ダイキン工業
- Client
- ダイキン工業株式会社
- Expertise
- Business/Strategy Design
- Date
- Client
- ダイキン工業株式会社
- Expertise
- Business/Strategy Design
- Date
Overview
ダイキン工業株式会社のデザイングループは、経営戦略に紐づいた形での近未来の事業テーマを立案するために「未来洞察」を用いたアプローチに着目。グッドパッチをパートナーとして、全6回のワークショップと専門家へのインタビューを通して27個の「社会変化仮説」と70個のビジネスアイデアを創出。ビジネス面も踏まえた6つの事業テーマを立案するに至りました。未来洞察から事業アイデアの具体化までのプロセスを、本事例を通してご紹介します。
Client
ダイキン工業株式会社
DAIKIN INDUSTRIES, LTD.
1924年に創業し、空調機器のグローバルリーディングカンパニーとして知られるダイキン工業株式会社。「『空気』と『環境』の新しい価値で世界に答えを出し、社会の持続可能な発展に貢献する」をビジョンに掲げ、「空調」「化学」「フィルタ」を柱に世界170カ国以上で事業展開しています。家庭用・業務用エアコンをはじめ、冷凍機、フッ素化学製品など幅広い製品を提供する中で、技術革新を追求しながら、人々の暮らしの質向上と環境負荷低減の両立を目指し、ビジネスを通じた社会課題の解決にも注力しています。
Summary
ご支援前の課題
- デザイン部門ならではの視点で、近未来の事業テーマを立案したい
- 会社の経営計画に連動した形で、ビジネスとしての具体性を持った事業テーマであることを目指したい
- 事業アイデア創出から事業を立ち上げるプロセスをグループ全員が経験することで、将来的に事業化までを提案・支援できる体制構築につなげたい
グッドパッチの対応とご支援後の成果
- 全6回のグループ全員参加でのワークショップと専門家へのインタビューを通じ、未来洞察からビジネスアイデア創出までのプロセスを体系的に支援
- 27個の社会変化仮説、70個の事業アイデアの創出、6個の具体的な事業テーマの立案を実現
- ワークショップ手法、中間生成物も含めたプロジェクトプロセスのアセット化
ダイキン工業の可能性を広げる、デザイングループの挑戦
ダイキン工業株式会社(以下、ダイキン工業)は、世界有数の空調メーカーとして、「空気」と「環境」の新しい価値を創造し、グローバルに持続可能な社会の実現を目指しています。
同社のデザイングループでは、これまでさまざまな事業を構想し提案をしてきたものの、過去を振り返ってみると、「良いアイデア」と評価はされても、絵に描いた餅になってしまって実行に至らないケースがあったといいます。
こうした状況を受け、「経営計画と連動しながら、デザイン部門ならではの視点から近未来の事業を構想するにはどうすればよいか」を模索し、「未来洞察のワークショップ」をグループ全員で実施することにしました。
未来洞察のプロセスを取り入れ、自走できる体制につなげたい
未来洞察のプロジェクトを社外に依頼したのには、2つの狙いがあったといいます。
「1つ目は、未来洞察のプロセスをデザイングループの全員が体感すること。2つ目は、会社の経営戦略と紐づくアイデアをデザイナーならではの視点で事業テーマとして立案することでした。アイデアを実際の事業に落とすところまで視野に入れて考えるためには、まずは正しいプロセスを学ぶ必要があります。加えて、プロジェクト終了後も当社グループだけで自走できる状態になっていることも意識していました」(ダイキン工業 濵さん)

ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター UXデザイン担当 濵沙由美さん
外部パートナーとしてグッドパッチを選んだ理由には、「最終的なアウトプットがダイキン工業にとってどのような価値をもたらすのか」という、成果物の具体性と事業貢献までを見据えた提案への納得と、そして戦略的な考え方への共感があったといいます。
「グッドパッチさんが掲げる『デザインの5段階モデル』では、戦略から表層まで一貫した体験設計がビジネスの差別化につながると説いています。この考え方に私自身も共感しており、戦略を重視する姿勢や、ユーザー視点で価値を見据えて伴走してくれる点に信頼を感じました」(ダイキン工業 濵さん)
未来を共創するジャーニー:グッドパッチの伴走型未来洞察支援
ダイキン工業のデザイングループが達成したい目標に応えるべく、グッドパッチでは、全6回の「未来洞察ワークショップ」を緻密に設計し、実施しました。
一連のワークショップは、「未来探索」と「事業構想」という2つのパートで構成。体系的かつ実践的に未来洞察の手法を学べること、デザイナーならではの視点での事業テーマ立案ができることを目指して設計しました。

未来洞察ワークショップの全体像
1. 未来探索パート:多角的な視点から未来社会の変化を洞察
前半は、未来の可能性を多角的に探ることに焦点を当て、ダイキン工業がフォーカスしているテーマ領域におけるマクロトレンドのインプットから行いました。
近い未来に起こり得るトレンドをシンプルかつ直感的に理解できるツールとして、15枚の「マクロトレンドカード」を作成。カードを用いて未来に起こり得る社会課題や可能性をグループで議論するワークを実施し、同社のビジネスに関連する大局的な変化の把握につなげていきました。

