スズキ株式会社
- Client
- スズキ株式会社
- Expertise
- Business/Strategy Design
- Date
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- スズキ株式会社
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Overview
自動車業界を牽引するスズキ株式会社は、20年以上にわたり、その根幹を支え続けてきた技術文書の管理システム「STAGE」および部品を設計するための図面やCADデータの管理システム「SUIT」の刷新という大きな転換点を迎えていました。長年の改修による複雑化や技術的な負債を解消するだけでなく、真にユーザーが望む次世代のプラットフォームを構築するため、同社はこういったプロジェクトでは珍しい、ユーザー参加型で行うデザイン思考のアプローチを採用しました。
本プロジェクトでは、2040年の未来から逆算して「あるべき姿」を描く企画構想フェーズをグッドパッチが支援。部門横断的なワークショップや、未来の体験を可視化する「ビジョンプロトタイプ」の制作を通じて、単なる業務ツールを超えた「パートナー」としてのシステム像を定義しました。従来のシステム開発の枠組みを超え、デザイン思考や未来洞察を取り入れることで、基幹システム開発のあり方を根本から再定義した挑戦を紹介します。
Client
スズキ株式会社
Suzuki Motor Corporation
スズキ株式会社は、四輪車、二輪車、および船外機などの製造・販売を手掛ける、日本を代表するモビリティメーカーです。1955年に軽四輪車「スズライト」を発売して以来、一貫して小さなクルマづくりを追及してきました。実用的な軽自動車として発売され、女性を中心にヒットした「アルト」、新しいジャンルを切り拓いた「ワゴンR」や「ハスラー」、世界で高い評価を受けている「スイフト」など小さなクルマづくりの技術を凝縮したスズキの製品は、世界各国で愛用されています。「消費者の立脚点に立つ」という企業理念のもと、世界中の人々の生活を支える製品を提供しています。
Summary
支援前の課題
- 稼働から20年以上が経過し、度重なる改修によってシステムが複雑化・肥大化していた
- 古いプログラム言語の使用や管理コストの増大により、システムの維持管理が限界を迎えていた
- クラウドやAIといった最新技術の導入が遅れ、現場の実態や技術動向とのズレが生じていた
グッドパッチの対応とご支援後の成果
- 部門横断的なワークショップを計4回開催し、システムを日常的に活用しているメンバーを集め、利用者の視点を取り入れながら未来のあるべき姿を描いた
- ワークショップと並行して部門インタビューからユーザーの発話を拾うことで、現状から導き出される改善点を理想のアイディアの構造化に反映した
- 抽出したアイディアを「PARTNER」と「GAME」という2つのコンセプトに昇華し、ビジョンプロトタイプとして可視化した
- ビジョンプロトタイプのデモ会を通じて、具体的な体験を社内へ共有し、2040年の実装に向けた議論の道しるべを示した
ユーザー起点でシステムを考える企画構想フェーズ
スズキの根幹を支える技術文書管理システム「SUIT」と図面管理システム「STAGE」は、導入から20年以上が経過し、大きな曲がり角に立たされていました。
特にプログラム言語の老朽化は深刻で、今後の持続的な運用に限界が見え始めていました。しかし、これらは海外拠点や取引先とのやり取りも含め、全社的に利用されている「止めることのできない」システムです。大規模なリニューアルの必要性は痛感しながらも、既存の仕組みをベースにした改善では、単なる「古いものの作り直し」に終わってしまう懸念がありました。
製造工程で発生するさまざまな技術文書の管理システム「SUIT」と、部品を設計するための図面やCADデータの管理システム「STAGE」は、どちらも20年以上使われている、スズキの根幹となる重要なシステムです。ただ、20年間で利用者の要望を組み込み続けた結果、システムは複雑化してしまい、管理が煩雑な状態に陥っていました。せっかくリニューアルするのであれば、既存システムをベースにするのではなく、ユーザーの要望を起点とした新システムを作りたいと考えました。(スズキ 大井さん)

スズキ株式会社 ITシステム部 技術システム課 大井 一樹さん
STAGE/SUITのリニューアルの話を相談いただいたとき、パッケージの提案ではなく、スズキさんがやりたいことを整理して進めるコンサルのフェーズが必要だと思いました。そこにグッドパッチのデザイン思考のアプローチが有効だと考え、今回ご一緒させていただくことになりました。(CTC 友井さん)

