TOPPANデジタル
- Client
- TOPPANデジタル株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design
- Date
- Client
- TOPPANデジタル株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design
- Date
Overview
TOPPANデジタル社における受託開発中心の文化及び体制から、自社SaaSプロダクト開発体制への転換に関しての課題を発見し、開発組織とビジネス戦略双方からプロダクトの成長を支援。Phase1ではプロダクトマネジメント・プロダクトマーケティング組織基盤の構築を行い、Phase2では校正サービス「review-it! for Package」の具体的なプロダクトグロース支援を実施しました。プロダクトマネジメントの考え方を組織に根付かせ、持続的な事業成長の実現に向けた基盤を確立した事例です。
Client
TOPPANデジタル株式会社
TOPPAN Digital Inc.
2023年10月のホールディングス体制への移行に伴い、グループのDX戦略推進を担当。校正業務効率化SaaS「review-it! for Package」など複数のプロダクトを展開し、売上の拡大を目指しています
Summary
ご支援前の課題
- ナレッジが個人に依存し、TOPPANデジタル式プロダクトマネジメントの手法が確立されていない
- 受託開発文化が根強く、本来ターゲットとすべきユーザーよりも現在のクライアントの意向が優先されやすいプロダクト開発文化だった
- エンジニアリソース不足によりプロダクトの磨き込みが困難
- 成長を図る指標であるノーススターメトリクスが未確立
- プロダクトの機能改善に支障が発生しており、アジャイル開発プロセスの最適化に課題
グッドパッチの対応とご支援後の成果
- TOPPANデジタル式プロダクトマネジメントプロセスの確立
- 組織横断でのPdM(プロダクトマネージャー、以下PdM)・PMM(プロダクトマーケティングマネージャー、以下PMM)の連携によるプロダクト改善基盤の構築
- ジュニアPdMの伴走支援による自律自走の実現
- 顧客中心のプロダクト開発文化の醸成
- プロダクトの指標であるメトリクスの確立と、データドリブンな意思決定基盤の構築
- 開発プロセスの最適化と開発メンバーの自律自走実現
- プロダクトにおけるビジネス戦略と開発戦略の連携強化
受託開発文化からの脱却を目指した、組織変革とプロダクト成長の実現

TOPPANデジタルでは、「個社向け受託開発」から「市場向けプロダクト開発」への事業領域拡大を戦略として掲げていました。しかし、PdMの組織的な育成支援体制の不足、PdMの役割の明確化、BtoBプロダクトにおけるUX強化という3つの課題を抱えていました。これらの課題を解決するため、組織基盤の構築から具体的なプロダクト支援まで、段階的なアプローチで取り組みました。
PdM未経験者を対象とした、PdM委員会の立ち上げ
TOPPANデジタル社内には数十個のプロダクトが存在する一方で、PdMの経験者は数人という状況でした。社内ではプロダクトマネジメントのナレッジが個人に依存しており、開発経験のあるPdMは製品中心の思考に、セールス経験のあるPdMは売上中心の判断に偏る傾向がありました。
この状況を改善するため、TOPPANデジタル社内のPdM未経験者をターゲットに「PdM委員会」を立ち上げました。組織マネージャーや現場メンバーへのインタビュー、アンケートを重ね、委員会のミッション・ビジョンや活動ロードマップを策定。特にTOPPANデジタルでPdMに求められることの多い「PRD作成」「中長期ロードマップ作成」をワークショップ形式で実施しました。
TOPPANデジタル独自のプロダクトマネジメントプロセスの確立
委員会活動を通じて、プロダクト開発現場の「As Is(現在の状態)」と「To Be(理想の状態)」を定義し、その差分を生んでいる課題を構造化。これにより、TOPPANデジタル独自のプロダクトマネジメントプロセスの確立を目指しました。
参加メンバーからは「MVVやペルソナなども決めたはずなのに、チーム内の共通認識がぶれはじめていて、すでにペルソナも変わったりしていてPRDの必要性を再確認した」「プロダクトビジョンから分解した価値でユーザーにどのような影響を与えるかを考えてプロダクトを考えたい」など、具体的な気付きの声が上がりました。

