誰の何を解決する?「使いやすいプロダクト」とは

皆さんは、「使いやすいプロダクト」と聞いた時に、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

こすると消えるボールペンでしょうか? 日常の写真を投稿して楽しむInstagramでしょうか?

私が使いやすいと思うプロダクトは、iOSアプリのMessengerです。グループチャットや電話もできるし、メッセージを送りたい相手がオンラインだとわかる機能は便利ですよね。特に好きなポイントは、Facebookではおなじみの親指を立てたスタンプをワンタップで送れるところです。ずいぶんメッセージのやり取りが楽になりました!

みなさんにも、それぞれの「使いやすいプロダクト」があると思いますが、「万人に共通する使いやすい」は存在するのでしょうか?
機能が充実していればいいのか、デザインがシンプルであればいいのか・・・。

そこで今回は、「使いやすいプロダクトとは何か」について、深掘りをしていきたいと思います。

「誰」にとっての使いやすい?

「このサービス、使いやすい!」
「このプロダクトはなんか使いにくい・・・」

毎日様々なプロダクトを使っている中で、使いやすいか使いやすくないかの判断は、どのようにしているのでしょうか?

例えばGoodpatchのとあるUIデザイナーに聞いた所こう答えました。

ぼくは、使いやすいという言葉があまり好きじゃない

えっ?それはどういうことでしょうか?

よく聞いてみると、「誰にとっての、そしてどんな目的のためなのかがわからないと、使いやすいとは言えない」とのことでした。つまり、誰が使うものなのか、そして彼らは何をやりたいのか、といったことが規定されないまま「使いやすい」という言葉だけが独り歩きしていることがおかしいと感じていたようです。

たしかに、人によってバックグラウンドや経験はバラバラだし、利用目的も異なるため、それぞれのユーザーが使いやすいと感じることも変わってきます。

極端な話ですが、野球に欠かせない道具であるグローブを例としてあげましょう。

右利き向けのグローブと左利き向けのグローブ。自分の利き手ではないグローブを使うとボールを取るのは難しいし、速いボールを受け止める時に分厚いキャッチャーミットを使わないと、手を痛めてしまう。

右利きの選手は右利き用のグローブ、たくさんの豪速球を受け止めるキャッチャー選手は、キャッチャーミットを使うことで、ボールをキャッチしやすくなる。

つまり、ある人にとって使いやすいものは、他の人にとっては使いづらいものになるのです。

全ての人間にとって使いやすいものは本当に存在しないでしょうか?UIデザイナーの彼はこう答えました。

すべての人間にとっての使いやすいなんて、自然くらいしかないよ。雨が降っているときに洞窟を見つけたとしたら、洞窟の中に入って雨を凌ぐことができる。すべての人間にとって使いやすいものって、自然くらいじゃないかな

もし雨が降っていて洞窟を見つけたら迷わず洞窟に迷わずに入るでしょう。やり方、ものの使い方を誰にも教わらずに理解できるということは、「使いやすい」ということなんですね。

そもそも「使いやすい」の意味とは?

「使いやすいプロダクト」について調べる中で、「直感的」や「ユーザー・フレンドリー」など、同じように使われている言葉があることに気づきました。それぞれに意味の違いはあるのでしょうか?

デザイナーに聞いてみると、上記の言葉を使い分けることはない、という人もいれば、全く違う、という人もいました。

あるデザイナーは、それぞれの言葉が違う意味を示していました。。
彼は、「使いやすい」の意味をユーザーと利用目的が定義されている前提で、ユーザーの目的達成が大事にされていること、そして「直感的」の意味を過去に経験したことがあって、慣れていることだ、と解釈していました。

一方で、別のデザイナーに同じ話をすると、「考えずに使えること」だと話していて、それぞれの言葉には違いを感じていないようでした。

ここで大事なのは、「使いやすい」も「直感的」も、言葉の解釈はユーザーが決めることだということです。そのため、「直感的なものを作りました!」と自ら主張することはないそうです。

「使いやすいプロダクト」の特徴とは?

問題を解決すること

理由なきプロダクトが生まれることはありません。そこには、何かしらの問題を解決する理由が含まれています。
「もっとこうなったらいいのに!」と、誰かの日常の不満から、まずはアイデア、そして最終的にプロダクトやユーザーの切実なニーズが生まれます。彼らのニーズを満たしたら問題解決ができるのか。それが考え抜かれ提供されているものが、使いやすいプロダクトの大きな特徴です。

正しいソリューションといっても、あくまでもユーザーの視点に立っていることが前提です。作り手側の「これ欲しいでしょ?」といった思い込みでプロダクトを作ってしまうと、それが切実なニーズを満たす正しいソリューションになっているとは限らないからです。徹底的にユーザーの視点でのプロダクト作りを心がけましょう。

ちなみに、こういった考え方は、”Jobs to be done”という名の下で知られています。
会社が人を採用する理由は、単に「採用したいから!」ではありませんよね。採用することによって、会社経営のために必要な仕事をお願いし、その仕事によって会社を成長させるために採用しています。この場合、会社を成長させたいという切実なニーズを満たすことが、人を採用する理由です。

何かの行為をおこなう背景には、明確な意図がある場合がほとんどです。それを見極めることで、初めて正しいソリューションを見つけられるのです。

参考:リーンスタートアップ講座①:JTBD とは何か? | 起業をお手伝いするレンタルCTOのブログ

親しく感じること

正しいソリューションが提供されている上で、“親しみやすさ”もとても大切です。
プロダクトを使ってみて使用方法をムダに考えさせられたり、画面のどこを押していいか理解できなかったりすると、そのプロダクトに「使いにくい」レッテルが貼られ、二度と使われなくなる。そんな経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか?

