Goodpatch closed its Berlin office. We will continue to help businesses through Tokyo HQ.

Client
株式会社Muture
Expertise
Brand Experience Design
Date

Overview

丸井グループとGoodpatchの合弁会社として2022年4月に誕生した『株式会社Muture(ミューチュア)』。アフターデジタルを見据える丸井グループの組織変革や人的資本戦略、新規事業創出を目指します。あわせて「すべての個性が尊重され、ありたい姿でいられるmutualism(相利共生)の未来を創る」をパーパスに掲げ、小売・フィンテック×デザインを通じて、独自の事業・サービス・プロダクト・組織づくりに挑みます。設立メンバーは5名。丸井グループからの出向者3名に加え、Goodpatchからは2名のデザイナー(UX、UI/BX)が経営陣として参画しています。

企業価値向上を支援するGoodpatchのブランドエクスペリエンスチーム(以下BXチーム)は、社名もパーパスもビジネススキームも固まっていない設立準備期から伴走。設立メンバーのWILLを引き出し、出自の違いを超えてワンチームになる「体験」を織り込んだプロジェクト設計のもと、新会社のコアと本質価値を探求しました。そのうえでブランドアセット(ビジョン・ミッション・バリュー・ステートメント・ロゴタイプ・キービジュアル)を策定。さらに対外的なコミュニケーションへの展開として、PR戦略からコーポレートサイト・カルチャーデック・名刺などのアプリケーション制作まで一気通貫で担いました。

『Muture』設立までの背景はこちらの記事をご覧ください。
丸井グループ青井代表、CDO 相田さんとGoodpatch代表の土屋、デザインストラテジスト長友の対談記事もあわせてご覧ください。

Summary

クライアントのニーズ、状況

  • 不確実性の高い合弁会社の設立
  • ミッション以外は未定
  • 親会社2社のカルチャーが異なる
  • 丸井グループの採用力を拡張するブランドを確立したい
  • 4ヶ月のスピード展開

Goodpatchの対応

  • 不確実性の高い合弁会社を成功に導くための WILLを引き出す
  • 新会社のパーパス(存在意義)を策定
  • パーパス(存在意義)を基点にブランド開発
  • コミュニケーションツールの策定およびPR戦略を支援

今後の構想や現時点での成果

  • 成功につながる WILLを抽出
  • 親会社に託されたミッションを超える存在意義
  • 共感に裏打ちされた共創を推進
  • 希少性の高いデジタル人材との出会いを創出

親会社の期待を超える企業価値をつくる

丸井グループとGoodpatchの合弁会社『Muture』は、アフターデジタルを見据える丸井グループの組織変革や人的資本戦略、新規事業創出をリードすべく誕生しました。既存のデジタルプロダクトの進化やデザイン/デジタル人材の採用・育成など、丸井グループの未来をひらく存在といっても過言ではありません。しかし、設立が決まった初期段階では親会社から託されたミッション以外に会社としてのアイデンティティがない状態でした。『Muture』という社名も、社会に共感を持って受け止められるパーパス(存在意義)も、ビジネススキームも、カルチャーも、そして親会社から移管する機能なども未定だったのです。

GoodpatchのBXチームは、丸井グループの組織を変革するうえで必要な影響力や、希少性の高いデザイン/デジタル人材を採用する求心力を醸成するには、設立メンバーひとりひとりのWILLを引き出し、内側から会社をデザインすること。そのうえでインナーとアウターの両軸を見据えたブランディングとプロモーション戦略が必要だと考えました。

設立メンバーに寄り添い本質的にサポートする

新会社設立発表までの猶予は4ヶ月。タイトなスケジュールの中、「やらないこと」「やること」を明確にすることが重要でした。たとえば「やらないこと」は、プロジェクトの速度を落とす行為。親会社が慣行してきたお作法であっても「やらない」と決め、意思決定の質とスピードを両立。新会社が推進する組織変革のデモンストレーションも兼ねた試みでした。「やること」は、設立メンバーに寄り添った本質的なサポート。ビジネススキームづくりにリソースを注げるよう、主体的な関わりを意識しました。たとえば親会社のCEOが並ぶミーティングにも陪席。ビジネスサイドの景色も共有しながら先回りの提案や、膨大なタスクの抜け漏れ防止に努めました。

また、設立メンバーが自分たちの会社として解像度高く、誇りと愛着を持って語れるコアや本質価値を紡ぐために、自身と向き合う体験の提供や、出自の違いを超えて結束力を高める働きかけも強く意識しました。WILLを引き出すための「メンバーそれぞれの偏愛を探るワークショップ」もそのひとつ。メンターのように繰り返し問いを投げかけ、曖昧な状態から言語化、ビジュアル化し、原体験や想い、理想とする未来像を新会社に活かす流れをつくりました。

画像:WILLを引き出すためにオンラインボード上で実施した「メンバーそれぞれの偏愛を探るワークショップ」

メンバーの内側から生まれたブランドアセット

プロジェクトがドライブしたのは、社名『Muture』が決定したときのこと。BXチームはさまざまな思想でプロトタイプした50ほどの社名案とステートメントを用意し、設立メンバーがイマジネーションを広げ、ありたい姿の解像度を高めてゆける場を提供しました。その中で丸井グループが掲げる「共創」と親和性の高い「mutualism(相利共生)」というキーワードが設立メンバーから挙がり、「mutualism」と「future」を掛け合わせた社名が誕生したのです。

