時代が変化するにつれて、昨今リモートワークや在宅勤務が普及してきました。ノマドワーカーとして自宅以外の場所で働く人も増えてきましたね。かの有名な Trelloでは、社員の70%がリモートで仕事をしているのだそうです。

Goodpatchでもベルリン、台北にオフィスを構えていることから、デザイナーやエンジニアがリモートで同じ案件に関わるというケースがあります。クライアントとオンライン上でコミュニケーションをとることも多いです。そうした「拠点を跨いで仕事をすること」をここではリモートワークと定義することにします。

テクノロジーで便利になった世の中ですが、リモートワークには通信の不具合やコミュニケーションの滞り認識に対する齟齬の発生意思決定の遅延など、さまざまな問題があります。本記事では実際にリモート案件に関わったデザイナーやデベロッパーが、社内知見として残してくれたリモートで働くナレッジを共有します。

リモートで効率的にプロジェクトを進めるためには

前提に対する認識を合わせる

リモートワークであったとしても、キックオフは必ず行いましょう。キックオフを飛ばして案件が始まってしまうと、お互いの立ち位置やメンバーの役割が十分に把握できないまま、プロジェクトが進行してしまう危険性があります。将来にコミュニケーションコストの負債を抱えることにならないよう、テレワークなどでキックオフを行うとよいでしょう。あらかじめ自分のスタンスや相手のスタンス、お互いの役割に対する認識を合わせておけば、後のやりとりはスムーズになります。

決してはじめにプロジェクトのキックオフを実施すれば何もかもがうまくいく訳ではなく、後から文面では伝えきれないこともそれなりに出てくるはずです。そうしたときも常に「対面」を意識して、恐れず直接会いにいく、もしくは通話ミーティングをしましょう。問題が発生しそうなときほど、対面が重要になります。

また、Goodpatchではあらかじめ一緒に仕事をするパートナーのスキルは、明確に見極めるようにしています。デベロッパー・デザイナー・PMそれぞれに関して、チェックしておくべきスキルセットは異なります。デベロッパーであればHIG・UI Kit・Xcode・ライブラリ管理ツールなどに対する知識などをあらかじめ把握しておくと、よりスムーズに仕事ができるでしょう。UIデザイナーの場合はインタラクションデザインの経験、数値分析・ワイヤーフレーム・画面遷移のフローチャートなどに対する興味や知識などを把握しておくと、よいかもしれません。そのほか相手のマインドセットなどを理解しておくことも遠方のコミュニケーションをとる上で重要でしょう。

誰がいつまでに何を行うか明確にする

作業拠点が同じで朝会などで進捗確認ができればよいのですが、リモートの場合はコミュニケーションロスが発生しないように、各々が進捗を自発的に報告する必要があります。

Goodpatchではクライアントワークやリモートワークでは、必ず誰が・いつまでに・何をするのかを明確にしています。ツールは無料のTrelloや、有料ではありますがデベロッパーやデザイナーにとってリソース管理のしやすいWrikeを導入しています。職種の違う人が同時に同じプロジェクトに関わる際は、こうした作業を俯瞰できるツールを導入することが大切ですね。

Wrikeはマイルストーン・タスク両方を簡単に管理できます。誰が・いつまでに・何をするか明確になります。

また、ある社内プロジェクトはメンバーの進捗管理が徹底されていないが故に、仕事が闇雲の中で進んでいました。プロジェクトに関わるPMやマネージャーでさえ、何を目指しているのかをはっきりと言語化できていない状況が続いていました。そのときにチームがとった対策は、「ロードマップを作成する」ことでした。拠点が離れたメンバーと同じプロジェクトに関わる際も、ロードマップさえあれば「誰が何をしようとしているのか」「何を目指していて、そのためにいつまでに何を終わらせる必要があるか」がわかります。常に見返しながら、プロジェクトメンバー間の意思疎通を図りましょう。
プロジェクト進行におけるタスク管理方法やおすすめの管理ツールについては、こちらの記事にもまとめています。

こまめな進捗共有ができる仕組みをつくる

リモートで作業を行なっている場合、「コミュニケーション」が最大の課題となるでしょう。すぐそばに作業をしている相手がいれば、文面では説明が難しい内容も対面で解決できます。しかし、相手が遠方にいる場合は、Slackなどのコミュニケーションツールを使って対話する必要があります。文面で意図が正確に伝わらない場合は、通話をする必要があります。オフショア(海外とのリモートワーク)の場合は特に時差も考慮しなくてはならないので、その分即時のコミュニケーションが取りづらくなります。

デザイナーにとっても、デザインに対する素早いフィードバックが求められるので、通常は同じプロジェクトに関わるエンジニアやPM、デザイナーが近い位置で作業をすることが理想的です。しかし、リモートであるがゆえに、アウトプットイメージの共有にタイムラグがある、または送信済みのファイルから最新を見つけることが難しいなどの問題が発生します。

そうした場合には、相手のスケジュールを把握し、あらかじめいつ対話したいのかを打診しておくことが重要になります。相手の意見が必要になったとき、即座に連絡がとれるとは限らないので、作業内容を見積もった上でミーティングを設定しておくとよいでしょう。

一部のプロジェクトでは、お互いの始業時間にSlackでBotを設定し、「連絡をしてもよい」というサインを出すようにしています。そうすることで、無駄に相手に気をつかう手間やコストが削減でき、気持ちのよいコミュニケーションがとれるようになります。

効率よく作業分断ができるような工夫をする

別々の拠点で同じプロジェクトに関わる場合は、お互いの作業に影響がないような仕組みが必要です。デベロッパーが2人以上プロジェクトに関わる場合は、クリティカルパス上の作業が遅れないように工夫をしています。例えば、社内のあるプロジェクトはフロントエンドエンジニアが東京オフィスとベルリンオフィスそれぞれから1人ずつ携わっています。互いの作業が同時並行して進められるように、Node.jsを使い、Wordpressだと各々で分業できなかった仕事をバラバラの拠点で開発できる体制へと編成したそうです。

また、少し話は逸れますが、デザイナーがエンジニアに気を使って、コンポーネントを意識してデザインをすることも重要です。コードベースでデータが保存されていれば、リモートワークでもやりとりがスムーズでしょう。

リモートワークは工夫すれば仕事効率化につながる

リモートワークのコミュニケーションにおいては、認識の齟齬やコミュニケーションロスが顕著です。しかし、はじめて仕事を共にする相手でも、あらかじめ工数を見積もって会議のアポをとっておくことや、スキルセットを把握しておくこと、適切なツールを導入することで回避できるトラブルも多くあるでしょう。リモートワークにおける気持ちのよいコミュニケーションで、仕事の効率化を測りましょう。