圳にいってきました。
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