デザイン会社によって、デザインプロセスは様々。

今回はそれぞれの強みを学ぶべく戦略と表現の融合を巧みに扱うDONGURIさんとGoodpatch合同の社内勉強会を開催しました。
クローズドな社員限定の勉強会ですが、今回は皆様にも内容をかいつまんでお届けします!

株式会社DONGURI | ミナベトモミさん「戦略と表現の質。両軸を融合させるデザインプロセス」

DONGURI創業者の一人であるミナベさんに、現在DONGURIでどのように、ユーザーリサーチを軸に組み立てた戦略と、表現の質を両立させるデザインプロセスを実践しているのかを伺いました。


外発的要因から考える「戦略」と内発的発想から生まれる「表現」が上手く噛み合わない結果、両者の対立が起きてしまいます。戦略を軸にUI設計をした後に「表現」を加えるとデザイナーの創造性を膨らます余地がなくなる為に質が落ちてしまい、反対に「表現」を重視した後に戦略を組み立てて、UI設計を行おうとする事は難しく、どうしてもユーザービリティは勿論、体験の質を向上させる事が出来ません。

この対立を解消するために、僕たちはデザイン思考(スプリント)プロセスの「発散」フェーズを参考に新しいデザインプロセスを作り上げました。

 

今回はDONGURIが行っているデザインプロセスの一部「 戦略から、表現のアイディエーションに受け渡しするフェーズ」を例にご紹介します。

リサーチ情報を元にして発想を得た問題解決ストーリーを、エレベーターピッチ等で言語化作業を行います。ただしこれだけだと「情報の収束」が足らずデザイナーは「要件」に適応させて、アイデアを収束に向かわせてしまいます。

重要な事は「デザイナーがアイディエーションしやすい状況」を作る為、情報の収束をさせきる事です。その為にコンセプトをtoCに伝える為のシンプルな「コピーライティング化」し、それを軸に「デザインモチーフ」をアイディエーションさせるのですが、ここに「デザイナーが内発的にやりたい事を盛り込む余地」が発生し「拡散」がしやすくなります。故に「戦略」と「表現の品質」が担保できるのです。


現在アメリカやヨーロッパでは、企業の経営層を担う戦略的思考のデザイナーが増えています。デザイン思考が普及し、当たり前の基盤になったからこそ、差別点として表現スキルに対する再注目が起きているそうです。この二つが重なり合うところが今後、私たちデザイナーに求められているスキルの一つではないでしょうか。

株式会社DONGURI | 早川 将司「デザインスプリントを用いながら、表現質も実現したプロジェクト実例」

DONGURIの戦略コンサルタントを務める早川さんに、「戦略」と「表現の質」を両立する具体的な事例に基づいたDONGURIプロセスについてお話していただきました。

私達が飲料水の事業イノベーションに取り組んだ事例を元にして、「戦略」と「表現質」を両立したデザインプロセスをご紹介致します。

リサーチやエスノグラフィを通してユーザーの調査情報を収集した後、デザインスプリントを用いて解決ソリューションのアイディエーションから、ユーザーテストまで行う3日間のワークショップを実施しました。

まず1日目に調査結果から課題を抽出し、2日目はその課題に対する解決アイディアの発想を行いました。ここで先ほどミナベが紹介した「発散」フェーズを応用し、「最新技術と自社資源のマッピング」+「課題」+「内的動機を感じる取り組みたい事」を掛け合わせてアイディエーションをします。これにより、課題を解決しながらも、チームメンバーが当事者化する事ができる解決方法を産み出す事ができるのです。

抽出されたアイディアは、戦略の軸である「課題を解決できるか」と内発的動機である「当事者にとってのモチベーション」を基準にチームで投票し、最終的に解決アイディアを決定します。

そして最後の3日目にプロトタイプを制作し、ユーザーテストを実施して最終的に提案するアイディアを決定しました。


これらのワークショップの結果、「戦略」と「表現の質」を両立したDONGURIのアイディアはクライアントにも大好評。見事、採用され商品化に至ったそうです。
「戦略」と「表現の質」どちらか一方に基準を当てるのではなく、両者を掛け合わせることが事業イノベーションにおいて重要だと学ぶことができました。

