ウェルスナビ
- Client
- ウェルスナビ株式会社
- Expertise
- Business/Strategy Design, Brand Experience Design
- Date
- Client
- ウェルスナビ株式会社
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- Business/Strategy Design, Brand Experience Design
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Overview
ウェルスナビ株式会社(以下、ウェルスナビ)は投資対象を世界50カ国・約1万2000銘柄以上に分散し、自動で買い付けやリバランスを行い、感情に左右されずおまかせで資産運用ができるサービスを提供しています。サービス開始から約8年、難しい資産運用を任せられる手軽さから、利用者は増え続けて40万人超※1、預かり資産は1.3兆円※2を突破しています。
今回グッドパッチは、ウェルスナビのカスタマーエンゲージメント企画チームに「定性調査(顧客インサイト調査)の内製化」のため、リサーチ設計レポート/インタビューレクチャー/分析アドバイスなどの支援を行いました。同社がなぜ定性調査の必要性を感じたのか、パートナーにグッドパッチを設定した理由、プロジェクトを通じてどのような組織変革がもたらされたのかを紹介します。
※1…2024年6月30日時点 ※2…2024年7月4日時点
Client
ウェルスナビ株式会社
WealthNavi Inc.
「長期・積立・分散」の資産運用を実践できる金融アルゴリズムを導入し、誰でも安心して資産運用ができるサービスを提供するフィンテック企業。利用者は口座開設し5つの質問に答えて運用プランを決定した後、入金するだけで運用がスタートする。あとは自動で買付が行われ、リバランス(資産配分のバランスが崩れたら調整すること)も自動。文字通り「おまかせ」で運用できる。新NISAも始まって老後に備える資産形成の必要性に目覚めた人たちが、今日も続々と運用をスタートしている。
高度な金融アルゴリズムを個人にも。資産運用を自動化できる「ウェルスナビ」
「ウェルスナビ」はオンラインで完結するサービスのため、利用者による口座開設、資金の入金、積立設定などの行動はデータ化されており、これまでは定量調査分析に基づいたサービス施策が行われることが主でした。
今回、カスタマーエンゲージメント企画チームの吉田様からご依頼いただいたのは、ウェルスナビでの資産運用を開始した利用者に関する調査です。「おまかせ」で資産運用ができる点が特長であるものの、中には相場の変動によって運用を中断してしまう利用者もいるとのことでした。
お金に関する行動は人それぞれの心理や状況に左右されるため、定量調査だけでは利用者のリアルが掴めません。このことから、お客様の資産運用を成功させるよう継続して利用いただくために、彼らのインタビュー(定性調査)からインサイトを探る必要性を感じ「今後、ウェルスナビではさまざまなプロジェクトで定性調査が必要になるだろうから、内製化できるようにしたい」と、独自にプロジェクトを立ち上げられました。
「当初は自分で関連書籍を読み込んだり、ネット上の情報を集めたりして勉強していましたが、すぐに壁にぶつかります。それにインタビューの相手はお客様になりますから試行錯誤ではいけない、プロの知見に頼るべきところは頼る必要があると思いました。
UXリサーチといえばグッドパッチさんという認識はありましたが、ほかにも数社に相談しました。いくつかの会社はリサーチ業務がパッケージ化されていて『途中まで自分たちでやった』部分を生かしてもらえなかったり、内製化の支援では受けていただけないところもあったのです。
そうした特殊な状況と要望だったのですが、グッドパッチさんには快く引き受けていただき『それなら、こういうかたちにしたらいいのではないでしょうか?』と幾度もご提案いただけました。それで、グッドパッチさんに途中まで走り出していたプロジェクトのレビューをお願いすることになりました」(吉田様)
グッドパッチのリサーチに「テンプレート」はありません。現在のウェルスナビ様にとって良い分析の仕方を考え、今回はインタビュー形式をとりましたが、日記調査、自宅訪問、あるいはクライアントと手を動かし何か作ってみるなど、その都度クライアントの状況や調査を必要とする背景、メンバーの事情や理解度を伺った上でベストな方法を提案しています。
今回、プロジェクトを手掛けたデザインリサーチャーの米田と秋山は、ウェルスナビ様の内製化への要望をお聞きし、吉田様の「壁打ち相手」に徹することが自分たちの役割だと認識しました。
吉田様が作ったリサーチ設計のレビューやレクチャー、インタビューに同席し、実施に関してのレビュー、またそのインタビューから得た膨大なインサイト情報の分析などをレクチャー。インタビューについては、吉田様が作ったリサーチ設計を基にグッドバッチメンバーがお手本として数回実施し、同席することで方法を学んでいただきました。
分析に生かす聞き方・掘り下げ方が求められる定性調査のインタビュー
定性調査のインタビューは、インタビュー中に本音を引き出すことが重要だと思われがちですが、実はその後に行う「発話からの分析」も重要です。
例えば、相手によって違った聞き方をしていたら比較分析ができず、また紋切り型に聞いていくのでは問いの深掘りができません。「このような回答があるだろう」と予想しすぎると聞き取りにバイアスがかかって、貴重なヒントを見落とす可能性もあります。あらかじめ聞き方や掘り下げ方を計算し、綿密に設計しておく必要はありますが、「このインタビューの目的は?」を念頭に置き、「この人は何に価値を置いているのだろう」「この人の背景には何があるのだろう」「どういう行動をとるだろう」と頭を使いながら、その場その場で考えていくことが大切です。
