世界のデザイン会社がソーシャルグッドの印「B-Corp認証」を取得する理由

ビジネスの最大目的とはなんでしょうか?売上や利益のためと答える人もいるだろうし、社会をより良くするためと答える人もいると思います。

もちろん正解はないので自分なりに解釈することが必要ですが、アメリカの非営利組織「B Lab」がつくった企業の認証制度である「B-Corp」は、”people using business as a force for good”という言葉を掲げ、ビジネスを社会的に良い影響を与える力として位置づけようとしています。

以前、雑誌『WIRED』の「いい会社」特集で紹介されていた「B-Corpという挑戦──ミッションは「利益」に優先するのか?」を読んでからB-Corpに興味を持ち、くわしく調べてみると、一般的な企業だけでなく世界中にある多くのデザイン会社がB-Corpのビジョンに共感し、認証を受けていたこともわかりました。

ソーシャルグッドなデザイン会社って一体なにをしているの?そしてB-Corpになるメリットはどんなところにあるのだろう?

そんなことを疑問に思ったので、調べてみました!

B-Corpとは?

まずは、B-Corpについて簡単に紹介します。

アメリカ発の非営利組織B Labが始めた民間の認証制度のことです。社会・環境に配慮している企業を審査し、一定の基準を満たした企業のみ認可されます。

利益第一主義のビジネスではなく、社会に対して良い影響を与えるビジネスを増やしていこうという想いで認証制度が運営されています。

イメージとしては、フェアトレードがソーシャルグッドな貿易によってもたらされた商品に対しての認証だとしたら、B-Corpはソーシャルグッドな経営を行っている企業に対しての認証という立ち位置、という解釈をしたらすっきりすると思います。

B-Corpを運営するB Labは「全ての企業は世界一を目指して競争するだけではなく、世界のために競争しよう」という夢を持っており、企業活動を通じて社会に良い影響を与える企業を応援・増加させていこうとしています。

どんな企業があるの?

B-Corpとして認証されている企業としてよく知られているのは、クラウドファンディングサービスのKickstarterやアウトドアスポーツウエア等を生産・販売するパタゴニア、アイスクリーム屋さんのベン&ジェリーズなどがあります。

B Labの本拠地アメリカをはじめ、世界50カ国以上、2,300超の企業がB-Corpとして軒を連ねています。

その中には化粧品・アパレル・太陽光発電・デジタルマーケティング・教育など、あらゆる業種の企業がB-Corpのビジョンに共感し、B-Corpとして認証されています。

どうやったらB-corpになれるの?

B-Corpになるには、独自のアセスメントを受けて200スコア中80スコア以上を取らないと認定されません。例えば、従業員の報酬体系や雇用条件、環境にやさしい取り組みをどれだけしているかなどをオンラインで答えます。また、法的要件もクリアし、売上に応じて年会費を支払う必要があります。

一見、面倒くさそうな印象がありますが、その手間やコストを差し引いても、B-Corpとして公式に宣言するメリットがあるから2,000社以上も認証を受けているのかもしれませんね。

イギリスのデザインスタジオが感じた、B-Corpの魅力とは?

では、デザイン会社がB-Corpになるメリットはどんなところにあるのでしょうか?B-Corpの恩恵を表明している企業として、LEAPというデザインスタジオを紹介します。

ドメインも素敵です! → leap.eco

2004年10月に設立されたイギリス南西部のコーンウォール州にある企業で、Webデザインやプリントデザイン、展示会の装飾といったサービスや、環境にやさしいホスティングサーバ『Wunderism』の提供をしています。

ファウンダーであるMattは、アメリカのデザインスタジオであるFree Rangeが2008年にB-Corpになったのを見て興味を持ったそうです。当時はB-Corpはアメリカに閉じていたのですぐにB-Corpになれませんでしたが、後々イギリスにも流れが来たタイミングでB-Corpとなりました。

彼はB-Corpになるメリットを、利益重視ではなく社会にとって良いことをしている姿勢が明確になることだと話しています。B-Corpの認証を受けると、自分たちのビジネスがどれほど社会的にインパクトがあるのか、定量的に見える化されるからです。