株式会社グッドパッチ|畠山 糧与「デザイン組織の作りかた」

次に、GoodpatchのPM/UXデザイナーの畠山がSBI証券さんにデザインを浸透させた手法についてお話しました。

SBI証券さんから「社内にデザインを浸透させたいが、UXの重要さを自分の言葉でうまく説明できない」というご相談をいただきました。それを解決するためにまず僕たちが取り組んだのは、「効果実感を持ってもらうこと」です。デザインの価値を伝えるために、成果がわかりやすい改修をクイックに行いKPIを改善したり、一緒に仮説検証を体験してもらいました。

 

次に「相手の言語で伝えること」を大切にしています。相手にとって馴染みのない専門用語ばかり使うと、苦手意識が生まれてしまう可能性があります。それを避けるため、相手がマーケティングの担当の方であれば適宜マーケティング用語を交えて議論し、目的と内容が明確に伝わるように心がけました。

そしてSBI証券さんがデザイン組織を自走できるために、まず僕たちが心がけていることは「やってみせる→一緒にやる→やってもらう」ことです。社員さんがデザインスプリントを何度も実践し、手法を浸透させました。

次に制作スピードを改善するため、作業工数を圧縮、レビューの効率化で「プロセス全体を最適化する」ことに取り組みました。

最後に自ら積極的にクライアントの課題に踏み込み、「当事者意識を持って取り組む」ことを大切にしています。デザイナーの採用、育成、評価など、まだまだチャレンジすることがあります。これからも当事者意識を持って、粘り強く支援していきたいです。


近年デザインは重要な経営資源になっている、と多くの企業から注目されています。これからもGoodpatchはデザイン組織支援で一人でも多くの人や企業にデザインの力を伝えていきます。

株式会社グッドパッチ|川崎 陸「複数プロダクトを巻き込んだUXデザインで用いた3つのプロトタイプ」

最後にGoodpatchのPM/UXデザイナーの川崎に別々のプロダクトから共有の体験設計を生み出した3つのプロトタイプについてお話をしました。

サービス全体の共通した体験設計を創りあげるために、ユーザーを巻き込んだ3つのプロトタイプを作成しました。

まずユーザーインタビューから選出したキーワードを元に「共通のコンセプト策定」します。複数プロダクトにおいて共通して提供すべき体験価値(UX要件)を検討した上で、コンセプトのプロトタイプを数案つくりました。それらをチームで評価し検証することで、よりユーザー視点に近いコンセプトを決定できます。

次にプロダクト全体に共通するUX要件を参考に「共通のUIルール」を策定します。それらのルールを反映したUIプロトタイプを制作し、ユーザーテストをすることで、よりプロダクト同士の連携が取れ、かつ共通して提供すべきユーザー体験を実現可能な共通のUI設計が可能です。

そして最後に共通のコンセプトに紐付く「個別のコンテンツ方針の策定」をします。ユーザー体験を考える上で、コンテンツが重要な役割を果たすプロダクトだったので、まずはプロダクトのコンセプトをベースにコンテンツ方針を策定しました。その上で既存プロダクトをを利用していただいている企業にインタビューを実施し、策定したコンテンツ方針がユーザーニーズをを満たしているか検証しました。


これら3つのプロトタイプを制作することで、別々のプロダクトでも共通した体験設計を創り上げることができます。目的に応じて適切なプロトタイプを作ることが、ユーザーのニーズを満たすプロダクトへの一歩だと川崎は述べました。

 

今回の合同勉強会を通して、DONGURIとGoodpatch、互いの得意とするデザインプロセスやクローズドだからこそ共有できる事例を通して学ぶことができました。その後の懇談会は、社員同士が新しい気づきや繋がりを得るきっかけにもなりました。

Goodpatchでは社内外での勉強会を積極的に行なっています。Goodpatchと社内勉強会をしたい!という企業様がいらっしゃいましたら気軽にご連絡ください