デザインリサーチのスペシャリスト・米田は、定性調査におけるインタビューで最も大事なことは「そのインタビューが何のために行われ/何を理解したいのかがすべての問い掛けに通じていること」と言います。
「グッドパッチさんに入っていただいて、前半部分(インタビューの事前準備まで)は自分が勉強してきた知識の答え合わせができました。本の知識が正しかったと確認できたところと、やはり理論と実践は違うんだと思わされたところがあって新鮮でした。一方、後半部分(インタビューの分析から施策立案まで)は非常に難解で、グッドパッチさんがいなかったら無理だったと思います」(吉田様)
プロジェクトの開始前から、グッドパッチは吉田様に対して「考え方や方向性を示すものの、具体的な解決策は提示しない」と心がけていました。これは、ウェルスナビ様のニーズが「定性調査を内製化していきたい」という点にあり、今回のプロジェクトでの立ち位置が、あくまで「壁打ち相手」だという認識を持っていたためです。
「米田さんや秋山さんが、私たちが今後自走できるように、あえて答えを教えずにいてくれていることには気付いていました。伴走するタイプの依頼であれば、こうはいかないですし、それはとてもありがたいと思っていました。あっさり答えを教えられたら、グッドパッチさんに依頼した意味がなくなってしまうので。〝先生〟で良かったです」(吉田様)
プロジェクトで理解できた顧客のリアルと、社内で新たに根づき始めたリサーチ文化
こうしてプロジェクトは完了し、ウェルスナビ様は「それまでの定量調査では分からなかったユーザーのリアル」についての理解を深めることができました。
その結果、これまでの定量調査と新たに得られた定性調査のデータを掛け合わせて課題への対処法が検討され、そのうちのいくつかはすでに実装されています。
これまで、利用者に長期の資産運用を行ってもらうため、短期的な相場変動に影響されない投資の重要性を説く記事を提供してきました。しかし、定性調査により、ウェルスナビから資金を引き出す理由が必ずしも短期的な変動に左右されているわけではないことが明らかになりました。これに基づき、定量的なデータと組み合わせて、より実情に即した記事への誘導や、アプリの機能を改修する取り組みが可能となりました。
「そのほかにも、今回の取り組みで得たものはたくさんあります。例えば、社内会議で『ユーザーインタビューでは〇〇〇だったよね』という声がたびたび聞かれるようになりました。これはリサーチに基づいて検討する意識が浸透してきた証であると感じています。また、私は他部署から何度か『ウチ(の部署)でもインタビューやりたいんだけど、どうしたらいいかな』という相談を持ち掛けられました。そのうち2件は新規事業に関連するインタビューで、すでに1件は実施済みです」(吉田様)
ウェルスナビ様では2024年5月7日、資産運用をする方にぴったりの保険を提案する新サービスの提供を開始。「本当に自分に必要な保障内容の保険」で保険料を節約できれば、浮いたお金を投資に回せるというコンセプトです。生命保険で「もしも」に備え、積立投資で「将来」に備える──。このコンセプトをユーザーがどこまで理解してくれているのか、インサイトを得たいということで定性調査が決まったと言います。
「インタビューの結果を受け、サービスコンセプトの再定義や別のアプローチの模索について議論した上で、施策を実行しました。その成果を調べるために、2024年8月にもインタビューを実施しました。ローンチから3カ月で2回も定性調査が実施されるなど、以前では考えられなかったことです。今後もインタビューが迅速に実施できるように、定性調査マニュアルを作りました。2回ではまだリサーチ文化が開花したとは言えませんが〝始められる〟というところまではたどり着けたと思っています。一度のプロジェクトでしたが得られるものは、とても大きかったです」(吉田様)
組織が変わらなければならないときこそ、リサーチの力が必要になる
「VUCA(不確実性)」の時代と言われる中、これまで現場の知恵と経験で経営判断をしてきたが、ブレ幅が大きく速い時代の変化に通用しなくなってきたという声があちこちで聞かれます。あるいは急成長している企業では「組織が大きくなるにつれ、意思決定がスムーズに行いづらくなった」という悩みを聞くこともあります。組織がこれまでのやり方を変えなければならないときこそ、ユーザー調査に基づいたデータの裏付けが頼りになります。
リサーチを内製化することは、経営判断の武器を1つ手に入れるのと同じです。そのためには、吉田様のようにリサーチを深く理解し、活用できる人材を社内に確保することが重要です。決断にしっかりとした根拠があれば、多くのメンバーが納得し、同じ目標に向かって進むことができます。
「今回、グッドパッチさんとのプロジェクトでずっと感じていたのは〝仕事のやりやすさ〟でした。その理由を突き詰めると米田さんと秋山さんの〝人柄の良さ〟になってしまうのですが、私はたまたま相性の良い担当者に恵まれたのだとは思っていません。お二人のリサーチに対する意識の高さやクライアントに寄り添ってくれる気持ちには、グッドパッチのカルチャーを感じました。デザインやリサーチの仕事に熱い思いを持っている人たちが集まって、モチベーション高く仕事をされているんだろうなと思いました」(吉田様)
Credit
デザインリサーチャー:米田 真依
デザインストラテジスト:秋山 さくら