三菱UFJフィナンシャル・グループ
- Client
- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 様
- Expertise
- Organization Design
- Date
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- 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 様
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Overview
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの社内新規事業創出プログラム「Spark X」において、応募者数の減少と落選者フォローの課題を抱えていた事務局からの依頼を受け、グッドパッチでは「落選者向けプログラムの設計・運営」と「ビジュアルブランディング」を手掛けました。単なる研修プログラムではなく、参加者の想いに寄り添い、再挑戦への熱量を高める体験設計で、プログラム参加者からの再チャレンジ宣言を引き出すことに成功。クライアントと同じ熱量で挑戦者を支援する共創の取り組みをご紹介します。

Client
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
Mitsubishi UFJ Financial Group, Inc.
銀行、信託、証券、金融持株会社など多岐にわたる金融サービスを提供。全社成長戦略において、社内からの新規事業創出を重要施策としており、社内新規事業創出プログラム「Spark X」を運営。社員の挑戦を後押しし、イノベーティブな企業文化の醸成を推進しています。
Summary
ご支援前の課題
- 新規事業案の応募件数減少
- 書類、一次選考での落選者が多く、来期につながる適切なフォローができていない
- 落選者向けの体系的なフォロープログラムの不足
- 応募アイデアにおける顧客価値や熱量の言語化が不十分
グッドパッチの対応とご支援後の成果
- 「Spark X」挑戦者限定フォローアッププログラム「Relight」の立ち上げ(ブランディング〜プログラム設計・実施)
- 1dayオフラインイベントと3days実践プログラムを通じて、参加者の再挑戦意欲を醸成
- プログラムのブランディングとビジュアル開発により、参加者の特別感を演出
- 複数回落選者からの再チャレンジ宣言を引き出し、組織初の体系的フォロープログラムを確立
「Spark X」挑戦者の熱量を再燃させ、来年度の応募につなげる仕組みの構築
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)では、全社成長戦略において、社内からのイノベーション創出を重要施策として位置付けています。その具体的な取り組みとして立ち上げられた社内新規事業創出プログラム「Spark X」は、社員の挑戦を後押しし、イノベーティブな企業文化を醸成することを目指しています。
しかし、プログラム開始から3年が経過し、応募件数は初年度の645件から昨年度には245件まで減少。特に書類・一次選考での落選者が半数以上を占める中、応募経験がある社員への適切なフォローができていないことが、応募件数の減少の要因であるとSpark X事務局は捉えていました。
「挑戦した方々の熱量を保ったまま、来年度の応募につなげていきたい。単発のフォローセミナーではなく、継続的なプログラムを通じて、しっかりと支援していきたい」。こうしたニーズを受け、グッドパッチの伴走支援が始まりました。
「Spark X」挑戦者に寄り添うプログラム設計
「挑戦するすべての社員に敬意を払い、挑戦を迷った仲間も巻き込んだ体験を提供するプロジェクトにしたい」──。そんな事務局の想いを受け、UXデザインに強みを持つグッドパッチならではの提案で、本プロジェクトへの参加対象者を“落選者”ではなく“挑戦者”という表現で統一しました。
初期段階ではまず挑戦者の分析から着手しました。彼らの価値観や思考を深く理解するため、5タイプに分類した挑戦者像の詳細と、各タイプの特徴的な行動パターンや意識を分析。その中でも特に「アイデアはあるが熱量が低い層」と「事業化への興味はあるが自己成長を重視する層」という2つのタイプに着目し、彼らの「熱量を上げる」ことを核にプログラムを設計しました。

そして、この2つのタイプの挑戦者が「どういう状態になっているべきか(ゴール状態)」とそのために「提供すべき価値」をSpark X事務局と議論し、コンテンツ設計を進めました。

この設計コンセプトの下、再挑戦する人を増やすために、8月末の「1dayオフラインイベント」と10〜11月の「3days実践プログラム」という2段階構成を提案しました。特に落選通知(7月上旬)から熱量が冷めないタイミングでの実施にこだわりました。
プログラムの価値を伝える場のコンセプト設計とキービジュアルの作成
今回、プログラムの設計・実施だけでなく、MUFG全体の挑戦風土を後押しするため、コミュニケーションの指針となる、新たなプログラム名やロゴ、キービジュアルを制作しました。新たなプログラム名は、既存のコンセプトとのつながりや事務局の想いを整理し、挑戦者の共感につなげるために「Relight」と名付けました。
また、プログラムの世界観を表現するため、グッドパッチのブランディングチームと協働し「Relight」のロゴとキービジュアルを開発。これらを活用し、ワークを進行する資料や、タペストリー、Tシャツなどのグッズを展開し特別感を演出。加えて、全社的に挑戦者の後押しをしていることや、事務局全員の想いを伝える動画制作も行いました。



