1年の延長を経て開催された東京オリンピック、選手たちの活躍に胸を打たれますね。
今月も、Goodpatchで話題になったアプリケーションやサービスをご紹介します!

アプリケーション

Slackで音声も映像も。新コミュニケーション機能を発表

https://slack.com/intl/ja-jp/blog/collaboration/new-tools-to-help-you-work-from-anywhere

2021年6月30日、Slack TechnologiesはSlack上で音声とビデオを用いてコミュニケーションを加速する新機能が誕生することを発表しました。

象徴的な機能として、音声通話と画面共有をすることができる「Slack ハドルミーティング」です。チャンネルやDM上でワンクリックで会話を開始することができ、音声だけでは伝わりにくいことは画面共有をしながら話し合うこともできます。また、従来のテキストだけでなく、ビデオや音声、画面を簡単に録画して共有する機能も今後Slack上で導入予定です。他にもハドルミーティングをはじめ録画されたコンテンツは再生速度が変えられるだけでなく、内容を文字化したり、ライブで字幕をつけることもできます。さらに送信を予約できる機能も追加されています。

これらの新機能によってチームメンバーの何気ない会話を自然と再現できるようになり、最適なコミュニケーションの手段を選べるようになりました。しかしそれだけではなく、情報を受信する側の負担が軽減されるような配慮を施した機能が同時に公開されました。テキスト、音声、ビデオとあらゆるコミュニケーションを促すツールの普及によって便利になる一方で、異なるツールを行き来することに負担を感じている人も少なくないはずです。Slackの中で様々なコミュニケーションを一貫して機能を体験できるようになる今回のアップデートは私たちの働き方にどのような変化をもたらすのか、その行方が楽しみですね。

TikTok、3分間の長尺動画を全ユーザーに開放へ

https://newsroom.tiktok.com/ja-jp/introducing-longer-videos

2021年7月2日、TikTokは昨年12月に一部のユーザーに対してテストを行っていた3分間の長尺動画を全ユーザーに対して公開することを明らかにしました。60秒の動画に収まらず、複数動画に分割して投稿していたクリエイターの手間を省くことが可能になります。

TikTok同様の短尺動画プラットフォームとしては、YouTubeのShortsやInstagramのリールが2020年に実装されたことは記憶に新しいはずです。若い世代を中心に短い動画をサクサク、スピード感を持って閲覧することが流行していますよね。Shortsやリールの動画を見てみると、TikTokで作成された動画が多く見られます。TikTokはSNSとしての機能だけでなく、使用楽曲の選択のしやすさや豊富なフィルターなどの要因から動画作成ツールとして広くユーザーに受け入れられていると考えられるでしょう。3分の動画作成が可能となり、TikTokで作成した動画を他のSNSで公開する流れはより加速しそうです。
一方で、これまで60秒という制限がある短尺動画だからこそ、TikTokクリエイターの「コンパクトにコンテンツをまとめる」スキルが際立っていました。Twitterのフリート機能も、24時間後に自動的に投稿が消えるInstagramのストーリーのようだと話題になりましたが、開始8ヶ月でサービス終了してしまいました。短尺動画の需要が高まる中で、いかにサービスとしての独自性を確立できるか(強みを発揮できるか)が今後のサービスの成長にとって鍵になってきそうです。動画系SNSの戦国時代といえる今、TikTokの3分動画への対応が、各種SNSのコンテンツにどのような変化を及ぼすのか注目していきたいですね。

サービス

Googleカレンダーの招待機能に「仮想的に参加」の選択肢が追加

https://japanese.engadget.com/google-calendar-rsvp-virtually-060052148.html

Googleは2021年7月7日、Googleカレンダーで新しい出欠の選択肢として「オンラインで会議に参加」を選べる機能を追加すると発表しました。新型コロナウイルス感染症の流行により、世界中で急速にリモートワークが推進され、オンラインで会議に参加することは一般的となりました。ワクチン接種が進むにつれ、オフラインで会議に参加することも増え、参加形態もオンラインとオフラインのハイブリッドになりつつあります。今までは、オンラインか、オフラインか、はたまたハイブリッドか、会議の開催方法を各々で連絡して確認する必要がありましたが、今回の機能でその手間を解消することができるでしょう。

