タベチャム
- Client
- 三菱電機株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
- Date
- Client
- 三菱電機株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
- Date
Overview
三菱電機が手がけた新規事業「タベチャム」は、ユーザーの感覚的なことばから最適な飲食店と出会える、ユニークな検索サービスです。グッドパッチは、サービス構想の具体化からプロトタイプ制作・改善、生成AIを活用した新機能の導入、ロゴやLP制作などを含むサービスブランディングまでを一貫して支援。短期間での密なコミュニケーションと迅速なプロトタイプ開発により、社内外のステークホルダーからの理解と共感を獲得。サービスの社会実装に貢献しました。
Summary
ご支援前の課題
- 新規事業としてスピード感を持って開発やユーザー検証を進めたい
- サービスコンセプトは決まっていたが、MVP開発やユーザー検証に向けた具体的なプロトタイプ仕様の策定が不十分だった
- プロトタイプのデザインが洗練されておらず、ユーザーインタビューや価値検証を進めるには不安が残る状況だった
- サービスコンセプトに沿ったデザインを実現できる人がおらず、どうすれば使いやすいか、検索しやすいかなどの具体化が難しい状況だった
グッドパッチの対応とご支援後の成果
- 密なコミュニケーションを通じて、MVP開発に必要な機能を整理し、迅速な意思決定を実現
- コンセプトを体現するUI/UXを設計し高品質なプロトタイプを短期で制作
- 生成AIを活用した「感性ワード」による新機能を実装。サービス独自の体験価値を実現
- ロゴデザイン、LP制作などを含むサービスブランディングを支援しマーケティング活動にも貢献

異業種の新規事業「タベチャム」に挑戦した理由
三菱電機では日本有数の総合電機メーカーとして様々な製品やソリューションを展開する一方で、モビリティ・人流・映像解析・防災など様々なテーマでの新事業開発を推進しています。
中でも今回プロジェクトをご一緒したモビリティインフラシステム事業部では、既存事業として行政や鉄道事業者などを中心としたインフラ関連領域を主軸に事業を展開しつつ、そうした顧客抱える課題を解決する新規サービスの創出を模索していました。
インフラを担う鉄道会社や地方自治体は、人口減少・少子高齢化やそれに伴う消費の縮小という共通課題を抱えています。そうした課題に対し、同事業部では「地方創生」が一つの解決策になりうると考え、「都市部からの送客増加」がその貢献につながると考えていました。
そこで2021年から構想を始め、新規事業として「地方を訪問する人を増やす」×「食」に関するサービスという形で事業アイデアを練り、コンセプトを固めて外食産業という新領域への進出のチャレンジも含めて事業化を目指すことになりました。
「プロトタイプ」は作ったけれど…新規事業におけるサービスコンセプト具体化の難しさとプロトタイプの課題
社内での検討も進み、”ワードから飲食店を探すことができるサービス”というアイデアとともに、サービス内容や想定ユーザー、初期ターゲットも定め、社内のエンジニアを中心にプロトタイプまで作成していたという同社。
ここまで順調に見える新規事業開発も、実際に「事業化の可能性をプロトタイプで検証する」という段階になり、行き詰まりを感じたといいます。
「自社のエンジニアが”機能面のみ”を作成したプロトタイプはあったのですが、簡易的な画面のみでデザインが一切されていない状態だったんです。一方で、ユーザーインタビューや社内の価値検証など、今後多くの人に検証で使ってもらうことを考えるとデザインも大切だと考えました。」(三菱電機 田村さん)

三菱電機株式会社 モビリティインフラシステム事業部 統合エンジニアリング部 モビリティソリューション事業推進グループ 主任 田村さん
また、プロトタイプにおいて実際にユーザー検証を実施する上で必要な機能は何なのか?といった部分が絞り込めず、コンセプトを実際のサービスの形に落とし込むことの難しさを感じたといいます。
「ワードを選んでぴったりのお店が出てくるというコンセプトは決まっていたのですが、膨大な量のワードをどう表示させるか?といった点の具体化ができていなかったり、機能面でもやりたいことはたくさんあったのですが、一方でプロトタイプの段階でどこに主眼を置くのか、優先順位が付けられていない状態でした。」(三菱電機 田村さん)

プロジェクト開始当初、提示された画面イメージ
自社だけでは難しい、新規事業に求められるスピード感や柔軟性をもたらす外部パートナーの存在
また同社では、新規事業の検証をスピーディに進めるうえでも、組織上の課題があったといいます。
「インフラ事業ならではの品質重視かつ慎重な姿勢ゆえ、プロトタイプの改善に必要以上に時間がかかりそうだったという点も懸念でした。新規事業では、最小限の機能を低コスト・短期間で実装し、フィードバックを基に素早く改善していく方が相性が良い。そのため、自社と異なるスタイルで開発を進められるパートナーとして、短期間でプロトタイプを制作でき、デザイン力と提案力のバランスの良い協力会社を探すことにしました。」(田村さん)
その後、複数の候補をピックアップした上で、プロトタイプの制作だけでなく事業アイデアそのものをブラッシュアップさせていくパートナーとしても頼れる存在として、最終的にグッドパッチを選んでいただくことになりました。
コンセプト検証からAI実装まで、リリースに向けプロトタイプをブラッシュアップ
今回のプロジェクトは、価値検証が可能なプロトタイプの制作をゴールとする「フェーズ1」と、プロトタイプの改善からサービスリリースまで進めた「フェーズ2」に分かれます。
フェーズ1:「3枚の絵」から2カ月で完成した価値検証プロトタイプ
フェーズ1となる「価値検証が可能なプロトタイプの制作」は2023年末に始まりました。すでにコンセプトとサービスの方向性は固まっていたため、グッドパッチはUI/UXの視点から抜け落ちているところを補うことに注力。密なコミュニケーションを取りながら、ワイヤーフレームからUIデザインまでをスピード感をもって作り上げていきました。
特に最初の1カ月は、ラフなワイヤーフレームをもとに、毎日30分間のMTGを実施。視覚的なイメージを用いながら、完成像の認識をすり合わせていったといいます。

