2017年6月20日(火)に、グッドパッチのプロトタイピングツールProttとモバイルアプリの利用解析ツールRepro共同イベント「ECアプリの改善プロセス」を開催しました!
本イベントでは、アプリUX改善事例としてヤフー株式会社で『ヤフオク!』アプリのUIデザイナーしている中島さん、アプリ内マーケティング事例として、トレンダーズ株式会社で『Anny』のMD(マーチャンダイザー)兼アナリストの石本さんに登壇いただきました。

この記事では、それぞれのツールをアプリの改善プロセス内でどのように活用したのか、事例を交えてご紹介します!

「ECサービスのデザインで大事にしていること」|ヤフー株式会社 中島さん

日本No.1の利用者数と常時約5,000万点以上の商品数を誇る、日本最大級のインターネットオークション・フリマサービス『ヤフオク!』を運営するヤフー株式会社のUIデザイナー・中島さんにご登壇いただきました。

中島さんはアプリ開発部に所属しており、プロダクトオーナーも兼務しています。プロダクトオーナーとは、アプリ開発の意思決定権を持った役職です。『ヤフオク!』のアプリ開発部では、デザイナーがプロダクトオーナーを兼任することが多いようです。

デザインをする上で心がけていること

『ヤフオク!』のデザイナーが、デザインをする上で心がけていることを3つご紹介いただきました。

①チームで納得感を持って進める
企画の決定にデザイナー・エンジニア含めて全員が同じように参加すること。『ヤフオク!』アプリでは、エンジニアもユーザーインタビューに参加しています。実行する施策の優先順位に対しては、施策ごとに重要度と工数を設定し、それを可視化して優先順位付けしたグラフを利用してチームの方向性を統一しているようです。

②定性・定量両方の根拠を元に施策を決める
『ヤフオク!』開発チームでは、ユーザーの声を直接聞く定性調査、ユーザー行動をデータ化する定量調査を行なっているそうです。この2つの調査は似ているようで、異なる目的があります。
定性調査ではユーザー1人1人の声を聞けるので、ユーザーの本音を引き出すことができます。
一方、定量調査ではユーザー行動のデータを取ることで、デザインの選択肢が複数ある場合、データを基に意思決定できます。このお話しで、どちらも行うべきであることが分かりました。

③リアルなデータを大事にする
『ヤフオク!』のようなCtoCサービスでは、売り手と買い手という2つのユーザーストーリーがあります。そのため、出品された商品が並ぶページはユーザーに依拠しているので、作り手とユーザーで画面イメージの齟齬が起きがちです。『ヤフオク!』では、アプリ内で使われているリアルなデータをYJDN(ヤフージャパンデベロッパーネットワーク)などからAPIデータを引っ張ってきて、JSONをSketchのデザインモックに流し込みプロトタイプに利用します。そうすることによってプロトタイプを実際のユーザー体験に近づけることができます。

 

ツールの使い分け

『ヤフオク!』アプリ開発部では、2つのプロトタイピングツールを使い分けて利用しているそうです。

①Prott
Prottは主に内部コミュニケーションとして利用しています。ポイントとしては、誰でも素早く簡単にプロトタイプを作成できるので、作成から共有までの時間が早い点。もう1つは、作成したプロトタイプに対してのフィードバックも簡単にもらえる点。この2つのポイントから、リアル感は大事にしつつ、スピード感のある初期プロトタイプとして利用しているそうです。また、ユーザーインタビューにも用いることがあるとのこと。
フィードバックをたくさんもらう前提で利用している印象を受けました。

②Framer
FramerはJavaScriptベースのツールで、インタラクションなどを細部まで作り込むことが可能です。他のツールでは表現しきれない細かい部分を確認したい時に、Framerが役に立つようです。特にユーザーインタビューにおいては、こちらをメインに用いることで実際にアプリケーションを使う時と同じような操作感を表現できます。

この2つはプロトタイピングツールの中でも役割が対極にあり、『ヤフオク!』アプリ開発部ではどちらも必要なツールとまとめていました。

アプリ開発においては、プロトタイピングツールのメリットとデメリットを理解し、上手に使い分けることが重要なのではないでしょうか。

Annyのアプリ内メッセージ最適化を支えたのは、愚直な改善プロセス

続いての登壇者は、株式会社トレンダーズの『Anny』担当の石本さんが登壇され、アプリ内メッセージの成果をどのように上げていったのかについてお話ししていただきました。

Annyは「毎日にアニバーサリーを 」をテーマに、ギフトのトレンドやノウハウを発信しているサービスです。雑貨やスイーツ、アクセサリーなど、Annyの皆さんが使ったり試食したりして本当に良いと思った500品以上の商品を紹介しており、ギフト選びの際に便利です。

今回のテーマはアプリ内マーケティング、特にアプリ内メッセージについてでした。Annyのアプリでは、コンバージョンを増やす施策としてアプリ内メッセージを利用しています。ユーザーの行動に合わせてポップアップを表示することで効果が見込める施策で、タイミングを見誤ると離脱を招くこともあります。いかにユーザーが本当に欲しい情報を見極めて表示するのが大事なポイントとなります。

どのようにアプリ内メッセージ施策を最適化したか?