これをもとにBXチームは「すべての個性が尊重され、ありたい姿でいられる相利共生の未来を創る」というパーパスとブランドアセット(ステートメント、ミッション、ビジョン、バリュー)を提案。最終的に、実績のない等身大の状態を踏まえ「ミッション、ビジョン、バリュー」と大上段に構えず、愚直な「夢・志・是」という『Muture』らしいワーディングに至りました。設立メンバーだけでなくステークホルダーとも共有しやすいよう、ビジュアライズしたものも用意しました。

画像:ステークホルダーとも共有しやすいようブランドコンセプトをビジュアライズ

画像:親会社の経営層との定例ミーティングで社名を発表した際の記念ショット

ロゴタイプで表現した相利共生

ビジュアルアイデンティティ(VI)の開発で追求したのは、有機的なデザインです。「mutualism(相利共生)」から生まれたパーパスや、デジタルの先に持続可能な未来を見つめるスタンスを意識しました。他方でデジタル色を打ち出した世界観とは一線を画し、既視感をクリアしたいとの考えもありました。インスピレーションは「メンバーそれぞれの偏愛を探るワークショップ」で得ました。最初のうちは他人事のように「新会社」という主語が交わされていましたが、「偏愛」を語ってもらう中で内発的動機づけに至り、主語が「自分」に置き換わったのです。そして一人ひとりがありのままの自分を語るほど、自分以外の仲間を尊重する姿勢が強まっていきました。まさに一人ひとりが自立した存在であり、ありのままの姿で共生する「相利共生」の象徴だと感じたBXチームは、ロゴタイプでの具現化を試みました。アルファベットの一文字、一文字をしっかりとした太さの垂直線で描き「自立した個」を表現し、そのうえで手をとりあっているかのように有機的なラインでつなげたのです。

キービジュアルの開発で「共創」を体現

同じく有機的なデザインを追求したキービジュアルですが、こちらは丸井グループのDNA「共創」マインドからインスピレーションを得ました。『Muture』の事業活動も「共創」が基本となるため、キービジュアルの開発でも体現したいとの考えから、アーティスト・高橋美衣さんと「共創」させていただきました。設立メンバーの「人間には多様性、多面性がある。それを理解することが他者に対する寛容な心につながり、お互いにありのままの姿を尊重しながら共生する相利共生の未来につながるのではないか」という視点を、色相や表情に多面性がある高橋さんの立体作品で表現したのです。タイトなスケジュール、さらに個展を控えて多忙なアーティストとの「共創」は容易ではありませんでしたが、撮影ディレクションやコーポレートサイトでの検証を経て、高橋さんの世界観を損なわず、同時に『Muture』を象徴するキービジュアルが完成しました。

あらゆるタッチポイントで『Muture』ブランドを補強

ブランドを対外的に伝えてゆくツールは、名刺などのアプリケーションからコーポレートサイト、カルチャーデックなどさまざま用意しました。また、PR戦略の支援として、メディア対応に向けたQ&Aスクリプトも。かなり切り込んだ質問でメンバーの熟考を促し、『Muture』のあるべき姿やビジョンに対し、曖昧な点やメンバー間の認識齟齬をなくす狙いもこめました。4ヶ月というタイトなスケジュールだったためブランドアセットの開発と同時進行する場面がありましたが、あえて時期をズラさずに進めたのは注目度が高まる新会社設立発表の時点でこれらすべてが揃っていることが採用活動をスムーズにすると考えたからです。あらゆるタッチポイントで『Muture』ブランドを補強し、ブレないコミュニケーション戦略を実現することが必要との判断でした。こうした働きかけも功を奏したのか、設立後の現在、思想に共感したという理由で『Muture』に採用面談に来てくれる方が出てきています。

未来に向かう最高のブランドエクスペリエンスを

現在、丸井グループの開発チームと共創し、プロダクトの開発に新しいアプローチを取り入れながら組織のアップデートもはかっている『Muture』。丸井グループの共感も高く、BXチームの耳にも成果が聞こえてきます。それでも設立メンバーたちは、まだスタート地点にも立っていないと言います。「丸井グループ内にケイパビリティが蓄積され、『Muture』のサポートがなくても自走できる状態へと導きたい。その状態が実現してはじめて、自分たちのWILLに臨める。社会の不均衡や格差、分断をなくし、「相利共生」の未来を創造する新たな事業の創出や、デザインやデジタルの領域を拡張する取り組みを目指したい」と語ります。

こうした大きな夢を描けるのは、親会社に託されたミッションをしっかりと受け止めながらも、自分たちの内側からデザインした会社だからこそ。丸井グループとGoodpatchの良いところをマージしたまったく新しい会社として、両社に勝るとも劣らない成長を遂げると信じています。わたしたちは、これからも共創パートナーとして『Muture』が実現する未来に期待を寄せながら、最高のブランドエクスペリエンスを重ねるお手伝いができたらと考えています。

Credit

デザインストラテジスト:長友 裕輝
BXデザイナー:出村 邦明、大久保 彩佳
BXコピーライター:北野 早苗
プロジェクトマネージャー:服部 真人

丸井グループの組織課題リサーチとMuture立ち上げまでの経緯についてはこちらをご覧ください。

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