Ctrlx(コントロールバイ)
- Client
- msh株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
- Date
- Client
- msh株式会社
- Expertise
- Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
- Date
Overview
グッドパッチはアイメイクブランド「ラブ・ライナー」などを展開するmsh株式会社と共同で新たなコスメブランド「Ctrlx(コントロールバイ)」を開発。第一弾として目元の悩みに着目し、肌の色味に合わせてパーソナライズされたアイバームとコンシーラーのセットをローンチ。ユーザーインタビュー、体験デザイン、ブランディングなどを通じて、ユーザーニーズに応える商品開発と体験を実現しました。
Client
msh株式会社 様
msh.Inc
mshはアイメイクブランドの「ラブ・ライナー」やベースメイク、スキンケアを扱うミネラルコスメブランド「タイムシークレット」などを展開している化粧品の企画・開発・販売会社です。
Summary
ご支援前の課題
- 新たなコスメブランドの開発にあたり、従来にない独自性のある商品を生み出したいと考えていた
- 独自性のある新商品の企画がしたくても、実現可能性やコストなどの視点から、アイデアに制約がかかってしまう
Goodpatchの対応とご支援後の成果
- ユーザーの日常生活全般や美容に関するインサイトを探るインタビューやワークショップの実施を通じて、ユーザーの「ありたい姿」を言語化し、商品コンセプトを策定。独自性の高い商品を開発
- パッケージデザイン、ブランドサイトデザインを行い、効果的なコミュニケーションを実現
- 商品企画、ブランド、ビジュアル、コミュニケーションを一貫してデザインし、新ブランド「Ctrlx」として打ち出し、全国のバラエティショップ、ドラッグストア、 オンラインショップで発売
- 発売に先駆け、SNSなどでの情報発信やECでの先行予約販売を行い、発売当日の楽天市場では4部門でトップを獲得(2024年5月17日12時6分リアルタイムランキング)
ユーザーの真のニーズを捉えた新しいコスメブランドの開発へ
msh株式会社(以下、msh)は、アイメイクブランド「ラブ・ライナー」やミネラルコスメブランド「タイムシークレット」などで知られる化粧品メーカーです。
同社は新たな商品開発にあたり、従来にない独自性のあるブランドやアイテムを生み出したいと考えていましたが、実現可能性やコストなどを考慮し、アイデアに制約がかかってしまうことに課題を感じていました。そこでグッドパッチと共同で、UXデザインの視点や化粧品会社にはない新たな視点を取り入れた商品開発を行うことを決定しました。
今回開発した商品は「がんばりすぎない目元ケア」をコンセプトとし、目元の悩みに着目した目元ケア用のアイバームと肌の色味に合わせたコンシーラーを組み合わせて使うことが特徴です。パソコンのCtrlキーとアルファベットキーを組み合わせてさまざまな操作をショートカットするように、アイバームとコンシーラーの組み合わせで、さっと目元を整えることができます。
「商品企画で一歩飛躍したアイデアにたどりつくことは、実現可能性やコストなどの視点から、どうしてもアイデアに制約がかかってしまうことが少なくありません。今回皆さんに提案いただけたことで、『普通に考えたらこんな悩みってあるよね』と楽しみながらも発見が見え、ユーザー側の目線で本当に欲しいものを考えていただけるなと思いました」(msh 商品部 企画課 篠田様)
コスメ商品の共同開発はグッドパッチにとっても初めての試みであり、ローンチまで不確実性と向き合い続けるプロジェクトでした。グッドパッチのメンバーによる企画の持ち込み提案をきっかけに、レベニューシェア型の契約形態をとることで、中長期的なパートナーとして伴走支援する体制を整え、プロジェクトが開始しました。
定量調査では見えない、ユーザーインタビューから見えてきた真のニーズ
mshのメインブランドの一つである「ラブ・ライナー」が目元のメイクアップを強みとして持っており、「メイクアップに加えてケアできる商品があると良いのでは?」という着想から目元ケアを提案。
方向性が定まったところから、グッドパッチ社内で目元に関する悩みや対策についてユーザーインタビューを実施することから始めました。そこで「そもそも日常的なケア方法が分からない」「今この瞬間にクマをどうにかしたい」「クマのせいで、本来自分のやりたいメイクやありたい姿が思い通りにならない」という課題が浮き彫りになり、定量調査では明らかになりにくいユーザー自身の声を基に体験設計を行っています。
mshの篠田さんは、「化粧品開発では、市場やトレンドを見ながらユーザーのニーズを推測した商品企画のプロセスが主流です。一方で、今回のようにユーザーインタビューによって一般の方の声を知り、行動の裏に潜む価値観まで分析する機会は少なく、そのプロセスに新鮮さを感じました」と、ユーザーインサイトを探索するアプローチの面白さを評価しています。
ニーズピラミッドの分析でユーザーの「ありたい姿」を言語化
インタビュー結果を基に、ユーザーの「ありたい姿」を言語化するワークショップを実施。「こういうモノが欲しい(Haveニーズ)」「なぜならこういう行動をしたい(Doニーズ)」「その結果、こうありたい(Beニーズ)」という3階層で価値を深掘りしました。