マクロトレンドカードの一例
続いて行ったのは「未来予兆探索ワーク」。未来の兆しを感じる事例・事象を各自で探索・考察し、チーム内でのディスカッションを行いました。
事業に対して近視眼的になりがちな視野を広げたり、個々人の興味関心やデザイナーならではの自由な発想や着眼点を引き出し、共有し合う場を設けることで、グループとしての相互作用を最大限に高めていきました。
こうして得られたさまざまな予測や予兆、後述するエキスパートインタビューも経て、チームごとに作成した仮説を統合し、27個の「社会変化仮説」へと落とし込みました。

27個の社会変化仮説
2. 事業構想パート:自社の強みと弱み、現在と未来を繋ぐアイデア創出
後半のワークショップでは、前半で生まれた多様なアイデアの種や社会変化仮説を、ダイキン工業の実際の事業へと接続させ、具体的な事業テーマへと昇華させることを目指しました。
まず、自社の強み・弱みについて各自が考察し、共有するワークを実施。これらを自由に社会変化仮説と掛け合わせていただいた結果、70個ものビジネスアイデアが生まれました。
その後、構想の具体化に向けて、ダイキン工業、そして、デザイングループとして取り組む意義を感じる事業テーマを6つに絞り込みました。その際、アイデアの骨子を明確化するだけでなく、そのテーマにおいて「デザイングループとして何ができるのか」を検討いただきました。
「競合優位性、実現ステップの整理、経済性、ターゲット設定、コスト構造など、通常業務の中では検討する担当者が分かれるところをチームで考え、まとめていくことで、アイデアを絵空事で終わらせない方法の学びになりました」(ダイキン工業 濵さん)

ワークショップの様子
専門家の巻き込みによる新たな知見の獲得と仮説の深化
今回のプロジェクトのポイントとして、仮説やアイデアについてその領域の専門家に実際に話を聞く「エキスパートインタビュー」をプロセス内に2回組み込んだ点が挙げられます。
前半の「未来探索パート」では、アイデア発想のための周辺知識や新しい問いの発見を目的に実施。社内の議論では得られない客観的な視点や最新の専門的知見を取り込むことで、アイデアの解像度を格段に高め、同時にそのテーマに取り組む意義を早期に検証することにつなげました。
後半の「事業構想パート」では、アイデアのビジネスとしての可能性や推進課題を把握するために実施。実体験を交えた専門家の生の声を直接聞けたことは、参加メンバーにとって非常に貴重な機会となったようです。
「インターネットによるリサーチでも情報自体は集まりますが、知識に深みは出にくい。それに対し、専門家から直接聞いた話は密度が全く異なりました。グッドパッチさんにインタビューの設計もしていただいたことで、深いヒアリングができたと思います」(ダイキン工業 齋藤さん)

ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター プロダクトデザイン担当 齋藤さん
クライアントの声
最後に参加されたお二人に、総括をいただきました。
期待以上でした。知見があるグッドパッチの皆さんにご協力いただき、狙い通りプロセスを理解できたのはとても大きかったです。当初は未来洞察を社内だけで行う案もあったのですが、ここまでの成果は出せなかったと思います。アイデアを事業に落とし、他グループに説得力を持って伝えるためには、これだけのことを考えなければいけないのだと実感できましたし、アイデアのベースとなる戦略や思想、ストーリーの重要性を再確認できたと思います。
(ダイキン工業 濵さん)
グッドパッチの皆さんは話しやすく、意見を出す時の心理的ハードルを下げることを徹底している印象でした。社内でアイデア出しをすると、自社がやれそうなことに収束しがちですが、そこの殻を破ることができ、幅広い事業アイデアが生まれたと思います。普段だったら検討段階で消えていたであろうテーマが、最終的な事業アイデアとして残ったことに価値があると思います。
(ダイキン工業 齋藤さん)
一般的にメーカーのデザインチームには「別部署の企画や技術をどうデザインに落とし込むか」といった仕事が多く、ビジネスプランニングにゼロからデザイナーが関わる環境はまだまだ少ないのが現状です。
一方で今回のダイキン工業のデザイングループの皆さんの取り組みは、我々グッドパッチにとっても改めてデザイナーのポテンシャルを強く感じる機会となりました。今回のワークショップをきっかけにデザインの幅が広がり、皆さんの活躍の場が広がることを願っています。

Interview
本プロジェクトの詳細は、こちらのインタビュー記事からもご覧いただけます。
>> デザイナーが考える「近未来の事業テーマ」とは? ダイキンとグッドパッチで進めた、未来洞察プロジェクト
また、ダイキン工業のWebページにも別のインタビューが掲載されています。こちらの記事もぜひご覧ください。
クレジット
デザインストラテジスト:遠藤英之
デザインストラテジスト:森村典子
デザインストラテジスト:佐藤大輝