対話のチカラを活かし、挑戦者のモチベーションをあげる設計
1dayオフラインイベントでは、「自信の回復」や「またやってみたい」と思う参加者のモチベーションを高めることを目的として設計。限られた時間の中で、具体的なアイデアやスキル獲得を無理に進めるのではなく、あくまでも「参加者が次のチャレンジをしたくなる、モチベーション」を作ることが、Spark Xに再挑戦してもらうために何より大切だからです。

そのために、オフラインイベントの当日のプログラムは「喪失感からの回復」と「再チャレンジ欲の再燃」をテーマに、ワークと対話の2つの要素で構成しました。
自身の応募アイデアについて改めて参加者同士で話し合い、その「魅力」と「より良くできる点」を伝え合うワークを実施。ワークを通じ、アイデアの自信を回復するとともに、より良くできる改善ポイントを見出せるように設計しました。
これらのフィードバックを踏まえて、「自分が本当に大切にしたいこと(エゴ)」は何かを言語化し、当日のチームワークのチーム分けの要素としても活用しました。
さらに、1日だけの非日常の体験としてプログラムにのめり込んでもらうために、「大航海時代の海賊船に乗り合わせた仲間たちとともに、一攫千金を目指した冒険の旅に出よう!」。そんなトーンで場を演出しながら、参加者と一体楽しみながらワークを進めていきました。

挑戦者は、自分のアイデアに多かれ少なかれプライドを持って提案をしています。ただ、Spark Xの枠組みの中でNGを突きつけられ、強い想いがあっても実現できないもどかしさを感じています。しかし、一度NGと言われたからといって、「想い」が否定されたわけではなく、実現するためのアイデアや手段は必ずあります。

そこで1人では思いつかない新しいアイデア、手段を見出し、「まだ行けるかも」「もう一度やりたい」というモチベーションを高めてもらうために、仲間同士での「対話と共創」の場としてデザインしました。

3days実践プログラムでは、ユーザー理解のためのインタビュー、課題仮説や提供価値の可視化、アイデア発想やプレゼンテーションそしてフィードバックなどを実施。これらの活動をさまざまなフレームワークや体験を通じて実践してもらうミニプロジェクト型のワークとして設計しました。

ここでも、多様な意見のもとアイデアを膨らませたり、1人では進めづらいリサーチを行うために、チームを組んで協力し合える形式にしました。
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という諺(ことわざ)がありますが、さまざまな障壁を乗り越えるために仲間の存在はとても大切です。互いに協力しあい形にすることの価値・楽しさを感じてもらい、組織に「共創の文化」を根付かせるための、「関係作り」を意図した設計となっています。

3days実践プログラムの最終日は対面で、チームのアイデアをより具体的にするためのディスカッションだけでなく、身体を使ったワーク(アクティングアウト)を通じて、自分たちのアイデアをリアリティのあるユーザー体験として表現し伝えることにチャレンジしました。普段やらない体験だからこその楽しさと同時に、改めて自分たちが紙上で考えたアイデアが、ユーザーやステークホルダーにとってフィットするものか?を考える機会にもなっていました。
最後に、アクティングアウトの動画やアイデアキャンバスなどを基に、他のチームやグッドパッチのメンバーたちにプレゼンテーションをし、フィードバックをもらう時間を作りました。このワークはラウンドテーブル形式で行い、各チームのプレゼンテーターをおいて、他のチームメンバーがアイデアを聞きフィードバックする役としていろんなテーブルを回るという仕組みで実施しました。


再チャレンジへの意欲を引き出した、共創の成果
プログラムを通じて最も印象的だったのは、3回のチャレンジで落選を経験し、来期の応募を諦めかけていた参加者が、「再チャレンジする」と宣言してくれた瞬間でした。仲間との対話やフィードバックを通じて得られた気付きが、新たな挑戦への原動力となったのです。
また、このプログラムはMUFGとして初めての体系的な挑戦者フォロー施策となり、次年度以降も継続的に実施予定。さらに若手層のチャレンジを後押しするプログラムへと進化させていく予定です。
グッドパッチは今後も、クライアントの想いに寄り添い、同じ熱量で挑戦者を支援する共創のパートナーとして、イノベーティブな組織文化の醸成に貢献してまいります。

Credit
ワークショップデザイナー/プランナー:島田 賢一
ワークショップデザイナー/ストラテジスト:田中 拓也
デザインストラテジスト:秋山さくら
デザインストラテジスト:伊澤 和宏
BXデザイナー:大久保 彩佳
写真・動画:Kai Qin
リアルな体験談が聞ける『事例セミナー』開催決定

本事例でお伝えした、社内新規事業創出プログラム「Spark X」のフォローアッププログラムについて、三菱UFJ銀行(MUFG)のご担当者様にリアルな感想や裏側の仕組みを語っていただく事例セミナーを開催します。以下のリンクよりお申し込みいただけますので、ぜひご参加ください。
◆お申し込みはこちらのURLから
https://design-partnership.goodpatch.com/events/20250421