このプロセスから「自分の出しきれるベストでいたい」「クマがあることで周囲に心配をかけたくない」「メイクアップの過程も楽しみたい」「負担を減らして、より健やかな自分でいたい」といったキーワードが浮かび上がり、これがブランドコンセプトの基礎となりました。
「共通認識ができたことで、OEMメーカーや販促担当者など、他メンバーとコラボレーションする場面でも、皆が同じ認識を共有できました」(msh 執行役員 商品部部長 中西様)
ワークショップを通じて、市場やユーザーの手元に届く際にどのようなコミュニケーションが実際に起きるのかを柔軟に発想していったことで、mshとグッドパッチが共同でアイデアを生み出すワンチームとしての関係構築につながりました。
店頭でのフィールドワークで得た気付きを
商品のサンプルで色やテクスチャ、配合成分などの調整を進めることと並行し、グッドパッチは購入体験の設計に着手。mshの皆さんと店舗を巡り「どういったシチュエーションでユーザーが化粧品を手に取るのか?」を中心にユーザー体験を調査しました。
実際の店舗に足を運び化粧品の購入体験などを経て、「店頭で手に取るその瞬間に心が動くことも非常に重要だ」という気付きを得ました。ときめく商品パッケージや汚れがつきにくい箱の形状、読みやすい什器の情報量や余白など、調査を通じてワークショップで広げた理想と、実際に目に入る什器のサイズ感などの実現可能性を擦り合わせていきました。こうしたプロセスを経て、商品が多く並ぶ店舗などでユーザーの目に留まるパッケージデザインが導き出されました。
キーボードから着想を得た独自性あるブランドとビジュアルデザイン
グッドパッチはさらに、ブランドやビジュアル、コミュニケーションのデザインを行いました。機能面だけではなく、ユーザーが実際に商品を手に取って使用するシーン、ポーチに入れて持ち歩くシーンなど、「気分が高まる情緒体験」を価値として考慮し、設計。随所に遊び心を加えデザインしています。同時に現在市場にある競合商品とは違う路線で、意図的にビビッドなカラーリングと一癖あるフォントを採用。従来の目元ケア商品とは一線を画す独自性を打ち出しました。
パッケージデザインでは、目元悩みに着目した3種のアイバームと、肌の色味に合わせた2種のコンシーラーとで、それぞれの商品が選びやすいカラーリングを選定。さらに、一見して「アイバーム」「コンシーラー」「ケース」といった異なるカテゴリの商品だと伝わりやすいように、「アテンションシール」と呼ばれる、商品に貼り付けて訴求したい情報を伝えるツールも制作。これによりCtrlxの世界観を尊重しながら、商品の特徴がユーザーに伝わる商品パッケージに仕上げました。
mshの篠田さんは、「かわいい系統やシンプルなブランドが多いmshでは、今までにないカラーのブランドに仕上がりました」と、新しいアプローチを評価されています。
商品が届く瞬間まで遊び心に触れ続けるコミュニケーションデザイン
さらにグッドパッチは商品そのものに限らず、ブランドとしての全体的なユーザー体験を重視し、ウェブサイトのデザインディレクションも手がけています。
商品購入時のパーソナライズを助ける「タイプ診断機能」コンテンツを設計。血管の色など客観的な特徴に基づいた質問事項による診断コンテンツで、ユーザーが商品を選びやすい体験をデザインしています。診断結果からECへの購入導線や、SNSシェア時のクオリティにもこだわりました。
また、キービジュアルにはモデルの目元にダイアログ風のグラフィックを載せ、あえて「目元」を隠すことで見る人の興味を引く仕掛けにするなど、キャッチーさを出しつつ目元ケアであることが直感的に伝わるデザインにしています。
従来にない新しいアプローチを実現した共同開発の成果
この共同開発プロジェクトを通じて、これまでのmshにはなかった世界観の新ブランド「Ctrlx」が誕生し、ユーザーニーズに応える独自性が高い商品と効果的なコミュニケーションデザインを実現しました。自社内での商品開発で抱えていた課題を解決し、その結果、SNSではガジェット好き、シェアコスメ関心層など、既存ブランドではリーチし得なかった層からも注目を集めることができました。先行予約販売を行ったECプラットフォーム(楽天市場)では、発売日に4つのカテゴリーでランキング1位(※)を獲得するなど、注目だけでなく実売にもつながっています。
mshの中西さんは、「今回の商品開発では、ものづくりを楽しむという過程が重要であることを改めて実感しました」と、このプロジェクトを振り返っています。
※2024年5月17日12時6分リアルタイムランキング
Interview
本プロジェクトの詳細は、こちらのインタビューをご覧ください。
デザイン会社がコスメを開発したら? mshとグッドパッチが挑戦する新しい共創型デザインの姿
Credit
デザインディレクター/UXデザイナー:江原 美佳
デザインストラテジスト:塩澤 美和
プロダクトマーケティングマネージャー/UXデザイナー:吉田 早希
UXデザイナー:今宿 未悠
アートディレクター:中田 彩
コピーライター/プランナー:豊田 圭美
アカウントマネージャー:浦田 文恭
シニアデザインディレクター/デザインストラテジスト:酒井 亮輔
PR:武田 春香