日頃からTEDなどの動画サイトを著名人のデザイン思想や日々の取り組みを知る場として利用されている人は多いと思います。以前Goodpatch Blogの記事でも幾つかの有益なTED動画を紹介させていただきました。

今回はTED動画以外で著名デザイナーやクリエイターの流儀や日常、UI/UXについて幅広く学べるリソースをご紹介したいと思います!

1. デザインあ

デザインあはNHKで毎週土曜と木曜の午前に放送されている知育番組です。キャッチコピーは「こどもたちの未来をハッピーにする「デザイン的思考」をはぐくむ」となっておりますが、大人でも楽しめる内容になっています。

番組紹介ページにもある通り、デザインとは人とモノ、人と人との繋がりをより良くするためのプロセスというまさにUXの本質を説くような番組になっていて、一見難しいと思われるUXの重要性を子どもたちにも分かるように有名クリエイターによって緻密に計算された音楽と映像を使って感覚的に説明しているのがこの番組の特徴です。

個人的にはこの番組を見て育った子どもたちがどういう大人に育つのかが楽しみです。アーカイブでは過去の番組の一部分を視聴することが出来るので気になった人は是非チェックしてみてください。

2. デザインコード

デザインコードはテレビ朝日にて毎週土曜の夜に放送されている番組です。デザインあと違いドキュメンタリーになっていて、デジタルメディアに限らず建築家や書家など非常に多種多様な媒体のアーティストやデザイナーに焦点を当てているのが特徴です。媒体は違いますが、やはり一流のクリエイターにはデザインプロセスに対する共通の考え方があるのではないかとこの番組を見ていて考えさせられます。異なったデザインの職種を知りたいと思う人にはうってつけの番組ではないでしょうか。

3. Design Disruptors

Design Disruptorsはプロトタイプソフトウェアで知られるInVisionが監修したドキュメンタリー映画になっています。

映画の中ではアメリカのデザイン思考を積極的に取り入れているベンチャー企業や大企業のデザイナーを紹介していて、世界を代表するような企業のデザイナーの元、デザインがどういう風にプロダクト、最終的には世界に影響を与えているのかを非常に大きなスケールで描いています。

私はビジネスに精通しているわけではないですが、個人的にはこの映画を見た後にビジネスとデザインの関係性のあり方が理解出来たような気がしました。

ネタバレになってしまいますが、この映画の中で、Facebook社内では毎週火曜日に2Gネットワークを用いてFacebookにログインするという習慣があるそうです。「発展途上国のエンドユーザーの現状を疑似体験することでUXの向上に充てる」とFacebookのプロダクトデザイナーのJulie Zhuoが言っていたのには驚きました(2016年公開当時)。やはり徹底的にユーザーの視点に立ってデザインすることが成功に繋がるわけですね。

4. Abstract

Abstractは 2018年2月現在、エピソード8まで公開されているNetflixのドキュメンタリーテレビシリーズです。Design Disruptorsとは違い、シューズのデザインや自動車のデザインなどデジタルメディア以外のデザイン業界に焦点を当てており、登場するデザイナーもグラフィックデザイナーのポーラシェアを筆頭に各業界の有名デザイナーが名を連ねています。

デザインの既存の問題を解決するという重要な側面を重点的に描き、普段馴染みのある製品がどのような工程を経て日々私たちの生活に届けられているのかというデザイナーの苦労と情熱が分かる番組になってます。このシリーズはデザインを表層的なモノと直結して認識している人にとっては、とても良いブレイクスルーになるのではないのでしょうか。またDesign Disruptors同様、映画並みのクオリティで制作されているので同時に楽しみながら見れる内容になっています。

5. Interface Lovers

Interface Loversは以前Goodpatch Blogでも紹介したWebサイトです。今ではスティーブ・ジョブズなど偉大な起業家の生い立ちやライフスタイルは色々なメディアで紹介されており、世界中に影響を与えています。デザインを始めたばかりの人であればそういった事に疑問を持つのも珍しくありませんが、デザイナーの私生活は中々表に出てくることはありません。このWebサイトは主にアメリカのベンチャー企業で活躍しているデザイナーのライフスタイルや使っているアプリ、普段聴いている音楽まで紹介されているので読んでいて非常に興味深いです。

このサイトを見ていて良いアウトプットが出来ている人々は、良いインプットが出来ているということを感じました。また、仕事以外ではデザインと離れてみて運動や文化活動に従事することも多くの成功しているデザイナー達の共通点だということも発見しました。Interface Loversを読まれている人々も、是非彼らのように時にはデザインから離れて違うことをしてみると、結果的に良いアイデアが生まれるかもしれません。

6. High Resolution

以前もGoodpatch BlogでHigh ResolutionというWebサイトは紹介させて頂きましたが、実はPodcastだけではなくYouTubeチャンネルもあります。Youtubeではより文脈を理解しやすい内容になっていて、Podcastに慣れていない方でも観て頂けると思います。前述のDesign DisruptorsやAbstract同様、メンバーは世界的に名の馳せた企業のデザイナーばかりで非常に見応えがあります。

