ビジネスにおけるデザインの立ち位置は、目的達成のための手段です。売上、ユーザー数などのKPIに対して、デザインの力で達成を目指します。見た目がどれだけ良くても、ビジネスとして成立しなければただの装飾に過ぎません。
誰の何を解決するのか、その市場から生み出される価値はどの程度か、マーケティングの思想も必要となります。

デザイン×ビジネス両視点からサービスを考えられるように、マーケティングを学べるおすすめの本をご紹介します。グロースデザイナーの右寺さんより助言をいただき、数字に苦手意識を持っている人でも読みやすい内容の本に厳選しました。

マーケティングの基礎を学ぶ

コトラーのマーケティング・コンセプト

おすすめポイント:マーケティングのバイブル本的存在

存命する、世界有数の経営学者であるフィリップ・コトラーの著書。マーケティングに関わるキーワード、例えば「競争優位」「価格」「製品」といった基礎的な用語を中心に説明がされています。キーワードがA~Zまで頭文字の順番で分かれているため、まず気になるところから優先的に見たり、辞書のように手元に置いておき必要になったら読むこともできます。

マーケティングの基本〈第4版〉(日経文庫)

おすすめポイント:グラフィックで構造を理解しやすい

1冊目に近い内容ですが、マーケティングの用語について学べる本です。図を用いて説明しているため、初心者でもイメージが湧きやすくすぐに理解できます。基本を広く学びたいマーケティング入門書としておすすめです。

旅の売りかた入門―もっと売るための広告宣伝戦略

おすすめポイント:形のない商品の売り方が学べる

形のない「旅」という商品を売るために、いかにしてマーケティングをおこなっていくかという方法について学べます。本書は”旅の売り方”というように旅行会社の企画、広告宣伝の話になりますが、マーケティングに関わる人にとっても役立つ内容が多いです。

データの扱い方を学ぶ

なぜデータを追うことが大事なのか、どんな指標をどのように見るべきなのか、どんなことに気をつけるべきなのかなどが学べる本を紹介します。

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

おすすめポイント:相関関係と因果関係の違いが理解できる

データを見る上で相関関係と因果関係は別であるということをたくさんの事例を用いて説明している本です。
相関関係とは「2つのことがら関係があるものの、原因と結果の関係にあるとは言えない」状態である一方、因果関係とは「2つのことがらのうち、どちらかが原因で、どちらかが結果である」状態のことを言います。

メタボ健診を受けている人たちは受けていない人たちよりも比較的健康であるというデータが出ているそうですが、それはメタボ検診を受けていることからだと言えるのでしょうか?それは因果関係なのか相関関係にすぎないのかを整理することが極めて大事です。

データから何が真実なのか関係を整理をするために、本書が非常に役立ちます。
また、2017年12月現在では冒頭〜第一章まで無料公開されているので、読んでみてから購入を検討するのもおすすめです。

『「原因と結果」の経済学』の無料公開!

データ・ドリブン・マーケティング―――最低限知っておくべき15の指標

おすすめポイント:データに基いた根拠あるマーケティング実践方法がわかる

サブタイトルにある通りビジネス上のさまざまな指標について説明している本で、どの指標を見るべきか、なぜそれが大事なのか、そしてどうやって見るべきかが丁寧に説明されています。事例も紹介されているのでより具体的に理解することができます。
企業の成長にデータをうまく活用したマーケティングは不可欠です。これからデータ分析行いたい人におすすめの1冊です。
数十点の図表がKindle版では表示されないため、単行本で読むとより具体的なイメージが膨らみそうですね!分厚いですが、初心者でもすらすら読める内容になっています。

シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」

マーケティングのノウハウを説明しているわけではありませんが、データを扱えるようになるために知っておくべきことが説明されています。昔ながらの統計指標の話や統計学の変遷、著者がこれまで取り組んできたプロスポーツ・天候・選挙といった分野での予測のお話まで、知識のインプットとしても読み物としても楽しめます。
統計学を学び始めて間もない人でも楽しめるので、データを扱うお仕事に関わりそうな方に役立ちそうです!

行動経済学・脳科学からユーザー行動を学ぶ

ユーザーの満足度を高めるためにいかにしてユーザーの体験をデザインするかを行動経済学や生化学的アプローチで説明している本をご紹介します。

予想どおりに不合理|行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

おすすめポイント:経済行動学からユーザー体験をイメージできる

行動経済学者であるダン・アリエリー氏による、人間の不合理性について事例と共に説明されている人気本です。行動経済学といえば、2017年行動経済学者であるリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞で受賞した事で話題になりましたね。

古典的な経済学では、人間は理想的な行動をする前提で理論が組み立てられていました。ここでいう理想的というのは、経済合理的であるという意味です。けれど、人間はいつも理想的に行動するわけではなく、不合理的な行動をする生きものでもあります。
例えば丸一日競馬に給与をつぎ込んで全負けしている人がいたときに、最後のレースではその人はどのような行動を賭け方をすると思いますか?論理的には本命を買って少しでも損失が広がるのを防ぐ方が合理的ですが、多くの人はそれまでの負けを取り戻すべく大穴を狙いにいきます。そういったズレこそ経済行動学が説明できる範囲です。
ユーザー体験をデザインする上で参考になる事例や説明を得られることでしょう。ダン・アリエリー氏はTEDトークの面白さでも定評があります。

快感回路 なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか(河出文庫)

おすすめポイント:快感を紐解きサービスに活かせる

人はなぜ快感を覚えるのか、それはどういう仕組みなのかについて学べる本です。科学的な専門用語も出てきますが、食べ物やギャンプルなどの例を用いて説明されているところもあるので、難しいところは飛ばしてイメージできる部分にフォーカスするのもおすすめです。
人間は、お金のような物理的なインセンティブだけでなく概念的なものに関しても快感を覚える性質を持っているため、快感を理解しその仕組みをサービスで実現することができれば良いのです。

マーケティングについて直接的に伝えている本では無いのですが、ユーザー行動を考える上で、どんなことに対してユーザーが快感を感じるかを理解し、サービスに反映することはグロースにつながる施策になりますよね。


サービス作り・運営は、作ったら終わるものではありません。ユーザーに使ってもらい提供価値を利益に替えないと、そもそもサービスを続けることができないからです。数字を管理する役割の人以外でも、関わっているサービスの数字を把握し、ユーザー体験によるKPIへのインパクトを常に考える必要があります。ビジネスもデザインできる様に、マーケティングの基礎を学んでみてはいかがでしょうか?