新しいものが大好きなGoodpatchで2月話題になったアプリ、サービス、デザインまとめ(2024)
寒さが落ち着く日も増え、春の兆しが感じられる2月、季節の変わり目にいかがお過ごしでしょうか?
今月も衝撃的な動画生成AIから、デザイン教育に対する大学の新たな動きなど、Goodpatchで話題になったサービスやトレンドを紹介します!
サービス
次世代ブラウザ「Arc」が「Arc Search」を発表
https://arc.net/blog/arc-search
The Browser CompanyがiOS向けブラウザ「Arc Search」を提供開始しました。「Arc Search」最大の特徴として、「Browse For Me」という機能があります。検索したいキーワードを入力し、「Browse For Me」をタップすると一致する上位6件のサイトから、AIが最適な要約をカスタマイズして出力してくれます。
ライブでAIがサイトをスキャンして、精度の高い要約を提供してくれることから、これまでのブラウザとAIサービスを融合したような体験価値になっています。AIチャットのサービスでは最新情報を参照できないことも多かった中、ブラウザにAIを活用することで、よりタイムリーで端的な情報収集が可能になった点が大きな違いです。
また、「必要なものを最速で入手する方法」がコンセプトになっていることも注目されています。出力された要約が項目ごとに箇条書きでまとめられている点や、アプリを開いた直後に検索バーへの入力のためのキーボードが出ている状態など、「時間短縮」のためのデザインや情報設計がなされています。
ブラウザにおけるAIの活用は、私たちの情報収集効率化が期待されます。同時に、その効率化における価値を体現したデザインが、今後どう進化していくのか楽しみです。
LottieFilesをWeb上で作れるLottie Creator バージョン1.0.0がリリース
インタラクティブで軽量なLottieアニメーションをWeb上で作成できるツール、Lottie Creatorのバージョン1.0.0がリリースされました。ベータ版から大幅なパフォーマンス改善とさまざまなUX改善が行われました。
Lottieアニメーションとは、カスタマイズしてWebサイトやアプリなどで再生できるアニメーションファイルです。Lottieアニメーションを作成するには、以下の4つの方法があります。
- After Effectsに専用のプラグインを導入して、Lottieアニメーションを書き出す
- Figmaに専用のプラグインを導入して、テンプレートアニメーションやオートアニメート機能からLottieアニメーションを書き出す
- 8月に紹介したLottielabのベータ版を使用して、SVGなどのベクターデータをタイムラインベースで編集して書き出す
- 今回リリースされたLottie Creatorを使用して、SVGなどのベクターデータをタイムラインベースで編集して書き出す
Lottie Creatorの魅力は豊富なアニメーションプリセットと、LottieFilesプラットフォームとのシームレスな連携です。よく用いられるアニメーションである、フレーム内に要素を導入したり、フレーム内の特定のレイヤーや形状を強調したり、フレームから移動させたりすることが、プリセットを使用して簡単に作成できます。
また、作成したアニメーションは、Lottieアニメーションの保存、再生、検索、共有、コメントなどが可能なLottieFilesプラットフォームのドラフトとして保存されるため、チームや関係者とのコラボレーションも促進されるでしょう。
Lottie Creatorは複数のシーン(シーケンス)を作成して組み合わせられるなど、LottieLabと比べてAfterEffectsに近い操作感になっています。Figmaとの連携もあるようなので、サービス内のかわいいローディングアニメーションやマイクロインタラクションなどに使用してみてはいかがでしょうか。
AI
Google 次世代モデル、Gemini1.5を発表
https://japan.googleblog.com/2024/02/gemini-15.html
2024年2月16日、米Google(以下、グーグル)が提供するAIモデル「Gemini」の次世代版となるGemini1.5を発表しました。グーグルは、2月8日に「Gemini1.0 Ultra」を公開したばかりで、わずか1週間での新ニュースとなっています。
Gemini1.5は、Gemini 1.0 Ultraと同様のレベルでのパフォーマンスを発揮しながらも、より少ない計算コストを保つことができていると報告されています。また、最大の特徴は取り扱えるトークン数が最大で100万トークンを記録していることです。