伊藤忠商事株式会社 中日本統括本部 友井 大輔さん
業務システムの開発にあまり用いられないデザイン思考を取り込むハードルの高さはありますが、「使っている皆さんの意見を反映させたシステムを作りたい」というスズキさんの思いを汲み取り、かつ将来的に長く使い続けられるシステムにする意味で、未来志向の観点をプラスした企画構想を作り上げるのは重要なポイントでしたね。(CTC 垂水さん)

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 中日本統括本部 中日本開発部 開発第3課 垂水 奏太さん
単なる機能の置き換えではなく、クラウドやAIといった最新技術をど真ん中に据え、将来のスズキを支える「技術情報管理プラットフォーム」へと進化させる。そのための第一歩として、まだ顕在化していない「未来の働き方」を想像するためのパートナーが求められていました 。

企画構想フェーズの全体像
技術的制約から離れた未来を構想する 全4回のワークショップ
グッドパッチは、2024年11月からの約半年間、企画構想フェーズを全面的に支援。プロジェクトの前半では、設計、デザイン、生産など多様な部門から参加者を募り、未来の世界観からシステムが提供すべき価値や機能を検討する全4回のワークショップを設計・運営しました。

未来志向ワークショップのステップ
2040年の未来から逆算して「あるべき姿」を描くため、今はまだない価値やアイディアから逆算する「バックキャスティング」手法と組織や社会といった広げた視点に目を向ける「世界感のデザイン」思考法を採用。縦の時間軸、横の社会軸と幅広い視点からアイディアが生まれるよう設計しました。

バックキャスティングと世界観のデザイン
1. 未来の兆しを考える未来洞察とマインドセット
初回は全4回のワークショップ全体像の理解と、未来志向で行うプログラムのためのマインドセットを実施しました。先行研究や調査を基にモビリティ市場や人々の暮らしにおける移動の可能性などの情報を参照しながら、参加者それぞれの思いや気になる事象を探索しました。



2. 未来のSUZUKIで働く人図鑑作成ワーク
2回目のワークショップでは、「未来のスズキで働くヒト図鑑ワーク」を通して未来の世界に対する解像度を高めました。ウォーミングアップで取り組んだ参加者自身のプロフィールや日々の過ごし方を描くというワークで、自己開示・相互理解を促進。個人ワークで作成した素案をグループからのフィードバックをもとに完成させるプロセスを取り入れることで、共同作業の価値や可能性を知るきっかけにもなりました。



3.未来の働き方で求められる価値を探る バリュー・プロポジション・キャンバスワーク
ワークショップ3回目は、「バリュー・プロポジション・キャンバス」を用いて、未来の働き方で求められる価値を探索しました。リニューアルに繋げるための価値抽出を行うために、複数人で考えた「バリュー・プロポジション・キャンバス」を持ち寄り、整理・統合しながら、未来のSUZUKIで働く人が求めるであろうツールという形でアイディアを話し合いました。



4. 最強のSTAGE/SUITを考えるフィジカルワークショップ
連続ワークショップの最終回では、これまで想像してきた未来のあり方のアイディアを素材として活用し、未来の「STAGE」「SUIT」の望ましい姿をアウトプットしました。ここまでオンラインホワイトボードにて発散・収束を繰り返してきたアイディアを基に、模造紙にシステムと機能の訴求ポイントを抽出して付箋で貼るという身体性を伴ったワークを実施。全4回のワークショプを経て、未来の情報管理システムに期待する機能のアイディアが多数生まれ、以降のステップに生きるリストを完成させることができました。



業務時間中に実施した全4回のワークショップということで業務負荷を心配する声もありましたが、多くの方が未来を構想する場に参加いただくことができました。
ユーザーを集めたメリットが大きく出たと思います。未来を考えるところから始めたからこそ、自由な発想を導き出せたのでしょうね。今後の指針はこのフェーズでだいぶ固まりましたが、それがユーザーサイドから上がってきたことに価値があると思います。(スズキ 正畑さん)

スズキ株式会社 ITシステム部 技術システム課 正畑 和彦さん
システムの設計・構想に繋げるビジョンプロトタイプ
プロジェクトの後半では、具体的にシステムの設計・構想に入っていくためにアイディアの解像度を高める「ビジョンプロトタイプ」の制作を実施しました。
一般的なプロトタイプは欲しい機能をリストアップして作ることが多い中、本プロジェクトではワークショップのアイディアを基に理想の未来から逆算したものを作成。グッドパッチはワークショップで得られた膨大なアイディアを構造化し、ユーザーの目的達成をAIが支援する「PARTNER」と、業務に楽しさやモチベーションをもたらす「GAME」という2つの中心的なコンセプトを提案させていただきました 。

