ユーザーにとって使いやすいプロダクトを作る秘訣とは?
前回の「使いやすいプロダクトの条件 」について、使いやすいプロダクトはユーザーと利用目的が規定されないと成立しないことをお伝えした上で、使いやすいプロダクトが持つ特徴をご紹介しました。
今回の記事では、それらの前提を踏まえて、どうしたら「使いやすいプロダクト」を作れるのか、具体的な方法についてお話したいと思います!
大事なのは、「ユーザーを徹底的に理解すること」
使いやすいプロダクトを作るにあたって、根幹を成すのが、そのプロダクトを使ってもらいたいユーザーのことを徹底的に知り、理解することです。どんなに高品質でも、どんなにUIがおしゃれでも、届けたいユーザーのことを理解できていないと、求められているものとは違うものをつくってしまっている可能性があります。そうなると、せっかく時間・お金・労力を割いて作ったプロダクトなのに使ってもらえない可能性がありますよね・・・。
ユーザーを理解することが大事であるという話は、ダン・オルセンが書いた「THE LEAN PRODUCT PLAYBOOK」にも出てきます。この本では、リーン・スタートアップの考え方に基づいて、「プロダクト – マーケットフィットピラミッド」というフレームワークを用いながらプロダクト開発の方法を紹介しています。
プロダクトマーケットフィットとは
マーク・アンドリーセンが提唱した考え方で「カスタマーを満足させる最適なプロダクトを、最適なマーケットに提供している状態」のことです。
偉大なプロダクトを作る上では重要なポイントとなります。
プロダクトはマーケットの上に成り立っており、マーケットにはターゲットとなるカスタマー(ユーザー)と彼らがもつ潜在ニーズが含まれています。そして、プロダクトには、バリュープロポジション(提供価値)、機能群、UXが含まれています。これらのマーケットとプロダクトが正しく接続させることが、偉大なプロダクトを作る秘訣となります。
ピラミッドの底はターゲットカスタマー(ユーザー)で構成されており、プロダクト作りの基礎中の基礎であることがわかります。このように、ユーザーを徹底的に理解することは、プロダクト作りの起点になる大事な要素なのです。
ユーザーを理解するために必要なこと
ここまで読まれた方は、「ユーザーを理解するなんて、言われなくても知ってるよ!」と感じられるはずです。しかし言うことは簡単でも行動に移すのは難しいもの。問題は「どうしたらユーザーを理解して、使いやすいプロダクト作れるか」ということです。そのために必要なこととは一体何でしょうか?
ペルソナ
「企業が提供する製品・サービスにとって、もっとも重要で象徴的なユーザーモデル」のことです。ペルソナの設計は、届ける対象を明確にするプロセスの中のひとつです。
その人のライフスタイルや家族構成を決める場合もありますが、大切なのはそのペルソナが持つリテラシーやスキル、普段使っているアプリを定義することです。以前の記事でも触れたように、ユーザーはいままでに使ったことのあるプロダクトにより得た経験値から、使いやすさを直感的に感じることがあります。
ペルソナ作成のメリットは、ユーザーの視点でプロダクトを考えることができることと、社内での認識合わせに活用できることです。
例えば、メンバーが複数いる場合にペルソナを「27歳女性 IT企業勤務」と決めたとします。そうすると、チームのメンバーはそれぞれ違うペルソナを思い浮かべてしまう可能性があります。結婚をしていて子供がいる人を想像する人もいれば、独身のキャリアウーマンを想像する人もいるでしょう。
そこで、共通認識を持つために、極めて限定的なペルソナを決める必要があります。
ただここで気をつけたいのは、ペルソナはあくまでも仮説であり、使いやすいプロダクトを作るための手段でしかないということです。
完璧なペルソナを作ったと思い込んでも、時代によってターゲットが変わることもあるでしょう。
つまり、メンバーはペルソナに固執しすぎず、全ては仮説であると割り切って、違うところは修正・改善していくことが必要なのです。