参加意思を示す選択肢は、ドロップダウン形式で「はい」「会議室で参加」「オンラインで会議に参加」の3択がすぐに選べるようになっています。また、参加方法それぞれのアイコンが表示されていることでひと目でわかる仕様になっており、シンプルながらもとても使いやすい機能となっていますね。今回の機能追加のように、時流によってユーザーが抱える問題にシンプルに対応していくことが、ユーザーに使い続けてもらえる決め手となるのではないでしょうか。時流の変化に合わせてGoogleカレンダーがどう対応していくのか、今後の展開にも注目が集まります。

新しい統合ドキュメントツール「Clover」のベータ版がリリース

https://cloverapp.com/

ホワイトボードツールとノートアプリをかけ合わせた新しいサービス「Clover」が2021年7月14日にパブリックベータ版をリリースしました。このアプリはノートアプリのようなドキュメント管理の側面と、無限のキャンバスや手書き機能のようなホワイトボードツールとしての側面を併せ持っています。

リモートワークが普及してきた今、コラボレーションや記録をいかにオンラインで行うかは様々な職種から注目されています。今までもこの課題感に対しては様々なサービスが開発されており、この一年で一気にコロナ禍の仕事を支えるサービスとして市民権を得てきました。今回パブリックベータ版がリリースされた「Clover」は、さらにその一歩先を狙ったサービスであると考えられます。創造的(クリエイティビティ)な活動は、ドキュメントのような一方向に流れるメディアでは表現がしにくいです。一方で、情報が散乱していると、生産性(プロダクティビティ)という意味では効率が下がってしまう可能性があります。このサービスはその差異に着目し、その両方を併せ持つかたちが目指されているのです。

現在のバージョンでは、ページごとに手書きの文字や図を自由に配置できるキャンバスと、テキストベースで編集ができるノートを切り替えられるようになっていました。これは、話題によって変わりうる最適な情報の整理方法を、一つのツールで管理出来るようにすることで、学習コストやスイッチングコストの軽減を実現しています。しかし、別々の形式で保存された情報をシームレスに繋ぐ機能は用意されていません。公式に謳われている「クリエイティビティとプロダクティビティの交差点」を十分に体現するために、どのようなかたちで今後は価値を示していくのか、正式リリースまでの動向に注目していきたいですね。

アル株式会社、一枚のイラストや写真を数量限定で販売できるサービス「elu」をリリース

https://elu.jp/

2021年6月中旬、アル株式会社は自分が描いたイラストや写真のデジタルデータを数量限定で簡単に出品できるサービス「elu」をリリースしました。現在、事前会員登録者を募集中でいくつかの作品が販売されています。出品者がアップロードした画像はSAMPLE文字などのフィルターがかかった状態で公開され、購入後にオリジナルの画像をダウンロードができます。また商用利用可、二次利用可の作品もあるため、様々なシーンでの利用が見込めるでしょう。

eluの大きな特徴は、Twitterを使って作品を販売できることです。Twitterは、クリエイターではない人がイラストや写真などを投稿するアカウントもしばしば見かけます。自分のリアルな想いを公開することが日常的になっているTwitterを活用することにより、作品を社会に公開することに勇気がいる人の出品ハードルを下げることができるのです。また、作品に込めた想いをフォロワーにいち早く届けることができる即時性やリツイートなどによる拡散力、口コミを知ってから買うことができる安心感など、出品者と購入者の双方にメリットがあります。
eluは、新しい販売の形を模索しながら現在も新機能を追加しているようです。作品を購入できるサービスは複数ありますが、今後eluがSNSの特性をどう生かしながら作品とクリエイターの価値を増幅させていくのか、展開が楽しみですね。

プロダクト

スターバックスの「47 JIMOTO フラペチーノ」が発売

https://www.starbucks.co.jp/cafe/jimoto_frappuccino/

2021年6月30日から、全国のスターバックスで「47 JIMOTO フラペチーノ」が発売されました。
1996年に東京・銀座に1号店を出店して、今では全国47都道府県に約1600店舗を展開するスターバックスコーヒー。日本上陸25周年を記念して、地元の同店従業員によって各地域のお客さんを想った商品が考案されました。地域の風土や特産物をモチーフに、こだわりのある個性豊かなラインアップとなっています。

公式サイトでは商品に込められた想いやテーマが紹介されています。方言などが織り交ぜられたネーミングも相まって、より親しみを持ってこれらの商品が顧客に受け入れられているのではないでしょうか。Goodpatchでは、各メンバーのJIMOTOフラペチーノを見ながら「やっぱりうちの地元はこれよね」「出身そこだったんだ」などと盛り上がっていました。

