アートとデザインの違いについてあらためて考察してみる

みなさんはアートとデザインの違いや関係性について考えたことはありますか?私は大学が始まって最初の授業でアートとデザインの違いについて教授に聞かれ、答えに少し戸惑った覚えがあります。

デザインを始めたばかりの人の中にはアートとデザインは同じものだと思う人もいるでしょうし、全く別のものだと考える人もいると思います。

アートとデザインの違いというのは他のメディアでも大いに議論されているテーマですが、この記事では私の個人的な考えを加え、アートとデザインの違いと類似点を改めて考察してみようと思います。

表現 VS 問題解決

この対比はアートとデザインの違いを語る際に比較的多く使われるのではないでしょうか。

アートとは簡潔に言えば表現と創造です。表現の中に制約はありません。アーティストは自分や他者の感情や体験、もしくは日常や歴史的な事柄をアートに昇華します。そこに必ずしもオーディエンスがいる必要はありませんし、最終的なアート作品に作り上げるのに決まった工程も無ければルールもありません。

一方で、問題を解決する為に使われるのがデザインです。

多くのデザイナーが視覚的センスに長けているために、デザイナーにはスケッチや写真などの技術が求められると誤解されがちですが、この説に基づくと優れたデザイナーは「問題解決能力に長けた人物」であり、写真やスケッチなどの視覚的センスを必要とする能力はあくまで問題を解決する際に立てた仮説を補助や検証するために使われるものになります。

そしてグッドパッチのデザインプロセスのように、ある程度決まった工程を追う必要があるのがデザインです。

理解される必要性

アートの役割の1つは世の中に問題提起をすることです。アーティストは表現をする際にアートという媒体を使い、世間に対する疑問や批評を人々に伝えることができます。ですが彼らのアートが大衆に理解される必要はありません。

というのも、「一般の人がマーク・ロスコジャクソン・ポロックの絵を見ても理解できない」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?実は、それが正解で、ある種それが彼らの狙いなのだと思います。彼らは彼ら独自の手法で答えを探しているので、そもそも理解される必要はないのです。

マーク・ロスコ No. 61 (Rust and Blue), 1953.

(参考: Wikipedia

ですが、デザインは違います。よりよいプロダクトをつくるために問題を解決しなければなりません。より多くの人にプロダクトの意図を理解してもらい、使いやすくなるようにデザインする必要があります。すなわち、できる限り最善の答えを見つけないといけないのです。

2014年にセブンイレブンのコーヒーマシンの外観が一新されましたが、これはまさしく「アートとデザインが混同した事例」ではないでしょうか。外観は非常にスタイリッシュなものに仕上がった反面、その使いづらさが話題を呼び、結果各ボタンの機能を解説したテプラが一面に貼られるという事態になりました(2016年に再リニューアル済み)。

アーティストとデザイナー

少し別の角度から違いを見てみましょう。みなさんはアート界で有名なアーティストとデザイン界で有名なデザイナーの一般的な知名度や認知度について考えたことはありますでしょうか?

パブロ・ピカソと聞いて、恐らく多くの人が彼がどんな作品を作り上げて来たのかという質問の答えをすぐに思い浮かべられると思います。

ですがジョナサン・アイブと聞いて、Appleの製品が世界中に普及しているにも関わらず、どれだけの人が彼がiPodやiPhoneのデザインを担当した人物だと答えられるでしょうか?

ここにも自己と他者という明確な関係性が存在します。アートは自己が中心で、デザインは他者が中心に存在します。デザイン思考もユーザーとの対話を1つの軸として掲げているので、この違いは理解しやすいのではないでしょうか。

つまり、有名なアーティストほど社会に優れた問題提起をしたという理由で知名度も比例的に上がり、良いデザイナーであればあるほど自己を製品から切り離せているということでしょうか。

アートとデザインの将来

これまではアートとデザインの違いについて述べてきました。これからはそれらが将来どのように繋がり合うべきかについて考察していきたいと思います。

歴史の中ではアートとデザインは混同されて考えられてきましたが、デザイン思考という言葉が生まれて以降、アートとデザインの乖離は深まる一方です。

ですが、デザイン思考が少し飽和気味である現代において、いわゆるアート的思考というのも必要になってくると私は考えています。

これまでの考察から、良いデザイナーになるためには問題解決能力に秀でてなければならないというのが結論になります。どうすればユーザーにとって使いやすくなるだろうか?どうすればコンバージョン率を上げられるだろうか?それらの”どうすれば”を色々な方法で深く追求することで問題解決能力は鍛えることが出来ます。

ですが、それ以前にありふれた常識に疑問を呈することができる能力も同様に必要だと感じました。優れたアーティストが歴史の中でアートを使って社会に問題提起をしてきたように、これからはより優れたデザイナーになるためには問題解決能力に加え、問題提起能力も必要になるかもしれません。”なぜ○○はこうなのだろうか?”と問題提起することで、自ずとそれらに対する答えを見つけようとするので問題解決能力も鍛えられます。

そして、既に完成されていると信じられているデザインにも恐れずに疑問を持ってみましょう。なぜなら時代とともに人々の考えや好みも変わり、それに伴い良いデザインというのも流動的に変わるからです。

余談ですが、少し前にDropboxのブランドデザインの大胆なリニューアルがインターネット上で話題になりました。60、70年代のアバンギャルドなアートスタイルになり、シンプル至上主義とも思える今のデザインとは真逆の方向性です。

(参考: Dropbox Design

もちろん賛否両論あるとは思いますが、私はあの思い切った変化こそ今ある常識に対する問題提起だと感じましたし、Dropboxのような業界をリードする企業がやることにこそ意義があるのでないかと思いました。

まとめ

こういう風に色々な角度から考えてみると、アートとデザインが同じような側面を持ちつつも、異なる分野であることが分かると思います。

そしてこれからはいかに0から1を創り出すアートと、1から100に設計するデザインが融合していくかが、世の中に大きなインパクトを生み出すと考えています。

ですが、冒頭でも述べた通り、デザインを始めたばかりの人だとアートとデザインを混同してしまうということも考えられます。大学等でアートを学んだ人であれば尚更です。なので、まずは最初からアートとデザインを混ぜて考えるのではなく、しっかり違いを理解しておきましょう。そしてデザインの中にあなたのアート的思考を取り入れられるといいかもしれないですね。


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ABOUTこの記事をかいた人

榎本 直

93年生まれでアメリカの大学でグラフィックデザインについて学ぶ学生で18年卒のUIデザイナー内定者です!Twitter: @naoenomoto
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