このシリーズでは過去2回に渡って、デザイナーからプレゼンの作り方を聞いてきました。
情報設計からビジュアル表現と幅広いコツを聞くことができましたね。

今回はビジネスデベロップメント(事業開発)編です。デザイン組織の中で、ビジネス職として動く佐宗に話を聞いてきました。

何をするプレゼンなのかを明確にする

──佐宗さんはデザイン会社の中で、ビジネス職としてどのように動いているのでしょうか?

ビジネスデベロップメント(事業開発)として外部企業とのアライアンスや既存事業を活かした新規事業開発をしています。社外の人たちと会うことが仕事と言っても過言ではないほど、色々な方にお会いし、Goodpatchの資産をどう世の中に還元していくことができるかを常に考えています。

外部に出ていくからこそ、社内のことを誰よりも話せるようにしていますし、デザイン知識の習得や業界の動向には常に注視しています。

この記事のインタビューを受けるにあたって、2017年に何回プレゼンをしたか数えてみたら「100回」でした(2017/9/15時点)。これは当日のプレゼンに向けて、内容を設計する必要があったものです。

──プレゼンはどのような場で行われるのですか?

私がプレゼンをするケースは、何種類かに分かれます。

  1. ワークショップの一コンテンツ(20-30人規模)
  2. デザインやプロダクト開発に関する個別企業向けセミナー(5-50人規模)
  3. 個別企業との交渉や会社のプレゼン(2-10人規模)
  4. 海外のカンファレンス・イベントや海外クライアントとの英語プレゼン(2-100人規模)

プレゼンの種類によって対象者はもちろん、目的が異なってくるのでプレゼン設計や準備の仕方、話し方を臨機応変に変える必要があります。

プレゼンの目的や意図によって設計が全く異なる

──具体的にはどのように変えていますか?

例えば私は事業開発だけでなく、ワークショップやセミナーも兼務していますが、どちらもプレゼンの中で参加者の皆さんに1次体験してもらうパートや隣の人と議論するパートを必ず入れています。参考にしたのはラーニングピラミッドです。

体験・議論してもらうパートを入れることで、話を聞くだけの2次情報から、自分が体験する1次情報に変わります。それにより、学びが増え定着率が上がるのではないかと考えています。

他には、その日のゴールを最初に提示するようにしています。ゴールを明確化させることで、何を学んで欲しいのかを共通認識として持ってもらいます。

基本的なことですが、ワークショップやセミナーが終わった後に必ず参加者もしくはGoodpatchメンバーの同席者にフィードバックやもっと聞きたいことをもらい、一回で終わらず継続的な関係性になるよう心がけています。

──ワークショップやセミナー以外ではどうなるのでしょうか?

企業の役員レベルの方向けに話す際は特に意識して話し方を変えています。
例えば企業の役員レベルの方々にプレゼンをする際は、「事業を共にするパートナーとしてふさわしい存在なのか」「この会社のアセットと自社のアセットを組み合わせてどんな協業が可能か」ということを相手が考えやすくなるように、対話を重視してプレゼン全体の設計をしています。

プレゼン資料はもちろん作成しますが、資料を用いたプレゼンは10分ほどで終わらせて、すぐにディスカッションパートに移行することが多いです。ディスカッションの中でお互いが求めていることやお互いの課題感を話す方が、相手の求めているものに対して、私たちがどのようなソリューションを提供できるのか具体的に提案することができます。つまり必ずしも資料に沿って順番に話すプレゼンではなく、頭の中で論点をはっきりさせておき、“対話”に徹することを心がけています。

──他に意識していることはありますか?

一つは、プレゼン中にアテンションゲッターを取り入れることです。例えば、相手の立場になってみて、どんな話から始めれば相手は興味を持ってもらえるのか。常にネタを冒頭に仕込めるよう日経新聞やDesigner Newsは毎日必ず読んでいます。

もう一つは相手の呼吸に合わせることを意識しています。これはどの規模感でも同じですが、どれくらいのペースで、どれくらいの熱量で話すことが相手が聞きたいと思ってくれるのか利き手側に常に共感することです。最終的に相手の呼吸のリズムと自分の呼吸のリズムを合わせることができるとより一層相手からの信頼を獲得することができると現場で感じています。

プレゼン作りもプロトタイピング

──プレゼン作りはどのように進めていくのでしょうか?

はじめにやることは骨子を作ることです。この骨子は1人でホワイトボードやノートにまとめていきます。その際に意識するのは、どうしてプレゼンを依頼されたのか、何を価値として提供すれば目的達成なのか、私や私の所属に対して何が求められているのかを明確にしてから設計を進めていくことです。

(↑海外カンファレンスプレゼン準備で実際に使ったメモ)

骨子が出来上がったら、一度レビューをもらいます。レビュアーはプレゼンのテーマが会社全体に関わるものであれば経営陣や役員、自社プロダクトであればプロダクトマネージャーやデザイナーです。レビューの工程はとても大切だという会社の文化が根付いているので、周りのメンバーも遠慮なく指摘してきますし、この設計で本当に目的を達成できるかは常に自問しています。

また、プレゼンの内容によって、リハーサルの進め方も異なります。
例えば、今年の7月にベルリンで開催されたTech Open Airというカンファレンスで英語ピッチをした際には、特に念入りにリハーサルを行いました。プレゼンの骨子が出来上がり次第すぐにプロダクトメンバーからカジュアルなレビューをもらい、次に英語圏に住んでいたメンバーから、自然な英語かどうか、ネイティブに通じるかどうかのレビューをもらいました。そしてプレゼンをベルリンオフィスのメンバーに聞いてもらい、ブラッシュアップした形で本番に臨みました。

このように、言語が変わるとレビューしてもらいたいことも変わります。プロトタイピングと同じ形で適したメンバーに都度レビューをもらいながらプレゼン作りを進めていくことで、伝えたいメッセージがクリアになると考えています。

まとめ

  • プレゼンの目的や相手の立場により話し方や時間配分まで臨機応変に変える
  • ラーニングピラミッドを意識したプレゼンを心がける
  • レビューでフィードバックをもらい、プロトタイピングを重ねる

ワークショップはファシリテーションスキルが求められる特殊な例かもしれませんが、セミナーで実際に体験をしてもらったり、ディスカッションを取り入れたプレゼン作りなどは参考になる方も多いのではないかなと思います。

会社を背負っての交渉などが発生するビジネス職では、情報設計そのものに対してレビューをもらうことも、とても大切な工程だとわかりました。

今まで3名の方にインタビューをしてきましたが、みなさん情報設計をとても重要視していました。プレゼンと聞くと、スライドの見せ方に考えが先行しがちです。しかし、今回のインタビューでスライドを綺麗に見せるためには、まずその前段階の設計を綺麗にする必要があることを学びました。

みなさんもプレゼンをする際には、プレゼンの設計を大切にして進めてみてはどうでしょうか。

過去の2名の記事は以下からどうぞ!