過去にMIT Media Labの教授やRISDの学長を努めたJohn Maedaは動画の中で今のデザインのあり方をクラシカルデザインとデザイン思考、そしてソフトウェアやビッグデータを扱うコンピュテーショナルデザインの3つに分けて、デザインの将来や現在のデザイナーのあり方を話しています。

またこれからのビジネスにおいてのデザイナーの立ち位置を確立させたAirbnbのデザイナー、Katie Dillは「デザインに置いて重要なのは、まずプロトタイプを作り仮説を検証し、その工程を繰り返すこと、そしてチームとのコラボレーションだ」と話しています。これはGoodpatchのプロトタイプに対する考え方や、良いプロダクトは良いチームから生まれるというモットーと共通しており、成功しているデザインはこれらの習慣の実践の元に生まれているというのは間違いないようです。

7. Vox

少し毛色は違いますが、VoxはニュースサイトのVox.comを元にしたキュレーション系のYoutubeチャンネルです。デザイン系の動画チャンネルではありませんがこのチャンネルのデザインに対する考察動画は良く考えられています。見る人が飽きずに分かりやすく動画が構成されているので、デザインを始めたばかりの方にもオススメです。

この動画では、世界中どこにでも見受けられる「押す」なのか「引く」なのか分からないドアについて考察しています。 このドアに辟易していた動画の中のレポーターは実際に、以前Goodpatch Blogでも紹介した翻訳記事の筆者のドン・ノーマンに会いに行きます。
動画の中で彼は、何回も間違えてドアを開けてしまうのは彼自身に問題があるのか、それともドアに問題があるのかとノーマンに問います。ノーマンはドアに問題があると主張し、それらのドアを「ノーマンドア」と呼んでいると言います。そしてノーマンは、 Discoverablilty(人がどういう風に物を操作するか発見する能力)と製品のそれに対するフィードバックがHCD(人間中心設計)の基本的な原則だと続けます。

またこの動画では、Biomimicry(バイオミミクリー)について紹介しています。聞き馴れない人もいると思いますが、自然に存在する物の構造を真似て人工物のデザインに活かすというデザインの手法です。財布や靴によく使われるマジックテープは、衣類にくっつくオナモミの実をヒントにデザインされたというのは一番身近な例ではないでしょうか。動画の中では90年代中盤の日本の新幹線がフクロウの羽、ペンギンの腹部、そしてカワセミのくちばしの構造を元にデザインされ、結果的に10%速く、15%の使用電力量の削減、そして住宅地域での騒音低減に繋がった事例が紹介されています。

他にも色々なデザインの考察動画がチャンネル内にありますので、興味ある方はぜひご覧ください。

8. Takramcast

Takramcastはロンドンと東京に拠点を置くデザイン・イノベーション・ファームのメンバーによるPodcastシリーズです。主にデザインやビジネス、テクノロジーについて話しており、幅広い業種のプロジェクトを手がけるメンバーの豊富な知見を交えたトークは必聴です。定期的に更新されているので、流れの速いデジタルメディア業界において、最先端で活躍しているデザイナーの意見や考えを知るために役立ちます。この記事では英語のメディアを中心に紹介しましたが、こちらは日本語で話されているので、安心して聴けると思います。私はAIについて少し疎いのですが、NHKのAIに関する番組制作に関わっているTakramのメンバーのトークを聞くことで、少し知識が身についたと思います。

9. Automagic.fm

Automagic.fmはUI/UXやコンサルティングなど多岐にわたって活躍されているデザイナーの長谷川恭久さんによって運営されているPodcastです。毎回色々なデザイナーと一緒にデザインやスタートアップのことについて話しています。長谷川さんはアメリカの大学を卒業されていることもあり、比較的グローバルな視点で話されています。海外大卒のデザイナーは国内にまだあまり多くない印象なので、長谷川さんの話は非常にタメになるのではないでしょうか。第206回ではGoodpatch代表の土屋と最近のGoodpatchの活動やデザイン業界の動向について話していますので、是非聴いてみてください。

10. Podpatch

最後にGoodpatchが運営しているPodpatchを紹介します。Podpatchは約4年前から不定期で配信されているPodcastです。Goodpatch代表の土屋がパーソナリティを務め、社内外のデザイナーやデベロッパーと一緒にデザインやプロダクト開発など様々なトピックをクスッと笑ってしまうような軽快なトークでお届けしてします。

最近では代表土屋が活躍中のCDO/CCOがどうやって現在のキャリアに辿り着いたのか、その秘密に迫る!」シリーズをお送りしていますので、そちらもぜひ聞いてみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?今回はデザイナーの思考や働き方を垣間見ることができるメディアを紹介させていただきました。個人的にはもっと多くの方に自分の知見や考えをシェアしていただくと、今後もっとデザイン業界が盛り上がるんじゃないかなと感じています。

そしてもし前述されたメディアの中で見たことのないものがあれば、是非1つでもいいので目を通していただき、デザインに対する知見ノウハウをより深めていただけたらと思います。