スターバックスといえば、世界のどこでもいつもの味とサービスが受けられる安心感がありますが、一方で地域に根ざしたサードプレイスでありたいという想いが今回の取り組みから伝わってきます。「JIMOTO」という言葉も、実際の生まれ故郷でなくとも、今住んでいて馴染みの深い土地といった広い解釈ができる表現だと感じました。これまでの地域限定商品といえば、お土産や観光需要などその土地以外の人をターゲットにしているものが多い印象でした。それに比べて、この取り組みは該当地域の方々に向けて企画されているという点でも新鮮さを感じます。世の中の状況的に遠出しにくい夏になりますが、このフラペチーノがJIMOTOの良さを再発見できるきっかけになるといいですね。

その他

P&G、サッカーを通じて「平等な機会とインクルーシブな世界の実現」へ 「Create Inclusive Sports」開催

https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M101519/202106296983/_prw_OR1fl_No4OF6HC.pdf

2021年6月28日、P&Gジャパン合同会社は障がいや性別にとらわれず、様々なバックグラウンドを持つ人々が楽しめる新しいスポーツを作り上げるイベント「Create Inclusive Sports」を開催しました。同イベントには障がいを持つスポーツ選手やLGBTのサッカー選手、お笑い芸人など、障がいや性的アイデンティティ、競技経験の異なる14人が参加。3つの障がい者サッカーを体験したのち、参加者全員であらゆる人々が楽しめる新しい形のサッカーを考案し実際にプレーしました。

近年、国会や教育現場、職場など様々な場面において特定の人を除外することのない、インクルーシブ(=包括的)な社会の実現に向けた取り組みが行われています。しかし、スポーツは身体的特徴や性別、年齢、競技経験などによってパフォーマンスに差が出やすく、現状全ての人が同じスポーツを同じように楽しむのは難しいと言っていいでしょう。

本イベントでは、バックグラウンドの異なる人々が実際に同じ条件でプレーすることで相互理解が深まりました。新しいルールを考える場面では、「どうすれば能力の差をなくすか」よりも「どうすればみんなが楽しめるか」という視点で独創的なアイデアが出て、インクルーシブなスポーツの創造に積極的・前向きな姿勢が生まれたそうです。

デザインの世界でも、除外されているユーザーの課題に向き合いすべての人に向けてデザインする「インクルーシブデザイン」が注目されています。インクルーシブデザインを社会に実装していくためには、当事者を巻き込んで相互理解を深め、除外される人がいる現実を少しずつ改善していくことが必要です。身近なテーマやシーンでの包括性について考え実行していくことから、様々な分野で多様性を受容する動きが広がっていくことが望まれます。

Tiffanyが期間限定でティファニーブルーからイエローに変更

https://predge.jp/210039/

2021年のエイプリル・フール、ジュエリーブランドのTiffanyのInstagramの投稿が世界中で話題になりました。黄色を基調としたパッケージの写真とともに「私たちの新たなブランドカラーを紹介します」というメッセージを投稿したのです。それに対して驚きとともに戸惑いの反応が世界中に多く見られました。やはりTiffanyといえば伝統的な水色「ティファニーブルー」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。のちにTiffanyは「ティファニーイエロー」は冗談であったことを明かしていますが、実際にいくつかの店舗を黄色に改装し、ブランドカラーを期間限定で変更する試みも行いました。

これらの取り組みは、若い消費者の関心を引く狙いがあったのではないでしょうか。ブランドカラーにはサービスの思想が込められていて、ブランドそのものの性格を表す大事な視覚要素です。馴染みのあるティファニーファンからすると、ブルーからイエローにカラーチェンジすることは、まるで高貴で気高くであった人が急に快活でカジュアルな人間になったような不思議な感覚があったことでしょう。ちなみにGoodpatchのブランドカラーは創業のきっかけともなったサンフランシスコの空の色、通称「San Francisco Blue」です。一般的に青は静かな、冷たい印象を与える色ですが、私は信頼感のある、進歩的な印象を受けています。もしある日Goodpatchのブランドカラーをピンクに変更にしたら、Goodpatchを知る人は違和感を感じるのではないでしょうか。

今回のTiffanyのブランドカラー変更は実験的な試みですが、時代の変遷とともにブランドとしての性格も変わっていきます。これが一時的な取組みで終わるか、それともブランドの転換点となるのか。今後の動向に注目です。


以上、7月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!

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