他にも、B-Corpになるメリットをあげていました。

  • 環境的・社会的に良いことをしている会社で居続けることで、社員のエンゲージメントを上げる
  • 数年前の自社の状況を定量的に残し、会社の成長率を可視化する
  • 同じ価値観をもった人や組織との協業・共創につながる
  • グローバルなコミュニティとつながり、知識の共有ができる
  • 認定を受けていること自体が誇らしく、Webサイトに載せることでマーケティングにつながる

彼らの7割ほどのクライアントからは、LEAPが環境を大事にし、社会的問題に取り組んでいるという観点で評価されているそうです。

UX/UIデザインが重要視され、マーケットが混み合う現在においては、いかに差別化を図り独自の価値を磨くかがキーになります。だからこそセールスポイントとしてB-Corpであることで、自社の魅力を訴求できるんですね!

Awwwardsでもフィーチャーされた、環境にやさしいWebを世界に広げる“Green.Serving”

では、B-Corpとなったデザイン会社は実際にどのようなアウトプットを出しているのでしょうか?次は、カナダにあるデザインスタジオの事例を紹介します!

Manoverboradは大胆なウェブサイトや力強いコーポレートアイデンティティ、デジタルストラテジーを得意としており、ミッション・ドリブンな企業や非営利組織に対してサービス提供をしています。

B-Corpになることで、彼らが利益だけを追い求めているわけじゃなく、社会的・環境的・経済的なインパクトを出せるビジネスにコミットしているということを伝えたかったそうです。

彼らの事例として象徴的なのは『Serving.Green』というプロジェクト。普段使っているインターネットが環境に悪影響を与えているということを伝えています。

彼らのリサーチによると、現在世界中で使われている電力のうち約10%ほどがインターネットに使われており、Webページの容量の平均は2.48メガバイトと、2003年に比べ20倍になっているそうです。テクノロジーや開発手法の発達、インターネットへのアクセス機会により、どんどん電力消費が増えていくのは当然かもしれませんが、現状のところエネルギーは有限です。このまま消費量だけ増えていくと、いつかエネルギーが足りなくなってしまいます。

そこで彼らが考えたソリューションは、環境にやさしいWebサイトを作るための情報と方法を載せたWebサイトを作ることでした。具体的には、再生可能エネルギーを使用しているアイスランドにあるサーバーを使ったり、容量が軽いフォントを使用したりループされた動画を背景に使ったりと、容量に負荷を与えない設計をしたそうです。

結果的に、通常のWebサイトの50%ほどの軽さになり、2016年のAwwwardsでも取り上げられて話題を呼びました。ひとつのWebサイトだけが軽くなるだけでは効果は薄いですが、世界中にあるWebサイト運営者がこぞって関心を持てば、少しずつでも電力消費量を抑えることに繋がったり、インターネットが与える環境へのインパクトを考えるきっかけになったり、ムーブメントを起こせる可能性は十二分にあります。

こういった事例以外にも、Manoverboardは『1% for the Planet』というネットワークの一員として、売上の1%を自然環境の保護や回復のために活動を行う非営利組織に寄付も行なっています。

さいごに

ちなみに、日本にあるB-Corpは3社だそうで、アメリカやイギリスに比べてまだまだ認知度が低い状況にあります。

(参考:Find a B Corp | B Corporation

けれど、「ソーシャルビジネス」という言葉が一般的になったり、お金を稼ぐことだけにモチベーションを感じにくい世代が社会人になり始めている背景もあり、日本にもB-Corpが浸透する下地が出来ているのでは?とも感じています。

目先の利益だけでなく、長期的に社会にとって良いことをビジネスで実現する。綺麗事のようで本質的とも言えるこのムーブメントは、ものづくりにおける価値の最大化を図るフェーズであるデザインだからこそ、牽引していけるのかもしれません。

今後、B-Corpの流れに乗る日本発のデザイン会社が生まれたら面白いですね!

参考URL

B Corporation – Graphic Design Cornwall
Leap | B Corporation
B Corporation | Manoverboard Inc.

ABOUTこの記事をかいた人

磯部 俊哉

94年 千葉県生まれ。学生時代は東南アジア×働くに興味を持って活動していました。現在グッドパッチでは、マーケティング部署に所属しながら自社プロダクト『Prott』『Balto』に関するインタビュー記事やイベントレポートを中心に発信しています!好きな食べ物は高野豆腐です。
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