毎日のオンラインMTGを通じて認識を合わせ、情報設計とデザイン制作を進めていった
「経験したことないようなやりとりの頻度とスピード感でしたが、実際に触れる画面を作ったことと、グッドパッチの皆さんとのやり取りを通すことで、サービスイメージの輪郭を際立たせることができ、優先順位も自ずと明らかになっていきました。いい意味で、三菱電機らしくないデザインに仕上がったと思います。」(田村さん)

実際に出来上がったサービスのプロトタイプ
同社ではこうして出来上がったプロトタイプを元に、ユーザーインタビューを実施。一般の方からフィードバックを集め、実際の声やデータをもとに、事業化に向けた検証を進めました。こうした取り組みによって社内からの評価も高まり、リリースに向けて順調にステップを進めていきました。

フェーズ2:プロトタイプの改善に加え、生成AIを使った機能を追加
約半年間ほどの検証期間を経て、プロトタイプに足りていない観点を補うために、フェーズ2「プロトタイプ改善」のプロジェクトがスタート。市場へのリリースに向けて、検証期間で得られたデータを元にプロダクトの大幅な改善を実施しました。
具体的には、当初の目的であった「フェーズ1の課題を補完する」といった点に加えて、ユーザーにとってより直感的で使いやすいビジュアルデザイン・UIの改善実施。さらに、グッドパッチ側からの提案により、新たに「生成AIを使った体験価値」を機能として加えることになりました。

サービス全体でビジュアルデザイン・UIを刷新

ユーザー体験のセレンディピティ(偶発性)をLLM(大規模言語モデル)を使って生み出す新機能の実装
新たに追加したのは「なんとなく気になって選んだワード」から、今の気分にぴったりの飲食店に出会えるというセレンディピティ(偶発性)を意識した機能でした。バックエンドの開発に入っていただいたNTT先端技術社と協力し、「フリーワード入力から関連キーワードをレコメンドする」という仕組みを生成AIを活用して実装するに至ります。
MVPだからこそ突き詰めて考える、「生成AIのコスト」と「ユーザー体験」のバランス
生成AIを活用したサービスは、使えば使うほどコストが膨らみやすくなります。特に、「フリーワードから新たなワードをレコメンドする」といった一連の動作では、どの部分に生成AIを使い、どの部分をシステム的に処理するかを見極めることがポイントになります。
今回は最小限の機能で市場の反応を確かめるMVP(Minimum Viable Product)としてのリリースが目的だったため、過剰なコストは避ける必要があります。
コストバランスを考慮しつつも、楽しいコミュニケーションを実現するためにはどうすればいいか。仮にユーザーがたくさん来ても耐えられるかといった拡張性を考慮した上で、LLMを含む機能を設計・実装しています。
サービス名やドメインの検討。ロゴデザイン、LP、セキュリティテストも。サービスリリースの最後まで並走
今回、グッドパッチはプロトタイプの制作だけではなく、サービス名やドメインの検討、ロゴデザインからサービスのLP制作、SNS広告用のバナー制作、果ては三菱電機さんのセキュリティ審査まで伴走させていただきました。

サービス・ドメイン名のアイディエーションの様子



「LPと合わせて作っていただいたSNS用の広告も早速配信していますが、(グッドパッチが手掛けていないバナーと比べて)クリック数が目に見えて違うんです。プロダクト自体のデザインも大切ですが、マーケティングや伝え方の大切さを実感しました。」(田村さん)
新しいサービスにとって大切なのは、まず多くの人に使ってもらい、その価値を実感してもらうことです。コンセプトをわかりやすく伝え、サービス自体を認知してもらうことが欠かせません。あわせてサービスの中身を磨き上げつつ、LPをはじめとしたタッチポイントも含めたブランディングにも力を入れることが非常に重要です。
共創の力を、さらなる挑戦へ──グッドパッチとの協業を振り返って
最後に、三菱電機の田村さんに今回のプロジェクトを通して印象深かったことと今後の展望についてお聞きしました。
まず、関わってくださったグッドパッチの皆さんがチームの一員となって尽力してくださったことに感動しました。『こんなに一緒に考えてくれるんだ』と感じる場面が多かったです。こちらが温めていたイメージを解釈してくれて、より良いものを提案してくれる。大変ではありましたが、とても楽しい時間でした。
あとは『短期間でここまでできるんだ!』という感動も大きかったですね。(MVP開発において)必要最低限の部分をきちんと作り込んで、検証して次に進む、というサイクルを回す大切さを実感しました。やっと世の中に公開できたところなので、引き続きサービスの改善に注力していきたいです。次のステップとしてはタベチャムで得たデータを持って既存領域以外の業界に進出し、企業との協業を視野に入れながら進めていけたらと考えています。
グッドパッチさんには引き続き伴走いただきながら、今回の検証で得られたデータを基にさらなる改善を行っていく予定です。別チームの新規事業案に関してもご相談できたらと考えているものがありますし、今後もさまざまな形でご一緒できたらうれしいです。

Interview
本プロジェクトの詳細は、こちらのインタビューからもご覧いただけます。
クレジット
クリエイティブディレクター:栃尾行美
フロントエンジニア:池澤孝治、板倉翔太
デザイナー:小幡菜摘
アカウントマネージャー:浦田文恭