ユーザーの目的達成をAIが支援する「PARTNER」と、業務に楽しさやモチベーションをもたらす「GAME」
プロトタイプのクリエイティブには、スズキの昔のロゴが鳥だったことから「PARTNER」に鳥を、遊び心のある仕組みに楽しみを覚えることで、前向きに使いたくなる期待を込めた「GAME」にはエディットゲームのイメージを採用しました。クリエイティブのコンセプトを絞ることで、各シナリオの提供価値を尖らせ、楽しく触ってもらいたいという想いを込められています。
業務システムにゲーミフィケーションの要素を入れるのは面白いですよね。ユーザーも従来のシステムとの違いを感じやすく、未来のシステムのあり方を感じてくれたのではと思います。(CTC 友井さん)
どちらもこれまでの内容を踏まえた、とても良いプロトタイプだったと思います。STAGEの図面登録や変更作業は定型業務ですので、それをゲーム感覚でやれれば楽しくなりそうですよね。PARTNERに関しては、ワークショップでキーワードとして出てきたものをよく汲み取ってくださったなと。最近は社内でもAIを活用していますが、対話型AIは身近に感じられて、こういうものがあればすごくいいなと思いました。(スズキ 正畑さん)
プロトタイプを現実のシステムと捉えるとギャップが生まれますが、プロトタイプを前にしたときにそれぞれが感じたことは、今後実装に向けて議論すべき問いとして、プロジェクトの方向を指し示す大きな道しるべを示せたのではないでしょうか。
未来を感じるプロトタイプ体験会
プロトタイプを実際に活用するイメージを持つために、プロトタイプを作成するだけでなく、グッドパッチが用意したシナリオに沿って触れていただく対面での体験会を実施。ワークショップで膨らませたアイディアを有形のプロトタイプとして提示することで、実際の体験をイメージするという大きな役割を果たすことができました。
今のSTAGE/SUITを改修したのがカスタマイズカーだとしたら、プロトタイプはコンセプトカーであり、未来カー。そういう印象を持ってくれたのではと思います。(スズキ 正畑さん)




プロジェクトを終えて
最後にプロジェクトに関わる皆さんへ、およそ半年間にわたるシステムの企画構想プロジェクトを関する感想を伺いました。

システム開発のプロジェクトでワークショップ自体をしたことがなく、半年間という限られた期間でどれだけのことができるのか不安でしたが、CTCさんとグッドパッチさんがうまく回してくださり、未来に必要な機能をまとめ上げることができました。それを要件定義にまでつなげられて、ひとまず安心しています。(スズキ 大井さん)
今回のリニューアルでは、STAGE/SUITのコンセプト自体が新しくなっていることが重要でしたので、「機能ありきではなく、あるべき姿を考える」アプローチが合っていたと思います。もちろん既存の機能を盛り込む必要はありますが、そこから始めると現行の作り直しになりかねませんから。前の課長が口酸っぱく言っていた「新しいものを作るならワクワクできるものにしよう」を実現するためにも、今回のやり方が必要だったのだと思います。(スズキ 正畑さん)
新しいSTAGE/SUITは、スズキにとってどういう存在なのか」を定義し直したのが、企画構想フェーズだったと思います。今までは業務プロセスの中で使わざるを得ないツールでしたが、未来を考えながらワークショップを行うことで、全く違う存在が見えてきました。それはデザイン思考のアプローチをしなければ出てこなかったと思います。
今回みんなで考えた新しいSTAGE/SUITの構想が今後のフェーズにどう引き継がれ、2027年にどのような新システムができ上がり、それが未来のスズキにとってどういう存在になっていくのか。これからがとても楽しみですね。(スズキ 竹内さん)
Interview
本プロジェクトの詳細は、こちらのインタビューからもご覧いただけます。
20年ぶりの基幹システム刷新に挑むスズキ、「未来志向」と「ユーザー参加」でDXを前進させるデザインアプローチ
Credit
QM・統括:伊澤 和宏
Design Strategist:遠藤 英之
Service Designer / Design Strategist :高階 有人
Research:鈴木 晴也
BX Designer / UI Designer:Kai Qin
Design Strategist / UI Designer:佐藤 大輝
アライアンス:粟野 雄太