ユーザーの声
そして何より大事なのが、ユーザーにプロダクトを触ってもらって、実際の反応を目で見ることです。
いくらお金と時間をかけてペルソナを忠実につくったとしても、ユーザーがどう思っているかがわからなければ、ただの自己満足になってしまいます。実際にプロダクトを触ってもらいながら「別の画面への進み方がわからない」「このデザインあんまりイケてないな」といったユーザーの声を拾うことが大切です。そのプロセスを行い、プロダクトの改善点を洗い出すことでプロダクト自体が磨かれます。
IT企業に勤めてプロダクトをつくっている人たちはリテラシーが高いので、一般のユーザーの声を聞き、ズレが生じていないか頻繁に確認する必要があります。グッドパッチのデザイナーである山口さんは、「デザインをするときには、ほとんどのプロジェクトにおいてユーザーの声を聞き、その声に寄り添ったデザインをしています」と話してくれました。
また、別のデザイナーに聞いてみると、「ユーザーの反応を知るまで、すべては仮説の上でしか成り立っていない」と断言していました。一方で、「ユーザーがくれるフィードバックから、何が本当に必要な改善点なのかを理解することはとても難しい」という悩みもシェアしてくれました。ユーザーの声を聞く中で「本質的に改善すべき点であるか」を見極めて、改善をしていくことが留意すべきポイントでしょう。
マインドセット
ここまで、使いやすいプロダクトを作る上でのユーザーを理解する必要性とそのための手段を述べてきました。
ここからは使いやすいプロダクトを作るために、メンバーはどのようなマインドセットを持つべきなのかをご紹介します。
謙虚であること
なぜプロダクト作りに謙虚であることが必要とされるのか、ここまで読んでくださっている方ならわかっていただけるでしょう。
それは、メンバーが「自分が作るプロダクトが常に正しい」「自分が必要だと思うものがユーザーにも求められているはずだとか過信してしまっては、ユーザーが使いやすいと思うプロダクトを提供できないからです。頑固になりすぎず、自分の作ったものは仮説の上に成り立っているものだという意識を持ち、ユーザーからのフィードバックには素直に向き合いましょう。
思いやり
謙虚であることにも近いですが、ユーザーに寄り添って気にかける意識はとても大事です。このプロダクトを使うとき、どんなことを感じるだろうか、このボタンは押しにくくないだろうか、果たしてユーザーはなにをしたいのか。そういったことを絶えず留意しないと、最初はユーザーを理解していたつもりでもプロジェクトが進むにつれ徐々にユーザーが思う使いやすさから離れていってしまう可能性があります。
「神様になる必要はないけれど、それくらい人のためを思うことは大事」とリッカルドも話していましたが、それくらいユーザーのことを思って開発をすることが大事なのです。
さいごに
前回の記事とあわせて読んでいただけると、使いやすいプロダクトを作るために重要な考え方・必要なものが理解できたのではないかと思っています。
本質は一貫して、ユーザーのことを第一に考えるということです。当たり前すぎて形骸化しているかもしれませんが、プロジェクトを進めていく途中だったり、取り巻く状況によって、どんどんユーザーの視点が薄れていってしまうことは問題です。
最初は「世の中にインパクトを与えたい!」と思って開発したプロダクトも、どんどん「どうやったらお金を稼げるか」という考え方にシフトしていきがちです。もちろん、ビジネスでやっているのでお金を生み出すことは大事ですが、短期的な儲けではなく、本質的にユーザーに使いやすいと感じてもらい、長期的に使ってもらえるプロダクトを生み出すのが一番大事なポイントなはずです。
しがらみに阻まれて本質を見失わないように、ユーザーを徹底期的に理解して、ペルソナとして共通認識を持ち、ターゲットが喜んでくれる、使いやすいと感じてくれるプロダクトを作ること、そんな仕事を続けていくために、これからも使いやすいプロダクトの追求を続けていきましょう!