PMMの職能・職域の定義と体制強化
PdM委員会の実施と並行し、PMMの職能・職域の言語化を進め、TOPPANデジタルの理想のPMM像を定義しました。
当時のTOPPANデジタル内では、PdMの責任範囲が広すぎたため、まずはPMMの職能・職域を言語化し、PdMとPMMそれぞれの明確な役割分担を定めることが必要でした。特に従来のセールス主導のアプローチから、より顧客の成功にフォーカスしたPMMの役割が求められていたため、「クライアントファーストからサクセスファーストへ」という思想を掲げ、PMMの職能と職域を言語化し、再定義を行いました。
言語化が必要だった背景として、PMMがまだ社内に少なく、業務は各プロダクトチームごとに属人的に行われることが多かったため、組織全体で統一されたフレームワークが存在していませんでした。プロダクトごとに異なる戦略が展開される中で、PMMの役割が明確でないことで、プロダクトの成長を加速するための動きが分散してしまう課題がありました。明確な言語化を行い、PMMが果たすべき役割を明確にし、組織全体で共通認識を持つことが急務でした。
そこでPMMが直面する課題を可視化し、具体的な解決策を導き出すことに注力しました。まずはPMM担当者と「As-Is / To-Be」の状態を整理し、現在の業務と理想の役割とのギャップを明らかに。その後、毎週のセッションでヒアリングを重ね、ビジネスサイドとプロダクトサイドの溝を埋めるためのディスカッションを実施。特に、「PMMがどのタイミングでPdMと連携すべきか」「セールスやCSとどのように情報共有を行うか」といった具体的な業務プロセスの設計にも踏み込みました。
これらの取り組みを通じて、PMMの職能をより戦略的な役割へと引き上げるとともに、PdMとの連携強化を目指しました。この基盤が、「review-it! for Package」におけるPMMの支援へとつながり、プロダクトの成長を加速させる鍵となっています。
「review-it! for Package」のプロダクトチームの体制最適化、ビジネスチームと開発チームの連携を強化
Phase1での組織基盤構築を経て、校正サービス「review-it! for Package」の具体的なプロダクト支援に着手しました。TOPPANデジタル式プロダクトマネジメントの仕組みやプロセスを浸透させるために、1つのプロダクトをロールモデルとし成功体験を広めていく方針から、一定数の顧客がおり今後より成長させていく必要がある「review-it! for Package」が選ばれました。しかしエンジニア不足によりプロダクトの機能改善にリソースを投下できず、日々の対応業務や緊急性の高い課題への対処が中心となり、中長期的な視点でプロダクトの機能拡充や根本的な課題解決に十分なリソースを割けない状況でした。
また開発チームのメンバー間でのコミュニケーションや連携の仕組みも整っておらず、チーム全体でプロダクト改善に取り組むための体制も十分に機能していませんでした。そのため、スクラム開発を導入していたものの、各ミーティングやイベントが形式的になりがちで、PdMとスクラムマスターの連携も限定的だったため、プロダクト開発の本質的な課題に向き合いづらい環境となっていたのです。
上記課題を解決するために、まずはコミュニケーションと体制の改善を行い、開発をはじめ、ビジネスチームとの連携強化を行いました。またCSからジョブチェンジしたばかりのジュニアPdMの方の自律自走のために、毎日の1on1をはじめとして成長支援を行い、開発チームの体制構築、スクラムイベントの目的の再定義および運用の見直しを通じて、一緒に思考プロセスを踏みながら改善を図ることで、PdMが主体的に動き、エンジニアとコミュニケーションを取れる体制を構築しました。

データドリブンな意思決定基盤の構築
プロダクト利用時の「Aha Moment※」を起点に、ビジネスKGIにつながるNSM(North Star Metrics)・KPIを定義。プロダクトデータを収集・分析するダッシュボードを作成し、その作成方法のサポートも行いました。
※プロダクト開発において、ユーザーがプロダクトの価値を実感する瞬間のこと
当時セールスのダッシュボードはあったものの、プロダクト数値の可視化ができていませんでした。そこでサービスの提供価値と行き来しながらメトリクスツリーを作成し、ダッシュボードに落とし込みました。
この過程で、ユーザー体験に基づく指標設定の重要性も明らかになりました。例えば、「タスクの完了率」を測定する際に、CS出身のTOPPANデジタルの関様がユーザーインタビューを実施したところ、確認作業で目視をした後に完了ボタンを押さないユーザーがいることが判明。このようなユーザー体験をベースにした議論が、より実態に即した指標設定や体験改善につながりました。
結果として、クライアント自らがLookerStudioでプロダクト状況を常に把握し、データを可視化し、示唆出しを行えるようになりました。