ムダなく最短距離で目的を果たす為には、そのプロダクトに対する「親しみやすさ」がポイントになってきます。

例えば、重要なデータをフォルダの中から探し出すときに、すぐに見つけられなかったらちょっとイライラしませんか?

大フォルダ内に小フォルダ、その中にそれぞれのファイルが入れ子状になって整理されている状態が、ファイル管理ツールにおいての上で典型的なパターンだと思います。現に、MacのFinderやWindowsのExplorer、Dropboxのようなクラウドサービスもその構造になっています。

ユーザーがどこを押せばいいか深く考えずに操作することができると、ムダな労力を使わずにすぐにファイルを格納したり移動したりできるのです。そうやって、ユーザーに考えさせないことがとても大切です。

Dan Olsenが著した“The Lean Product Playbook” では、彼自身が”Olsen’s Law of Usability” (Olsenのユーザビリティの法則)と名付け、ユーザービリティ(使い勝手・使いやすさの意味)についてこのように述べています。

「アクションを起こすために必要なユーザーの負担が多ければ多いほど、そのアクションを起こすユーザーの割合は低くなる。反対に、ユーザーの負担が少ければ少ないほど、そのアクションを起こすユーザーの割合が高くなる」(抄訳)

ユーザーの負担は、そのプロダクトがユーザーに使ってもらえるかどうかに関わってくる、大事な要素なのですね。このプロダクトを使うならこうやったら使えるだろうな、といった親しみやすさを抱けるのは、使いやすいプロダクトが持つ大きな特徴でしょう。

使いやすいものを作る条件とは?

「使いやすさ」は単独で存在しないということを理解したところで、使いやすいものとは一体何によって成り立っているのでしょうか?

「使いやすいプロダクト」を構成する、2つの重要な条件があります。

ユーザーを徹底的に理解する

これまで書いてきたように、ユーザーによってプロダクトが使いづらいか・使いやすいか変わってきます。そのため、ターゲットユーザーがどのような状況にある人なのか、どのような問題意識を持っている人なのかをきちんと把握しておくことが非常に大事です。

プロダクトやサービスの利用目的を考える

ユーザーはそのプロダクトを通して何をやりたいか?どのような目的を達成したいか?それらをきちんと考えないといけません。

もちろん、利用目的はユーザーにより変わりますし、ユーザーのニーズなどを徹底的に理解しないと決められないので、使いやすいものを作る前提はやはりユーザーへの理解です。


ここまでの話を理解するために、Photoshopとオンラインのフリー写真編集ツールを例に、考えてみましょう。

Photoshopは主にデザイナーやフォトグラファーのように、技術を持っている人が仕事の質を高めるときに使われるツールです。仕事以外だとしても、少なくともリテラシーが高い人が使うでしょう。

一方で、フリー写真編集ツールを使う人は、デザイン技術を磨いている人ではなく、知識がなくとも手軽でオシャレに写真編集することを目的にしています。

もしプロのデザイナーがフリー写真編集ツールを使ったら、機能が足りなかったり細かい調整ができなかったりと、不満を感じると思います。同様に、デザインのスキルを持っていない人がいきなりPhotoshopを使ってみるとどうなるでしょう。「レイヤーってなに?」「どこを押したら画像の明るさを変えられるの?」というように、複雑で使いにくく感じるのではないでしょうか。

同じ「写真を編集する」という行為ひとつとっても、使う人の状況や目的が異なります。
だからこそ、ツールを使うユーザーを理解し、彼らがどんな目的を持っているのか、どんな技術を持っているのかを知ることこそ、使いやすいものを作る条件なんです!

おわりに

一口に「使いやすいプロダクト」と言っても、一筋縄で答えられるようなものではありませんね。

ここで、改めて「あなたにとって使いやすいプロダクトとは?」を考えてみてください。

この記事を読んだあなたなら、単純に操作性やデザインだけで選ぶようなことはしないと思います。

まずは何をするプロダクトなのか、自分はどんなタイプ・どれくらいのレベルのユーザーなのか、そしてそのプロダクトを使ってどんな目的を達成したいか。そのような考え方しているはずです!

「使いやすい」は単独では成立しません。

作るプロダクトは誰のためのなのか、そしてなんのためなのかがどれだけ大事かを理解していただけたら嬉しいです!

次はそんなユーザーにとって使いやすいプロダクトを作る秘訣について。具体的な実践方法を学びましょう!

ユーザーにとって使いやすいプロダクトを作る秘訣とは?

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