石本さんがアプリ内メッセージの例として挙げていたのは、商品ページを表示させるポップアップについて。表示の仕方は以下の2通りです。

A:アプリ内メッセージ→記事→商品ページ
B:アプリ内メッセージ→商品ページ

この場合、どちらの方が商品を購入する確率が多いでしょうか?Bの方がすぐに商品ページに遷移しているので、購入率が高まりそうですが…。
Annyのアプリでは、Aの方が多かったそうです!アプリの成長支援ツールReproで撮影したスクリーンの動画を見ても、その差は歴然。実際にアプリ内を取り入れることで、商品の購入数を上げられたとのことでした。
では、どのように成果を挙げられたのでしょうか?3つのステップに分けて説明してくださいました。

1. ファネル分析
マーケティングでよく使われるファネルを使った分析です。ユーザーの行動を段階に分けて、どの段階で離脱しているかをチェックする手法です。Annyの場合は大きく4つ、①起動、②商品詳細、③カゴ、④決済という段階があり、それぞれの段階の数値を見ていったとのこと。

2. 離脱ポイントを改善する仮説を立てる
ファネル分析で洗い出した段階を元に、改善するための仮説をとにかく出すアイディエーションを行います。起動したときに離脱することが多かったそうなので、どうしたらすぐに離脱しない施策を打てるかなど、段階ごとの視点から考えうる仮説を洗い出します。

3. 仮説を元に効果検証
出した仮説を元に、検証を行います。例えば、「魅力的な若い女性の写真を表示させることでコンバージョンが上がるのではないか」という仮説検証をしたところ、大きな数値の変化は起きなかったそうです。その理由を他の仮説とも突き合わせながら考えると、どうやら人よりも商品の仕様を載せる方が効果が上がったとのこと。失敗からブラッシュアップしていくサイクルを回し、アプリ内メッセージのコンバージョン増加へとつながったんだそうです!

Reproが活躍した場面

また、アプリ内マーケティングを支援しているReproが、どのように開発の中で活躍したかという点についても話してくださいました。

Reproはモバイルアプリの解析とマーケティングができるアプリの成長支援ツールです。アクセス分析やユーザー行動の録画機能など課題発見の機能からプッシュ通知やアプリ内メッセージなど課題解決のための機能まで1つのSDKで提供しています。

まずは、ユーザーの動きを動画で観測できる点。これにより、自分たちが運営しているサービスの負がどこにあるか可視化できます。
次に、Reproのカスタマーグロースチームからの提案があった点です。ユーザーの動きを動画で見て、いざ施策に落とし込もうとしても、どうしても自分の理想の動きに寄りがちです。そんな時にReproが過去の実例を元に提案してくれるので、自分たちで考えるよりも質の高い施策に落とし込めたそうです。
最後に、アプリ内メッセージの実施検証の際の効率性の違いという点。通常、アプリ内メッセージを実行する場合には、社内のエンジニアの方に設定やタグの設置をお願いする必要があるので、どうしても時間かかってしまいます。Reproを使うと管理画面一つで設定から効果検証までワンストップで完結するので、ものすごいスピード感でアプリ内メッセージにおけるPDCAを回していけるのです。

以上がReproというアプリの成長支援ツールをうまく利用して、アプリ内メッセージの施策で成果を出した事例でした。

アプリ内マーケティングの重要性

最後に、株式会社Reproの代表である平田さんより、Annyさんが行っていたようなアプリ内マーケティング(モバイルアプリのCRM施策)がなぜ必要なのか、という点についてお話しいただきました。

アプリ内マーケティングとは、必要なユーザーに必要なコンテンツを必要なタイミングで届けることで、ユーザー体験を最適化するマーケティング手法のことです。アメリカでは当たり前のようにアプリ内マーケティングを専門領域とする人材の募集がかけられていて、デザイン文脈から鑑みても今後必要とされる職業になるとのことです。

平田さんは、「ユーザーとのコミュニケーションプランも含めてUXとするべき」と説きます。というのも、アプリはサービスを設計・開発して世の中に出すまでがゴールとされがちですが、プッシュ通知やアプリ内メッセージによってどのようなユーザーにどのような施策を打つのかを設計することがますます求められているからです。

エンゲージメントの高いユーザーを大きく増やし、アプリにとっての価値を最大化することを目的としたCRM施策を行っていくことは、広告費をかけて新規ユーザーを獲得することと同等、あるいはそれ以上の価値に相当します。

そういったCRM施策を簡単に行うことのできるサービスがReproです。Annyさんの事例も含め、アプリにおけるCRM施策の重要性について理解する絶好のチャンスを、このイベントで得ることができました。

さいごに

ここまで読んでいただいた方で、「なぜプロトタイピングツールであるProttと、アプリ内マーケティングツールであるReproが共催イベントを行っているんだろう?」と疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません。
ローンチ前段階のプロトタイピングとローンチ後のアプリ内マーケティングは工程が分かれており、直接的なつながりが感じられないかもしれませんが、作成したプロトタイプの利用解析・分析をして施策を考え、新たなプロトタイプを作り検証を重ねる。それぞれの工程は切り分けるものではなく、プロトタイピングからアプリ内マーケティングを「デザイン」として1つの枠組みで考えることが重要です。このサイクルをクイックに回していくことで、より良いユーザー体験の実現へと近づきます。

リアルタイムで行なっていたグラフィックレコーディングはこちら!担当したのはグッドパッチのUIデザイナーである香林です。
香林よりグラフィックレコーディングの大きな特徴として、リアルタイムで情報の可視化ができる面白みと、レコーディングを見ることで登壇者のお話が思い出せることをみなさまにお伝えしました。

懇親会ではProttチーム、Reproチーム関係なくお越しいただいたみなさまと大いに盛り上がる様子が見受けられました!

以上、【Prott × Repro】ECアプリの改善プロセスのイベントレポートでした。
ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

私たちProttチームは、ユーザーのみなさまと一緒になって開発・改善を進められるよう、UserMeetupも開催しています!

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Prottのことをあまり知らないという方も、過去に参加したことのある方も、是非お気軽に遊びに来てください!