プロダクト戦略におけるビジネスと開発の相互連携による一気通貫の成長
プロダクト開発面では、PdM・テックリードが中心となり、スクラム運用に特化した課題解決MTGを実施し、レトロスペクティブを中心に各イベントを再定義。運用をしながら改善を続けることで、振り返りと成果への道筋を作りました。コミュニケーションのハブとなるプロダクトバックログの運用改善を通じて、PdMとスクラムマスター、そして開発チーム全体の連携を強化しました。
プロダクト戦略面では、PMMが先行してSTPを定義し、プロダクトビジョンやポジショニングマップなどの戦略の大前提を作ることから着手。当初はメトリクスの可視化から実行しようとしましたが、ビジョンがセットになっていないと数値を出しても意味がないという結論にいたり柔軟に路線を変更。まずはビジョン策定のためのワークショップを実施することにしました。このワークショップでは、これまで存在していた抽象的なビジョンを見直し、より実用的で全員が共感できるビジョンづくりに取り組みました。CS出身のTOPPANデジタルの関様から顧客の声についての具体的なインプットを得ながら、関わる全員が「自分たちの言葉」として認識できるシンプルで分かりやすい「血の通ったプロダクトビジョン」が完成しました。
特筆すべきは、従来「ビジョンとはエモいもの」と思われていたMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の概念を根本から見直し、新しく加わるメンバーへの分かりやすさも考慮しながら、戦略を考える際にブレない解釈ができるものに仕上げた点です。これにより、チームメンバーのビジョンへの愛着も深まり、解像度も高まりました。
このビジョン策定の過程では「価値マップ」の作成にも取り組み、最終的にそのビジョンがどういった体験インパクトを与えられるかを可視化。混沌としていた多くの要素が整理されました。
ペルソナ「意識高子さん」「リスク怖男さん」を起点にした3年間の成長計画
このビジョン策定の過程で、顔の見えるペルソナも誕生しました。「高子さん」「怖男さん」と名付けられたこのペルソナは、単なる抽象的なターゲットユーザーではなく「顔が見えるペルソナ」として、プロダクトの課題を発見したときに「高子さんにとってどうか」と具体的に考え判断できる軸として機能するようになりました。
ビジョンとペルソナが決まった後は、これからプロダクトをどう成長させていくかというディスカッションを展開。「意識高子さん」「リスク怖男さん」が使ってくれるためには何が必要かを起点に、1〜3年目のあるべき状態を設定しました。
3年目のゴールに到達するために1年後に何をすべきかを洗い出し、優先順位を設定。さらに1年間の中でクォーターごとの状態目標を決め、具体的な行動計画に落とし込みました。
ビジョンが決まって視界が開けたことで、立ち上げ時にはたくさんあった変数が決まり、固定値が増えたので、どこにコミットすればいいかわかりました。PdM側も動きやすくなって製品の行く先が見えるようになったことで「どこに向かってGo to Marketするのか」が非常にクリアになりました。(TOPPANデジタル平野様)
ワークショップ・ディスカッションと手段を臨機応変に組み合わせたことで、ビジネスとプロダクトの一貫性を担保した事業成長戦略を高速で描くことができました。


PdMとPMMの協創で目指した、ビジネス・プロダクト戦略の繋ぎこみ
本プロジェクトの最大の特徴は、PdMとPMMが協創し、ビジネス戦略とプロダクト戦略を効果的に繋ぎこんだ点にあります。ビジネスサイドとプロダクトサイドが別々に動き、目線がずれていた状況から、両者の橋渡しをPMMが担い、互いの視点や優先順位を調整しました。
PMMがSTPを定義し、ビジネス戦略と市場ニーズを整理。その土台の上に、PdMが開発体制や実装計画を構築。この連携により、データに基づいた意思決定と共通認識のもとで前進することが可能になりました。
今後も「reveiw-it! for Packcage」は、パッケージ裏面のチェックツールから、業務の頭からお尻まで確認する業務が完結する、チェック業務に関わる全ての人にも役立つサービスへと進化していくことを目指しています。PdMとPMMが互いに背中を預け合い、ビジネスとプロダクトの両面から支えていく体制は、この進化を確かなものにする重要な要素となるでしょう。
クライアントの声
当部門では「個社向け受託開発」から「市場向けプロダクト開発」への事業領域拡大を戦略として掲げていましたが、以下の3点が課題となっていました。
①PdMの組織的な育成支援(PdMO)
②広すぎるPdMの役割の分業化(背中を預けられるPMM)
③BtoBプロダクトにおいて重要性が増すUXデザインの強化(製造品質から利用品質へ)グッドパッチさんの支援サービス「Product Growth Partnerships」は、これら3つの課題を包括的に解決できる理想的なサービスであり、私たちのニーズに深く刺さりました。
1年間のご支援を通じて感じたのは、「プロフェッショナルに、寄り添ってくれる」です。メンバーの皆さんの心強いサポートに、深く感謝しております。支援を受けているメンバー全員が「自己成長」を実感しており、私も「自己成長と事業成長の両立」に大きな期待を寄せています!
TOPPANデジタル株式会社 原井様
ご支援いただきありがとうございました!
ビジネス部隊と開発部隊がそれぞれで動いていた組織にメトリクスの可視化やビジョン策定によって大きな連動性が生まれたと感じております。事業の目指す方向性も明確化されてきたのでこれからさらなる成果につなげていきます!
TOPPANデジタル株式会社 PMM平野様
プロダクトマネジメントや開発の経験がない私にとって本当にありがたい存在でした。
客観的な視点からやるべきことを整理していただいたおかげで、スピード感を持って取り組むことができました。ご支援いただいた経験を糧にもっと勉強してプロダクトを成長させていきます。
ありがとうございました!
TOPPANデジタル株式会社 PdM関様



本プロジェクトの詳細は、こちらのインタビューをご覧ください。
社内の孤独なPdMをつないで育てるコミュニティ TOPPANデジタルの「PdM委員会」立ち上げの裏側
PdMとPMMの「分担と連携」がカギに──TOPPANデジタルが模索する、理想のプロダクトグロースとは?
Credit
富田一行:統括
石田健二:クオリティマネージャー
加納俊平:プロダクトマネージャー
住岡耕平:プロダクトマネージャー
吉田早希:プロダクトマーケティングマネージャー
小手川周平:ソフトウェアエンジニア
門田勘太朗:ソフトウェアエンジニア
簑毛勇太:ソフトウェアエンジニア
矢吹拓也:デザイナー
浦田文恭:アカウントマネージャー