今だからこそ企業がPeople Experienceに取り組むべき理由

日本でも度々耳にするようになった社員体験(Employee Experience)という言葉。人材市場が製品市場化しつつある現代において、在籍する社員のエンゲージメントを高める取り組みは国内外問わず様々な企業でこれまで以上に重要視されています。

Goodpatchでも2018年9月に経営企画室直下にPeople Experienceチームを設立しました。一般的にはEmployee Experienceと呼ばれる領域を、私たちはあえて人間という意味合いが強い「People」に置き換えています。働き方が多様化する中で、一社員としてだけでなく、個人としても向き合い成長できる環境をデザインしていきたいという、UI/UXという人間中心デザインを手がける私たちだからこその想いを込めています。

本記事では、People Experience(又はEmployee Experience)とは何であり、何故今注目を集めているのかを海外の事例を踏まえてご紹介します。

なぜPeople Experienceなのか

テクノロジーの進化により、働き方の多様化や誰もが情報を発信する側になることができる時代になりました。そんな中、企業は優秀な人材に組織に選ばれ続けるように自社のミッションやビジョンを明確に発信したり、カルチャーを強化したりする必要性を強いられています。

People Experienceは、ビジョンやミッションを達成するために強いカルチャーをつくる中核を担います。企業のバリューとして明言されたカルチャーと潜在的なカルチャーを行き来し、組織の中の体験向上と企業文化醸成を推進します。

Engagement 2.0の著者であるケビンクルーズは、「社員のエンゲージと企業利益には相関関係が存在する」と語っています。社員の幸せは顧客の幸せにつながり、結果としてステークホルダーの幸せにつながると語り、企業が社員に投資することは目に見える成果(ROIの成長)につながることを明言しています。

海外におけるPeople Experienceへの注目

海外の企業が社員体験を重視する動きは、ここ10年程で驚くほど加速化しています。働くことにモチベーションを抱けない社員の数は年々増加傾向にあり、2016年には米組織コンサルGallupが働きがいがあると感じている人が29%しかいないことを発表しました。同時に、企業がハイパフォーマーを惹きつけるために、自社のカルチャーを魅力的なものに磨き上げようとする流れも浮上しました。

いくつかの企業では早い段階からPeople Experienceチームを立ち上げています。社員のエンゲージメント強化に力を入れ、湧き上がるモチベーションからより高い成果を生み、良い循環を築くことで社員に定着してもらえる仕組みを構築するのです。ほんの一部ですが、ここではPeople Experienceに取り組む組織を取り上げたいと思います。

Google

Googleは過去10年間、常にGlassdoorの働きがいのある会社調査で1位を獲得し続けています。Googleはシェフお手製の食事やサロンなどといった素晴らしい福利厚生で良く知られていますが、思いつくアイデアに片っ端から投資しているわけではありません。社員の統計から集めたデータを分析し、どの待遇や施策がより社員の幸福度向上に貢献できるかを見極めているのです。

そのデータドリブンなPDCAの回し方には驚かされるばかりです。2007年に多くの女性社員の離職が課題だったGoogleは、社員データから「産休をとった女性社員の離職率が高い」ことに気がついたのです。そこから産休の取得期間を通常の12週間から5ヶ月に伸ばすことに決めました。その結果、女性社員の退職率は半分以下になったそうです。

このように、闇雲に突発的なアイデアに投資するのではなく、データを元に施策を実行することで社員へ最大限良質な体験を提供することが可能であることをGoogleは身をもって証明しています。

Airbnb

Airbnbは2016年にHRをEmployee Experienceに置き換え、多くの企業の注目を集めました。当時、Airbnbは「Belong Anywhere(どこでも居場所がある)」をスローガンとして抱えていました。しかし、居場所という概念は顧客だけでなく、自社にいる社員にも当てはまることに気がついたのです。社員が会社を居場所であると感じることが、良い顧客体験やサービスづくりの始まりであると彼らは明かします。

AirbnbのEmployee Experienceが取り組む領域は多岐に渡ります。入社前の選考インタビュー、オンボーディングに当たる入社一ヶ月の期間、社員が日々利用するキッチンやライブラリ。あらゆる側面に会社の価値観を宿らせることで、社員の共感を醸成しているそうです。こうしたチームの地道な取り組みが、ミッションに強く共感する社員を育て、顧客に一貫した体験を提供する仕組みへとつながっています。

Salesforce

Saleforceは社員のエンゲージメントを測るCRMを提供していることから、自社の社員体験にも力を入れています。特にカルチャーに関しては、意識的に優先度を高め、プロジェクト化し、効果計測を怠らないそうです。また、本来Employee Experienceが取り組むべき領域をチーム内に狭めず、全ての社員に当事者として取り組んでもらうカルチャーがあることが特徴でしょう。

今日の働く人々は企業に対して、良いカルチャーや最高のオフィス環境を求めるだけでなく、プライベートで構築した繋がりや自身のキャリアの成長など、社外で求める体験を社内にも求めるようになっていると言います。彼らは従業員のデータを社内外のサーベイだけでなく普段の会話などからも集め、それらを統合して社員の定着率を高められるカルチャーの醸成に取り組んでいるそうです。

成功する企業は人に投資する

もちろん従業員の体験の重要性に気づき、数値化して改善に努めるのは海外だけではありません。国内でも近年、顧客満足度と同様に「従業員満足度」の改善に取り組む企業が多くあります。その証拠に、国内では株式会社おかんが主催するEmployee Experience Summitなどが昨年より行われています。
また、従業員のエンゲージメントを可視化し、組織の改善サイクルを加速化させる「モチベーションクラウド」を提供する株式会社リンクアンドモチベーションは、国内でも本領域を引率する代表企業だと言えるでしょう。

さまざまなビジネスを運営する中で、その根幹にある人にフォーカスをしてこそ、企業はビジネスを成功させることができるだけでなく、より魅力的な人材を継続的に惹きつけられるでしょう。また人を大切にする企業でこそ、社員は彼らが本来発揮できる以上の力を発揮でき、個人としても成長できるのです。

GoodpatchのPeople Experienceチームは、さまざまな部署と連携を測りながら、社員がGoodpatchを選んでよかった、心から居場所であると思えるような文化・環境をデザインしています。今後は取り組みのプロセスなども発信して参りますので、お楽しみに!

ABOUTこの記事をかいた人

keika

'94年生まれ。中国と日本のハーフで、1歳から18歳までを中国・上海で過ごす。2016年にロンドンで写真・デザインを学ぶ。グッドパッチが注力しているFintechと、国外のデザイン組織情報を中心に発信。
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