トークンとは、生成AIが情報を認識する際に使用される単位であり、読み込めるトークン数が多いほど、多くの情報をインプットできるということになります。100万トークンは1時間の映像、11時間の音声、70万語のテキストに対応しています。実際に、100万トークンを一般レベルで運用できるようになるためには、更なる改善が必要だと語られていますが、大幅な進化であることは間違いありません。
読み込ませるトークン数の増大は、映像や画像などの学習に大きく貢献するとされています。後ほど触れるOpen AI社の「Sora」に続いて、昨年からの生成AIの変化の速度には目を見張るものがあります。私も生成AIを活用しながら仕事を進めていますが、現状では期待感と実際の使用感にはギャップを感じる部分もまだまだあります。ただ、こうした変化は、生成AIを活用した未来が明るいものであることを感じさせてくれます。今後の展望に期待です。
OpenAIが動画生成AI「Sora」をリリース
https://openai.com/sora?video=octopus-and-crab
テキストから最長1分間の動画を生成できる動画生成AI「Sora」が発表されました。Soraの公式ページでは、Soraによって生成された、実際に撮影された動画と区別がつかないようなリアルな映像や、3DCGを使用した空想世界のようなハイクオリティな映像を見ることができます。
Soraは複数のキャラクター、特定の種類のモーション、被写体と背景の正確な関係性を保った複雑なシーンの生成が可能です。被写体が一時的に見えなくなった場合でも同じ状態を保つことができ、キャラクターやビジュアルスタイルを正確に保持した複数のカットを1つのビデオ内で生成できます。Soraはユーザーのプロンプトによって要求された内容に加えて、その内容に関連するものが現実世界にどのように存在するかという情報を理解して生成しているそうです。
一方、複雑なシーンにおいて、現実世界の物理を正確にシミュレートすることが弱点で、動物や人が突然現れたり、不自然なオブジェクトの移動が発生する場合があるようです。
2月29日現在、Soraは一般公開されていませんが、その理由の一つとして、現実と見分けがつかない「フェイク動画」の生成に悪用される可能性が指摘されています。OpenAIは、Soraを一般公開する前に重要な安全措置(電子透かしなど)を講じると説明しています。
今後、動画や画像を投稿できるサービスの提供者は、他者の指摘によってフェイク情報だと分かるXのコミュニティノート機能のように、多角的な情報への導線確保や、ポリシーの見直し、検出技術の導入などの施策が必要になっていくでしょう。
構成さえ練れれば、誰でも映画を作れる世界も、すぐそこに来ているかもしれません。さまざまな映像コンテンツがAIで作成されるようになるのか。2024年、動画の生成AIに注目が集まるのは、間違いありません。
デザイン
STUDIO DESIGN AWARD 2023受賞Webサイトが決定
https://designaward2023.studio.design/award
STUDIO株式会社は2月8日、2023年にノーコードWeb制作ツールの「STUDIO」を用いて制作されたWebサイトから優れたサイトを表彰する「STUDIO DESIGN AWARD 2023」を開催しました。
今年は317サイトからエントリーがあり、その中から12サイトが受賞。グランプリには障がいのある方の就労を支援する福祉サービスを行う、株式会社YELLOWのサイトが選ばれました。こちらのサイトでは障がいを持つ方々が制作するアートの展示などにも力を入れているという特色から、様々な個性を持つ人やアートのイメージが用いられており、それらを魅力的に見せている点が高く評価されました。
今年度はGoodpachとグループ会社であるSTUDIO DETAILSから企業賞を提供。それぞれ遊び心とこだわりにあふれた小川ぶどう園さんのサイトと、野崎ひろこさんのポートフォリオサイトを選出いたしました。
受賞作品やノミネート作品はこちらからご覧になれます。ぜひ、お気に入りのWebサイトを探してみてください。
LINEヤフー社、スマートフォンのタップ操作成功率を算出するツール「Tappy」をリリース
LINEヤフー株式会社は1月31日、スマートフォンのウェブページ上のボタンやリンクなどの大きさを分析し、タップの成功率を表示するツール、「Tappy」の一般公開を開始しました。
本アプリは、URLを入力するだけで、そのページに含まれるタップ可能な要素(ボタンやリンクなど)の大きさを分析してタップの成功率を表示するツールで、タップ成功率はYahoo! JAPAN研究所(現・LINEヤフー研究所)による、10代から80代までの幅広い年齢層のクラウドワーカーへの実験を基にした研究成果が活用されているとのこと。
グッドパッチ社内では「ボタンについての議論で使える明確な基準ができた」「クライアント企業への分かりやすい説明ができる」とのことで、一躍話題になりました。スマートフォン用ウェブページの開発をされる方は、ぜひチェックしてみてください。
東大、2027年秋に全学的プラットフォーム「College of Design」を創設か
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1310_00022.html
社会システムの変革を含む広義の「デザイン」を核にした、5年制の新しい教育課程であるCollege of Design(仮称)の創設。複数の報道を受け、東京大学がCollege of Design構想についてコメントを発表しました。
College of Design(仮称)は、東京大学が現代と未来の社会変革を推進する次世代のリーダーやクリエイターの育成と輩出を目指す目的で構想されました。2027年秋に開設予定で、既存の学問領域を超えた学際的な学びと課題解決の場が提供されるそうです。
東京大学が公開した資料では「複雑化・多様化する現代社会において、人類社会が直面する地球規模の課題に対して率先して取り組み、未来の変革者となる卓越した人材が求められている」とし、より高い視座で課題解決を行う、より本質的で広義のデザイン教育を実施することが掲げられています。
人文学、社会科学、自然科学、工学など文理融合の幅広い学際的な知識に基づいて、幅広い概念として改めて定義された本質的なデザインは、すべての職業に関連があり、どの職種でも学びを活かせる考え方であることは間違いありません。弊社代表の土屋も興味津々の様子。
日本ではまだ、グラフィックを作る人=デザイナーという狭い職能認知が根強く存在します。東大の新しいデザイン教育によって、日本国内のデザイナーに対する職能認知を変え、本来のデザインの価値を広めることにも繋がるでしょう。本質的な課題解決をベースにデザインの力を証明してイノベーションを起こせる人材がこれからたくさん輩出され、デザイナーを取り巻く環境がより豊かに広がることに期待が膨らみます。
ビジネス
P&Gジャパン、初めて一般向けビジネススクールを開始
https://jp.pg.com/newsroom/business-school-2024/
P&Gジャパン合同会社は、初の一般向けビジネススクール「P&G ビジネススクール」を2024年5月9日(木)に開校することを発表し、「シン・コミュニケーション力習得プログラム」を無償で提供することとしました。
これまで同社が、「社員こそが最も重要な経営資産である」という考えのもと社員育成で培ったナレッジを社会に還元し、日本経済の成長の一助とするべく、開校の決断をしたとのこと。今回は、社員一人ひとりの能力を最大限に発揮させるために同社において実践されてきた、P&G流の戦略的コミュニケーションが学べる「シン・コミュニケーション力習得プログラム」を提供します。
ビジネスにおいて、組織やプロジェクトのマネジメント、推進には必ず人と人とのコミュニケーションが存在します。個人の成長や組織の目標達成に向けて、コミュニケーションを戦略的に設計することは、組織デザインにおいても必要不可欠でしょう。
実際、グッドパッチで実施するワークショップや組織デザインプロジェクトでも、目標やミッションに向けて戦略的にコミュニケーションを設計しています。こうした手法が広がり、あらゆる人々が戦略的にコミュニケーションを組み立てられることは、ビジネスの成功の手助けになりそうです。
東大×ソニーグループ「越境的未来共創社会連携講座」開設記念キックオフシンポジウム開催
https://cfi.iii.u-tokyo.ac.jp/
2024年2月5日、東京大学×ソニーグループは昨年12月に設置された講座「越境的未来共創社会連携講座」の開設を記念した、キックオフシンポジウムを2月22日に開催することを発表しました。
本講座の目的は、創造プロセスや思考法の習得、さらに未来に向けた創造的提案の実践機会を提供すること。先ほど取り上げたCollege of Designなど、新たな教育の形に意欲的な動きを見せる東京大学と、多様な事業や技術に対する知見を有するソニーがタッグを組んだ形です。
レクチャー、ワークショップ、実践とそれぞれプログラムが用意されており、学際的・批評的視点による問いの抽出から、創造的視点による提案実装、越境的・集合的思考に基づく創造活動が一貫して行えるとのこと。
現代の文化的な社会課題の多くは、複数の領域が絡み合っており、簡単に原因を特定することができないものになっています。だからこそ、こうした産学連携の取り組みでしか解決できないことが多くあるだろうと思われます。本シンポジウムは、即日満席となり、多くの注目を集めました。
日本の教育・研究機関における社会課題解決人材や、高度デザイン人材の教育については、本ブログでも引き続き取り上げていく予定です。お楽しみに!